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幸せ

ちょっと、後半シリアスかな?

 

 ミールとすったもんだしていると、ミリャナが帰って来た。


「ただいま?さっき誰かと話していた気がしたんだけど大丈夫?」


「う、うん、最近、独り事がおおくてさ……大丈夫!」


「そう?ならいいけど、何かあったら直ぐに教えてね。話を聞くしか出来ないかもしれないけど、力になるからね」


「うん、ありがとう!」


「何か凄く良い匂いがするわね、何の匂いかしら?」


「今日はさ、ちょっと面白い事があってね。とりあえず座りなよ!色々話すことがあるんだ!」


「フフフ、なんだかとても嬉しそうね、話を聞くのが楽しみだわ」


 ミリャナはそういうと台所で手を洗った後席についた。


「これは何かしら?見たことないけれど、食べ物かしら?もの凄く良い匂いがするわ」


「フフフ、まぁ食べて見てよ!」


 元気はミリャナに食事を勧めると、スマホの録画ボタンを押す。


「それはなぁに?黒い板から音がした気がしたけど?」


「諸々後で話すよ、さぁ食べてみて!」


 ミールにはかしこみで送ってある。待ち遠しくて堪らない様子だ。ミールは元気の隣に、ミリャナは正面。ミリャナの後には玄関のドアがある。


「じゃ、ありがたくいただきます!」


 ミリャナがハンバーグを口に含む。


「うみゃぁぁぁぁうあいひぃひぃひぃ!」


 ガツガツ食べ始めたミールが五月蠅くてしようがない。


「えぇぇぇぇぇぇ!?何これ!凄く美味しいわ!なんて例えたらわからないけど、美味しいわ!」


 ミリャナが目を見開き、ほっぺを染めながらハンバーグを口へと放り込む。ミールと違い、食べ方は綺麗だがいつもよりスプーンの動きが早い。


 ハンバーグを飲み込むたびに、油で湿ったぷるんとした唇から、んはぁ……。っと艶めかしい吐息が漏れる。

 ハンバーグの美味しさにうっとりしているミリャナのほっぺやおでこには、うっすら汗が滲んでいる。そこに細毛がはりつき……妖艶でなんだかエロい。そして、ほっぺから流れる汗が胸元へとつつつ……っと流れて行き、深い谷間に消えさった。


 ゴクリと息を呑み。……ハンバーグってこんなにエロい食べ物だったっけ?と困惑する元気。


 その後、コーンスープのトロトロっとした甘さと、パンのフワフワ感にも驚きながらミリャナが食事を済ます。


 ずっと元気の隣でやかましかったミールも、食事が終わって大人しくなった。


「とっても、おいしかった!ありがとうね元ちゃん!」


 笑顔でそう言うミリャナの、お胸のぽっちがちゃんとおっきしているので、相当喜んで貰えたようだ。と元気は嬉しくなる。ミリャナは正直者なのだ。


「ミリャに喜んで貰えて、俺も嬉しいよ!そうだ!まだあるんだ!プレゼント!」


 元気はテーブルの下から、スニーカーと靴下を出した。


「え?靴かしら?それと手袋?どうして?」


「これは、手袋じゃなくて靴下だよ。いつも木の靴を履いてるし、町まで結構あるくんでしょ?少しでも楽になったらな~と思ってさ、それに時々靴擦れするって言ってたろ?」


「言ったけど……。木じゃない靴なんて履いてるのはお貴族様位なのよ?凄く高価な物じゃない……どうしたのそれ?……まさか、元ちゃん……。ミールと同じように……」


 さっきまで幸せそうにしていたのに、ミリャナが凄く不安そうな顔をしている。


「いやぁ、貧乏だとついつい手癖が悪くなっちゃうんだよねぇ」


 へっへっへ。とミールが小悪党の様に笑う。今度こいつの前で、何か美味しい物を食べて自慢してやろうと元気は心に決めた。


「ち、違うよミリャ!実は俺、魔法を使える様になったんだ!」


「ま、魔法!?」


 ミリャナの顔から表情と色が一瞬にして消え、息使いがはっはっはっは。と短く、早く、そして荒くなる。


「あ、貴方も……私をおいていくの?私はまた独りぼっちになるの?」


 ミリャナの身体が小刻みに震えだし、ぽつりぽつりとミリャナの瞳から涙がこぼれて行く……。その瞳の焦点は小刻みに震え、何処にも定まっていない……。不安が極限に高まると時々起きる。ミリャナの……発作だ。


