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第24話 四天龍

誰得なイラストシリーズです。


嵐龍アラディマンダー。

龍バージョン。

挿絵(By みてみん)



人化バージョン。

挿絵(By みてみん)


では、本編スタート!

 これはなかなかに予想外。


 竜人って、もっとでかくてごつくて、緑色で鱗がついてるとか、角が伸びてるとか、手足がかぎ爪で鳥の足みたいになってるとか、しっぽがあるとか、そんな獣人、亜人ぽいのかと思ったら。見た目は完全に普通の人間の女の子。肌も白いし、背もそんなに高くない。低いって程でもないけど。


 たしかに髪の色は虹色、というか髪の毛がグラスファイバーみたいに細くて透明なため光を反射していろんな色に見えるんだけど、加えて両サイドに流れるように碧い色のメッシュが二本伸びている。これって龍の時の口髭かな?

 それに瞳も金色で、よく見れば長い髪に隠れた耳が尖っているので、そこはちょっと普通じゃないけど。でもこれはなんというか。


 うん、美少女……。


 ふわっとしたフレアスカートのワンピースがよく似合ってる。

 胸は控えめ。かなり控えめ。


 アレー王女も美少女だけど、アラディマンダーはより幼いのに神秘的な美しさがある。神々しいといってもいい。さすがは天龍の化身。


「ちーーーすっ! じゃじゃーん、人型フォーム完成っす! どうすか? どうすか? いいカンジっすか?」


 喋らなければね。残念美少女だった。


「いや、確かにいい感じに可愛いけど、その喋り方は……」

「あわわっ? なんかマズかったすか? もっとへりくだった方がいいんすか?」

「いや、反省してたらそれでいいんだけど」

「チョー反省してますですはい! そらもう!」


 見た目とのギャップがねえ……。口調、軽すぎるよ。

 って、自動変換システム、もうちょっとなんとかしろ!

 でもこのように変換されるということは、こんなニュアンスで喋ってるんだろうなあ。

 魔物だしなあ。人間の常識とか、美意識とか、TPOとかは通用しないのかも。


 アラディマンダーは人化したけれど、上空の台風はあいかわらず強く渦を巻きつつある。

 嵐龍の加護はフォームには関係ないようだ。


 随分軽く小さくなったのに。

 あの龍の質量のほとんどはどこにいったんだろう?


 セシルはアラディマンダーの変身シーンをセンサーの録画記録(レコード)接続(リンク)してスローで再生(プレイバック)してみた。


 すると。


 センサーは龍体の内部を透過して記録出来ていた。脳や心臓、肝臓などの主要器官の一部が分裂し、それを核として粘液の膜が覆い、人型を形成し頭部をすり抜けた。粘液の膜が人型になるのは昆虫のさなぎの中で完全変態が起きる様によく似ていた。繊維が編まれ衣服も同時に生成されたのは謎であったが。

 分離した人型部分よりも遥かに多い、比率でいえば99パーセント以上残った龍の体は、分離と同時にすみやかに別次元に格納された。セシルが空間を曲げる時に使っているのと同様の余剰次元である。この間1ミリ秒程度。


 余剰次元とは超弦理論を含み力の統一を説明するM理論における11次元のうち、4次元時空以外の7次元であるが、解説は長くなるので割愛する。

 ちなみに、セシルが4次元時空の歪曲で予約する次元と、アラディマンダー龍体が格納された次元は異なる次元であった。


 龍体にも脳や心臓などの主要臓器は分裂して残されているので、単体でも死んでしまうようなことはない。

 人間体と龍体は、相互に超次元的に繋がっていると思われる。意識のプライマリは人間体にあるようだが、龍体もセカンダリとして共有し、またエネルギーのやり取りもあるようだ。


