予兆
令和初の投稿。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ!
「撃て!」
引く引き金、落ちる撃鉄。
銃口から放たれた6.5㎜の銃弾は100メートル先の男の眉間目掛けて飛翔すると、男の眉間に穴を開けた。
脳幹を撃ち抜かた男は、生命活動を停止し、その場に倒れ伏す。
私は小銃の槓桿を操作し、次弾を装填、再び照準を合わせる。
「援護!!」
と、引き金を引いた時、近くの遮蔽物から1人の少女が飛び出した。
「援護射撃!弾幕張れ!」
仲間達の了解と言う言葉を聞き、全力射撃が開始される。
私は小銃に着け剣すると、飛び出した少女の後に続いた。
敵隊列の中央に突入し、少女は右へ、私は左へ向かう。
敵に銃剣を突き立て、銃床で殴り付け、銃で射撃し、手榴弾を投げつける。
爆音を聞きながら後ろを振り替えると、そこには殺した敵に泣きつく子供がいた。
子供は泣きながらこちらを睨み付けると、敵の持っていた拳銃に飛びつく。
下手くそな構え、しかし、一度引き金を引けば私はただではすまないだろう。
しかし、子供が引き金を引くことは無かった。
安全装置。敵は民兵のくせに安全装置を掛けていたらしい。
私は小銃を腰だめに構えると、引き金を引いた。
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「………長。隊長、起きてください!」
声に起こされ、目を覚ます。
見ると、目の前に1人の少女が立っていた。
「んっ。ふぁ…。…イゼルか?」
「はいぃ?それ以外の誰に見えますぅ?」
怒ったような顔をしてそんなことを言うイゼル。私はそんな彼女を見ながら、体を起こす。
時計を見ると既に1300を回っていた。そろそろ昼休みも終わるだろう。
「ふぁ…。さて。午後の準備をしようか。次は地理だったな」
「そうです。あ、それと隊長が寝てる間に1個上の先輩が来てましたよ」
「それって槇下先輩?」
「はい、確かそんな名前でした。隊長が寝てるのを確認したら帰って行きましたが」
「ふーん」
槇下先輩。最近何かと私に絡んでくる先輩だ。黒髪ショートのボーイッシュな先輩で弓道部に在籍していたと思う。何で絡んでくるのかは不明。
「ま、どうでもいいか」
そう呟き、授業の用意をする。
席に着き、教科書を置いた時、丁度担任教師が入ってきた。時間ピッタリの5分前行動。担任教師の几帳面さが伺える。
「さてさて、退屈な時間の始まりですよぉー」
イゼルが横の席に着くとそう言った。
「ふふっ。まあ、お前は体を動かしてる方が性に合ってるからな」
「そう言う隊長はなんか楽しそうですな」
「わかるか?」
確かに私は楽しい。顔に出ているだろうか?
「そりゃわかりますよ。何年一緒に居ると思ってるんですか?」
「かれこれ10年と3ヶ月8日ぐらいか?」
「これがばっちり覚えてるんだよなぁ」
イゼルはそう言うと机に突っ伏した。
「さて、そろそろ始まるぞ」
「りょ~かい」
イゼルが返事をし、体を起こしたタイミングでチャイムがなった。
室長の号令で礼をし、授業が始まる。
私はノートを開き、シャーペンを持った。
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同時刻 街中の廃病院
「あーあ。やってらんねぇ…」
「なあオイル持ってねぇ?俺の切れちゃって」
「あ?あー。俺持ってるぞ」
3人の少年は口々にそう言いながら、廃病院の一室で寛いでいた。少年達はいわゆる不良と呼ばれる者達で学校をサボり、最近閉鎖したこの病院を根城にしていた。
「あ、そういやお前ら、こんな話知ってるか?」
「あ?どんな話よ?」
「それがよ、この病院、元は精神科だろ?で、ここ、出るんだとよ」
「なにが?」
「もったいつけんなよ」
「言わなくてもわかるだろ?幽霊だよ。お化け、ゴースト」
「んなばかなww」
「俺らの他にも出入りしてるっぽいしな、そいつらじゃね?」
「まあ聞けって。俺の連れに木村っているだろ?」
「木村、木村ねぇ…」
「木村?確かそいつ行方不明になってなかったか?」
「ま?」
「当たり、その木村だ」
「マジで?」
「マジだ」
3人の不良は怪談話を始めた。煙草を吸いながら、1人の不良は他の2人の不良が興味をもったのが良かったのか、気分良さそうに。
「その木村がな。行方不明になる前日、俺に連絡を寄越した。何でもこの間この病院の近くを通りかかったら2人の薄着の女が居たんだと。んで、今日も居るんじゃねえか。もしかしたらヤれるんじゃねえかってな。仲間誘って行ったそうだ。俺も誘われたがその日はバイトがあってな」
「お前バイトしてんのかよww」
「あん?大分前からな」
「ちなみにどんなバイト?ww」
「接客業」
「「wwww」」
2人の不良は爆笑した。話している不良の少年は強面だったのである。
「黙って聞けよ…」
「wwわ、悪い、でも、接客業ってww」
「その顔で接客業はねぇよww」
「くそ、続きを話すぞ?律儀にも木村の奴、俺に連絡を寄越しながらこの病院に入っていった。今駐車場、中に入る。とかなで、しばらくしたら連絡がきてよ」
「なんて?」
「ヤバイ、助けて、だとよ。で、俺もどうしたって送った訳だ。そしたら、物が倒れた音がしたからそっちに行ったらって文字を打ちたかったんだろう変換ミスやら誤字やら、読めるもんじゃなかった」
と、その時、ドサッと何かが倒れる音がした。
「「「………」」」
3人は一斉にそちらに振り返る。
そこは廊下になっており、電気が通っていないせいか、薄暗かった。
「誰だ?」
1人の少年はそう言った。
しかし、返答はない。
「どうする?」
「どうする?ったって、見に行くしかねぇだろ」
3人は立ち上がると、近くの金属バットや木刀、パイプを手に、音がした方に向かった。
「誰だ?」
「なんか居るか?」
「いや。…まて、あれは?」
「うん?」
1人の不良がある方向を指差した。他の2人もその方向を見る。
「!!木村」
それは柱にもたれ掛かった木村と言う不良だった。
「木村!大丈夫か!?」
「なんだこの傷!」
「おい木村!誰にやられた!」
木村は全身の至るところを血で染め、服もボロボロの状態で柱にもたれ掛かっていた。
「くそ!お前ら!俺はちょっと救急車を呼んでくる!木村を見ていてやってくれ!」
「わかった!」
「了解!木村!しっかりしろ!」
先程まで話をしていた少年は走り出した。この病院は何故か電波が届かず、1度病院から出る必要があった。
少年が走りだし、廊下を少し進んだその時だった。
「ぎゃぁぁああ!」
「どうした!」
思わず足を止め、振り返る。
「ハッ?」
少年が見たのは、1人の不良の少年の首筋に噛みつき、肉を引きちぎる木村の姿だった。




