お礼と報酬
さて、世界の創造主ラストの報酬とは?
「僕は、この世界の意識が具現化した存在なんだ」
「世界の意識……。嘘だろ?……と言いたいけど、嘘をつく必要も無いしな~。う~ん。どう反応すれば良いのか解らん……」
「ハハハ……。どうもしなくていいよ。そのままでいいんだ。ミリャナさんも、気を遣わないでね」
「う、うん……。解った……。でも、二千年って、ずっと独りでここにいたの?」
「ずっと。じゃ無いよ。一応、世界を管理しなきゃだし。時々は、外に出るんだ。だけど、もう今は、殆どやる事が無いんだ」
「何でだ?色々と遊んだりすれば良いじゃ無いか?」
「フフフ……。何億年かこの世界にいるんだ。そんなにやる事も、もう、無いよ。人類の進化も世界の発展も、もう、僕の手を離れてるし……。僕は、見てるだけだ」
そう言って寂しそうに笑うラスト。その姿にたまらず、ミリャナが声をかけた。
「……。ねぇ?ラスト……。今日は、一緒にご飯を食べましょ?駄目かしら?元ちゃん?」
「駄目じゃ無いさ!大歓迎だよ!一緒に行こうぜ、ラスト!」
「ハハハ……。ありがとう。二人共、優しいね……。フフフ……。でも、今日は、用事があるんだ。だから……今度お邪魔させてよ」
「あぁ、いつでも来るといいさ。ラストは、フェルミナやマーリュクの様な、問題児じゃ無さそうだからな!ね!ミリャナ!」
「……そうね。いつでも待ってるわ」
ミリャナがラストにニコリと笑顔を向ける。
「あ!そうだ。ミリャナさんに、遊んで貰ったお礼をしなきゃ!それに……。いきなり連れて来ちゃって、怖い思いをさせちゃったし。そのお詫びも」
そう言ってラストもミリャナへ、ニコリと笑顔を返す。
「お詫びも。お礼もいいわよ。私も、楽しかったし」
ミリャナがそう言って元気を見る。
「ほほう。ミリャナは俺が、ビリビリしてたのが楽しかったんだね?」
「そ、そんな事!……。少しだけ……フフフ……」
「まったく。酷いぜ……ハハハ」
「アハハ……。元気のあれは、本当に酷かったよ。けど、面白かった……」
「そりゃ、良かったよ。今度。ラストも座ると良い。俺が良いところをいっぱい言ってやる」
「アハハ。遠慮しとくよ。意地悪されそうだ。……今日はとても楽しかった。だから、何かお礼がしたいんだ」
再び。ラストがミリャナに笑いかけた。
「お礼って、言われても……」
「何でも良いんだ……あるでしょ?叶えたい……。叶わないけど、叶えたい願い事が……。僕は知ってるよ……」
「え……」
ミリャナがそれを聞いて固まってしまった。
「俺と結婚したいとか?」
元気がそう言うと、二人が無言で元気を見る。
「……ご、ごめん。続けて……」
元気はお茶を一口飲むと、お口にチャックをする事にした。
「で、でも……。そんなの……私だけ……」
「……いいんだよ。フフフ……。世界にルールは作っているけれど、それは、世界規模で起こると困る事。であってさ。ミリャナさん一人の願い事で世界が困る事は、無いんだ。……。だから言ってごらんよ」
ミリャナが、言おうかどうか。言っていいのかどうか迷っていると、元気のお口のチャックが、さっそく壊れた。
「ミリャナ。言ってみればいいじゃん。誰も困らないんでしょ?」
「うん。……だけど、私だけが……良いのかなって……。私……遊んだだけ……なのに……」
「ミリャナが、何を迷ってるか知らないけどさ。良いんだよ。……それは何故かと言うと!俺がミリャナを好きだからだ!」
元気はそう言うと、腕組みをして、ぐぐぐっと胸を張った。
「……。何を言ってるの元ちゃん?……真面目な話しをしているのに……」
ミリャナが真顔で怒る。
「ごめん。気持ちが先走った……。ミリャナ。君がいたから、俺がここにいるんだよ?」
「……。それとこれとは……」
「関係あるさ、ミリャナが言ってくれたじゃん。俺のお陰で、皆が幸せそうだ。って。それは、ミリャナがあの日。俺を救ってくれたからだ」
「そ、それは……。たまたま……」
「いいや!たまたまはあるけど、たまたまじゃ無い!考えてもみてよ。助けてくれたのがフェルミナとかだったら、俺。今頃グレてるか死んでるよ?」
「そ、それは……」
ミリャナは言い返せなくなる。現にミールの言葉遣いが、フェルミナと遊ぶ度に悪くなって行ったからだ。
