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僕らの奏でる百鬼夜行  作者: 玉響
14/14

14、カマラの選択

 レオンがカマラの家に着いたときは、カマラが魔獣たちに襲われているところだった。レオンは、軽く魔獣たちをあしらうとカマラのもとへ近づいてゆく。

 カマラの腕に抱かれている首なし死体は、カマラの母親が着ていたものだった。妹の姿も見当たらないので、もうすでにこの世にはいないのだろう。


 カマラの様子もかなりひどく、身体中傷だらけで顔もやつれている。一瞬のうちに彼女の大切なものが消えていったのだ。もう精神的にも危ない状態だった。


 レオンはカマラに問う。

「もうすでに、ラムタイ王国は崩壊した。いづれこの国は、魔獣たちであふれるだろう。もし、まだ生きる意志があるのなら助けてやれるがどうする?」

 

 もうこの状態の人が考えるパターンは2つ。すべてを失っても生きる覚悟のあるものとないものだ。もう死にたいと思っているものを助けるほど残酷なものはない。確かに生きていれば幸せを勝ち取ることもある。

 

 だが一生、家族や大切なものを失った悲しみと向き合ってなければならない。これは本人たちの問題で、他の人は気持ちを和らげても一緒に背負ってあげることなど不可能なのである。

 たとえ同じような境遇であったとしても、感情は人それぞれ違う。確かに、似たような感情を感じることも大いにあり得るが、完璧に相手の感情などを知りえないからだ。

 

 だからこそ、レオンはカマラの意見を尊重することにした。もし、カマラが両親たちと一緒に死にたいというのであれば、せめて痛みのないように殺すつもりである。


 ♢ ♦ ♢


 レオンに助けられたカマラは、迷っていた。

 このまま母や妹を捨てて、自分だけ助かっていいものなのかと。未練はあるし、国の敵討ちもしたいが、うまく決めることができない。


 時間だけが過ぎてゆく。そこでふと、レオンが家でしゃべっていたことを思い出した。


 それは世界平和のために動いているという内容だった。その時のレオンの顔が印象的であった。たとえどんなことが起ころうとも、どれほどの犠牲が生まれようとも、必ずかなえようとする男の顔だった。

 カマラは、そんな素敵なことを考えている人がいることが素直にうれしく、この人たちの夢の先の世界を見たいと思っていた。

 だからこそ・・・


「生きたいです。助けてください」

 涙声で聞き取りにくいが、はっきりと言った。


「おう。任せとけ」

 カマラの願いを聞いたレオンは手を胸に当て、優しげな笑顔をカマラに向ける。


 レオンの笑顔を見て安心したのか、カマラの意識はどんどん遠のいていった。

 

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