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気持ち。~ミリャナ~

元気が少しだけ大人になりました。

 「パライズアロー」

 ミリャナが大トカゲに麻痺矢を放つと、大トカゲが痺れて動けなくなる。そして、ナイフで一撃。トドメを刺した。


 「うむ、良い動きでござる」


 「ありがとう。ろしさん」


 「よし、少し休憩にするでござるか」


 「そうね……」


 ミリャナと露死南無天は、魔石を回収するとその場に腰をおろした。


 「すまぬ。ミリャナ殿。実は昨日。喧嘩を見てしまったでござる」


 「え!そうなの……何だか恥ずかしいわ……ごめんなさいね。変なところ見せちゃって」


 「気になさるな。昨日のあれは、ミリャナ殿が怒るのも当然でござる!」


 「でも、元ちゃんは、私の心配をしてくれて言ってくれたのよ……でも……」


 「許せなくて当然。ミリャナ殿はグリズリーと本気で命のやり取りをしたのでござる。そして敗北した。ミリャナ殿はとても悔しかっただろう。それなのに。負けたからもう、戦ったら駄目って……酷いでござる。拙者も負けるのはすかんでござるゆえ、勝つまでやるでござる」


 露死南無天があぐらをかいて、腕を組みフンッと鼻を鳴らす。ミリャナはその光景が面白くてフフフ……と笑ってしまう。


 「でも……。心配かけちゃったし……。ついつい飛び出しちゃったけど……これでいいのかなって……」


 「何を迷ってるか知らんけでござるが。いいのでござるよ。ミリャナ殿の人生はミリャナ殿の物でござろう?」


 「私の物?」


 「なんで、不思議そうな顔をするのでござるか?当たり前ではないか、ミリャナ殿は誰のために生きているのでござるか?」


 「……げ、元ちゃん?も、勿論ポタンやアイリスも!ろしさんもよ」


 「それは、うれしいでござるが……。最初に出てくる答えが、人の為でござるか……。ふむ。ミリャナ殿の生い立ちを、よければうかがっても良いでござるかな?」


 「えぇ……」


 ミリャナは両親が中央へ行ってからの話しを言って聞かせた。

 露死南無天は最初。普通に聞いていたが、途中からぶひんぶるひんと泣いてしまった。


 「こんな感じなの……。大丈夫?ろしさん?ちょっと泣きすぎよ?」


 「ブスン……。す、すまない。歳を取るとどうもいかん……。あ~。うん、もう、大丈夫でござる!しかし、そんな過去があったとは。そして何故、元気とミリャナ殿の仲が良いのかも良く解った。そして、何故不思議な顔をしたのかも」


 「だから、元ちゃんのおかげで生きてるっていうか……幸せっていうか……未来の……そのあの……」


 ミリャナがひとりで勝手に赤くなっていく。


 「あいわかった。のろけは、お腹いっぱいでござるよ」


 「の、のろけ!そ、そんなんじゃ……ないわ……ろしさんの意地悪!」


 「ぶるっハッハッハ!スマンすまん!ミリャナ殿が可愛くてな。少しからかって見ただけでござる!青春でござるなぁ~」


 「もう!」


 「しかしな、ミリャナ殿。それはそれ、これはこれなのだ」


 「それはそれ?これはこれ?」


 「好きだから許そう。好きだから我慢しよう。それじゃ、恋は続かんでござる。ミリャナ殿の気持ちとミリャナ殿の好きという思いかな?例えが難しいでござるな……」


 「好きだからって我慢しなくても良いって事?」


 「うむ、ミリャナ殿は賢いでござるな!相手の良いところばかりを見て好きだと言うのであればそれは憧れ……幻想でござる」


 「幻想……」


 「ミリャナ殿は元気の悪いことろはどれ位思いつくでござるか?」


 「えっと、すぐクンクンするところ。誰にでも甘えん坊な所。パンツが好きなところ。言っても聞かない所。すぐ女の子を見るところ。女の子とばっかり遊ぶところ。すぐカプリとしてこようとするところ。時々丸め込もうとしてくるところ。ズルいところ。私のパンチをクンクンするところ。私のパンツ履くところ。時々自分勝手になるところ。すぐスケベな顔するところ。お風呂覗こうとするところ。後は……」


 「わ、わかった……。もう、大丈夫でござる……。ミリャナ殿は良く我慢してるでござるな……。しかし、それでも元気の事が好きなのでござろう?」


 「う、うん……」


 「それが、好き。という相手への気持ち。そして、もう、負けたくない!頑張ろう!これはミリャナ殿の自分自身の気持ち。これは他人が簡単に触れていい気持ではないのでござる」


 「自分自身の……気持ち……」


 「生い立ちからして……。人の為に。と頑張ってきたのでござろうが。グリズリーとの戦いで、自分の気持ちが目覚めたのでござろう。そして、それを傷つけられて。好き。な相手なのに、怒ってしまった。許せない。普通のことでござる」


