気遣い合い
ダルドリーとリャナが登場。
元気が家に帰ると、ミリャナの両親。ダルドリーとリャナが本当に復活していた。
ダルドリーはヒゲのイケメンおじさんで、ヴァイドに何処となく似ている。リャナは鋭い顔付きをしていた。
そして現在。そんなリャナに、元気が睨まれている状態だ。
「貴方には感謝しているけれど、これからも一つ屋根の下で男女が一緒に暮らす。と言うのは、どうなのかしら?」
「お母さん!でも元ちゃんは……」
「ミリャナは黙ってて。元気、どうなの?」
テーブル越しにリャナが元気を見据える。
「リャナさん……。俺は……ミリャナさんと結婚するつもりでいます」
「は?」「え?」
リャナとダルドリーが固まった。
「ミリャナ……。どう言う事なの?」
「えっと……。その……」
リャナに睨まれたミリャナがもじもじする。
「ミ、ミリャナは、お父さんと結婚するんだよな?……元気とやら、表に出ろ……話がある……ミリャナは渡さん」
ダルドリーが、立ち上がる。
「ちょっと、貴方は黙ってて……」
リャナがダルドリーを黙らせる。
「だ、だが……」
そう言いながら、渋々座りなおすダルドリー。
「わ、私と元ちゃんは……。結婚を前提に……お付き合いをしています……」
ミリャナが顔を真赤にする。
「貴方!まだ子供なのに!何を言ってるの?」
リャナがミリャナに怒鳴る。すると玄関のドアが開きミールが帰って来た。
「あのさ、父さん母さん……。姉さんはもう19だよ?二人が死んでからもうすぐ六年。もう子供って歳でも無いよ。……ただいま」
「……おかえりなさい。ミール……。貴方も……。無事で良かった……」
リャナが立ち上がり、ミールを抱きしめた。
「うん……。元気のおかげで生き返ったんだ……。僕の場合。身体は造り物だけどね……」
「そうか……。離れてから心配だったんだが……。お前も、死んだのか……」
「うん。父さん達と離れてからすぐね……。だからさ……。姉さんの事は、死んだ僕達が口を出す問題じゃ無いと思う……」
ミールの言葉に、皆が沈黙した。
「……………………何か違う……」
しばらく続いた暗く重い沈黙の中で、唐突に元気がつぶやいた。
「元ちゃん?」
不安そうにミリャナが元気を見る。
「よし!ご飯の準備をしよう!」
そう言って元気が立ち上がった。
「ちょっと貴方!まだ話が……」
「……難しい話はわかりませんが……」
リャナの言葉を遮り、不安そうにしているミリャナを元気も見つめる。
「ミリャナ……。今日は。とても嬉しい日なんだよね?」
「……うん。ずっと……こんな日が来れば良いのにって夢見てた……」
「ハハハ……。じゃ、笑おうよ……。ミリャナ……何が食べたい?」
「ハンバーグ……。ずっと、お父さんにもお母さんにも食べさせてあげたかった……」
そう言うとミリャナがうつむき、泣き出してしまった。
「もう、泣かないでよミリャナ……。美味しいのを作るから……」
「うん……」
元気が台所に向かうと、アイリスもついて来た。
「まったく……。あのおばさんたら。お姉ちゃんそっくり」
「そう?」
「そうですよ。人を子供扱いして!」
アイリスはプリプリしているが、尻尾がフリフリと揺れているので、そこまで怒っていない事がわかる。
「フフフ……。アイリスがいつも、ミリャナにプリプリしている意味がわかったよ。」
「……。お姉ちゃんが大切な気持ちはわかるんですけどね……。ああ言う話をするのは、今日じゃありません……」
「確かにそうね……。申し訳無かったわ……」
「ぎゃ!?」「うわ!?」
元気達の背後にリャナが立っていた。
「何か手伝うわ……」
「……じゃ……お皿の準備をお願いします……」
