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続き




 そこには一枚の扉があって…

 扉を開けると、別の物語へと続いていた。



 ☆☆☆



 世の中にはいろんな世代の人がいて、

 遥か昔に高校時代を送った人も(それってわたしの事?)

 これから高校生になる人も(受験生?)

 現在高校生の人も(なんか羨ましい)

 高校生はまだまだよという人も(よちよち歩いています)

 高校に行かなかった人も(いろいろがんばったよね)

 なんて様々な人がいる。



 ここからお話する物語の主人公は、高校一年の16歳の少年だ。





 高校一年。16歳。


 その頃のボクは友達と外へ遊びに行くよりも、本ばかり読んでいた。

 ある本の一冊に「夏休み誰もいない放課後」というタイトルで文章を書きなさいというのがあって、今は夏休みではないけれど、その日何を思ったのか、ボクは放課後一人で教室にいた。

 誰もいない教室はとてもさみしくて、あんまり長くいたくない気持ちにさせられた。


 本当に誰もいない。

 クラスのみんなは帰宅したか部活に出たかのどちらかだろう。中には家に帰らずに寄り道している生徒もいるかもしれない。

 でも、ボクみたいに本に書いてあったことを試そうとしている奴はいないと思う。


 当時のボクはクラスメートに好きな人がいた。ボクは密かに恋をしていた。

 今ならみんな帰宅しただろうから、戻ってくることはない。


 ボクはごくりとつばを飲んで好きな人の机に寄った。撫でてみる。それだけでよかったのに今度は椅子に座ってみたくなった。

 椅子に座るとドキドキした。風が窓をガタガタ鳴らす音にびくっと体が飛び上がったり、急に後ろめたくなってそわそわと椅子から離れたりしたけど、また座ってみたくなる。



 ねえ、君は今頃何をしている?

 もうとっくに友達と帰っただろうな。

 ボクは君が好きだ。友達でもいい。

 君の椅子に座っていると、君が隣にいるみたいですごくうれしかった。

 だから、

 突然扉が開き、忘れ物を取りに教室に飛び込んで来た君を見た時、ボクは何が起こったのか、これは現実なのか、わけが分からなかった。

 混乱した頭のまま、ボクは君の椅子に座っていた。


 ボクを見た君の顔が目に焼き付いている。

 君は衝撃を受けた顔で口をぽかんと開けてから、ハッとすると、


「何してんだよっ。そこからどけ!」


 と怒鳴った。


「ご、ごめん…っ」


 ボクは慌てて椅子から立ち上がった。椅子ががたんと倒れる。ボクは震える手で椅子を元に戻した。

 君はボクを睨みながら近づいて来て、机の中から教科書を一冊取り出した。


「何してんだよ、俺の机になんかあんのかよっ」

「……ごめん」

「気色悪いな、それしか言えねえのか」


 君は震えているボクをじっと見てから叫んだ。


「何か盗んだんだろっ」

「違うっ」


 ボクは慌てて首を振った。何も盗んでいない!


「だったら、なんだよっ」

「君が好きだったから…」

「は?」


 言ってしまった。怖くて顔を上げることが出来ない。


「お前…なに言ってんだ…」


 君の靴が後ずさりしている。顔を上げると、君は慌てて目を逸らした。


「変態野郎…。俺の机に二度と触るなっ」


 肩を小突かれ、彼が去って行く。

 ボクはうなだれた。


 ああ、なんてことをしてしまったのか。次の日、どんな顔をして君に会えばいいのだろう。

 学校へ行くのが急に怖くなった。

 けれど、その日を境に教室からボクの存在は消えた。

 ボクはいなくなってしまっていた。




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