いざ、ダンジョンへ
ダンジョンへつきました!
元気は馬を引きながら、ダンジョンへ向かう。馬にはミリャナが乗っている。
「歩けば良いわよ。お金がもったいないわ」
ミリャナは最初そう言って、断ったのだがーー「じゃあ、俺がミリャナの馬になってあげるよ!ヒヒーン!」ーーと、町なかで四つん這いになり。元気がミリャナの周りを駆け回り。最終的に、周囲の目が恥ずかしくなってしまったミリャナが、折れて了承したのだった。
本来の名目は、ダンジョンへ行き、レベル上げや探索を行い。魔族戦に備える事なのだが、元気はミリャナとの初の遠出が楽しみすぎて舞い上がっていた。そしてすでに、本来の目的は霧散してしまっていた。
元気達が馬屋に行くと、白馬がいたのでそれをレンタルした。
ボロボロの馬小屋には似つかわしくない、毛並みの良い白馬、馬小屋に入った瞬間からジッと……その白馬に元気は見られていたのだった。
何処かで見た気がする、けど見たことない気もする、見た気がするかもしれないし、ない気もする。と白馬になんだかデジャブを感じ……そして、ミリャナの黒めのニーハイを見やる。
「……映え確じゃん」
元気はそう独りごちると。白馬を借りることにして、すぐさまミリャナを乗せた。
町の東門からダンジョンまでは、約1時間ちょっとだ。と門番の兵士が言っていた。
「何だか、どきどきするわね、ダンジョンってどんな所なのかしら?」
「う~ん。迷宮をイメージしてるけど、入ると森や洞窟ってパターンもあるし、行くまでわかんないかな?」
「そう……気を引き締めるなくちゃね!」
「ははっミリャナは俺がちゃんと守るから、気楽にいけばいいさ」
「それは、嬉しいけど……。私も頑張らなくちゃ……。そ、その……げ、元ちゃんの、お嫁さんになるには、強くならなきゃだし……」
「あ……そ、そお?ぼ、ぼかぁ、お嫁さんには元気でいて貰えるだけで、い、いいかなぁ……なんつって」
「もちろん、元気でいるのは大事だけど。私も元ちゃんの役にたちたいもの……。私だって、元ちゃんを……ま、守りたいわ……」
「ミ……ミリャナ……」
今日は邪魔者は誰もいない……。
一気に何処かへの階段を駆け上れるかもしれない!と元気がミリャナと見つめ合った時だった。
「ブルックシュン!ブルルル……」
白馬がクシャミをした。そして、ジッと元気をみる。元気は蹴られないか心配になった。
元気がそう思った時。またデジャブを感じる。前に何処かで……。少し考えたが、元気は思い出せなかった。
「元ちゃん、どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。僕のお嫁様」
「もう。元ちゃんのバカ……」
「ブルックシュン!ブルルル……」
元気がミリャナとイチャつこうとすると、馬がクシャミをするという、変な流れが出来てしまった。
馬のクシャミが面白い様でミリャナがクスリと笑う。それにつられて元気も笑う。
そうしながら、元気達は楽しくダンジョンへの林道をすすんだ。
林道を進んで行くと開けた空間が前方に見える。そして、開けた広い空間の最奥には、大きなとびら型の虹色に輝くワープゲートがあった。
「凄い、元ちゃん、冒険者さん達がいっぱいね!」
「う、うん。ビックリだ」
ゲート前までの一本道の両側には、アルカンハイトの噴水広場までの中央通りと同じように、様々な建物が建っていた。
宿屋、酒場、食事処、武器防具屋、魔石の買い取り屋……。様々な店が並んでいる。町に戻らずともダンジョン前ですべて賄える様になっているのだ。
ダンジョン前広場は既に一つの町になっていた。
広場をわくわくしながら元気達が歩いていると、周りの冒険者達が何か話しているのが耳に入ってくる。
「何処かの貴族か?可愛いな」
「貴族様のお遊びで、ダンジョンかよ?可愛いな」
「いや、あれは……町の聖女じゃないか?今日も可愛いな」
「あぁ、そうだ、聖女だ俺、毎日見に行ってたから間違いない。そして今日も可愛いな」
「どうしたんだ?今日は白馬に乗って……可愛いな」
「しっかし、子供連れは良くないんじゃないか?俺が変わりたい。アイツ、ムカつくな」