「わかったわ……」
「じゃ、じゃあ私、向こうで、先輩達とお話しときま〜す」
アイリスが逃げ、元気とリャナの二人きりになる。
「その……私達はミールが言った通り……家を出た日から時間が止まっているの……。私のミリャナは十三歳のまま……」
皿を並べるリャナは少しさみしそうだ。
「情けない話なんだけれど……。貴方に嫉妬したのよ……私……」
「嫉妬ですか?」
「あの子……。貴方の話ばかりするんだもの……。ミリャナから聞いてるでしょ?私が孤児院育ちだって……」
「はい……」
「初めて出来た家族なの……。大切な娘……。だから……ずっと独り占めしたかった……。でも……もう、無理なのね。って思ったら……何だか、焦っちゃって……ごめんなさい……」
「俺も……。孤児です……。独り占めしたい気持ちはわかる……と思います……」
「……。そう」
「はい……」
その後は無言で準備が進み、夕食が始まった。
「何だコレは!美味過ぎるぞ!ミリャナは毎日こんなに美味しい物を食べているのか!」
「フフフ……。元ちゃんが来てからよ?お父さん美味しいでしょ?凄いのよ!元ちゃんは!」
「あぁ!美味い!……。まぁ、娘をやるかどうかは別だがな……。にしても美味い……」
バクバクとダルドリーがハンバーグを食べる。
「そうね……。驚きの美味しさだわ……。だから、ミリャナはそんなにふくよかになっているのね?」
リャナがミリャナを見て微笑む。
「もう!お母さん!気にしてるんだから言わないで!……へへへ……。元ちゃんのおかげよ!」
一生懸命元気アピールをしてくれるミリャナ。ポタンは、ミリャナに抱かれニコニコしている。
元気は幸せそうなミリャナを見て嬉しい。一生懸命アピールしてくれるのも嬉しい。しかし思う……。やっぱり何か違う。と……。
「あの……。俺……ポタンとアイリスと一緒に、ユートピアに引っ越そうと思います」
「え!なんで!?」
ミリャナが驚き、ポタンの耳がピクリと反応した。
「何でって……。やっぱり……いっときは家族と過ごすのが良いかなって……」
「何で!?今まで通り一緒に暮せば良いじゃない!」
「だって、やっぱり……。俺がいると気を使っちゃうだろ?ミリャナ……。それに……ポタンも……」
「パパ……。私は……」
「ハハハ……。ずっとニコニコ笑顔って……。何処のいい子になるつもりだよ。ポタン……」
「それは……」
ポタンがシュンとする。ポタンがずっとニコニコする事など無い。その姿が元気は嫌だった。
「旦那様となら、私は何処でも良いですよ……」
アイリスも普段よりも気を使っていて静かだ。
ミリャナも、元気に気を使って空回りしている。
元気はミリャナが幸せな姿が見たいのであって、気を使う姿では無かった。
「……だが、元気。恩人を追い出す事は出来ん……ミリャナをやるかどうかは別として……。それにポタンとアイリスは子供だ」
「そうね、気を使い過ぎよ。……それにアピールし過ぎよ。ミリャナ……。あんな事をされたら、誰でも気を使うわよ……」
「そ、それは……」
リャナに諭されて、ミリャナがシュンとする。
「はぁ……。本当に貴方はダルドリーに似て、やり方が下手過ぎるのよ……」
「下手って……。俺は何もしてないじゃ無いか?」
「結婚を断られたからって、家を勝手に飛び出したのは誰よ?」
「そ、それは……」
リャナに諭されて、ダルドリーがシュンとする。
「それに、元気?貴方も、自分の望みと、本音を言いなさい……。貴方は気を使っているつもりでも、子供に気を使われると良い気分では無いわ」
「はい……」
ミリャナとダルドリーを見て親子だな〜。と思っていた元気もシュンとしてしまった。