「助けてくれたのがミリャナだったから、俺は頑張れた。皆が笑顔になったんだ。……だから……少し位のわがままなら、良いんじゃ無いかな?」
「……………………」
ミリャナが黙ってしまった。
「アハハ……。良いな~二人は。僕もしてみたいよ。そんな……。恋人関係って言うんだっけ?恋?恋愛?そういうの憧れるよ」
「こ、恋!」
ミリャナが、ビクリと反応する。
「こ、恋!これは、恋なのか!?好きで好きでたまらなくて、ずっと一緒にいたくて、カプリとしたい。これが恋なのか!?」
「元気のは恋ってより。変に近いけど、好き同士何でしょ?それに……付き合ってるんだよね?」
ラストがニヤリとして元気に問いかける。そして元気が固まる……。
お付き合い……言ってない……。元気は先走り過ぎて、先に結婚を申し込んでしまっていた。
ミリャナが恥ずかしそうに、元気を見る。
「そ、その……。あの。ミリャナさん……。……。僕は、アナタの事が好きです。結婚を前提に……。お付き合いしていただけませんでしょうか?」
元気の心臓が恥ずかしさで、バックンバックンと鳴る。
「……。はい……」
ミリャナが恥ずかしそうに、でも嬉しそうにそう答えた。
「ハハハ……。何か、ムズムズするねぇ~。ね!元気!今、どんな気持ち?どんな気持ち?」
ラストの目が、興味でキラキラ輝やかせながら、元気を見る。
「うるさいなぁ~。もう……。う、嬉しいよ……。凄く嬉しいよ!」
元気は恥ずかしさのあまり、ラストから目を逸らした。
「ハハハ。これは、お祝いしなきゃね!ミリャナさん……。誰に一番。祝って欲しい?」
ラストが笑顔でミリャナを見る。すると、しばらく沈黙した後、ミリャナが口を開いた。
「……そ、それは……ね。……お父さんとお母さん……」
そう言うと、ミリャナがうつむいてしまった。
「うん。じゃ、そうしよう!」
ラストがそう言うと、指をパチンと鳴らす。
「ラスト。そうしよう。って……。一体何したんだ?」
「何って。ミリャナさんのお父さんとお母さんを生き返らせたのさ」
そんな事を普通に言うラストに、元気とミリャナが驚く。
「生き返らせた。って、魔石も何も無いんだぞ?どうやって?」
「死んだ人は、僕に戻るんだ。だから、僕の中に戻った者を世界に戻したってだけさ」
ラストがニコリと笑う。
「ほ、本当なの?その……。お父さんとお母さんが……。生き返ったって……」
ミリャナの唇がわなわなと震える。どう反応して良いか、解らない様子だ。
「フフフ……。家にいるよ。会いに行くといいよ……。送ってあげる」
「え?……。ちょっとまーー」
ミリャナが何か言おうとして。途中で消えた。
「お前!ミリャナに何したんだ!」
消えたミリャナを見て、焦った元気が怒る。
「しゅ、瞬間移動だよ。いつも元気もしてるじゃない……。怒らないでよ……」
「ご、ごめん……。そうか……。でも、本当に……生き返ったのか?普通。信じられないぞ……」
「……生き返ったが、両親はゾンビだった……。とか言う。酷いオチは無いから……。させないから、安心して。元気もすぐ会えるさ」
「オチって……。ラスト……。そんなの可哀想過ぎるだろ……。でもお前……。本当にこの世界そのものだったんだな……」
「ハハハ……。やっと、信じてもらえたみたいだね。……。ではでは、次は元気の番だ……」
「え!俺の番って事は!何でもかんでも願い事が叶うの!?」
元気が前のめりに興奮する。
「いや、元気のは、ダンジョンの報酬だから。美人のパンツが似合うお姉さんメイドは出さないよ?」
「……。考えを読むのは辞めて戴きたい。……まぁ、ミリャナがいるから、いなくて良いけどね。……それで、報酬って?」
「この世界を君にあげるよ。僕さ、これから君の世界に……。遊びに行くんだ」
そんな事を言って。ニコリと微笑むラストなのだった。
世界を……あげる……。異世界へ……遊びに行く……。
そんな事よりもだ!ラストのたき付けで!ミリャナが姉じゃ無く、彼女になったんだが!どうする!
まぁ、どうにでもなりますねw
次回か次々回でダンジョン編は終了です。
しかし、お話しは終わりませんw
もうしばらく、お付き合い下さい(*^_^*)
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