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10.一難去ってまた一難

 透真が学年10位を取ったということでお祝いも兼ねて今日の晩御飯を豪華にすると決めた椿とスーパーに行くことにした。

 朝陽はバイトがある為帰ってくるのはご飯の最中だろうか。


「うーんどうしようかな〜 透真、今日は何が食べたいの?」


「今日は肉よりも魚類が食べたい気分かな」


「じゃあ今日はお寿司にしよう!」


「姉さん感謝感激」


 透真の今日の食べたいものを聞き晩御飯はお寿司に決定した。それ以外にもお菓子やら飲み物やらを買って会計を済ませスーパーを出ると見覚えのある女子が大学生くらいの男2人に絡まれているのを目撃した。


「ねぇ、あれって結衣ちゃんじゃない?」


「本当だ。しかも大学生っぽい人に絡まれてる」


 女子の正体は天宮であり透真と椿が思っている事は同じで恐らくナンパだろう。一人なのを良いことに何処かに連れて行くのが目的か。

 美少女というのはこういった面倒臭い事に必ず巻き込まれるものなのだから天宮も結構辛いはずだ。


「ねぇ君、めっちゃ可愛いじゃん。俺らと今から遊ばない?」


「いえ、結構です。この後用事あるので」


「そんなの良いからさぁ、ほら、俺達と行こうぜ」


「ですからお断りします」


 天宮は冷たく棘のあるかのような声で断るの一点張りだが大学生側も連れて行くの一点張り勝負だ。正直言ってきりが無い。

 そこで椿が透真に天宮を助けるよう促してくる。


「ねぇ透真、結衣ちゃん危ないからなんとかしてあげて」


「なんで俺が」


「私が行くと私まで巻き添え喰らって拉致があかないしあの人達どっちも知らない人でしょ? 大丈夫今後にはそんな影響しないって」


 透真が行きたくない理由は勿論の事目立ってしまうからだが天宮を助けたくない訳ではなく助けたい気持ちは十二分にある。

 そう迷っている内にも天宮が危なそうなので透真はため息を吐きながら彼女の方に向かう。


「だからさぁ〜」


「すいません。彼女この後俺と用事あるので、失礼します」


「えっ、透真君!?」


「なんだ彼氏持ちかよ」


 天宮はどうして透真がここに居るのか理解できない状況で混乱しているが透真は助ける際心臓の心拍数が急激に上昇し緊張が限界にまで達していたので天宮の手を握りすぐさまその場を後にし走り去っていく。

 その後椿と合流し3人で帰ることにした。


「天宮、大丈夫だったか?」


「うん。ありがとう」


「いや〜かっこよかったなぁ。彼女この後俺と用事あるので。だってさ」


 椿がさっき透真が天宮を助けた時の言葉を真似て言ってくる。ここまで姉の事がうざいと思ったのは最後何時だったろうなと思うくらい腹立つ。

 それに対し透真は少し顔を赤らめ椿に強く言い返す。


「仕方ないだろ! あれしか言葉出てこなかったんだから」


「私は別に嫌って訳じゃなかったけどね······」


「なんか言ったか天宮」


「いや!? 助けてくれて嬉しかったなって」


 天宮はまた小声で照れくさく呟くが透真には聞こえていなかった。恐らく椿との会話のせいで少し焦っているからだろう。

 マンションに帰っている途中で急に椿が天宮に提案をしてくる。


「結衣ちゃん今日ね、うちでお祝いするんだけど結衣ちゃんも来ない?」


「お祝いって何のお祝いなんですか?」


「今回の期末、透真が学年10位だったからそのお祝いにだよ。結衣ちゃんも今回学年1位だったらしいし結衣ちゃんも混ざった方が良いんじゃないかなって」


 天宮に提案したのは今日のお祝いの食事に天宮を誘うことだった。

 元々透真の為にお祝いする予定だったが確かに天宮も学年1位を取ったので客観的に見れば祝われるのは当然の事だ。


「······そういう事なら、お邪魔しても良いですか?」


「もちろん!」


 天宮は少し遠慮気味だったがお祝いの食事に混ざる事となった。

 その後は学校の話題で盛り上がりながらマンションに向かって行き透真と天宮の玄関近くに行くと見知らぬ人が七瀬の玄関前に立っていた。


(······あれ誰だ?)


