夕立
僕らの平穏は、不治の病だ。だから、治らなくていい。直さなくっていい。そのままで、世界の美しさを見つけて行こう。
センチメンタルとノスタルジー。
結核。
センチメンタルな肺病。
息をするたび、センチメンタルに蝕まれて吐血。
空と海のどっちが青いのかなんて、言葉を交わす。
少年は反抗なのか純粋なのか、なんて言葉を交わす。
ロックは本当に破滅なのか情緒的破滅なのか、なんて言葉を交わす。
結核は不治の病ってノスタルジーが、僕らの退屈な病なんだろうね。
人ってなんだろうね、夕焼けかな。
形而ってなんだろうね、辞書を破いて作った紙飛行機かな。
街ってなんだろうね、たばこの煙かな。
僕らの名前ってなんだろうね、間違って書いた病名のことかな。
終電の終わった駅ってなんだろうね、夏の終わりかな。
未来が未定なのは、世界が滅びる一秒前に似ているね。
だけど、夏の夕日にセンチメンタルとノスタルジーを感じる僕らは、まだ世界にしがみついていていいことに気付くべきだ。
人に絶望しても、世界に絶望したことにはならないよ。
自分に絶望しても、世界に絶望したことにはならないよ。
死にたいのは自分だけ。
だから、数式で表せない叫びで、僕らの虚無を叩きつけよう。
死にたいと叫ぼう。
ここにいるよと叫ぼう。
死にたいと叫べば、夕立がやってくる。
夕立ってなんだろうね、僕らの冒険心かな。
雨上がりの澄んだ大気は、夕日をうけて黄色く輝いているよ。
雨は世界の汚れを洗い流すから、澄明になった世界に包まれて、
僕の心苦しい営みも、少しだけ浄化されるはずだよね。