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03 ガッコウ

キャラの名前にラ行を付けてしまいます。

ネーミングセンスが無いんでしょうね。

そして、絶対主人公の名前、ラルをエルと打ってしまいます。もしエル君がいたらラルだと思ってください。

 僕、ラル・トランスの一日は日課のランニングから始まる。

 まだ日も空け切れていない頃、寝巻きから動きやすい服に着替え家を出る。

 この時間帯はまだ起きている人は少なく、この街を独り占めしている気分に浸る事ができる。


 この街はいわゆる城下町というやつで、この街の何処からでもあの大きい王城は見れるのだ。


(あそこに彩菜やリナさんがいるのかな……)

 

 昨日仲良くなった二人の事を思い出した。

 何日もランニングをしていて確定されたルートを魔力で強化した脚で走りながら城のほうを眺めるラル。今ではもう息切れをすることは無くなったため、そんな余裕があるというものだ。


「おう、ラル坊。今日も早ぇな」


 僕の走るルートは城を囲むようにできているこの街の外周をぐるっと一周するもので、毎日やっていると自然と顔見知りもできる。

 今声をかけてきたのは飲食店【みかづき】の店主であるグラナさんだ。

 グラナさんは四角いボックスを持っている。多分今日の食材などが入っているのだろう。それを地面に置くと「ちょっと待ってろ」と言って店に戻っていく。此方側は店の裏側なので家に戻っていくと言った方が正しいか。

 そんな事を考えていると、二階の窓がカラカラと音を立て開かれた。


「やあラルる~ん、おはっち」


 まだ朝早いのにきちんと身支度された格好をした女の子が顔を出した。

 今手を振っている彼女はアーリ・クランツ。グラナさんの娘さんだ。

 太陽みたいに明るい女の子で僕のクラスメイトでもある。実際、太陽神アーリから付けられた名前らしい。


「ははっ、おはっちアーリ。今日も早いね」


 変な挨拶を返すと、アーリは小声で「ラルるんが来たときだけだけどね」と言ったのだがラルには聞こえなかった。頬を少し赤くして咳払いをするアーリ。

 

「ふふん、早寝早起きは元気の基本ですからっ」

「それには同感だな」


 そんなやり取りをしていて暫くするとグラナさんが戻ってきた。

 その手にはボトルの様な物を持っていて、それはこの国でよく飲まれる飲料水だった。


「ほら、やるよ」

「おっと、ありがとうございますグラナさん」


 投げ渡されたボトルを如何にかキャッチする。

 そして、キャップを開け、一気に飲み干す。


「ップハ……ごちです。それじゃまた」

「おう、じゃあな」

「また、ガッコウでね~」


 これが僕の一日の始まりだった。


* * *


 身支度を終え、学校に向かう。

 家を出て直ぐエドと合流しゆっくりとした歩調で歩いていく。

 僕達が通っているのはヤイシャ魔導学校。魔導長であるヤイシャさんが創立した学校で、小中大と年齢で分かれていて、僕達は大学生である。

 基本的な授業はあるが、魔法関係に関してはあまり向こう側は関与してこない。自分から学びに来るような意欲のある生徒を育てたいらしい。魔法より、他人とのコミュニケーションを大事にする校風だ。


「なあなあラル知ってるか?」

「ん? 何に?」


 エドが悪戯小僧みたいな顔をして僕に聞いてきた。

 一体何のことだろうと聞き返すと。


 「転校生が来るんだってさ、しかも二人も!」 


 とエドは答えた。

 転校生が来るだけならそんなに驚かないことだったが、二人も来るとなると驚いてしまう。


(ああ、でも兄弟とかかな……?)


 と、頭の中で可能性のある答えを見つけて納得し、またエドと他愛ない話を始めた。


 

 エドとは学年が一つ違う為、途中で別れ教室に向かう。

 この学校の造りは普通の学校とは違い、校庭がない。校内のとある場所に転移場があり、開けた場所に移動するのだ。なので、廊下の窓から見える景色は住宅ばかりだ。

 自分の教室を見つけ中に入る。

 

「ラルる~ん、さっきぶりっ」

「またあったね。元気だった?」

「あたぼーよっ……あははっ」 


 入り口の近くの席のアーリが笑顔で迎えてくれた。

 その声に気づいたようで他のクラスメイトも挨拶をしてくれる。

 

「そう言えばさ転校生が来るんだって!」

 

 さっきも同じ話を聞いたなと思ったラルだったが、楽しそうに話しているアーリを見て知らない振りをすることに決め「そうなんだ、初めて知ったよ」と返した。「知ってる」と返して話が盛り上がる訳が無いことを知ってるラルであった。 