 失敗した!最近は泣かなくなっていたのに!と焦る元気。元気がミリャナの心の地雷を踏んでしまったのだ。


「泣かないで姉さん!おい!どうにかしろって!元気!」


 ミールもオロオロしている。


「ミ、ミリャ!泣かないで!俺はどこにも行かないから!泣かないで!ミリャが悲しいと俺も悲しいよ!」


 元気は、語彙力が足りない事に歯痒さを感じ、必殺。ひょっとこ踊りをしようと立ち上がる。


「ねえさん!愛しているよ!大好きだ!この世の何を捨てても!もう二度と、僕も何所にも行かない!ほら、元気!言って!伝えて!僕の気持ちを伝えて!ほら早く!ほらほらほら!」


 ミールがわめきながら元気の服を引っ張り、体を揺する。ぐぬぬ。横でうるさい!とイラッとしながら、ミールの言葉を覚えている限り、元気は復唱した。


「この世の何を捨てても、何所にも行かない!大好きだ!愛してる!」


 ミールにつられて口から出た言葉は、他人が言うと、とんでもない物だった。


 元気は、鼻血が出るかと思うほどに、体中の血が駆け巡る。


 騒がしかったミールが、今は静かに元気を見ながらポカンとしている。

 そして元気がミリャナへ恐る恐る目をやると、ミールと同じ顔でポカンとしている。

 あぁ、姉弟だなぁ~と、元気は感心する。とりあえずは泣き止んで貰えた様だ。


 元気が椅子に座ると、しばらく気まずい沈黙が部屋の中を支配した。


「げ、元ちゃん、き、気持ちは嬉しいけど、一緒に住み始めて……あんまり時間はたってないし……。まだ早いと……思うのよそういうの……」


 ミリャナがそう言いながら、そっと耳を隠す。……ペロリとされる。と思ったのだろう。


「あぁ~!もう!違わないけど、違うんだ!

 ミリャ!と、とりあえず何所にも行かないから!これ、受け取ってよ。日頃のお礼だからさ!捨てるわけにもいかないでしょ?」


 ミールの事は今は言えない元気。


 「…………。じゃ、じゃぁ……。フフフ……ありがとう」


 ミリャナは少し戸惑っていたが、プレゼントを受け取ると大事そうに、胸に抱え込んだ。


 元気は、泣き止んだミリャナを見てホッと一安心。発作が出ると手が掛かるが……自分がミリャナに必要とされている。と確信出来て、元気はそれさえも嬉しい。……だからと言って自分から地雷を踏みに行く訳ではない。


 落ち着いたミリャナが嬉しそうにプレゼントを広げて見る。


「わぁ。可愛いわ!……あら?これは?靴の中に何か……」


「それはね!ブラジャーとパンツだよ!いやぁ、ミリャナぽっちを町の人に見せたく無いからさ!」


「ぽっち?」


 首を傾げるミリャナに元気が自分の胸の辺りをコリコリっと指でなぞると、ミリャナが元気の真似をする。そして何を意味するのかに気付き目を見開きなから赤面し固まった。


「…………あの。元気さん。わたしお部屋に戻るわね。お皿洗いお願いします。お休みなさい」


  胸を押さえながら、そそそっと部屋に戻って行くミリャナ。あからさまな他人行儀になってしまった。


 「最近、仲良くなって来てあだ名で呼び合うまでになっていたのに!お前のせいだぞミール!」


「ぶはっ!あれは、僕でも引くわ……ぽっちって……センスはあるけど。女の人に面と向かって言う事じゃ無いでしょ?お前、面白すぎだって、アハハハ……」


「お前、当分、ご飯とおやつ無しな」


「な、何でそうなるんだよ!おい!」


 その後。謝り散らかしてくるミールを背に、洗い物を済ませると、部屋に戻りベッドに潜る。昼間に魔力を結構使ったせいか、眠気が強い……ミールは昼間改造した屋根裏へ戻った。


