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僕らの奏でる百鬼夜行  作者: 玉響
11/14

11、隠された力

閲覧注意です。

 扉を開けたレオンは、目の前に広がる景色をただ茫然と見ていた。


 そこには、明らかにラムタイ王国の国土よりも大きい空間と、もともと赤い皮膚の生物かと見間違えるほど血を流している魔獣や亜人、人間たち。そして、実験施設かと思わせるほどの、おびただしい発電機の数々。

 ガスマスクをつけた人間に、奴隷のように働かされている者たちの目は、絶望する気力もないのか感情が見当たらなかった。


 昔は、はち切れんばかりの筋肉があったであろう者たちは、やせ細り、床は死体で埋め尽くされていた。

 まだこの地下の発電所を拡大するつもりなのか、土や岩を運ばされている者もいる。


 もはや感情すら失った者たちの怨念が、悲痛な叫びが、レオンのもとに強く届いてくる。


 ―――早く、殺してくれと。


 これが地獄というものだろう。地上の方から騒がしい音が聞こえるが、レオンは目の前の景色から目を離せないでいた。


(あぁ、この世界はここまで腐っていたのか)

 16小国ですらこの規模である。この世界をすべている5大国では、どのような地獄が待っているのだろうか。


 レオンは考える。「俺は、恵まれていたのだ」と。幼いころ師匠に鍛えてもらい強くなったことで、素敵な仲間たちに出会えたこと。そして、戦うことでしか喜びを得られなかったレオンたちに平和のすばらしさと、皆で何かを作り上げることへの喜びを教えてくれた民に出会えたこと。

(どれほど俺は、幸せ者だったのか)


 今までの自分にの幸運に感謝しながら、レオンは力を開放してゆく。


 レオンの目が赤黒く、それでいて幻想的なものに変化する。

 レオンは、師匠からありとあらゆる戦い方を伝授された。剣術、武術、格闘術などはお手の物、それのみの実力でも、レイモンドやジャックにも引けを取らない強さである。

 だが幹部たちが、レオンを世界最強だと決める大きな要因である一つの力を発動した。


 『鬼術(きじゅつ)


 この世界でレオンだけが使える、選ばれし鬼のみが使用できる力だ。レオン自身も、どの様なメカニズムで発動されているのか謎である。


 レオンが手のひらを前に向けると、幾何学的な模様のした謎の物体ができる。謎の物体はレオンの手から離れていくと、莫大なエネルギーが放出されていく。


「すべてのもの達に、苦痛なき死を―――時雨(しぐれ)


 レオンが手を閉じると、一瞬にして白い世界が出来上がる。まるでこの空間には、元から何もなかったかのようである。

 

 次第に世界に色が戻ってゆき、何があったのか分からなくなっているほどめちゃくちゃになった発電所から、誰かが「ありがとう」とつぶやいたような気がした。


 



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