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第13話 魔人の親戚

お待たせしました。

 ハルド王は正直悦郎の扱いに困っていた。


 王は、悦郎の規格外の強さが『祝福者(ギフテッド)』によるものと推察していた。魔族を圧倒する力。そんな人間はギフテッド以外あり得ない。

 だから魔人を倒した際、勇者の称号を与えたし、爵位も贈り王国に取り込んだ。それが最善の策だと思ったからだ。


 だが、強大な力を持つ悦朗は、何もしなかった。

 ただ部屋に籠っているだけだった。


 終日部屋にいて、悦郎番としてあてがったお付きの若い女性たちと他愛もないおしゃべりをし、ご飯を食べさせてもらい、体を拭いてもらい、服を替えてもらい、寝る。

 たまに歴史書や地図、魔導書、教会の聖典などを持ってこさせ読みふけったり、ぶつぶついいながら魔法の練習をしたりはするものの、その程度で、本当に何もしない。

 よく退屈しないものだと思える生活ぶりだ。


 国軍レベルをはるかに凌駕する力を持ちながら、国にほとんど何の要求もしてこない。

 それがかえって不気味だった。


 とんでもない()()を飼ってしまったのではないか。


 国王は疑心暗鬼に陥った。

 はっきりいえば怖かったのだ。この何を考えているかわからない青年が。


 政治に身を置く者特有の猜疑心である。権力、出世、金儲け、女。そういう、俗な欲望にまみれてあがくのが人間の本質だと思っている。

 その力がありながら、そうしない悦郎は国王には理解不能な怪物そのものであった。


 だからつい魔人と呼んでしまった。東方の魔人というトンデモナイ二つ名が世間に定着したときは青ざめたが、本人は気に入っているようで助かった。

 それも不気味さに拍車をかけた。こいつ本当は魔に属する者なのでは? とさえ思った。


 そんな折だ。行き遅れの第一王女、第二王女が政略婚よりも勇者の子を残す方がよいと主張し始めたのは。

 しかし、王女二人を正妻にするわけにはいかない。ハルド王国は一夫一婦制であった。順序で行けば第一王女が正妻である。そうなると第二王女は妾だ。王女が妾というのは困る。王家の恥だ。そこで一計を案じた。


 国土の全魔物討伐。そして(いにしえ)からの難敵、山の魔王、海の魔王の討伐。

 首都近くに降りてきた先日のぽっと出の魔人などとは格が違う、伝説級の魔王である。

 しかも魔物殲滅という条件付きだ。いくら悦朗が規格外でも討伐しつくすには数年、いや、十年単位で掛かるだろう。その間に、ガルリア大陸の各王家と婚姻話を進め、二人を片付けてしまえばよい。


 適齢期を逃して焦る気持ちはわかるが、あの不気味な男と親戚になるのはまっぴらごめんだ。

 とにかく時間を稼げば、それでよい。


 そのはずだったのだが、2週間。

 たった2週間で、ハルド王国の魔族はきれいさっぱりいなくなった。同行したパーティーによると、山の魔王も海の魔王も瞬殺だったらしい。


 なんというふざけた存在!

 とんでもない奴だ!


 そしてますます熱狂する国民。完全に王国のアイドル、偶像である。それに魔物がいなくなったおかげで森や林の奥まで田畑を耕し放題、山の資源も採掘可能になった。行政院によると鉄の産出も見込めるとか。

 まさに東方の魔人サマサマである。ハルド王国は一気に好景気に沸いた。


 それは、相対的に国王の威厳を低下させた。

 ハルド王国は勇者に護られている。東方の魔人が統べる国だ。勇者さえいれば国家は安泰。


 王家にとって、国王にとっては由々しき事態である。悦郎を何とかしなければ、下手をすると革命の引き金になりかねん。勇者を旗印に平民が蜂起したらどうする?


