表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

001 プロローグ

我が魔王となり、魔城に迎えた勇者の数もこれで100人目。

今回ばかりは楽しませてもらいたい。


初めての勇者との戦闘。あの頃は我も若かった。

伝説の剣を手に飛びかかる勇者。後衛から強力な魔法で援護する賢者。

まずは勇者を蹴散らすべく、我は炎魔法を繰り出す。

しかし、魔法使いが我の闇魔法をかき消す。

勇者の斬撃と賢者の魔法を間一髪で切り抜け、渾身の一撃を勇者に喰らわす。


あの頃は生き生きとしていた。

初めての勇者との戦闘は、激闘の末、我の放った雷魔法で幕を閉じた。

今思い出すだけでもゾクゾクする。


だが、勇者を迎え撃つ度に我の力は膨れ上がり、5人目の勇者を倒す頃に、我に敵はなかった。

我は戦闘を繰り返した。

いや、戦闘と呼べただろうか。

我の放つ一撃はあまりにも強大すぎた。

我に刃向かう者はいなくなった。

約10年に一度勇者が我が魔城に攻めてくるが、我の元にたどり着ける勇者は5人に1人程度。


我にこの世界で手に入らぬものはない。

手にあまりきった配下。豪勢な食事。広大な土地。

この世界全てが我のもの。我の望むものはすべて手に入る。

しかし、ひとつだけ手に入らぬものがあった。


それは満たされぬ心。


100人目の勇者よ。

我を存分に楽しませるのだ。


「こ、こいつが魔王かっ!オーラだけで気が飛びそうだぜ。」


『ほぅ。汝が今回の勇者であるか。なにやらいつもの勇者とは雰囲気が違うではないか。』


「こちらは異世界より召喚されし勇者様である!お前に勝ち目はない!」


なるほど。我が99人もの勇者を相手にしている1000年の間に、人間の世界では異世界召喚ができるまで発展していたとは。

今回は少し楽しめそうではないか。


「もたもたしてられないぜ。早速使わせて貰う!【転送】!!」


『クッ!なんだこれは!意識が遠のく、、、!』




どこだ、ここは。

た、立ち上がることができぬ。。。

そうだ、我には勇者との戦闘が待っておる。

戦わねば!


いや、我は、負けたのか?

我の気が遠くなる前、勇者は【転送】などと唱えておったな。

ということはどこか遠くへ飛ばされたということか。


「出たな!モンスター!いけ!ピカまる!1万ボルト!」


ほぅ。我に恐れを為さず攻撃を仕掛けるとは。

なかなか骨のあるやつが残っているではないか。

どれ。1万ボルトとやらを受けてやろう。


バチバチバチーーーッッッ!!


ふっ、所詮はこの程度。静電気にも満たぬ衝撃。

我の雷魔法には到底及ばぬ。

どれ、少しばかり反撃してやろう。


『サンダーフラッシュ!!』


ドカーーーーーン!!


「もういい!戻れピカまる!モンスターボール!」


フンッ、このような球ごとき避けるまでもない。


コツン...パカッ


ほぅ。球の中に吸い込まれたではないか。

なかなか居心地はよい。

面白い魔法を使うようだな。


コロコロ..コロコロ...コロコロ...カチッ


「よし!モンスターゲット!ボールから出してあげる!名前はどうしようかな〜。じゃあメタきち!」


メタきち?モンスターゲット?

なにをほざいておるのだこの小童は。


「メタきちかわいいね!なでなで。はじめて自分でモンスターゲットしちゃった!」


メタきちとは我のことか?我がかわいい?

面白いことを言うではないか。

そしてなぜ我がこのような小童に持ち上げられておるのだ。

この小童は我をも凌駕する大きさだとでも言うのか?

笑止。我と対等な大きさの生物は大型のドラゴンや海底に住むシーシャークぐらいなもの。


「メタきちは弱そうだなぁ。ぷにぷにの小さいピンクのモンスター。僕にぴったりだな!これから一緒に強くなろうね!」


この小童。図に乗るのもそこまでだ。

我の魔法で粉々にしてやる。


『ファイヤーブレード!!』


「え!メタきち喋れるの!?ファイヤーブレードってなに?かわいいね!」


な、なに!?どういうことだ!

我の魔法が発動しないではないか!

この小童には魔法が発動されないということか?

どうなっておるのだ。

状況を整理しよう。


我は勇者との戦闘中、勇者の【転送】により意識を失った。

そして眼が覚めると小童と黄色の小さな魔獣が1匹ずつ。

小童の放った球攻撃によって、我は一時的に球に吸い込まれた。

次に出てきた時には我は小童に持ち上げられ、メタきちと呼ばれ、かわいいなどと言われる始末。


どうやら我は異世界へ転送され、かわいい魔獣へと変貌させられ、さらには小童の従魔となってしまったようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