 なるほど、この余剰次元から得られる誘導エネルギーが『魔のエネルギー』なのかもしれない。


「よかった。質量保存の法則が破られたわけじゃなかったのね」

「なんすかそれ」


 などとやりとりしているうちにプリンセス・アレー号の艦橋に着いた。最初にセシルが使った側面のエアロックからアラディマンダーを連れて船内に入る。


「台風、切り離せるよね。龍体が別次元にあるんだから、場所関係ないよね」

「えー。あたしのマイホームなんですが……」

「あんな嵐が近くにあるとめっちゃ迷惑なのよ」

「あー、そうっすよね。そりゃお邪魔ですよね。ううう。元の位置まで戻します」


 暴風雨がプリンセス・アレー号から離れていく。

 下部展望室に戻ると、乗客全員で待っていた。蒼白になっている者、興奮している者、頬を染めている者と表情はまちまちであったが。


「恐れ入りやしたック……」

「姉さんの強さ、ますます心酔しましたダガ!」

「嵐龍が、なすすべもなく、こてんぱん」


 一句詠んだのはシュバルである。


「そんで子どもになったっキー!」

「さっきの剣、ガザルドナイトだよな! だよな! 間違いないよな!」

「俺、首の骨程度で済んでラッキーだったゴズかも……」

「さすがはお姉さまです! そしてアラディマンダー様、とても可愛らしいですわね!」


 囲まれるように口々に話しかけられ、アラディマンダーがセシルの腕をぎゅっと握りしめた。また涙目になってふにゃあとかひにゃあとかつぶやいている。大勢の人に一度に話し掛けられるのに慣れていないようだ。

 さすが嵐のひきこもりである。


「ちょ、みんないっぺんに喋りすぎ! 怖がってるじゃないの。これからいろいろ聞くんだから、ちょっと落ち着いて」

「落ち着けっていわれても、何をどうすりゃ落ち着けるんだよ! 不可侵の魔物(アンタッチャブル)をあっさり倒したと思ったら女の子に変えて連れて帰ってくるしさ!」

「マークス、わたしが変身させたわけじゃないわよ! 人聞きの悪い言い方しないでよ! アラディマンダーが自分で人化したんだから! 静かにしてくれないと黒い剣見せてあげないわよ!」

