第八話 不滅の恋心 ~ウルハーツ~
キスと言えば目を閉じるイメージがある私は当然触れると思ったとき、目を閉じた。そして口に感じる柔らかい感触は私を徐々に幸せへと導いて行く。こんな形で恋が成就するなんて思いもしなかった! あぁ、神様ありがとう! 私は絶対に紅葉ちゃんを幸せにしてみせるよ! そして拓海くん共々毎日愛でまくて幸せな人生を送るよ!
いつまでも続く唇に感じるその感触。キスなんてしたこと無い私のファーストキスであり、初めて体験。でもあまりにも長く、動かないこの状況に私はゆっくりと薄目を開ける。きっと今、紅葉ちゃんは私の目の前で素晴らしい表情を浮かべてくれているに違いない! そう思って居た……が、
「2人で先に進んで、剰えラブラブな関係になってのキス。先生、ショックよ。ショックすぎてお仕置きしたいわ、主に志穂ちゃんに」
私の目の前には誰かの手の平が。そしてその手の平を辿っていけば青筋を作っているまゆまゆの姿……あれ? まゆまゆの手が私と紅葉ちゃんの間にあって、口の目の前にあるから私たちの口は当然あたらなくて、つまり私は紅葉ちゃんとキス出来たんじゃなくて……
「あぁ、そんなの無いよ」
あまりのショックに何も考えられなくなってしまう。紅葉ちゃんはまゆまゆに顔を真っ赤にしながら抗議して、まゆまゆはまるでやり遂げた様な表情を浮かべているのが何となくわかる。念願のキスが……紅葉ちゃんとの幸せな時間が……。
「あらら、燃え尽きて真っ白になってますねぇ。にしてもまゆ先輩、何かを感じて瞬間移動とも取れる行動をするなんて……ますます素敵です♪ その相手が私でないのが残念ですが……まぁ、それも時間の問題ですね♪」
想坂先生が隣で体をくねくねさせているけど、今の私は何も考えられない。人生の運が全てなくなった気分だ。私の中に居た天使と悪魔も地に伏しながら言っている。好感度を上げようとも、青姦をしようとも、まゆまゆと言う存在がこの世に居る限りそれは難しい事なんだと。神様は何てこの世に居ないんだ。
「せっかく目標以上の事が出来たのに、どうして邪魔するんですか!」
「どうでもいい子とキスをするなんて不健全だもの。邪魔するに決まってるじゃない」
「なっ! 志穂さんは私の……その……」
両手の人差し指をツンツンさせて言いよどむ紅葉ちゃん。そしてその口からは私の苗字じゃ無くて……名前。……そうだよ、駄目だよ私! まゆまゆが何? 神様が居ないからって何? 私の愛はそんな壁を払いのけ、絶対に紅葉ちゃんの元にたどり着いて見せる! 私は例え何があろうと屈したりなんかしない! 私のこの恋は、愛は、全ては紅葉ちゃんのためにあるのだから!
それに私にはその信条以外にも分かって居る事がある。確かに私は紅葉ちゃんとキスが出来なかった。だけど紅葉ちゃんは私に言ってくれたじゃないか! 『私、一三さんが好きです』って! 『先生なんかに捕られたくない』って! その言葉に私も同じように告白し返した。今は他に人が居るせいで言いにくいかも知れないけれど、私には分かる。そう、私たちはお互いに相思相愛! 行けるっ! 私の恋はまだまだこれからだ!
「燃えて居て何か良からぬことを考えているみたいだけど、お仕置きの時に修正するとして……それよりも本格的に不味いわよ。このままでは授業にも間に合わないわ。学校に着くと同時に私たちの物語が終わるわよ」
「……そう言えば私達、学校に行く途中だったわね」
「もう終盤だと言うのに未だに午前の授業前ですからねぇ。もう走っても1限は間に合いませんねぇ」
「? 何の話?」
私の質問に『大人の話よ』と返してくるまゆまゆ。大人の話なら仕方がない! それよりも学校に行かなくては! まゆまゆと想坂先生なら流石にどうやって通れば良いのかも分かるはず! 早く行って、学校で紅葉ちゃんとイチャイチャラブラブ……ぐへへ!
「それでまゆ先輩、どっちに行けば良いんですかぁ?」
「さぁ? 私が知る訳無いじゃない。合流できたのは愛の力故だもの」
「「はい?」」
え? あれ? 私達全員揃って未だに迷子? どうするのこれ!?
第八話担当のウルハーツと申します。
もしも百合百合で濃厚なのを期待した方々は……申し訳ありません! まぁ、とりあえず橘さんの思惑通りに志穂ちゃんと紅葉ちゃんの中がぐっと深まったと言う事でここは1つ、納得していただければな~と。後、終わりも近いと言う事で改めて目的の確認も。
天の邪鬼さん! そして最後の話を務める上村 夏樹さん! 後はお願い致します!
『次回、天の邪鬼さん。』宜しくお願いします。