 次に転校生は二人居ることを言うのだろうと高を括っていたラルだったが。


「ウチのクラスに二人もっ!」

「……えっ?」


 開いた口がふさがらなくなっていた。


 担任の教師が来る頃には生徒は皆席に着いていているもので、まだ担任の教師は来ていないが席に着いて近くの生徒と話しているのが聞こえる。

 大体は転校生についての妄想を膨らましていた。

 美人かイケメンか。成績優秀か運動神経がいいか……考えていることはどこでも一緒である。

 僕の席は廊下側の列の最後尾の隣。つまりアーリの隣だ。

 こちらでも転校生について色々想像しているのだが、僕には大方予想がついた。

 


 


 昨日、勇者の少女と“妖精の果実”を食べた後少し話をしたのだ。

 

 彼女は召喚されてから殆ど城に用意された部屋で過ごしているらしいかった。

 外のことに興味があったのか、街の様子や学校について聞いてきたのだった。リナさんは成人してから殆ど訓練に励んでいた為あまり話しはきけなかったらしい。


「学校ってさ、何やってんの? 数学とか?」

「ん~、そうだね。数学もやってるし文学もやってる。でもやっぱり魔導学校だから魔法系が多いかな」

「魔導ってなによ?」

「魔法使いへの道を先生が導く。って意味だよ」


最初に会った時より物腰が柔らかくなった彩菜は普通の女の子だった。

色々な質問に答えていると、どうやら魔法に興味があったようで首をかしげながら


「そっか~。ねえ私も魔法使えるかな?」


 と聞いてきた。

 下手な返答は彼女を怒こらせるかもしれないとよく考えて答える。


「使えると思うけど、魔法がない世界から来たなら最初は難しいかもしれないね。努力しだいだ」

「む~やっぱむずいか~。でも面白そうだな……」


 考え込むように顔をうつむかせる彩菜。

 リナさんは隣で嬉しそうにしている。

 城での彼女は本当につまらなそうな表情をしていて、こんなに表情を出したのは今日が初めてだとか。


「……ねぇ」


 うつむいていた彩菜が恐る恐るといったように声を出した。

 

「うん? なにかな?」

「あのさ、もしさ私が学校に入ったら友達になってくれる?」


 何故そんな事を聞いたのか聞いてみたら、僕の“妖精の果実”を決闘で奪おうとしたからと言った。

 この国において決闘受けたほうが悪い決まりだ。しかし、魔法での戦闘をしたかったから受けた。つまり、負けても僕が悪いのだ。


「僕はそんな気遣いできる君と友達になりたいな……まあ、一緒にお菓子を食べた時点で僕は友達だと思っていたけどねっ」


 彼女は少し表情を明るくさせて、照れたような表情をしていた――――





 という事が有ったのだ。


 早すぎると思うが二人組みの転校生なんて彩菜達ぐらいだろう。

 アーリがわくわく顔で「かわいい女の子がいいなぁ」と新しい友人への期待をしている中、僕はそう推測していた。


 何時もと同じ時間に先生が入ってくる。

 すると、いつもは賑やかな教室が静まり返り先生の一言を待っている。


「え~知っている人はいるかもしれませんが、今日からこのクラスに転校生が来ることになりました」


 一瞬で何時も以上に賑やかになる教室。

 先生は予想通りだったのかため息を一つついて、教室のドアの向こう側に居るであろう転校生二人に入ってくるよう促した。


 教室に入ってきたのは、一人は綺麗な薄水色の髪を背中まで伸ばした少女。もう一人は紺色の髪を後ろで一つに纏めている少女というより女性といった表現が正しい――――ていうかリナさん。

 多分水色の髪の少女は、“カラーズ”の魔法を使って黒い髪の毛を水色に染めた彩菜だろう。

 

 再び静まった教室で、二人が自己紹介を始める。

 

「私は、アヤナ・タカハシです。よろしく」


 緊張しているのかとても簡素な挨拶のアヤナ。

 性はタカハシというのか。


「私は、リナ・タカハシです。よろしくお願いします」


 何故かアヤナと同じ性を名乗っているリナ。

 

「え~二人は御姉妹だそうです。仲良くしてあげてください」


 元気に返事をする生徒を気にすることなく先生は空いている席へと案内する。

 僕の隣に用意された二つの机。つまりそういうことなのだろう。生徒数の都合で真ん中の列の最後尾は空けられていたのだ。

 アヤナは僕の前に来たとき、他の誰にも気づかれないほど小さな声で。


「えへへ、きちゃった」


 と照れを隠すように笑うのだった。


 



 


 


 



 





 

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