「うっ、それは困る……」

「それに、見た目で安心してるのかもしれないけど、アラディマンダーはこの姿でも十分強いわよ。気を付けなさい」

「姫殿下! お下がりください!」


 ガリウズが腰の剣に手を掛けようとする。


「そこの騎士(とんま)! 怖がらせて暴走でもしたらどうすんの! おとなしくして!」

「そうですよ。お姉さまのおっしゃる通りです、ガリウズ」

「ぐぐぐっ……! 姫殿下、誠に申し訳ありません」

「はい、じゃみんな下がって下がって。あ、シュバルさんは一緒にお願いします。アラディマンダーへの質問のフォローをしていただければ」

「心得た」


 展望室のテーブルに、アラディマンダー、セシル、シュバルが座る。セシルが引いた見えない線の向こう側に残りのメンバーが取り巻いている。


「あらためまして、アラディマンダー。わたしはハンターのセシル。こちらは商人のシュバルさん」

「はい……っす。よろしくお願います……っす」

「よろしく。落ち着いたかい?」

「はい、人多いの苦手なんすが、二人ぐらいなら大丈夫っす……、いえ、大丈夫です」

「よろしい。じゃ、さっそく教えてほしいんだけど、そもそもなんで襲ってきたの?」

「あのね……、あのですね、あたし、空飛ぶものに基本敏感なんです。特にでっかいのには。ヤバいですよね」

「それってこの船に反応したってことでいいわね? 襲われるって思ったの?」

「最初は知らない魔物だなあと思って、様子見してたんです。飛ぶスピードもめっちゃ速いし、こっちに気がついたらやだなあと思いながら、そーーーっと」

「あんまりそっとでもなかったような。いきなり暴風雨当ててきたよね」

「すんません、嵐付きなのはデフォなんで。雨風は自分でも消せなくて。でもこんな機械の塊だとは思いもしませんでした」

「機械って、わかるの?」

「もちろん。道具や機械、知ってますよぉ。伊達に世界を飛び回ってるんじゃないです」

「そういや、ちゃんとした服着てるもんね」

「へっへー、結構イケてるでしょ。最近のバッハアーガルム風カジュアルをちょいキレイ目にアレンジしてみたんっすよ」

「うん。わたしの冒険者スタイルよりうんと可愛い。このせか……この国に来てまともな女の子の服、初めて見たわ」


 アレー王女の服は豪華すぎて普段着じゃないし。どうしたってフォーマルドレス。


「龍毛で出来た服なので、耐久性もチョー抜群ですよ。」

「へえ。その服、他にも作れるのかしら?」

「毛自体がそんなに多くないんでたくさんは無理ですが、少しなら」

「じゃあ、わたしのも作ってもらおうかな?」

「喜んで!」

「エルフ姫、いや、セシル。龍布の件は私としてもとても興味深いのだが、質問からずれてるぞ」


 たてがみやしっぽなどわずかな部位に生える龍の毛。旧聖典の伝承では古代の神々がその毛で編んだ龍布の服をまとい、龍のうろこの盾、龍の角の剣を備えていたといわれる。これら龍装備は龍自身の力を使役出来たとも伝えられる。もちろん、誰も見たことがない物語の中の装備品だ。しかし嵐龍であるアラディマンダー自身が龍布の服といっている。伝説は実在した。大発見だ。

 後で良く見せてもらおうと心に決めるシュバルであった。


「おっといけない。で、アラディマンダー……長いわね。アラでいいかな?」

「なんかそれだと魚の()()みたいで……。せめてアラデにしてくれませんすか」

「じゃ、アラデ。そっと見てたのに、いきなり敵認定して襲ってきたのはなぜ?」

「そう、それなんすよ! あたしも急に酔ったようになって。なんでかなー? と思いつつ、気が付けば『こいつぜってー殺す!』みたいな感じで頭に血が上ってたんです」

「うん? なにそれ?」

「それで、今落ち着いて考えてたら、この船からライディマンダーの臭いがするんです」

「ライディマンダーって? そういえばさっき名前出てたわね?」

四天龍(ドラゴンフォー)のうちの雷龍だ。マルチ山脈の奥地、霊峰ガルダの山頂に掛かる積乱雲の中に住んでいる」

「あのじじい、あたしとキャラ被りなんですよ。あっちは雷メインであたしは風メインなんですけどね」

「なんでその雷龍の臭いがすると頭に血が上ることになるの?」

「いや、300年前にあたしが脱皮したときひどいことしやがりましてね。もともとキャラが似てるんでそりが合わなかったんすが、以来大キライになりまして」

「脱皮!」

「なるほど、それが一時弱まった原因だったのか!」


 嵐龍って確かに全体的には蛇みたいな形だけど、爬虫類だったの!?


「脱皮の時は嵐のバリアが消えるので、震龍ちゃんちに行ったんです」

「はい?」

「歳が近い女子なんで、困ったときはよく震龍ちゃんに頼むんっす」

「震龍アスディマンダー。四天龍の一体で大地を揺るがす龍だ。地下が棲み処のため姿を見た者はほとんどいない、幻の天龍だ」

「そんなことないっすよ。あたしと違って、友達たくさんでアゲアゲだしパリピだし。でも、そういや人族の知り合いはいないかもしれませんねえ」

「パリピって……。地下でパーティーしてたの?」

「地下といえばダンジョンですから、魔物一杯っすよ。時々ダンジョンのでかいホールで大勢で踊ってます。まあ震龍ちゃんが一番ですけどね」

「それってクラブ! そんでもってダンパ!」

「それが大地震の正体なのか……」


 また新たな真実が期せずして暴かれてしまった。大地震の天龍、震龍アスディマンダー。まさかのクラブ系ギャルであった。


「で、震龍ちゃんとこで皮脱いで。いつもは鱗がしっかりするまで泊めてもらうんすが、しばらくしたら彼氏が来るってんで」

「彼氏!?」

「まさか……、滄龍(そうりゅう)?」

「おっ、おっちゃん人間の割に龍事情に詳しいっすねえ」

「シュバルさんと呼びなさい」

「は、はいっ! すみませんっ! シュバルさん!!」

「あんたひきこもりの割にブロークンよね。シュバルさんをおっちゃん呼びするなんて信じられないわ」

「いや、たしかにおっちゃんなんだがね。それに名前が出てないのがもう滄龍だけだからね」

「そんな風にいうとこいつすぐつけあがってなれなれしくするので、ビシッと躾けないとだめです。それはともかく、震龍の彼氏も四天龍なのね」

「滄龍カイディマンダー。海の龍で津波を操る四天龍の一体だ」

「滄くんは震龍ちゃんと付き合ってるんだけど、海と陸なんでなかなか会えないんですよね。でもちょうど冬の大潮だったんで」


 冬の大潮とは年間で最も潮が引く日だ。やはりこの惑星は地球によく似ている。


「あたしもちゃんと空気は読むっす。飛べるくらいには回復してたんで、すぐおいとましたんです。あとは若いもん同士でってやつですよ。うんうん」


 あんたも見た目十分幼いだろと心でつっこむセシルであった。


「たまたまダンジョンの出口がガルダ山の近所で。でも目も鼻もまだちゃんと動いてなくてわかんなかったんです。ふと気がついたらライディマンダーのじじいがすぐ目の前にいやがって」