 「普通?これが……普通?」


 「ぶるっハッハッハ!普通とは言ったが、人それぞれでござる。だが、その気持ち。プライドは誰にでも本来ある物でござる」


 「プライド……難しいわ……でも何だかわかった気がするかも……ありがとうろしさん。気分がスッキリしたわ!」


 「うむ。それは良かったでござる!問題は元気の方だな……。お!良いことを思いつたでござる!」


 「なぁに?うん……うん……え!?そんなこと……ろしさん……。出来るの?」


 「問題無いでござる」


 「でも……かなり怒ってたから……くるかしら?」


 「来ないわけ、無いでござろう。ミリャナ殿は来ないと思うでござるか?」


 「……。草陰とかから様子を見にくるとは思うけど……」


 「それが、答えでござる」


 そして露死南無天は、元気の無自覚を自覚させる為の作戦を、しっかりとミリャナへ伝えたあと、元気がコソコソと草むらに潜むのを確認して、作戦を開始した。


 「おいおい!ねぇちゃんよ~。俺と逢い引きしようぜ~!」


 「い、いやよ。だ、誰か~助けて~!」


 元気がミリャナの様子を、草むらのカゲからそっと覗くと。謎の覆面忍者が棒読みで叫ぶミリャナを、ナンパしていた。


 元気は、それを見て思った。ここで、さっそうとミリャナを助ければ、ミリャナに謝る口実が出来る!と……元気は本当にお馬鹿なのであった。


 「おい!お前!お、俺の……よ、嫁に何をしてんだぁ!」


 「よ、嫁!?ハッ……。げ、元ちゃん!あれ~、助けて~あれ~」


 「こ、これは……酷いでござるな……」


 露死南無天の指示通りに、あれ~。と言いながらくるくると棒読みで回るミリャナ。


 しかし、それはミリャナが縄で縛られた後にするアクション。ミリャナは恥ずかしさと、照れとで。既にいっぱいいっぱいだったのだ。お馬鹿なのでは無い。


 「待ってろミリャナ!」


 「この演技で本当に食いつくとは……。恋は盲目。良く言った物でござる……」


 「おらぁ!」


 元気が竜の魔法剣を出すと、全力で忍者へときりかかる。そしてそれを忍者はひょいっとよけた。


 「ハッハッハ。わっぱよ。そんな攻撃きかんでござる。……ほれ。ほれ」


 忍者が空へと飛び上がり。魔力で練った炸裂弾を元気に投げる。すると元気の周りで爆発が無数に起きた。そして爆発が終わると、元気が忍者に吠える。


 「いってぇな!おい!お前!死んでも知らないからな!本気で行くぞ!」


 元気はフェルミナの翼を出し、空へと忍者を追撃する。しかし、忍者はそれもひょいとかわす。そして、かかと落としで元気を地面へと叩きつけた。


 ズドーン!っと大きな音と共に地面に落ちた元気は、すぐに起きあがると。上空の忍者に爆裂魔法を撃ちこむ。するとバゴーンと大爆発が起こり。辺り一帯に大きな爆音と衝撃破が走った。


