18.海に行こう②
海沿いに行ってみると屋台が数店舗出店していた。恐らく夏休みということもありイベント的な感じで出店されているのだろう。
かき氷、焼き鳥、フランクフルトなどこの時期ではもう夏祭り感覚のイベントとも感じた。
「すげー! まるで夏祭りじゃんか!」
「私焼き鳥買いに行こー」
「椿姉は一人にすると大量に買ってくるからな...俺は椿姉に付いていく」
「透真はどうするんだ?」
「俺は別に今お腹が空いてるわけでも無いからな。結依と一緒にここで待ってる」
「じゃあ飲み物買ってくるよ。萩野君天宮さん何か飲みたいのある?」
「俺は炭酸で」
「私はお茶で大丈夫だよ」
「分かった」
ここでは期間中だけブルーシート等も借りれる為ブルーシートを借り椿と朝陽は屋台で食べ物を買いに、月島と水篠は皆の分の飲み物を買いにそれぞれ向かっていき、透真と結依は2人きりになった。
2人の向こうに広がっている大きな海、日は暮れ暗くなってきてはいるものの、海だけは空を海面に映し美しく輝いてるように見える。
「海、綺麗だね」
「そうだな」
2人で静かに綺麗な海を眺めていると突然透真が結依に話しかけてくる。
「今なら時間あるし、少し俺の話をさせてくれないか?」
「別に良いけど······」
「実はさ、俺が学校とかで目立ちたくない理由って、昔が原因なんだ。小6の頃さ、結構酷い部類に入るいじめを受けてて学校全体でも絶えずその話題が上がってたんだ」
「······そんな事があったんだ」
「そこから人との関わりが怖くなってさ、なるべく関わる人は限定してきたんだ。それに今でも不安とか怖さはずっと残ってるんだ」
透真の心に潜めていた本音の一部、それをやっとの思いで結依に伝える事ができたが、結依はその話を聞いて今まで透真がどんなに苦しい人生を生きていたかを知り、目が涙が込み上げてくる。しかし、その涙は悲しみなどではなく、こんなにも優しく暖かい幼馴染が昔からいじめの被害を受けているのか、その部分から悔しさが込み上げてきたのだ。
「その人達は、ひどいね。こんなにも透真は良い人だっていうのに」
「結依······」
「私は透真の全てを知ってる訳じゃ無いけどこれだけは言えるよ。私は透真の味方だって。」
結依からの一言に透真は言葉を失い口をパクパクと動かしているだけで言葉が出てこない。思考が追いつかない。
透真達が話していると近くまで椿達と月島達がほぼ同時にやってきたので鉢合わせになる。
「萩野君と天宮さん何か話してるようだけど」
「はっ! 皆もう少しここで待ってよう」
「どうしてですか? あいつら待たせてるんすよ?」
「······あれは、ワンチャン告白のパターンだ」
「なっ!?」
椿は透真と結依の関係を軽くではあるがイジってくる。その為少し遠くからでも今の透真と結依の状況はどう見てもどちらかが告白するパターンだと椿は予測していたのだ。
「俺さ、いつからかは分からないけど、結依の事、幼馴染としてでもあり、そして異性としても······す」
刹那、大きな花火が空に放たれ大きな音のせいで最後の言葉は結依には聞こえてはいなかったものの、口の動き方で大雑把だが結依は透真がどんな事を言ったのかが分かってしまい、頬を赤く染める。
「あちゃー 花火のナイスタイミングが起きちゃったー」
「椿姉はどんだけあの2人の事いじってるんだよ...」
「おーい2人ともー! 買ってきたぞー!」
「月島······」
椿は花火が都合良く鳴ってしまいこれは告白失敗に終わったなと残念に思っている隣で朝陽は椿に呆れため息を吐く。
月島達はすぐさま透真達の方に走って飲み物を渡しに行く。
「あれ? 天宮さん顔赤いよ? 大丈夫?」
「え? う、うん。大丈夫······」
「······なら良いんだけど、それより2人の飲み物買ってきたよ」
「あぁ、ありがとう」
「水篠君ありがとう······」
2人はどこか、話し合えたようで話し合えなかった、とても気まずい空気を味わいながら屋台の食べ物等を食べつつ花火を眺めていた。
花火は空に大きく広がり、鮮やかな色が暗い空を彩っており、海にもその綺麗な色は映出されていた。
「そろそろ時間も遅くなってきたから帰ろっか」
「そうですね。もう20時ですし」
花火を満喫し終わり時間を見ると20時を回っていたのでそろそろ帰らなければいけないので6人は駅に向かうが、透真と結依はなにか気まずそうな表情をしていた。
恐らくこの表情はお互い照れていて話しかけられないなと察した椿は最初はお互いをおちょくろうとしたがよくよく考えるとこの雰囲気を壊すのも良くないなと思いそのままにしておく。
電車に乗った後もずっと2人は無言で乗っており、降りる駅にまで行ってしまった。
月島達とはここでお別れなので挨拶ぐらいはしないとと思い透真は月島に挨拶する。
「月島、水篠、今日はありがとう」
「おう! また遊ぼうぜ」
「またね萩野君、それに天宮さんも」
「うん、2人ともありがとう」
月島達と別れ透真達は自分のマンションに向かっていく中、椿と朝陽は今日の事を色々と話しているが透真と結依はまだ黙ったままだったのを見て椿は我慢ができなくなり2人に寄り添う。
「もういつまでモジモジしてるの!」
「えっ」
「こっちは気になってしょうがないって。どうせ今日の花火のこと気にしてるんでしょ?」
「それは······」
「別に今日しっかりと伝えられなかったからってそんな気まずくしなくてもいいでしょ。またいつか特別な日とかに別の方法で伝えれば良いじゃん」
椿は透真達に言いたかったことを次から次へと飛ばしてくるがその言葉一つ一つは嫌気が指しての言葉ではなく透真と結依を励ます為に伝えた言葉だった。
それを聞いた透真は気持ちを切り替えようと思ったのか少し長めのため息を吐き結依に言葉を伝える。
「ごめんな結依、気まずくして」
「いいよ別に、私こそごめん」
「そう、2人はそうして楽しく話してる時が1番良いんだから」
「少し強引な仲の治し方だったがな」
「朝陽は黙ってて」
「理不尽だな」
椿のおかげで透真と結依はやっと話すことができいつもの雰囲気に戻ることができた。朝陽の言う通り少し強引かもしれないが椿のこの少し強引なやり方に透真や朝陽は助かっている時もあるので、今回は椿に感謝しておこうと透真は思っていた。
「さ、仲も雰囲気も戻ったし帰りますか!」
「そうだな」
「はい」
それからマンションまで帰る4人はどこかいつもとは違う穏やかな雰囲気で溢れていた。




