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お茶会の誘い

「もちろん頑張らせてもらうさ」


「ありがとうお狐様。頼りにしているわね」


嬉しそうに花姫たちが微笑む。


「これ、牡丹のお花。お庭に植えて下さる?」


「ああ。受け取ろう」


牡丹姫が沖常に鉢植えを渡した。

鉢には30センチほどの若木が生えていて、牡丹姫の髪のような鮮やかな赤い蕾がついている。


「さあ。必要な用事は済んだわね?」


ここで、花姫たちがにまっと目を細めて美咲を眺めた。


(えっ!? 可愛い見た目と表情の違和感……。な、なんだろう?)


美咲が少し引きぎみの愛想笑いを返すと、


「お狐様に見初められた人の娘…………なんと、まぁ! 可愛らしいわねぇ」


「本当や。若い別嬪さんとのご縁やなんて、やるやないの。お狐様ってばぁ!」


「えっ」


可憐な女の子が親父のようなヤジを飛ばしてくる。

予想外で、美咲はぱちぱちと瞬きした。

花姫たちは楽しそうに「この、このっ」と沖常を肘でつついている。

沖常は対応に困っているようだ。

はあ、と小さなため息。


「ねぇ、うちらは応援するよ? だから舞台、頑張ってよね」


梅姫がちゃっかり付け足す。


沖常は「しまったな……こう目をつけられたか」と頭をかいた。


花姫たちは色恋沙汰が大好きなのだ。

とくに、咲き始めた花のような甘酸っぱい恋の話が。


現在、美咲も沖常も相手に好意を抱きつつも、そんなつもりはかけらもないのだが。


沖常が「神の世で、美咲の変な噂を流さないようにな」と釘をさす前に、花姫たちは美咲の両腕に絡んで囲みこみにはいる。


「美咲さん。またうちらと一緒にお茶会をしましょうね。絶対に楽しいから!」


「花姫たちをたくさん呼ぶわぁ。ふふふ。是非いらしてね」


「……!? そ、そんな! とても恐れ多いですから……あの……おきつねさぁん、どうしたら……!」


助けを求められたので、沖常が間に入る。


「花姫たちよ。その誘い方は逆に美咲が恐縮するのだ。大人数の神に囲まれるとなると、逆に申し訳なくなってしまうらしい」


「あら……? 『光栄です!』って泣いて喜ぶと思ったのに!?」


「なんとまぁ。現代の娘は難しいんやねぇ」


花姫たちは心底驚いたというような反応をする。

沖常とともに「現代の感性はなかなか奥が深いんだ」と共感しあった。


神々の常識は、現代人の非常識である。

美咲は(難しい!)と、むむむと眉根を寄せた。


「じゃあ、誘う人数は少なめにするわねぇ。またお誘いの花便りを出すから、待っててねー」


「とっておきの花菓子でもてなすから、楽しみにしててちょうだい」


「あ、ありがとうございます……」


お茶会には行かなくてはならないらしい。

拒否権がなさそうだ。


美咲はちらりと沖常に視線を送ったが「ああ、それは良かったな。乙女の花園はとても美しいところだと聞くぞ。楽しんでおいで」と肯定的な返事。

男子禁制の花園の様子について、美咲が報告するのがちょっぴり楽しみなのかもしれない。


(うう。まあ……おきつねさんからの注意がないなら、危ないところではないんだろうなぁ)


それが救いだ、と、美咲はなんとか納得した。

だってもう、ありがとうございますと返事をしてしまったのである。


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