 「あ、やり過ぎ……」


 「油断し過ぎでござる。馬鹿者」


 「え!?」


 ズドン!と、元気は背後から忍者に蹴り上げられ、その衝撃と痛みで息が出来ない。


 ドームの天井へと飛び行く中で、不安そうに見上げるミリャナの姿が、元気の視界に逆さに映る。


 守らなきゃ!と元気は思い。全速で空中を旋回し。そして、剣に魔力を貯めて巨大な斬撃を繰り出した。


 「うおぉぉぉぉぉ!!!」


 斬撃が地面にめり込み。ズドォン!と辺り一帯砕け散るが、忍者の姿はない……。


 「フフフ……声を上げても威力もスピードもあがらんでござる」


 「くそ!」


 上空にいるはずなのに、何故か背後にいる忍者に元気は驚き、剣を無造作に叩き込む。


 「うおらぁ!……でいいでござるかな?」


 「!?」


 元気は、剣を叩き落とされてしまった。


 「ではあの娘は、いただいて行くでござる。わっぱ……。お主が弱いからあの娘はさらわれるんだ。残念だったな……」


 「ふざけるな!!!」


 元気は両手に魔力を込め。忍者にこぶしを撃ちこみ。高速で乱打する……。だが、全ていなされた。


 「おや?もう、終わりでござるかな?では、こちらの番でござる」


 忍者はそういう言って、背中から翼を生やすと両手に魔力を込める……。そして元気へと拳の乱打をズダダダダダ!っと叩き込んだ。


 「あがががががぁぁぁぁぁはがががが!!!」


 「ほう、まだ、意識があるか……。凄いでござるな……。では、最後……。に。あの娘とお話しをさせてやろうかな?……ほれ」


 ドカン!と元気は腹を蹴られ、ミリャナの横へと窒息しながら落ちていく。そして地面に落ちると。元気にミリャナが駆け寄った。


 「これは、やり過ぎよ!」


 「優しさだけが思いやりとは限らん!」


 「でも!」


 「わっぱ!情け無いでござるなぁ!女の子に助けて貰うなど、恥ずかしい……恥を知れ」


 「黙れ……黙れ!黙れ!!!」


 元気はそう吠えると忍者に向かって突進する。こうなってしまえばもう、終わりだ。


 「元ちゃんあれは……ーー」


 元気にはもう、怒りで何も聞こえない……。


 「うらぁ!!!」


 「まったく……。怒ればなんとかなるのか?」


 「あ……え……?」


 全魔力、全神力を使った一撃だったが、パチンと手を軽くはたかれ、いなされた。


 「では、そろそろ、終わりでござる」


 「ががっぁは……」


 元気は喉を忍者に絞められ、息が出来なくなる。そして、忍者の腕を握り潰そうと力を入れるが……力が入らない……。


 「残念だったな。お前にはもう、明日は来ないんだ……。お前にはもう、あの娘を救うチャンスはもうない。残念無念でござるな……」


 「こ、殺す。し、んでも殺す。絶対殺す!!!」


 「お前には無理だ。弱いんだから」


 悔しい!悔しい!悔しい!元気は悔しさで涙が溢れた。


 「さて……そろそろ、終わろうか……」


 忍者が開いている片手を上げて、魔力で短刀を出す。そして、元気の目元にギラリと近づけた。


 「ま、待って……くだ……さい……。あ、あの子には……手を出さない……で下さい……お願い……お願いします……。俺は殺しても……良いから……お願い……します」


 「ふむ、ようやく折れたか……。やれやれ……。ミリャナ殿を拙者が殺すわけ無いでござろう」


 「え……?」


 かすれた声で元気が驚いていると、忍者がミリャナの元へと元気を連れて行く。


 「やり過ぎよ!ろしさん!元ちゃん!これ!早く飲んで!」


 ミリャナが忍者を怒ると、元気に急いでポタン特製ポーションを飲ませる。するとみるみるウチに傷が回復した。


 「あ、ありがとう、ミリャナ……」


 「だ、大丈夫元ちゃん!何処も痛くない?」


 ミリャナが半泣きで元気の心配をしていると、忍者がドロン!と露死南無天に戻った。


 そう!謎の忍者の正体は、まさかのまさか!あの!露死南無天だったのだ!


 「露死南無天!え?何で?」


 「元気に化けたのでござるよ」


 「でも、俺、全然……」


 「そりゃ、生死のさかいを彷徨った数と経験が違うでござるよ。同じ力ならば誰にも負けない自信があるでござる」


 「露死南無天って、本当は凄かったんだな……。見直したよ。でも、何であんな事したんだよ。酷いじゃないか!」


 「お前がミリャナ殿にした事をしてやったのだ。元気は口で言っても、わかりそうにない感じでござるからな……。どうでござったか?プライドをボロボロにされて、宝物奪われる気分は?」


 「ポタンに教えて貰ったのよりも、もっとずっと酷い気分だった……」


 「お前は娘に教えをこうたのか?まぁいい……。ほれ。元気……。嫁さんに言うことがあるのではござらんか?」


 ミリャナはシリアスな空気に飲まれ、嫁。に反応出来なかった。


 「あ、うん……あの。ミリャナ……俺、こんなにミリャナが悔しくて、悔しくて、悲しい気持ちになってるなんて、思ってなかった。ただ、仲直り出来ればいいや。って思ってた……。でも……露死南無天にやられて……わかった。本当に酷いことしたんだなって……」


 「い、良いのよ元ちゃん私だ……」


 「ミリャナ殿。さっき言ったでござろう?優しさだけが思いやりとは限らんでござる。ここで謝られたら元気の立つ瀬がないでござろうよ」


 「……。ありがとう。露死南無天……。だから、これからは、一緒に……なんだろ……えっと強くなりたい?違うな。なろう?なりたいけど、何か、違うな……う~ん……。一緒に頑張ろうかな?どういったらいいかわかんないけど……。二人の事は勝手に決める前に、これからはちゃんと相談するよ……。本当にごめんね。ミリャナ……」


 「うん……。私も……あんな態度とってごめんね……。私も初めての気持ちで、どうしたらいいかわかんなくて……あの……元ちゃん。私と仲直りしてくれる?」


 「こちらこそ……。お願いします」


 「はい……」


 元気とミリャナが手を握りあい……微笑み合う……そして……。


 「あぁ~!かいかいかいかい!背中がムズムズするでござる!甘酸っぱいでござるなぁ~!青春、まことに、たまらんでござる」


 露死南無天が芝生に背中をこすりつけている姿を見て、ふたりは笑い合い。そして……。仲直りのキスを。ちゅっ。としたのだった。



VS露死南無天はわけるつもりでしたが一気に行きましたw


露死南無天は戦国を生き抜いた忍者なので、まぁ、子供には負けません。


実戦経験を積むのとレベルだけあげるの意味の違いが伝わればいいなと思います。


ブクマ:評価:コメント等等。よろしくお願いします。

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