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33.予想外の展開

 透真と最後の面会を終え、結依達は電車に乗り自分達の家へと帰宅した。今年の夏休みは波乱の連続だった。海での出来事、結依と透真の帰省と事件など様々な出来事が起きていたのを振り返る。

 

 そしてその後は何事もなく過ごしていき、登校日当日の放課後に結依は黒崎の元に透真の今後の学校生活についての相談で訪れていた。


「失礼します。黒崎先生に用があってきました」


「天宮か、どうした?」


「この後、時間の方大丈夫ですか?」


「大丈夫だが、何かあったのか?」


「ここでは詳しくはお伝え出来ませんが、一応あったとだけ」


 職員室のドア付近で透真の事を話すものなら他の教師の耳にもその話が入ってしまい問題になりかねなかったので結依は場所を変えて別の空き教室などで話したいと黒崎にお願いしてきた。

 黒崎も結依の言葉を聞き何か他の人に聞かれたく無い悩み事や相談があるのだろうと察知したので別の教室で話すと結依に伝えた。


「分かった。2階にある生徒相談室待っててくれ。俺もすぐそっちに向かう」


「分かりました。ありがとうございます」


 黒崎に言われた通りに2階の生徒相談室にて待つこと10分程が経つと黒崎が入ってきた。


「すまん、待たせたな」


「いえ、大丈夫です」


「それで、内容はどんなのだ?」


「内容は、萩野透真君についてです」


「透真?」


 黒崎は学業面や生活面など自分の事について相談があって来ていたと思っていたが実際に相談されたのは透真の事だったが、黒崎はどうして結依が透真の事について相談があるのか疑問に思っていた。


「何故お前が透真の事を?」


「実は私と透真は幼馴染で、夏休みにある出来事があったんです」


 結依は自分が透真と幼馴染である事と夏休みに起きた事件の経緯を全て黒崎に話した。結依は思い出すだけでも身がすくうような感覚に陥ってしまうがこの時だけは透真を助ける為だと心の中で強く思いながら黒崎に話していた。

 全てを聞いた黒崎は絶句していた。自分が知らなかった期間でそんなにも壮絶な事があったと考えると黒崎も加害者の事を許せないと感じていた。


「そこで、折り入ってお願いがあるんです」


「何だ?」


「今の透真は精神状態は回復してきてはいるものの、まだ完全には回復できていません。ですので回復するまでの期間、透真に個別授業をお願いしたいのです」


「個別授業か」


「それと、登校時間も透真だけ変更出来ないでしょうか」


 結依は深々とお願いをしていた。それを見た黒崎は結依が余程幼馴染である透真に対して強い気持ちを抱いているのが良く伝わっていた。

 しかし結依には申し訳ないが透真一人に全ての時間を費やせる訳では無い。他の1年生や2、3年生の授業などもあるため調整にはどうしても時間が掛かってしまうからだ。

 だとしても透真は助けれる範囲は助けたいと黒崎は思っていた。


「分かった。少し時間は掛かると思うが他の先生とも相談してみよう」


「本当ですか? ありがとうごさいます」


「時間等が決まったらまた連絡するからそれまでは少し待ってて欲しい」


「分かりました。それと、この件は先生以外にはできるだけ公言しないようにして欲しいです」


「そこは他の先生にも伝えておこう」


 悩んだ末黒崎は透真の個人授業について他の教師と話をしておくと言っていたが、直ぐには実行に移すことはできない。

 結依もその点については考慮していたが正直これは無理を通してでも透真の為に実行してほしかった。

 黒崎から検討すると言われた後は他の生徒に口外しないで欲しいとだけ伝えた。理由は勿論透真に負担を掛けさせないためであり、もし他の生徒に聞かれてしまったら透真を心配する声が出てしまうからだ。

 透真自身としても多くの人から心配されるのは良く思っていないと結依は考えていた。


 黒崎との話し合いから2日後、結依は廊下を歩いていると後ろにいる誰かから声を掛けられ振り向くとそこには月島と水篠がいた。

 どうやら透真が最近学校に来ていないのが気になって結依に聞きに来たらしい。


「天宮さん、透真最近来てないけど何かあったのか?」


「透真? 透真は最近夏風邪を引いたらしくて、家で休んでるの」


「夏風邪?」


 結依は月島達の質問に夏風邪と嘘を付いた。この2人は昔透真が精神が危うい状況を救ってくれた恩人とも言える親友だ。その2人に事件の事を言ってしまえば、透真が帰ってきても必ず透真の心配をするだろうと結依は思っていた為嘘をついた。

 しかし水篠は少し疑いの表情をしていたが、月島は違っており、これは絶対に誤魔化していると察知していた。


「天宮さん、嘘ついてるでしょ」


「え? 嘘は付いてないけど······」


「顔に出てるよ、嘘って」


「嘘!? そんなに出てたの?」


「やっぱり」


 どうやら水篠の目には結依は嘘を付いているような表情をしていたらしくその事を知った結依は慌てるかのように顔を少しだけ赤らめた。

 月島達に嘘を言ってしまったのは勿論申し訳ないのだが、自分が思っている以上に顔に出てしまうタイプだと自覚し恥ずかしかった。

 すると月島が本当の事を話して欲しいとお願いしてきた。


「天宮さん、俺達の中では隠し事は無しってしてるんだ。だからどんな話を聞いても俺達はしっかりと受け止めるから」


「うん。僕も宏斗と同じだよ。天宮さんが言ったことは絶対に信じるよ」


「······2人ともごめんなさい。嘘ついて。透真は、夏休みにとある事件に巻き込まれたの」


 2人は結依の事は透真の幼馴染と言うこともあって信頼してるし信用もしているので結依がこれから言う真実がどんなものであっても信じると直接言ってくれた御蔭で、結依もこの2人にだけは夏休みの事件は話そうと決めた。