「で、元気はどうしたいの?貴方が気を使うと、私達も気を使う事しか出来ないの」
リャナの鋭い視線につられて、みんなの視線が元気に集まる。
「俺は……。今まで通りに暮らしたい……でも、俺……家族とか……わかんなくて……」
「不安なのね?」
「はい……」
元気がそのまま沈黙する。
「はぁ……。面倒くさいなぁ……。いつも通りが良いなら、いつも通りにすればいいだろ?」
ミールがフォークを持ったまま元気を指差した。
「ミール。行儀が悪い……いつも通りって何だよ?」
「部屋を作って、ハイおしまい。で良いんだよ」
何事でも無いように、ミールが答える。
「ミリャナの家族で両親なんだぞ?それを、そんな適当に……」
「家族なんて適当で良いんだよ。思い合うのはいいけど、気を使い合うのは違うだろ。俺やフェルミナ。森のエルフ達は、お前にとってなんだ?只の友達か?隣人か?僕はお前を兄弟だと思ってるぞ?」
ミールがそんな事を言いながら、パクリとハンバーグを口に放った。
「ミール……。お前。時々、いい事言うのやめろよ……。反論出来なくてムカつくから……」
「ふん。いつも通り。やりたいようにやれば上手くいくさ、馬鹿は考えるだけ時間の無駄……って事でさ、ちょっと後で金貸してよ。アルトとデートするお金がさ……へへへ……」
「お前……。さっきの感動を返せよ。そしてちゃんと返せよ。ってか働け馬鹿」
「そろそろ、何かするよ。涼しくなって来たし……。その……。俺も、アルトと……ね。付き合い始めたし……」
ミールが頬を赤くする。
「え?今更かよ?何赤くなってんの?いつも一緒にいたろ?」
「今更って!お前に言われたくねぇわ!?……もう良い!話さない!」
ミールが怒ってしまった。
「ご、ごめんて……。なぁ?聞かせろよ〜。どんな感じ何だよ〜?もう、ちゅ〜したか?」
「……そりゃ。まぁ、なぁ?」
「そ、そうか!やるなぁ〜。ミール」
へへへ……と二人で笑い合う元気とミール。
「ちょっと、貴方達……。食事中よ……」
「あ、はい……すいません……」
リャナに怒られ元気は、我に返る。
「ハハハ……。ミールもそう言う歳になったのか……。この前までは子供だったのにな……。よし。わかった!元気。俺達に部屋を準備してくれ!」
「そ、それは構いませんが……」
「俺達はお前にこれから遠慮しない。だからお前も遠慮するな!ここに残れ!良いだろリャナ?」
「そうね……。ポタンもアイリスもいるし……。ミリャナももう、アピールしなくていいわ……。元気の事が好きなのはわかったから」
「うん……」
ミリャナが恥ずかしそうに、でも嬉しそうにうつむく。
「よし!実はな元気!俺はこう言う部屋が欲しいんだが……」
その後、ダルドリーとリャナの部屋の話を題材に夕食が進み。元気が家を出ると言うお話は、有耶無耶になった。
「元気……。このお料理、明日から教えなさい。良いわね?ポタンやアイリスも一緒に習いましょう……。特にアイリス……。貴方……ミールみたいな雰囲気が出てるわ……。危険よ……」
「元気は強いらしいな……。毎朝、俺の稽古に付き合え!俺より弱い奴にミリャナはやれんからな!ポタンやアイリスも強い男が好きだろう?」
ダルドリーとリャナの遠慮の無い物言いに、大人の気遣いを感じた元気なのであった。
ちゃちゃっと終わらせるはずでしたが、無理でしたw
ミリャナのパパママが適当なキャラで言い訳がありませんでしたw
ギャグは少なめですが大事なシーンではあると思います。
次回こそ、章切り替えの最終話です!
ブクマ:評価:コメント等などよろしくお願いします。