「えーと、ちょっと確認させて。あんたたち天龍って、何歳なの?」

「さあ? 覚えてないっす。6千年ぐらい? それとも1万年ぐらいだったかな?」

「1万年! で、ライディマンダーだけ歳が離れてるの?」

「いえ? 多分同じ時に生まれたんじゃないすかね。ずっと昔から四天龍っていわれてましたから」

「それならなんで震龍と歳が近いとか、ライディマンダーをじじいとかいうの?」

「あっ、そうっすよね。それ説明してませんでした。あたしら基本脱皮の時にリセット掛かるんで、脱皮したタイミング基準でその周回の年齢を感じるんです。滄ちゃんも震龍ちゃんもあたしもだいたい500年ぐらいで脱皮するんで、同い年感覚ってわけなんです。あたしのすぐ後で二人も脱皮しましたし。でもあのじじいだけは1500年から2千年間隔でしか脱皮しないんで。だからじじいなんです」

「へえ。雷龍だけ周期が長いんだ」

「きっとじっとしてるからですよぉ。動かないから成長しないし、傷まない。だからますます脱皮しなくなるんです。あのじじいだけかなり小さいですしね」

「人間から見ると天龍は全部巨大な魔物だが、そういわれれば雷龍だけ100メートルぐらいで他の三龍に比べると確かに小さいな。なるほど、脱皮の周期の差だったのか」

「ちょうどこの船の大きさぐらいですよね」


 プリンセス・アレー号は全長80メートル。長さはやや短いが、三角形の船体であるためボリュームとしてはライディマンダーに匹敵する。


「それで、雷龍に何されたの? まさか……」


 今の話だと脱皮直後とは生まれた直後に等しい。老獪な爺と赤子のごとき幼女。まさか……、まさか……。この小説健全なR-15版なんだけど!?


「あいつ思いっきりくすぐってきやがったんです! 鱗も固まってないのに! 敏感になってるのに! こう、爪の先であちこちこちょこちょと。ひどいですよね! あのじじい!」

「…………」


 それって、好きな子をついいじめたくなるというあれだ。きっと。

 組み合わせ的に雷龍と嵐龍がペアになるしかないし。

 もしかしたら以前の周回ではホントにペアだったのかもしれない。

 で、今回のリセット後も同じようにふざけてじゃれついたら本気で嫌われた、ということではないのか。


 四天龍(ドラゴンフォー)不可侵の魔物(アンタッチャブル)とは一体何だったのか。


 畏敬の念が雲散霧消するシュバルであった。もちろん周りで聞いている他の全員も。

 知らない方が良い真実もある。あらためてそう思う。

 でも、それでも、わたしは真実を追いかけてしまうだろう。それが世界を股に掛ける商人の性というものである。

 シュバルはマークスを見た。彼も同じ目をしていた。思わず親指を立てる(サムズアップする)。マークスも同じポーズをした。うむ、たとえ真理が常に輝くとはいえなくとも、これからも共に世界を『発見』していこうぞ!


「ふーん、まあそりゃ災難だったけど、だからこの船とライディマンダーを間違えて怒りに我を忘れて襲ってきたってこと?」

「いやあ、そんな気があったらとうの昔にガルダ山に行ってギタギタにしてますよ。ぜってー殺すみたいな気持ちは元からなかったはずなんですが……」

「ライディマンダーの臭いがするのは、この船の材料がマルチ山脈由来だからかも知れないけど」


 少なくともライディマンダーそのものは取り込んでいない。岩山を砕いて錬成しただけだ。


「なんだか、話を聞いていると操られていたような感じもするわね」

「操られてたんすか? あたし?」

「アラデ、魔大陸について知ってることある?」

「知ってますよぉ。魔都ガデューラのある二重大陸のことですね」

「二重大陸?」

「はい、あの大陸は、外側の絶壁はリング状になっていて、リングの内側に内海があってそこに本当の大陸が浮かんでるんです」

「天然要塞みたいな大陸ねえ。魔都ガデューラってのが魔人の都市なの?」

「そうっす。あたしも上から見てるだけで降りたことはないですが。大魔王ヴュオルズってのが統治してますよ」


 さらっと重要情報来た!


