第七話 重なる想い ~ 楠 奏絵~
私の平べったい胸で泣き続ける紅葉ちゃんの頭を優しく撫でながら、私の脳内では天使と悪魔が言い争いを繰り広げていた。
天使曰く、紅葉ちゃんが泣き止むまで頭なでなでを続けて、ゆっくりと好感度を上げていきましょう。
悪魔曰く、メンタルブレイクしている美少女と草原で二人きり。……青姦しようぜ!
さらに天使曰く、青姦だなんてはしたない! お互いに好感度を高めて愛し合う伽がベストなのです!
さらに悪魔曰く、愛ならあるだろ? 足りないのは既成事実というやつさ。
二人揃って曰く、よろしい、ならば戦争だ!
弓を射る天使とフォーク型の槍を振るう悪魔。二人による戦争が繰り広げられ始めたその時、
「ぐす……すん。ごめんなさい志穂さん。私のせいで……」
鼻をすすりながら謝ってくる紅葉ちゃん。私は気にしてないよと何度も言い諭し、やっと笑顔を見せてくれた紅葉ちゃん。その次の瞬間だった。私の視界がぐいっと反転した。
「あれ……安心したら倒れてしまったわ」
ふらりと後ろに倒れた紅葉ちゃん。その紅葉ちゃんと手を繋ぎっぱなしだったせいで、私は紅葉ちゃんを押し倒すように倒れこんだ。……今更だけど私、紅葉ちゃんの手を握っていたの!? あぁ……指絡めて置けばよかったぁ。そんな私の手は今、柔らかな感触に包まれている。……柔らか?
「ひゃん!」
涙で目を赤くした紅葉ちゃんの顔から視線を外し、自身の手を見ると……。
「ご、ごめん!」
彼女の小柄な身の丈からは想像できないような至福の感触。変態志穂さんとして触ってきたどの胸よりも手に馴染む。口では謝っておきながら、どうしても手をどかしたくないという衝動が起こる。……きっと天使は戦争に敗れたんだ。でも……ここは耐えなきゃ。紅葉ちゃんに嫌われたらおしまいなんだから!
「一三さん……そのぉ。もっとぉ……めちゃくちゃにしてくださりませんの?」
そう決意した次の瞬間、私の決意と理性が崩壊する音を聞いた。驚きのあまり見開いた目が写したのは、頬を朱に染め目じりに涙を溜めた紅葉ちゃんの顔。
「私、一三さんが好きです。先生なんかに捕られたくない。一三さんは……私とじゃイヤ?」
「っ!? わ、私だって、紅葉ちゃんのこと大好きだよ!! だから、だからこそ! もっと大切にしたいんだよ!?」
言っちゃった……。こんな間近で告白なんて考えてもいなかったや。
「一三さん……。そんなのヘタレのセリフですわ。……私は、もう我慢できないの」
紅葉ちゃんの腕が伸び、私の首に絡められる。すっと近づく紅葉ちゃんの唇。薄桃色の瑞々しい唇に目が離せない……。
二つの影が重なる、その瞬間……。
頭の中が桜色でごめんなさい! だって、もう終盤ですよね?
関係性をぐっと近づけないとと思っていたのですが……その結果がこれです。
あと紅葉ちゃんの口調が不安定かもしれないです。ではでは。
『次回、ウルハーツさん。』宜しくお願いします。