審査員体験記
事の始まりは1月14日でした。
ユーザー企画のコンテストをやるので、最終審査員になってほしいと言うメッセージが入ったのです。
私にとって、審査員、それも最終審査員に呼ばれるのは、アイドルとデートする権利をあげるというのと同じで、信じられない事です。
いたずらか、悪徳商法の可能性もある。
仕事も忙しいし、でも、魅力的な提案だしと、いろいろ悩みました。
いくら考えてもらちが明かないので、困った時の神頼み、『めい様』(小説家になろう勝手にランキングなどの管理者)に相談しました。
返信は、運営さんが許可しているならいいのではないかという物だったので、お受けする事にしたわけです。
ところが、最終審査員はとんでもない人たちの集まりでした。
ベギンレイム様、なろうで最も有名な読み専門の人
鴉野兄貴様、なろうで膨大なレビューや感想を書き、兄貴と慕われている人。
敷居様、同人サークル・敷居亭
Tomaru様、悪役令嬢に転生したようですが、知った事ではありません
柗本保羽様、銀河連合日本
アマラ様、神様は異世界にお引越ししました。地方騎士ハンスの受難
藤孝剛志様、大魔王が倒せない。姉ちゃんは中二病
高山理図Lizreel様、ヘブンズ・コンストラクター。異世界薬局
セレブのパーティーにオタクが迷い込んだようなもので、隅っこの方で「高そうなワインだなー」とか言っていそうです。
しかし、何か話さなきゃいけないわけで、思いつきました。
「SFってなんですか?」
そっからかい!
お恥ずかしい限りです、はい。
しかし、セレブはやはりセレブでした。
サイエンスファンタジーだけがSFではない。
アトムを筆頭に、アニメや漫画もSFには違いないし、猿の惑星だって未来の地球ならSFだ。
そもそも、今回のコンテストでは、なにをもってSFと定義づけるのか?
はい、もうついていけません。
結果、コンテストの条件が、SFジャンルから、SFの要素が入った作品に変わりましたとさ。チャンチャン。
これらはスカイプで話されました。
最終審査員室と、VIPルームの2つがあり、雑談は後の方ですが、皆さん本物なんですよね。
当たり前ですが、本物が話している。
これって、すんごい事だと感動していましたよ。
その中で、もっとも驚いたのは主催者のキョウカ様です。
現役の高校生というだけでもすごいのに、アメリカ留学中なんですよ。
そりゃ、ネットがあればどこでも出来ますけどね、そう言う問題じゃないですよ。
運営に許可を取り、これだけのメンバーを集める。その力と行動力には脱帽です。
言わせてください、貴方はスーパー高校生ですと。
おっと、大学入学おめでとうございます。
てか、受験生だったんかい!
VIPルームは、ベギンレイム先生、鴉野兄貴先生、敷居先生、アマラ先生が中心で、この4人がなろうを語り出したら止まりません。
小説の内容はもとより、なろうであったさまざまな問題の考え方から対応。なろうシステムの現状と、今後の課題などがポンポン出てきます。
話をしながら新作のアイデアが飛び出してくるし、自作に対するこだわりとうんちくに耳を傾けていると、「出版原稿書き上げたー」と、藤孝先生が乱入。
クリエイティブtomaru先生が「この前寝たのはいつだっけ」とつぶやけば、高山先生が研究室の窓から「おなじね」と笑う。
柗本先生が、平社員など一生縁のない重役室の奥から理論爆弾を投入すれば、そこはまさに戦場と化す。
毎日、数百の会話をチェックするのが怖い、いや、楽しみでした。(汗)
【最終審査員とおすすめ小説のURLは、2015.7.20の活動報告にあげてありますので、ご利用ください。】
気を取り直して、作品について触れますね。
まずは『ロングアイランドアイスティーの味を覚えているか? リメイク』
これが金賞でした。おめでとうございます。
私も1番かなーとは思いましたが、セレブの皆様は、
「何でこれが書籍化されていないんだー!」
「他の作品とは、一線を画していますね」
とまあ、こんな感じなんです。
いや、おもしろいけどさ、うまいけどさ、そんなにすごいの?