 屋根裏は今、ネットカフェの個室みたいになっている。居心地は悪くない。元気はミールに、幽霊は夜寝ない。と聞き。結構な量の本とゲームを出してやったのだ。


 その結果。魔力が半分以上消えた。


 明日、何しようかぁ~。と元気がウトウトしながら考えていると、部屋のドアが開いてミリャナが入ってきた。


 元気が寝る前に渡した。兎ちゃんのパジャマを着ている。勿論お揃いだ。


 少し大きめに作ったので、ちょこんと飛び出したお手々が、とても良き。


「どうしたの?」


「あ、あのね、な、何もしないから、今日は一緒に寝てもいい?」


「うん、いいよ」


 ミリャナがベッドに入ってくる。ミリャナは何もしないからと言ったが、俺が何もしないとでも思っているのだろうか?普通は逆じゃ無いのか?と元気は思い。エロ展開を期待した。


 だが、ベッドに入ってきたミリャナの目の周りが、真っ赤に腫れているのを見て。そんな事は考えられなくなった。


 しかし、背中に当たるふくよかな2つのプリン体はどうしたものか?


 一部固いが。こんなに柔らかい物なの?とエロ展開は辞めた元気だったが、ドキドキはしてしまう。


「今日はごめんね。その、何か変な感じになっちゃって。慰めてくれたんだよね。ありがとう」


 元気の頭を撫でながらミリャが話し出す。


「五年も独りで居るとね。夜が怖いの……。明日はどうなるんだろ?ミールが帰って来るかもって思う半面、もしかしたらって。だからね、元ちゃんには本当に感謝してるの、独りぼっちじゃ無くなったから」


「ミールは、どんな弟だったの?」


 ミリャナは少し考えたあと、少し笑って答えてくれる。


「良く悪いことをして、お母さんに怒られてたわね。怒られた後は私の所に来てぎゅってして~って。フフフ、甘えん坊になるの。それでぎゅってしてあげると、また遊びに行って、悪いことして怒られてたわね。早く会ってギュッてしてあげたいわ」


 ミリャナの声が微かに震える。


「……そのうち、会えるさ」


「フフフ……。うん、そうね。きっと会えるわ……。それまで私もしっかりしなきゃね」


 そんな事を言うミリャナに対して、元気の胸がチクリと痛んだ。


 2人ともお互いを愛しているのに、もう二度と会えないのだ。


 内緒にしろ。と言ったミールを恨んだが、恨んだところで元気には、ミリャナに真実を伝える勇気は無かった。


 話し終わると、ミリャナの呼吸が寝息に変わる。誰かに抱かれて眠るのは、こんなに心地が良いのか。とミリャナの寝息を子守歌にしながら。元気も眠りについた。


 朝、元気が目覚めると。ミリャナはまだ眠っている。綺麗だとしか言い様がない、寝顔を眺めていると、ミリャナがゆっくりと目を覚ました。


「おはよ……」  「お、おはよう!」


 ミリャナが少し頰を染め、微笑する。すると元気の心の中に、暖かい物が溢れてくる様に感じた。


 「幸せってこういう感覚なのかな?心がふわふわする……」


「フフフ……。そうかも……。きっとそうね」


 ミリャナと布団の中で笑い合い。幸せな気分で天を仰ぐと……天井から顔だけ出したミールが、はんにゃ面の様な形相で睨んでいた。


魔法も覚えてミリャナと良い感じです。……何か……許せませんねw


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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