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11.本音

 結依はお寿司を食べながら皆と談笑していく内に落ち着きを見せるようになった。

 そうしてお寿司を食べ終え時刻は20時を過ぎていた。 結依はいつも20時を過ぎたら自分の家に帰るようにしていたのだが今日は何か様子が違く、急に椿と朝陽に相談してくる。


「······あの、お二人共、少し透真君お借りても良いですか?」


「どうしたの急に」


「······その、少し2人で外でゆっくり話したくて」


 結依は今椿達ではなく透真と2人きりでゆっくり話したい事があるらしく、相談というよりお願いをしてきた。


「それなら大丈夫だけど21時半までには帰ってきてね。22時にもなると結構危ないし」


「椿姉の言う通りだな。天宮さん、気をつけてね」


「分かりました。ありがとうございます」


 椿と朝陽は快く了承してくれた。透真は一体何の事か一切分からずただ結依と外に出て近くの公園まで結依と歩幅を合わせながらゆっくりと歩いていく。

 その時に結依がぽつりと透真に話しかけてくる。


「······その、ごめんね? 家族の事情に介入させちゃって」


「別に良いよ。俺だけじゃなく姉さん達もお前の事は大切に思ってるし」


「ナチュラルにそういう事急に言わないでよ······」


 余程萩野家は結依の事を大切に思っている事を改めて伝えられ結依は顔を赤らめながら呟く。今日は周りに誰も居ない為結依の照れた呟きは透真にもしっかり聞こえていた。


「そんな照れなくても」


「私は"'透真"'の幼馴染なんだからそんな人から言われたらそれは照れるに決まってる······」


 少し気まずい空気が流れてしまったが今の状況では仕方の無い事だ。そうして公園に着くと結依はブランコに乗る。


「私がお母さんと話さなくなったのは小5の頃。幼稚園卒園後すぐと小3の時に転校してその後、小6に上がるのと同時に3回目のお父さんの転勤することが決まってからはあまり話さなくなったし、あっちも家に帰る回数が徐々に減っていたの。それからは基本的にお父さんに育てられてきた」


「幼稚園の後も何回か転校していたんだな」


「うん。中学卒業する時にお父さんから自分の転勤のせいで私を困らせたくなかったからだと思うけど、一人暮らしの提案をされて私はそれを受けたの。だから本当に暖かい家庭や親しい友達とかも殆ど作れなかったんだ。多分、本当は寂しかったんだろうね。周りに友達とか心から呼べる人が居なくて」


 透真は結依の新しい事実を知った。幼稚園卒園後の転勤は知っていたがその後の2回の転勤は知らなかった。

 入学初日皆が結依の事を綺麗だとか可愛いだとか思っている中で透真だけは何か違和感を持っていた正体が今やっと分かった。

 初日の結依の目には何か憂鬱感や、内にある輝きが無いように思えた。外側だけ見れば完璧、天使の様な風格が見られていたが内側も含めて見ると何処か虚しさすら感じていた。


「俺さ、入学初日廊下でお前の事を見た時にさ、皆は綺麗とか可愛いとか言葉を並べてたけど俺は何か違ったんだ」


「······え?」


「多分心の奥底では会った瞬間に結依だってわかってたんだと思う。でもそれを気の所為で隠してたから分からなかったんだ。あの時の結依は何か虚しさというか、そういうのを抱えているんだなって」


 俺が抱えていた違和感を結依にやっと言えた。

 多分俺が今持ち合わせていないもの、完全な信頼を持ち合わせていないからこそ、結依の心情を読み取ることが出来ても気の所為だと自分を誤魔化していたのが原因だった。


「俺も今までで色んな事があったけど、今は結依の話がメインだよな。だからまた改めて話すよ。これだけはどうしてもお願いしたい。結依ともっと関係を深めてからじゃないと自分から割り切って話す事は難しいんだ」


 過去の出来事。透真にとって引き離れる事は恐らく無いと確信して言える事。悪く言えばトラウマとでも言うのだろう。

 そのトラウマを抱えているからこそ、自分に自信が持てていないのだろう。だから透真は結依にこの事を今伝えるに値するものではないと思った。


「別に辛い事なら無理して言わなくてもいいよ。私はいつでも言ってくれるの待ってるから」


「ありがとう、結依」


「こっちこそ、今までの本音を聞いてくれてありがとう。透真。《《好きだよ》》」


 そういった結依は少し背伸びをし透真の頬に唇を当てた。何が起こったのか一瞬で理解できなかった透真は目を丸くし顔を赤くしていた。


「それって、どっちの意味で······?」


「ふふっ。ひ、み、つ」


 結依は天使のような、そして悪戯っ子かのように透真の方を振り返り微笑んだ。その時の結依の青い瞳はいつにも増して輝いているように見えた。

 今の結依の「好きだよ」という言葉は友達として好きなのか、あるいは······

 そこまで考えている矢先に結依が声をかけてくる。


「そろそろ椿さんが言ってた時間になりそうだし、帰ろ?」


「そ、そうだな」


 結依の言葉にこの日の残りの時間はずっと惑わされる時間となった。

 結依の本音が聞けて嬉しかった反面、少し結依にも小悪魔的な部分もあると分かった日だった。


(······本当、好きってどっちの意味でなんだよ、ばか)


(透真に好きって言っちゃった······)





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