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32.回復

 あの後、家に帰った結依は透真の精神状態が良くなったと報告すると朝陽はほっと一安心した表情をしており、後に椿にも伝えると元気を取り戻していった。

 8月23日、本当は2泊3日で16日に帰る予定だったが大幅にオーバーしてしまいもう2日後には結依達の高校は学校が始まろうとしていた。

 透真の体調も段々良くなっていき食欲も出てきて、青白く痩せこけた透真の姿はどこにもなく段々といつもの透真に戻ってきていた。

 今日も今日とて結依は透真の病室に出向いてきた。


「どうぞ」


「透真、来たよ」


「結依、毎日来てくれるのは嬉しいが大丈夫なのか?」


「うん、一応宗一郎さんや千代子さんの手伝いとか終わらせてから来てるから問題無いよ」


 透真は毎日自分の病室に来て家の方は大丈夫なのかと心配になっていたが、結依は宗一郎達の手伝いなど家の用事を全て済ませてからこちらに来ているそうなので問題は無いらしい。流石の行動力と言ったところか。

 一方結依は別の件で悩みがあった。透真は回復してはいるものの恐らく学校までの残り2日間では退院するのは少し難しい状況だった。そうすると結依は学校に行かなければならなくなり、透真のお見舞いに行くことが難しくなってしまうことが悩みだった。


「透真、明日には私たち帰るけど私だけこっちに残って透真が退院するまで一緒に居た方がいい?」


「流石にそれは結依に申し訳ないから来れる時に来て欲しい。ただ······」


「ただ?」


「少し、学校に行くのが怖いんだ。まだ全員を信用出来るわけでも無いから」


 結依の提案に透真は申し訳なさを感じており、結依にはいつも通りに学校に登校してもらい時間があるときお見舞いに来て欲しいと頼むが、透真にも他の悩みを抱えていた。それは学校に行くことの不安だった。

 結依は信用してるし信用されている関係だが、その他の人との関係は今の透真は正直信用できるとは言い難い状態だ。透真の精神状態は少しだけだが回復したものの完全ではない為、学校に行くという不安が拭いきれないのも分からないわけではなかった。

 そこで結依はとある事を思いつき透真に提案する。


「それなら学校に行けるようになったら暫く先生と1体1での授業をするのはどう? 登校時間も皆とは少しずらして」


「個別授業か、でもそれは先生の負担が増えるんじゃないのか?」


「授業が無い時間の先生とか、担任の黒崎先生とかなら受け持ってくれるんじゃない?」


「黒崎先生か······」


 結依の提案というのは皆とは別の時間に登校し個別で授業を行う事だった。

 時間をずらして登校すれば皆とは出会う事は無く、1人で登校する事ができるのに加え、先生との個別授業なら他の目を気にせずに授業を受けることができる為メリットが多くあった。

 しかし透真はそれでは先生の負担が増えるのではないかと懸念していたが、結依が例に出した黒崎は椿に透真をよろしく頼むとお願いされているので透真の事になれば誠心誠意サポートしてくれるに違いないのかもしれないと透真は思っていた。


「なら先生にその事を伝えてくれないか。多分黒崎先生なら大丈夫だと思うから」


「うん。分かった」


「それと、姉さんたちは大丈夫か?」


「椿さん達も透真が元に戻りつつあるのを聞いて元気になってるよ。それと、今後は宗一郎さん達が偶にお見舞い来てくれるって」


「そうか」


「じゃあまた時間がある時に来るね」


「あぁ」


 結依に個別授業の件を先生に伝えてほしいとお願いした後、透真は朝陽達は大丈夫なのかと心配していたが透真の状態が良くなっていることを聞き一安心し椿も嬉しく思っているらしい。

 それと今後は結依の代わりに宗一郎や千代子が見舞いに来るとの事だった。

 透真とは30分ほどの面会をし結依は帰ることにした。


 次の日の朝、結依達は自分達の家に帰るため準備をしていた時に椿がとあるお願いをしてきた。

 

「ねぇ、最後に透真に会っていかない?」


「確かにいいな」


「行きましょうか」


 電車に乗る前に透真に会って行こうと提案してきた。

 透真はあと大体1週間は入院するとの事だったので最後に挨拶していったほうが透真も椿達も良い気持ちで帰ることができるだろうと思い、3人は病院に行くことにした。

 玄関まで向かうと宗一郎と千代子が見送りの為に玄関まで歩いてきた。


「おばあちゃんありがとうね」


「いいのよ。孫たちを支えるのが祖父母の役目でもあるから。そっちに帰るまでの透真の事は任せてね」


「お前達は自分のやるべき事をやるんだぞ」


「ありがとう、じいさん」


「それじゃ行こっか」


「お二人共お世話になりました」


 それぞれ宗一郎と千代子に別れの会話をするが千代子達は透真の事は今は自分達に任せて椿達は自分のやるべきことをやってくれとの事だった。恐らく明日からの生活で、透真の事を考え過ぎずに生活して欲しいと言う2人からの思いやりなのだろう。

 病院と駅までは行きの時と同じく茂永が送ってくれるとの事だったので、3人は車に乗る直前まで宗一郎達に手を振ったりお辞儀をして車に乗り病院まで向かった。

 病院に着き受付で面会の申請を行い透真の病室まで向かった。


「透真〜!」


「姉さん急に抱きついてくるな」


「だって、透真が死んじゃうって思うと怖くて······」


「心配をさせてたのは悪かったからまず離れてくれ」


 病室に着いたのも束の間、椿は走って透真の元に向かい透真を急に抱きしめてきた。椿は透真に会うのは事件当日以降だったので日数にしておよそ10日振りだったので抱き締めて泣きたいのもよく分かる。

 透真も今まで心配を掛け続けていた事は悪いと思っていたので抱き締めている椿に今までの事を謝っていた。


「兄貴もこの前はごめん、あんな言葉投げ捨てて」


「いや、あれは俺のせいだったから透真は何も自分を責めなくてもいい」


「······ありがとう」


「透真、元気に戻ってきてね」


「勿論だ」


「電車の時間も迫ってるしそろそろ行こっか」


「皆気をつけてな」


「透真も元気になって早く帰ってくるんだよ〜」


 透真は朝陽にこの前の面会で棘のある言葉を沢山掛けてしまって今一度直接その事について謝ったが、朝陽はこの件は自分達のせいだからと自分を責めないで欲しいと言った。

 そんな話をしている間に電車の時間が刻一刻と迫ってきていたので最後に透真に挨拶をして3人は自分達の家へと帰っていった。


 

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