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あべこべ  作者: 福市栄梨
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あべこべ


いつも傍にいるのに何故か空しい

そう感じるようになったのはいったい何時からだろう


俺と葵は、いわゆる腐れ縁というやつで気づけばいつも隣には葵がいた


俺はそれを不思議と思うわけでもなく当たり前のこととして享受していた


俺と葵は見た目も性格も全く異なっていて端からみると確実に俺が葵を脅しているように見えるらしい


確かに俺は金髪だし目付きが悪いので不良のように見えるのかもしれないが実際は喧嘩とか争いごとは嫌いだしピアスだって怖くて開けられない。

金髪なのは家が床屋だから実験台として扱われてそれ以来定着してしまっただけだし目付きは視力が悪いせいだ。


一方、葵は綺麗な黒髪に眼鏡をかけていて一見真面目に見えるがその本性は俺以上に不良だ。

真面目に見えるように目が悪くもないのに猫かぶるための道具としてだて眼鏡をして黒髪のした隠れた耳にはピアスが開けられている


酒、煙草なんて当たり前で夜は少しはなれた夜の街で遊んでいる。

恐らく俺以上に喧嘩とかも強いんじゃないだろうか。


そんな本性を持っていながら学校ではそれが一切見えないところから葵の徹底ぶりが伺える。


小さい頃はこんなやつじゃなかった。

何処かに遊びに行く度に俺のあとを付いて回ってきて同い年でありながらも俺は弟が出来たような気分だったのを覚えている。

すごく素直で純粋な葵が可愛くてしょうがなかった。


それが一体、いつあいつは拗らせてしまったのか


心当たりがない…わけではない。

だが、その理由が俺は未だにわからずにいる。


多分、葵が今のように遊び歩くようになったのは中3になってからだったと思う。


初めて俺に彼女ができて嬉しくて葵に報告したらすごく変な顔をされて小さくおめでとうと言われた。

彼女ばっかじゃなくて俺とも遊べよ?って言われて当たり前じゃん!なんて言葉を交わしたんだ。

友達に彼女とどこまでいったんだよ?とか、からかわれた帰り道同じことを葵にも聞かれた。

俺はいつも一緒にいた葵にそういうのを話すのが恥ずかしくてつい、どうだっていいだろなんて言葉が口からでたんだ


その日から葵は少しづつ変わっていった。

今までは石鹸の匂いしかしなかったのに煙草の臭いが時たま混ざるようになっていって時々顔にあざをつくってくることもあった。

聞いてもなんでもないと言うばかりでなにも教えてはくれなかった。


そしてある日、彼女との帰り道で俺は見てしまったのだ。葵が女の人と一緒にホテル街へ消えていくのを


ショックだった。

自分が知っている葵とは思えないようなことばかりが増えていくことが

けど、何を聞いても葵はなにも教えてくれない

そのうち俺もなにも言わなくなった


そうして俺たちはだんだん距離をとるようになっていった

だから、高校に入ったとき葵が同じ制服に身を包んでいる姿を見たとき俺は驚いた。

あの日以来、全く話すこともなかったから進路の話もしているわけがなくこんな偶然があるのかと思った


そしてはたまた偶然なのか必然なのか同じクラスになりそれからは空白の時間などなかったかのように葵と元通りになった。


ただひとつ、あいつが夜出歩くことを除いては


「おーい!葵、起きろって!遅刻するぞ」


「うーん…あと5分…」


「待たない!起きろ!」


毎朝、葵を起こして学校に行くのが日課になりつつありながら葵の首もとに目をやる

夜あそびをした翌日に必ずついてるその印が昨夜になにがあったかを生々しく示している

一人で気まずくなって目をそらした。


「もう、置いていくからな?」


「今いく~…」


のそのそと起き上がりノロノロと支度を始める葵を見ながら小さくため息をついた


いつも一緒にいるのにどこか知らない葵がいることを知るたびにその事実が俺の胸に鈍く突き刺さる


二人で歩きながら葵は学校用に身支度を整える。

ピアスは見えないように髪で耳を覆い顔を隠すように眼鏡をかけると夜出掛けるときのきらびやかな葵は消え真面目な葵が出来上がる。


ただ、どちらの葵も俺には本当の葵じゃないように思えてしまいあまり好きじゃない


「最近は喧嘩してねぇの?」


「うん。この見た目だとあんまり絡まれないし。それに彼氏いる子とはそういうことしてないし」


葵はなんてことないようにそう言いはなった

心にモヤモヤが広がる

だから思わず口からでてしまった


「そういうのいい加減やめろよ…」


「なんで?気持ちいいじゃん。それともなに、羨ましいの?」


そう言いながら挑発的な笑みを向けてくる

言っちゃだめだと思っても考えるよりも先に言葉がでていた。


「そうだよ、羨ましいよ!!葵はどんどん俺の知らないところでいろんなことしてて…なんでその隣に俺はいないんだよ!」


俺の口からそんな言葉がでるとは思ってなかったようで葵は目を見開き驚いている


「え…俺と薫と女の子3人でそういうことしたいの…?」


「そういう意味じゃなくて!!!!」


どんだけこいつの頭は沸いてるんだよ…


「今までずっと何をするにも隣には葵がいて俺はこれからもずっとそうだと思ってた…。けど実際はそんなことなくて…!俺はお前とそういうことしたりお酒を飲んだり煙草を吸いたいわけじゃない。ただ、俺の知らない葵を誰かが知ってると思うと無性に悲しくなるんだ…」


言い切ったとたん羞恥が込み上げてきて思わずしゃがみこむ


「なに言ってるんだろう俺…。恥ずかしい」


すると前に同じく座り込む気配がした。


「俺だって…同じだよ」


その言葉に顔をあげると葵がばつが悪そうに頭を掻きながら目をそらしつつ言葉をこぼした。


「薫に彼女ができて俺だけおいてけぼりを食らった気分だったんだよ。しかもどうだっていいだろなんて言われてムカッとしちゃって…そこからお前がやらなそうなことどんどん手をつけてったら収束つかなくなって。薫とも距離が空いちゃって…ならもういいやって振り切っちゃったんだ」


そう話す葵の顔は俺の知ってる葵そのもので

俺は嬉しさのあまり葵に抱きついた


「うわっ、突然なに!?」


「なんか嬉しかったからっ」


えー?なんて言いながらも葵も満更ではないようで暫く二人でそのままでいた


「なぁ、収束つかないまま夜遊びとか酒とか煙草続けてたならもう止めろよ?」


「うん。てか、煙草はたまにしか吸ってないし…。酒も周りに飲めって言われたときだけだから」


「ふーん。じゃあ、そのピアスも?」


「これはね……………」


きっと授業には間に合わない

だから葵との空白の時間を埋めるかのように今までの話をしよう


それから君と二人でこれからのことでも話そうか

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