 ハルド国王、バニュエル・ズーラ・ウェゼムアズ・ハルドは稀代の小心者であった。小心者ゆえ、誰よりも先を読むことで権謀術策あふれる政治の世界で勝ち続け、兄弟を蹴落とし王の座に就いた男である。


 彼は、悦郎にさらに熱を上げた二人の王女をこの際利用することにした。

 密かに悦郎の寝室のカギをメイド経由で二人の王女それぞれの手に渡るよう仕込んだ。

 既成事実が大事です、とメイドに吹聴させるのを忘れずに。一人だけでは国王の怒りに触れるかもしれないが、二人共なら王も認めざるを得ないでしょうとも。


 悦朗は熟睡するとそうそう起きないのは既に確認済みである。


 そしてある朝、二人の王女と悦朗が裸で寝ているのをお付きの女性が発見、衛兵を呼ぶ騒ぎとなった。王女二人も寝ていたのは、精力剤と称してメイドが渡した飲み物に睡眠の魔法薬が混ぜられていたからである。


 そして悦郎は欲望の権化、ハーレム魔人というレッテルを張られ、国王により国外追放の身となったのだ。王女がお手付きとなった事実は公式には伏せて。でも噂は広まる。しかしそれでよかった。

 勇者の評判が落ちれば目的は達成だ。それに、事実寝ていただけだし。セーフセーフ。


「えーと、適齢期って、上の王女さんたち、いくつ?」

「成人が16歳なので、王族や貴族は16歳から遅くとも19歳までには結婚ないし婚約をします。20歳を超えると行き遅れといわれます。第一王女が22歳、第二王女が20歳です」

「えええ! そうなの!? わたし今17歳なんだけど、もうそろそろ結婚しないとやばいじゃない!」

「エルフに人間の年齢は当てはまらんのではないかな」

「わたしエルフじゃないです。シュバルさん」


 ああ、でもやっぱりハーレムは嘘だったのね。お付きが若い女性ばっかだったというのが気になるところだけど、信じてるわ! えっちゃん!


 そしてえっちゃんと結婚するのはこのわたし!

 この世界なら、姉弟でも大丈夫よね!

 血は繋がってないんだし、いけるいける!


 ここでの結婚適齢期の半ばに差し掛かっていると聞いて、急に焦りだすセシルであった。

 まあ、人間の平均寿命が60歳に満たない世界だから、特に王位継承権の問題がある王族は早く結婚して子どもを作るだけなので、平民のセシルがそんなに慌てることはないのだが。


「話に続きがあるんですが……」

「あっ、そうだよね。今までの話に第三王女が出てこないもんね。それからどうなったの?」

「国が荒れました……」


 国王がレッテルを張ろうとも、悦郎が魔族を一掃した実績は揺るがなかった。

 実際、魔族がいなくなったおかげで、山や海の資源の利用が危険を伴わずに(自然の脅威という危険は変わりないが、それはさておき)可能になった。今まで出来なかったことが出来るようになる。


 これはある種のゴールドラッシュだ。実際川で砂金が採れるので、山深くには金鉱だってあるはずだ。

 一攫千金のチャンス。アメリカンドリームならぬハルドアンドリーム。


 国土開発に誰もが乗り出す一方で、国王の評判は落ちた。とても落ちた。

 誰がどう見ても、どう繕おうとも、王女を勇者に寝取られた父親の見当はずれの嫉妬と怒りであった。


 実際にはそうではなくて保身のためだったのだが、どっちにしても国王のわがままで国民の英雄を放逐した事実に変わりはない。

 それに解雇された勇者付きの若い女性たちが、悦郎が寡黙で勉強家であったことを吹聴した。


 まあこれも実際には引きこもりで読書好きなだけだったのだが、粗暴で脳筋な男が多い封建社会では、彼女たちから見ればクールでインテリジェンスなイケメンヒーローである。

 その悦郎に対し、お着換えさせたり、あーんと食事を食べさせたり、ちょっと恥ずかしがる悦郎を裸に剥いて蒸しタオルであそこやあそこを拭いたり。最高の日々であった。


 あの初心なところが最高に可愛いのよねえ。特に夜系のお付きたちが何かを思い出すように目を細める。

 それを奪った国王憎し! 撃滅のエツロウ様は悪くない! むしろいい人!


