8、カマラ一家
レオン一行は、森で助けた少女カマラとともに、ラムタイ王国へ向かっていた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺の名前はレオン。このクールなやつがレイモンド、ヘラヘラしてるやつがアトモス。君の名前は?」
「私はカマラです。国の法により2年間国の兵士として働いています」
「君のように女性も兵役の義務があるのかい?」
「はい、ラムタイ王国は戦争の少ない国ですが、それでも軍事力が乏しすぎるので、女性も兵として戦わなければ国が守れないらしいので」
「なるほど。それは大変だな」
「そうですね。早く戦争のない平和な世界になってほしいです」
4人が歩いて10分ほど経つと、国の城壁に着いた。門番から、怪しいものを見るような目線を向けられるが、カマラと一緒にいるところを見ると、特に何も言われずラムタイ王国内に入ることができた。
「これほどとは思ってなかったな」
「そうですね。私も驚きました。やはり聞くのと見るとのでは、ずいぶん印象が違いますね。」
ラムタイ王国は、しっかりした城壁に整備された道や建物、そして王の住む宮殿も豪華なものだった。
来る前のレイモンド情報では、16小国の中でも最も小さく、乏しい国だと聞いていたが、賑やかさ以外は我がクレセント鬼国よりも優れていた。
腐っても世界に名を轟かせる国のようだ。
そこで、レオン一行は,作戦通りにバラバラに行動することにした。
レイモンドは、国の図書館などで他国の歴史や場所などの情報収集。アトモスは、酒場などでラムタイ王国についての情報収集。
作戦では、レオンもアトモスとともに行動する予定だったが、森で出会ったカマラに是非ともお礼がしたいと言われたので、レオンはカマラの家に向かった。
カマラの家は、大通りから少し離れたところにある、なんのへんてつも無い家だった。
家に入ると、中には5歳くらいの女の子と母親らしき人物がいた。
「カマラ、その男性はどなた?」
女性は、怪訝な視線をレオンに向ける。
(まぁ、娘が知らん男を連れてきたら、そんな対応するよな)
「母さん、この人はレオンさん。森でグランドウルフの群れに襲われた時、助けてもらったの」
「あらそうだったの」
カマラの母親がそう呟くと、近寄り、少し涙目で深々と頭を下げる。
「娘の危ないところを助けていただきありがとうございます。この恩は、一生忘れません」
夫を失い、女手ひとつで育ててきた娘まで失うところだったと考えると、この反応は別に大げさでもないだろう。
少し、カマラ一家と打ち解けた後、レオンは任務である情報収集を開始するのだった。