23.楽しい夏休み...
結依を夏祭りに誘う事ができ、これで萩野家全員と夏祭りに行くことができるようになった。
夕方頃、そろそろ行く準備をしなければと思い服を着替え手荷物を確認し部屋を出ると浴衣姿の結依と椿が出てきた。
「いやぁ浴衣なんて小学校以来ですなぁ」
「······」
「どう透真、朝陽、私達似合ってるかな?」
「あぁ、似合ってるとも」
椿は白を基調とした花模様の浴衣で、結依はそれとは真反対で黒を基調とし様々な色が散りばめられている浴衣だった。
椿は久しぶりの浴衣を来てはしゃいでいる様子だったが結依は恥ずかしいのか照れてるのか分からないが顔を少し赤くし前髪を触ったり体をもじもじと動かしていた。
「結依、どうかしたか? 早くしないと置いてかれるぞ」
「え!? う、うん······」
透真に呼ばれた結依は慌てて透真についていく。
歩く事約15分、丁度辺りも暗くなる中、屋台の明かりが暗くなった周りを照らしているのが見えた。
「うわー! 懐かしい〜」
「本当に昔と変わってないようだな」
約5年ぶりに透真達は地元の夏祭りに来たのだが、屋台の数や周りに立てられている旗、中央に聳え立っている物見櫓など、昔から見ていた物達は少しばかり年季が入っているものが多少あるものの、5年前と変わらないものばかりで透真達は懐かしさを実感する。
「じゃあここからは2人1組になりましょうー!」
「え?」
「おじいちゃんおばあちゃんとおじさんは3人でね。私は朝陽と動くから、透真は結依ちゃんと行動してね〜」
「そんな急に言われても······」
「それじゃあ解散! 集合は21時にまたこの場所ね!」
椿が急な提案をふっかけ、2人一組になれと言ってきた。椿は朝陽と一緒で宗一郎、千代子、茂永は3人組でとの事で透真は勿論の事結依とだった。
透真からしたら急に別れろと言われた挙句、誰とが良いなどの意見も聞く耳を持たずに椿が誰と組むのかを勝手に決めていた。実に理不尽だ。
そんな理不尽な事だなと思っている矢先に椿組と宗一郎組はもうそれぞれ屋台などを回り始めていた。今の状況はぽかんと透真と結依で2人きりの状況、こんなの気まずい他何があると言うのだろうか。
すると結依が透真の手を握り始め、その感覚が伝わった瞬間、結依の方を見る。
「考えてもあれだし、屋台回ろっか」
「はぁ、そうだな。折角来たんだし楽しむか」
結依が屋台を回ろうと言ってくると透真もこれ以上気まずい空気を続けたくないと思っていたので透真達も早速屋台を回ることにした。
その頃椿と朝陽は······
「椿姉、あの組み合わせにしたのはわざとなんだろ?」
「ふふん、大正解! 今日の夏祭りというイベントで結依ちゃんと透真を結ばせるんだよ」
「はぁ、やっぱりか」
椿が透真の話に聞く耳を持たずに自分勝手にペアを決めた理由、それは今日の夏祭りというイベントを最高のイベントにする為の椿の計画だったのだ。
先日行った海で椿は遠くから見ていただけなので透真達の会話は聞こえてはいなかったが恐らく告白のムードだったのだろうと考察していた。
前回は花火のタイミングが悪く重なってしまった様だったので今回こそは透真と結依をくっつけようと思い椿はペアを作ったのだ。
「まぁこんな事しなくても近いうちにどっちかがまた告白しそうな関係までは行ってるけどどっちも雰囲気を作れないのが厳しいんだよね。だったらこっちから作っちゃおうよ作戦」
「それで結ばれれば良いけどな。俺は椿姉と違ってあのペアを2人っきりにしておく事が心配でならないがな」
「まぁそこは大丈夫でしょ」
「······どうなっても知らんぞ」
透真と結依は屋台を巡り始め焼き鳥やたこ焼き、かき氷等の食べ物の屋台だけでなく金魚掬いやヨーヨー風船などの娯楽系も巡っていた。
屋台を巡っていく内にお互い気持ちが落ち着いてきたのか、2人は笑顔で屋台を回っていた。
「たこ焼きも焼き鳥も美味しい〜」
「そうだな」
たこ焼き等の食べ物を食べながら夏祭りが中盤になるとこの地域の伝統の踊りなとが始まり、結依はその踊りに少し興味を持っていたので踊りを見ることにした。
踊り自体は昔ながらの踊りだったが結依は少し興味津々で見ていた。
「踊り、そんなに見てて楽しいのか?」
「うん。私動画とかで流行りの踊りとかも見てるけど、こういった昔ならではの踊りとかも少し見てて面白いなって思っちゃうんだ」
踊りも終わり、現在時刻は20時を回っていた。
するとアナウンスで夏祭り最後のプログラムである花火を間もなく開始するとのアナウンスが入ったので、透真達は場所を移動し、川沿いにまで移動した。透真達が今住んでいる県よりかは都会では無いものの、人混みは結構混雑しており空いている場所が少なく悩んでいたが探している内にちょうど見やすそうな場所を見つけた。
「場所空いてて良かったね」
「あぁ、場所が空いてなかったらどうしようかと思ってたが·······」
場所を取れ一安心していると花火を今から始めるというアナウンスが入り、透真と結依は川の向こう側の空を見つめる。
すると最初の花火が打ち上がる。色は赤色で次第に黄色へと変色していくのを眺めていくとその後に続くように様々な色、様々な大きさの花火が次々へと空に打ち上げられていく。
その時間は何処かゆっくりと流れていく感覚に陥り何時までも眺めていられるような、そんな綺麗な花火だった。
隣にいる結依の方に目を向けると、結依の目には空に打ち上がっている花火がこれでもかというくらいに綺麗に映し出されており、普段でも綺麗な青の瞳が一際輝いて見えた。
気がつくと花火は既に打ち上げを終えており、打ち上がっていた空は何処となく虚しさが感じ取れた。
そんなもう何も映っていない空を眺めていると隣の結依が肩を軽く叩いてきて透真はようやく気がつく。
「透真······? もう花火終わったし集合場所に戻らないと」
「あぁ、そうだな」
ただ時間の21時まではまだ15分程残っていたので急ぎはせずにゆっくり歩幅を合わせながら結依と一緒に歩いて戻ろうとする。
すると結依がどこか痛んだような声と表情を出した。
「どうした? どこか痛めたのか?」
「ごめん、ちょっと足痛めたみたい······」
「そうか、なら近くに公園があるしそこで少し休むか。姉さんには少し遅れると連絡しておくから」
「ありがとう」
結依は今日下駄を履いて来ていたのでズレ等で足を痛めた様子だったので、今よりも更にゆっくりと近くの公園のベンチに向かって歩いていく。
「······よし、これでなんとか帰りまでは大丈夫なはずだ
」
「透真ありがとう」
応急処置だが結依の下駄の痛みを処置し終えたので透真と結依は立ち上がり椿と約束していた集合場所へと向かおうとした。
その時、後ろから明らかに透真に向けて発せられた言葉が聞こえる。
「やっぱかっこいいねぇ、萩野は何時になっても」
「誰だ······」
後ろを振り向いた時、透真はこれまで感じたことの無い恐怖に全身が襲われた。
後ろにいたのは透真と同年代と思われる男子がおり、髪は金髪で如何にも不良に近い外見をしていた。
「久しぶりだな、萩野」
「五十嵐······大誠······」
その正体とは過去に起きた事件、小6の時に透真をいじめた主犯格の男子生徒である五十嵐大誠だった······