 国王は、失敗した。

 策士、策にはまる。

 絶対君主なので表立っては国民も騒がないが、税金の納付を遅らせたり、国に献上する作物をB品にしたり、王家に地味な嫌がらせを始めた。未確認だがあちこちで東方の魔人を讃える地下集会が開かれているとか。

 ヤバかった。ハルド王国崩壊の足音が国王に聞こえ始めた。


 第一王女、第二王女は口もきいてくれない。カギと睡眠薬で暗躍した国王子飼いのメイドたちは責任を取って自害しようとしたがさすがに止めた。これ以上恥の上塗りはまずい。本気で親子の縁を切られかねない。そうなると、王子のいない国王の家系は途絶える。出し抜いたはずの親戚筋のどれかが次期国王になってしまう。


 もういろんな意味でめっちゃマズかった。


 とにかく悦郎だ。奴を呼び戻せばまだ何とかなる。恩赦を与え、第一王女を正妻にあてがうのだ。勇者と王家の歴史的和睦だ。よく考えてみれば腹の底が見えない不気味さは王家一族もおんなじだ。

 不気味同士、いい縁談ではないか。


 やや自虐的にそう結論付け、第三王女を呼んだ。アレーラス・オル・ウェゼヌアズ・ハルド。成人前の14歳の少女。若い女性、というかまだ少女の彼女こそ、王家から勇者への使者にはふさわしい。

 第一王女、第二王女は口もきいてくれないのでそもそも依頼できなかった。

 王は娘三人なので他に王家を代表するものがいない。王自身が国を開けるわけにはいかないし、王妃も娘についてる。王妃よお前もか! 状態だ。

 四面楚歌のなか、無理やり王家の代表にした感は満載なのだが、実は王家期待のニューフェースなアレー王女である。まだ幼いが、魔法に秀で、王立学校トップランクの一人だ。


 クエスト:勇者エツロウを探し出し、ハルド王家に連れ戻せ。

 ミッション・スタート。


 かくて第三王女はどこに消えたかわからぬ勇者を探す当てのない旅に出たのである。近衛騎士ガリウズを従えて。


「で、本当に当てがないわけじゃないでしょ? なんか手掛かりあるんでしょ? アレー王女」

「いえ、わたくしは王家と縁の深い某貴族の娘アレーです」

「はいはい、貴族のアレーお嬢様設定だったわね。それで?」

「手掛かりはあります。撃滅のエツロウ様が読んでいた書物と古地図。中でもよく目を通されていたのがこれです」


 王女の後ろに立っていたガリウスが古びた地図と付箋のついたこれも古そうな本を荷物の中から取り出した。本は革と金属で表紙をカバーされたものだ。印刷ではなく手書き……写本のようだ。


「魔大陸?」

「一般の海図には載っていない場所です」

「そんなのいきなりこんなとこで話していいの?」

「いいのです。そこに行くのですから」

「海の絶壁のことですな。遙か西の海にあると聞きます」

「さすが商人は何でも知ってるなあ!」

「実際に見たことはないですがね。300メートルにも及ぶ崖が延々と続く大地。かつてデガンド帝国が調査船団を派遣しましたが、絶壁に接近した船が次々座礁し、崖にすら届かないまま調査が打ち切られたことがあったと聞きます」

「難所だなあ。接岸したとしても300メートルの崖をどうやって上るんだ?」

「しかも、魔族が出るようです。海棲魔族や飛行魔族がうようよと」

「そんなとこに、えっちゃんが行ったの?」

「魔大陸は魔族の大陸。そこには魔族の大ボス、大魔王が住んでいるのです」

「大魔王!」


 なるほど! ラストダンジョン、最終ボスか!