「お父さん······?」


「結衣······」


 玄関前に立っていたのはなんと結依の父親だった。

 結依は目を見開いて驚き透真と椿は何が何なのか全く分からない状況だった。

 結依の父親は転勤などが多い理由から結依を一人暮らしにさせたのにわざわざ結依の家に来るのはまずおかしいという疑問が最初に出てくる。


「何でお父さん来てるの?」


「こっちの方に来てやらないといけない仕事があってね。仕事ついでに様子でもと」


 結依の父親は仕事の関係でこちらに来ていたらしく、仕事の隙間時間に結依の様子が気になって見に来たという事らしい。

 その様子を見ていると結依の父親が透真の方を見て困惑したような表情を見せる。


「······もしかして、結依の後ろにいる人、透真君じゃないか?」


「俺の事、覚えてるんですか!?」


「あぁ、なんとなくだけどね。幼稚園の時は結依と沢山遊んでくれて助かっていたよ」


「いえ、こちらこそ楽しかったです」


 結依の父親は透真の事を覚えてくれていたらしく、幼稚園で結依と一緒に遊んでいた事が嬉しく透真に礼をする。


「······あの、玄関前で話すのもあれなんでうち上がってください」


「確かに玄関前で立ち尽くしてるのも失礼だからね。お言葉に甘えてお邪魔するね」


 玄関前で立ち尽くしながら話すのも癪なので透真が家の中で話をしないかと提案し、結依の父親もそれに賛成し部屋に入る。

 椅子に座り待っていると椿がお茶を出してくれた。


「まず自己紹介が遅れたね。私は結依の父、天宮大輔あまみやだいすけです。いつも結依がお世話になっています」


「私は透真の姉の萩野椿と申します。今居ないのですけど一応透真の兄の朝陽もおります」


「椿さんか。いつも結依の事ありがとう」


「いえいえ! 私もまた結依ちゃんと会えて嬉しいですし」


 結依の父親の名前は天宮大輔。現在は大手金融会社で働いているらしい。

 金融会社となると転勤が多いというのは以前ネットなどで調べた際に出てきた時があった為、大輔の仕事を聞いて転勤が多いのも納得できた。


「ねぇお父さん、お母さんは?」


香澄かすみか、あの人は1週間くらい帰ってきてないよ」


「お母さんと何かあったんですか?」


 結依が母親が家に帰ってきているかどうか大輔に確認したが大輔曰く帰ってきてはいないらしい。何か七瀬家には家族間で問題を抱えているのでは無いかと透真は考えていた。

 その問題が気になってしまい大輔に聞いてしまった。他の家庭の問題にずかずかと入るのは流石に礼儀というものが無いと言った瞬間気づいてしまった。


「ごめんなさい。他の家庭の事情を聞くものでは無いですよね」


「いや、むしろ聞いて欲しいくらいの事なんだ。今私の妻である香澄は仕事に加えて何か裏でやっていると思うんだ」


「裏ってもしかして犯罪系とか······」


「多分法には引っかからない事だとは思うけどね。それで離婚等の検討もしているけど帰ってくるのが不定期な上、私も帰ってくる時間が遅いから話すことが出来ないんだ」


 結依の母、香澄が帰ってこない理由は仕事の他に何かしているからだった。

 あくまでも大輔の推測の為確信と言える証拠は無いが深刻な状況に迫っているのは間違いない。

 離婚できない理由も香澄が帰って来る日が不定期に加え大輔も仕事で忙しい為中々会って話す機会が無いからだ。

 そこで大輔が透真と椿にお願いをしてきた。


「そこでお2人と朝陽さんにお願いがあるんだ」


「なんでしょう」


「3人で、結依を支えて欲しい」


 お願いの内容、それは結依を傍で支えて欲しいというお願いだった。恐らく透真が幼馴染なのに加え家も隣ということで結依を支えるのに最適だと大輔は思ったのだろう。


「本当は萩野家の皆さんを巻き込みたくは無かったんだけどこれは透真君達にしか頼めない事なんだ。勿論自分勝手なお願いだというのは重々承知している······」


 大輔はこれでもかというくらい頭を下げてお願いをしている。母親の件もありよほど結依を大切に今後も育てていきたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。

 大輔が切実にお願いをしている際に椿が立ちがる。


「······私も、近いような事を経験しました。両親が居なくなってから暫くは辛かったですけど、これからは透真を支えていかないとなって思い始めてからは辛いと思った事は一回もないです」


「姉さん······」


「まず私は、結依ちゃんの事は4月に会ってからは家族の一部だと勝手ながら思いつつ結依ちゃんと接してきたので、これからも同じように接して行きたいと思ってます」


 椿が今まで抱えていた気持ちを全て吐き出すかのように発した言葉は、この場にいる全員に響いていた。

 特に弟の透真が一番強く感じているだろう。

 虐められ、両親を失い、信用を完全に失った時でも椿と朝陽はずっと傍に居てくれた。その事実があるからこそ強く感じれている。

 透真も決意を固め大輔に面と向かって言う。


「俺も、天宮、結依と入学初日で会えた事は嬉しかったです。今までは結依に貰ってばかりだったので今度は俺達が支えたいと思ってます」


 透真は結依から今まで弁当を作ってもらったり一緒に帰ったりなど結依があげることばかりだったが今度は透真が結依に色々あげたいと思っているのだろう。


「2人とも、ありがとう」


「······」


 結依は少し涙目になっていたがこの空間で泣いてしまえば空気が一変してしまうのでなんとか堪えている。

 椿は結依が泣きそうになっているのを見てまた自分の為に色々してくれる皆に嬉しく思っての事だろうなと思い椿が話を続ける。


「という訳で私達3人は今まで通り結依ちゃんと一緒に過ごしていきたいと思っています」


「是非ともお願いします。おっと、そろそろ時間か。申し訳ないですが仕事の時間が迫ってきているので私は失礼させていただきます」


 話をしていると大輔が腕時計を見て仕事の時間が迫っている事に気付き部屋を出る準備をし玄関まで向かうと透真と椿も玄関まで向かう。


「では透真君、椿さん、結衣を今後ともよろしくお願いします」


「はい」


 大輔は玄関のドアを開ける前に2人に深々と一礼をし家を出ていく。

 どっと疲れが出たのか椿はソファで寝転ぶ。


「まさか結依ちゃんのお父さんが来るとはね〜 でも良い人そうで良かったよ」


「まぁな、それより姉さん結依が号泣しそう」


「あぁー! 結依ちゃんごめんね!」


「大丈夫、です、やっぱり良い家庭だなって······」


「とりあえず落ち着いたらお寿司食べよ? そろそろ朝陽も帰ってくるからさ」


「はい······」


 その後、朝陽が帰ってきたが帰ってきても結依は泣いたままだった


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