違いが、その差が分からんのです。
セレブとオタクの感性の違い、いよいよ現れたって感じです。
面白いのは間違いないので、皆様も一度読んでみてください。
私は、真面目に問いたい。
その差が分かりますか? と。
次に言いたいのは、終焉機ヴィクティム
作品中、なろうでは断トツの人気作品が3賞から外れました。
なんで? どうして?
セレブの皆さんが3賞に選ばなかった。その理由が分からない。
3賞には先を読みたいと思わせる何かがあるとか、読後に何かが残るとか。
訳が分からん話は聞いたが、なら、これには無いとでもいうのか?
そんな馬鹿な。ありえん、おかしい、おかしいだろー!!
1話目を読んだだけで凄いと思った。
文書力が半端ない。
地の文だけで、こんなに引き込む小説が他にあるだろうか?
読み手の少し先を行く絶妙な展開、個性豊かなサブキャラの絡みもたまらん。
そんくらい凄いに……。
オタクには、いまだに理解不能です。
これは上げておきたい、ヒュレーの海
私は、これを3賞候補の1つにしたんですよね。
面白いと言うか、読んでいて楽しい。主人公が生き生きしているんですよ。
ただね、冒頭でルビ付きの専門用語がやたらと出てくる。
ロングアイランドの場合、壮大で複雑な世界観を、物語を進めながら説明しているので、これと並べられると辛いものがあるんですよね。
設定は設定として、そういう物だと考えて物語を読むのがお勧めです。
「正直迷ったんだよね」
セレブの声、いただきました。二人もですよ。バンザーイ、バンザーイ。
今回のコンテストで象徴的だと思った作品は、少女牧場でした。
この作品は、お話も始まったばかりなのに最終選考を通過しています。
人肉を食べるグロなので要注意ですが、面白いんですな、これが。
セレブの間でも大激論が交わされました。
残酷描写ありで済ませていいのかという物から、景品は無くてもいいから、特別賞を出してはどうかという声までさまざまでした。
同作家さんに、もう1つ2次予選を通過した作品がありました。
作品的にはこちらの方が上だと思うのですが、選ばれたのは逆でした。
期待させる何かとは、こういう事なのかもしれません。
今回の作品の中で1つを上げるとしたら、『私にとって、このツノは』という短編です。
ヘイトスピーチを題材にした作品で、これを読んだら他の作品が霞んでしまいました。
選考に残らなかったのは、ただ単にキカプロコンとの相性の問題でしょう。
最優秀賞はこれで決まりです。
まあ、私が言っても微妙ではありますが、せめてもの副賞として、レビューを送らせていただきます。
小説は料理に似ているかもしれません。
素材を、料理方法にそって調理する。
小説家になろうでは、書き手は好きな料理を発表し、読み手が食べる。
美味しければ評価、また食べたければお気に入りが入る。
読み手は食べ歩きが楽しめるし、グルメリポーターにだってなれる。
書き手には作る楽しみがあり、食べてもらって、美味しいと言われる喜びもあります。
そして、選ばれたアイデア料理やまかない料理がメニュー(書籍化)となるのです。
今回のコンテストは、『全国SFグルメコンテスト』だったのかもしれません。
そう考えれば、問題は調味料でしょう。
焼鳥1つ取ってみても、塩かタレかで味が変わってきます。
みそ汁、卵焼き、雑煮、カレーなどのテンプレ料理だって同じでしょう。
どんな味を出すのか、それが決め手である気がします。
そして、なにかとは『うまみ』成分なのかもしれません。
書く楽しみがまた一つ、増えた気がします。
最後に、お付き合いを頂いたセレブの皆様と、気の迷いで審査員に選んでくださったキョウカ様に感謝を申し上げます。
今はまだ文章に表現できませんが、近い将来、この経験を小説に生かしたいと思っております。
本当にありがとうございました。