 そりゃ、その情報を得たら行くよね! えっちゃんなら! 確かに!


「撃滅のエツロウ様は魔大陸と大魔王に大変興味を持たれていた様子です。ハルド王国の魔族を一掃されたあの実力なら、大魔王討伐の志を持たれるのは当然かもしれません。人類を救うために! 何と高尚。何たる勇気。それなのに、お父様ときたら、撃滅のエツロウ様を大罪人のように扱い国から放逐するなんて! あまりに狭量、あまりにも軽薄!」


 この貴族の娘のお姫様、王のことお父様って言ったよ……。

 それに“撃滅の”は、もうやめてあげて……。


「でも、どうやって行くの? 海の向こうなんでしょ?」

「ここから西へエルベットからエトアウル王都に入り、船を買おうと考えています。しかし、木造船ではおそらく崖の前に座礁してしまうでしょう。岩場でも大丈夫な材質の船がないかと考えていた時に、ここのトイレの話を耳にしまして、もしやと見に来たら、とんでもない材質が使われておりました」

「え、あれ、なにかわかるの?」

「はい、あの……トイレの蓋など使われているのは“ぷらすてぃっく”ですね。特にその中でも“えーびーえす”と呼ばれる壊れにくいものですよね」

「えっ!」

「おお、あれが聖典に示された伝説の素材“ぷらすてぃっく”ですか!」

「シュバルさん、あんた教会にも詳しいな! でも、エルフ姫はさっき樹脂といったが?」

「プラスティック樹脂なのよ。ABSは耐衝撃プラスティックとして昔はよく使われたけど、残念、あの便座はプラはプラでもポリプロピレン製。柔らかいけど耐候性がABSよりも優れているから、ケミカルクラック対策として今の便座はたいていポリプロピレンで出来ているわ」

「ぽ、ぽりぷろ……? けみかる? なんだそりゃ!?」

「なんと。教会の古文書には硬くて強い“えーびーえす”と記されているのですが……」

「それ、多分情報が古いわよ。10年くらい前の話じゃないかな?」

「いえ、2000年くらい前に書かれた聖典にそう書かれてあるのです」

「ま、どっちにしろ古いわ。そうか、遠い昔の話なのね……」


 2000年前にも元の世界から来た転移者か転生者がいた、ということよね。これ。

 でも、ABSの知識があるのだから、こっちで2000年前でも元の世界では古くても4、50年前くらいの人よね。普及したことを考えると2、30年前までかな?


「しかし商人、“ぷらすてぃっく”まで知ってるたあ、さすがだね! てかなんで俺に教えなかった!? さっき『樹脂』の話してただろ!」

「聖典にそういう記載があることは知っていたが、あれがそうだとは今の今まで知らなかったのだよ。すまないな、マークス。しかし王……お嬢様、あれを見ただけで素材までわかるとは、さすがでございますな。このシュバル、感服いたしました」

聖遺物(アーティファクト)。宝物殿で見たことがあります。何に使うかわからないものでしたが、これが“ぷらすてぃっく”でありその中でも“えーびーえす”といわれる硬いものだと。たまたまこの宿の前で見たこともない軽くて堅い材質だと話しているのを聞き、ピンと来たのです」


 ABSは紫外線で脆くなりやすいのだけど、宝物殿に保管されてるのなら2000年ぐらいは余裕でもつわね、と納得するセシルであった。

 しかしこの王女、そんな話だけで聖遺物と情報を繋げるなんて。もしかして超能力者? じゃない、魔法? 探知系とか索敵系みたいな?


 しかしこの世界、以前から地球と交流があったのね。

 それならそれで、ますます説明が欲しいところよね。神様手抜きだぞ! ぷんぷん!


