間違って生まれてきた君へ (二)
まさか君から返信メールが届くなんて思ってもいなかったので正
直驚きました。ところで、私が訪問したことが君に変なプレッシャ
ーを与えたとすればどうか気にしないでください。私は君に登校を
促すために訪ねたわけではありません。ただ君が毎日どうして過ご
しているのか知らなければならなかったので、担任の私には業務上
の責務がありますので、君の意志を確認しなければならなかったの
です。今日では、そもそも私は学校教育だけがすべてだとは思って
いませんので、それどころかIT社会の発達によっていずれ教室で
の授業という制度も無くなるかもしれないとさえ思っています。実
際、君はすでにアメリカのオンライン授業を受講しているのには驚
きました。それらは何れも英語による大学生向けの講義にもかかわ
らず中学2年の君は何となく理解できると言いましたよね。仮に解
らないことがあても検索すればすぐに関連サイトに繋がるので補習
することもできるからもう教師なんか要らないし、何よりも他人か
ら教わることよりも自ら学ぶことの喜びに勝るものはないとも。不
登校の君の自堕落な生活を想像していた私は、PCで勉学に励む君
の姿に見事に裏切られました。つまり、不登校の君の方が我々より
も前に進んでいるのかもしれません。いずれ学校なんて要らなくな
るでしょう。ところで、君は社会のことなんてまったく関心がない
と言いながら、こと政治には一方ならぬ関心があるようですね。し
かし、そもそも政治というのは社会活動の最たるものでしょ?何れ
にしろ、私としては君が社会に対して関心を持つということを歓迎
します。