 それからは少し教室から離れた場所で夏休みに透真に起きた事をありのままに全て話した。最初は困惑していた2人だったが、最後まで聞き終わるとその困惑は消えていた。


「今の透真ってその、大丈夫なのか······?」


「精神面は完全とまではいかないね。日常生活を過ごしていく中で少しずつ治していくしかないから」


「そうなんだ······」


「あと、2人に一つだけお願いがあるんだけど、聞きてもらっても良いかな」


「何でも言ってくれ」


「透真を、心配しないで欲しいの」


 月島達は心配していた様子で結依は現状の透真の状態を話すと2人は一安心したかのように一息ついていたが、まだ心配している感じがした。

 そこで結依は2人に透真を心配しないで欲しいと頼み込んだ。

 透真の精神状態が回復し、今まで通りの生活を過ごせるようになってから2人と会ってすぐ心配されると透真としてもなんとも言えない申し訳ない気持ちになってしまう事は結依は避けたいと思っていたので、心配せずに次会う時はまたいつもの様に楽しく接して欲しいという気持ちを込めてのお願いだった。


「······天宮さんが言うなら、心配しなくても良いんだな」


「そうだね、今の透真には天宮さんが居るもんね」


「透真が元気になったらまた声掛けてくれ! そしたら透真の復活パーティーでも開いてさ!」


「良いねそれ!」


「······2人とも、ありがとう」


 月島達は透真の回復を心配するのではなく、楽しみに待つことにした。透真が回復した後に開かれるであろうパーティーを待ち望みにして。

 

◇透真視点


 結依達と別れてから早1週間、8月も終わり9月に入ったがまだ夏の暑さは続いたままだった。怪我の回復の経過は順調で身体の怪我は殆ど回復した。

 いつものように朝起きてから約10分経つと、ドアのノック音が聞こえ誰かが入ってきたが正体は透真の主治医で経過観察に来たらしい。


「うん。これなら今日退院できるよ」


「本当ですか? ありがとうございます」


 どうやら主治医からも怪我の回復は良好に進んでおり今日やっと退院が出来ると伝えられると透真としてもやっと家に帰ることが出来る嬉しさが込み上げてきた。

 それからは退院の支度を済ませ受付にて退院書を提出し受付の人に礼をして病院の入り口を出ると宗一郎と千代子が既に迎えに来ていたようだった。


「透真、おかえり」


「ただいま、じぃちゃん、ばぁちゃん。心配掛けてごめん」


「別にいいのよ気にしなくて。それより、早く家に戻って自分の家に帰る準備しないと」


「それもそうだな」


 宗一郎の車に乗り家に戻った後はすぐに帰宅の準備をしようと自分の部屋に入ると既に透真の荷物が綺麗に整理されていた。恐らくこの綺麗さは朝陽がやってくれたものなのだろう。

 準備は既に終わっていた為荷物を持ち玄関まで向かいまた宗一郎の車に乗り駅まで送ってもらった。


「透真、戻ってもまた辛いことが起こる時がくるかもしれんが、困ったり悩んだ時はこっちに来れば話は沢山聞いてやるから」


「あぁ、ありがとう、じぃちゃん」


「透真、結依ちゃんにはしっかりとお礼をするのよ」


「分かってる。いつかするつもりだ」


「そう、ならいいわ」


「じゃあ、また今度。2人も元気で」


 最後に2人に手を振りながら透真は駅の中に入っていき電車に乗り自分達の住んでいる所へと向かっていった。その日の夕焼けはいつにも増して綺麗に写っている。

 45分ほどの電車での移動が終わり、降りた後駅を出た先には見覚えのある幼馴染の女子が待っていた。


「ただいま、結依」


「おかえり、透真」


 待っていたのは勿論と言っていい結依だった。電車に乗った頃には結依の方は学校は既に終わっていた為結依に今から帰ることを伝えていたのでこちらまで来るのは当たり前だった。


「それじゃあ、帰ろうか」


「そうだな」


 2人は手を繋ぎながら自分達のマンションへと向かっていった。前までは手を繋ぐ事すら恥ずかしくて出来なかった結依だが、今はただ透真とまた一緒に帰れることが嬉しいからこそ手を繋ぐ事ができた。今の結依に恥じらいは一切なかった。

 すると透真が話しかけてきた。


「姉さん達は元気か?」


「うん。いつも通りの雰囲気だよ」


「そうか、なら安心だな」


 帰りの途中では今まで学校であった黒崎との話や月島と水篠に透真の件を説明したことなど色々話したが、透真は別に困惑などはせずに結依の話をしっかりと隣で聞くだけだった。

 話していると時間もとっくに過ぎていき、気がつけばもうマンションの目の前まで来ていた。

 エレベーターで上に昇り、透真は自分の部屋に入ろうとした時に急に結依が前から声をかけてきた。


「透真? 今日からは暫くこっちだよ?」


「は? 待てもう1回言ってくれ」


「だから、暫く私と生活するの!」


「······はああぁぁぁ!?」




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