「それが“ぽりぷろぴれん”でも構いません。座礁に強い船を造っていただければ! お姉さま!」

「ということは結局俺たち三人はエルフ姫の作るモノの秘密が知りたいってことだ」

「そういうことのようですね」


 ええ? ボートならPP(ポリプロピレン)じゃなくてFRP製だよね。そんなこの世界のオーバーテクノロジー的なものホイホイ作っちゃっていいのかなあ?


 でもえっちゃんがそこにいる可能性は、どうだろう?


 もしえっちゃんなら、きっとわたし同様空を飛んで難なく魔大陸に上陸してると思う。で、さっきの話からすると大魔王も瞬殺してるんじゃないかな? それとも配下に従えて魔大陸の新王になってるかな?

 そっちの方がありそうな気はするなあ。


 ふーむ。


「ところで、お嬢様はハルド王国から西へ西へと移動しておられるのですね?」

「はい。シュバルさん」

「そうですか。それは遠回りでしたな。ハルド王国から船で東へ向かわれた方が魔大陸には近かったのですが」

「この世界が丸く繋がっていることはもちろん知っていますわ。でも、ハルドから直接魔大陸に乗り込むには戦力が足りませんでした。王はお忍びの貴族という設定なので従者はガリウズ一人しか許してもらえなかったので。エトアウル王都で傭兵を雇うつもりです」


 もう自分で設定って言っちゃったよ! ぶっちゃけるなこのお姫様!


「しかし、さっきの話だとどうやら王国軍はアドセット近郊の魔族討伐で手いっぱいの様子です。腕に覚えのある傭兵はそっちに雇われてしまっているではないでしょうか?」

「先ほどいらした軍師サムゾーさんの話ですね。そういえば、お姉さまにも指名依頼を出すようでしたね」

「ふむ。われわれはセシルさんの持ち込んだ物品の情報、出来れば現物が欲しい。それはニホンという国からのもので、東方の魔人もそこの出身。セシルさんには分からないが、東方の魔人ならニホンにいくにはどうすればいいか知っているかもしれない。お嬢様たちは東方の魔人に会いに行きたい。しかしこのままではセシルさんは指名依頼で軍に組み込まれてしまう。これを一気に解決するためには」

「ためには?」

「お嬢様、貴女がセシルさんに指名依頼を出すことです。依頼は魔大陸への同行。そして東方の魔人との接触」

「それは無理です。相手はエトアウル国軍の正式な依頼。貴族のわたしの指名依頼ではお姉さまの引き抜きは出来ません」

「貴族からの依頼では無理ですが、ハルド王国第三王女の直々の指名なら、都市駐留軍の軍師程度にどうも出来ませんよ。何、正体を明かせと言っているわけではありません。正式な書面があればそれでよいのです」

「貴族として行動中なので、私は公文書用の羊皮紙も聖約用のペンも何も持っておりません」

「その点は大丈夫。わたしは商人でございます。その程度、今夜中にご用意いたします。さすがに印章はお持ちでございましょう?」

「もちろんある。緊急事態には備えている」


 これはガリウズがぶっちゃけた。


 あああ、もうバレバレじゃないの。まあ今更だけど。


 でも、そうよね。これはえっちゃんに会うチャンス!

 異世界二日目でこんな依頼が飛び込んでくるとは。ラッキーだわ!

 あの軍師のおじいさん、ちょっと強引で気に入らなかったし。


「ところでお姉さま。お聞きしたいのですが、撃滅のエツロウ様とはどのようなご関係で? えっちゃんって呼ばれるのはなぜでございますか?」

「えっ……」


 どのような関係といわれても……。

 うーん、ここは無難に。


「親戚です」

「「「「えええええ!」」」」


 そう、ここで家族とか、姉弟とか言わなかったのはセシルのとっさの判断である。


 独身であることは語るに落ちてしまったので、夫婦です! とは言えない!

 かといって家族や姉弟と言い切ってしまうと、この異世界でも近親の結婚はNGかもしれない!

 そもそも血は繋がっていないのだし、消去法でここは親戚!


 セシルはそれで押し通すことを決めた。

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