「馬引きの小間使いだろ?お手伝いでおこずかいでも貰うんじゃ無いのか?聖女にたかるなんて、アイツ、ムカつくな」
「あぁ、なるほどな。あんな子供、護衛になるわけ無いもんな。しかし、ムカつくな。」
「しかし、聖女は何で来たんだ?子供連れで?なんか、ちびムカつくな」
「あの子捨てにきたんじゃない?何かムカつくし」
「あぁ、なるほどな。それなら納得のムカつくだ」
冒険者達の注目を集めてしまったミリャナは、恥ずかしそうにうつむく。
そして元気は、コイツら町ごと爆破してやろうかな。と思ったが、哀れな男共がうらやましくて言っている戯言だ。と思うことにしてやめておいた。
「げ、元ちゃん……ここから歩くわ」
「そう?じゃ、手伝うよ」
そういって元気は馬からおりるミリャナのお尻を両手で支えるお手伝いをする。すると、ミリャナに睨まれてしまった。
少し、揉み揉みしたのがバレちゃったのだ。しかし、恥ずかしそうに睨まれるのも、またいっきょうと元気は思った。
馬からおりると、その後はそれ程目立つ事も無く、ダンジョンの入り口まで進む事が出来た。
ワープゲートの前には門番が立っており。元気達は兵士に冒険者カードを見せる。するとカードを見た兵士が、ハッとした顔をして仰々しく敬礼した。
「せ、せいじ……いや!元気殿!どうか、お気をつけて!」
「あ、ありがとう……」
防壁修復の時にいた兵士のようだ。詮索すると、天罰が下る。と言ったことを思い出し、心の中でごめんね。と元気は兵士に謝る。そして、ミリャナがゲートを見て不安そうにしていたので、元気は先に行ってみてくるね。と言ってワープゲートをくぐった。
するとテレビの画面が切り替わるのと同じ感覚で、パッと目の前の景色が変わり。目の前には、ドーム型の広大な草原が広がった。
ドームの天井には青空と雲があり。何処からともなく流れてくる、そよ風が心地よい。
草原の遥か向こうには、次の階層へと行くための物と思われるワープゲートが、米粒ほどの大きさで見える。そして草原の所々では、冒険者達がモンスターを狩っている姿が見られた。
ゲート前は、踊り場みたいになっており、階段を降りて草原に向かう感じになっている。手すり付きの安全設計だ。
元気はミリャナに早く見せたい。と思い。急いでゲートから戻ろうとした。
がしかし、急遽ミリャナを驚かせよう。と思いたち、元気は手だけをゲートから出すと……それを、揉み揉みした。
「ぎゃ!」
揉み揉みしていると、手をグイっとひっぱられ、指の先に激痛が走った。
元気は急いでゲートをくぐって広場へ戻る。すると顔を真っ赤にしたミリャナが、元気の指に噛みついていた。
「ご、ごめん!向こうからじゃ、見えなかったんだ。ワザとじゃないんだ!」
「まっひゃく……」
そう言いながら、元気の指を解放してくれるミリャナ。元気が指を見ると、結構強めに噛んだ様で歯型がくっきり残っていた。
元気はミリャナに噛まれた指を軽くふーふーすると……パクリとくわえた。
「な、何やってるの!元ちゃん!?」
「ふぇ?にゃにって、怪我をしたら舐めると治りが早いんだよ?知らない?」
「怪我はしてないでしょ!」
いつもの様に、元気とミリャナが言い合いを始めた。その時だった。
「仲が良いのは結構でござるが、後ろに人が並んでおるゆえ、さきに進まないか?」
と二人は誰かに注意された。
周囲の冒険者達は、元気達のやり取りにイライラしながら。順番待ちをしていたのだが。驚きで一斉に声の主に視線をやった。
「拙者は先に行っているでござるから、二人ともさっさと来るのだぞ、人様に迷惑をかけるのは良くないでござるからな」
そういって、白馬がカッポカッポと闊歩しながら、ゲートに入って行く。元気とミリャナは無言で顔を見合わせると、急いで白馬の後追ってゲートに入った。
冒険初日。元気が出会ったのはござると喋る白い馬だった。
やっとここで、登場です。
元気を見ていた馬……最初の方に一応ちゃんといますw
さて、正体はいかに!?
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