「その大魔王は催眠とか暗示とかで他の魔人を操ったりしない?」

「さあ? 結構評判いい王様らしいですよ。イケメンだし強いし。割とみんなに好かれてるんじゃないですかね?」


 魔人的にいい統治者というものがどういうものなのかさっぱりわからないが、操って従わせているわけじゃないみたいだ。

 このプリンセス・アレー号に気が付いて先手を打ってきたのかと思ったが、そうではないようだ。


「あんたは大魔王の配下じゃないの?」

「違いますよぉ。基本魔族は自主自立っす。魔大陸に住んでいる者は、その方がメリットがあるから大魔王に従ってますけどね。あたしらは天龍でワンチームっす」

「そういうものなのね」

「まああたしらに関係するとしたら竜王(ドラゴンキング)さんたちですかね? 龍族の支配者ですから。ご先祖様みたいなもんですね」

「えっ」


 もしかして、頭に血が上った理由は。


奈落の(ドラゴンキング)竜王(オブアビス)って、知ってる?」

「知ってるも何も、あたしの本家筋ですよぉ。よく震龍ちゃんとこの本家と間違われるんですが、『奈落から出ずる龍』なので、昇龍系の起源すよ。震龍ちゃんとこは『運命の(ドラゴンキング)竜王(オブフェイト)』です。大地は(ことわり)が起源ですから」


 さすがに専門的になってきた。なんとなくイメージは掴めるが。

 そしてセシルの推理は的中した。


「はあ……」

「どうした、セシル。その名前、さっき私にも尋ねていたね」

「ごめん、アラデ。その魔物、つい殺しちゃった」

奈落の(ドラゴンキング)竜王(オブアビス)を!? そうなんですか!?」

「なにっ! いつの間にそんなことをしてたんだ!」

「あんたの怒り、その怨念のせいだったのかもしれないわ」

「いや、ええ? ほほう、うーん、まあ、なるほど、そういわれればそんな気も。奈落出身の昇龍だから霊的なワザいろいろ持ってたはずですし。でも、魔族がマジ殺し合いするのフツーなんで、あたし、全然気にしないですよ」

「そういうもんなの!?」

「竜王に会ったこともないし、そのうちどうせ復活しますし。あたしらの脱皮もそうですが、死んだり生まれ変わったりで(魔)人生リセットするのはしょっちゅうなんで、いちいち気にしてないっす。まあ魔族によっては気にするのもいるかもしれませんが」

「へえ、いずれ復活するんだ……」


 きっと不死の王(イモータルキング)にも始祖の(ファウンダーキング)獣王(オブビースト)にもなんか関係する魔族いるよね。ま、不死の王は死んでないんだけどね!

 良かれと思って殺しちゃったけど、今後は良く調べてから行動することにしよう。反省反省。


 それにしても魔族のメンタルは人間に近いところもあるし、かけ離れたところもある。

 いろいろ勉強になったセシルであった。


 ぐうう。


 アラデのおなかが鳴った。


「おなかすいた……」

「アラデもおなかすくんだ!」

「そりゃそうです! 人型フォームだと、人間と同じようにおなかがすきます。龍型だと何年も食べなくても平気なんですけど」

「魔のエネルギーを別次元に貯めておけるもんね。龍の時は何食べてんの?」

「他の台風とか。時々はデザートに生贄とか」

「今後、デザート禁止」

「ふえっ!」


 夕食にはまだ早いが、魔大陸上陸前に仮眠を取っておく必要もある。

 魔族の秘密の一部をサラッとセシルが暴いているが、さすがのシュバルにも何のことかわからなかった。

 龍体が余剰次元に格納されたことを知らないので、それは仕方がない。


「私もちょっとおなかがすいたし、続きは食堂でしましょうか」


 反対する者はいなかった。

 コロナ騒ぎでバタバタしているうちにもう梅雨!

 そして明日は夏至の日!

 で、日食!


 次は10年後にならないよう、頑張って更新します!

 ではまた!

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