王国記念祭~終わりと始まり~
章の最終締めです。関係が……ぐぬぬ……。し、進展……します……。
ここまでお付き合い戴き。ありがとう御座います(*^_^*)
続きを。読んでも良いかな?と思って戴けた方は、読み終わりに。ブクマ:評価:コメント等等のご協力お願いします。
開国記念祭が開始すると、アルカンハイトの噴水広場は活気に溢れた。
1番の盛り上がりを見せているのは、舞台でやっているエルフ達のマジックショーだ。種も仕掛けも無いので、出たり消えたりと、ただただ凄い。マジックショーと名うっているがが、魔法を使ったサーカスショーになっている。
2番目は出店だ。噴水広場を中心に色々な出店が出ている。辺りには肉の焼ける良い匂いに、お菓子やフルーツの甘い香りが漂い。様々なお菓子が並んでいる。生クリームはまだ無いみたいだが、ヨーグルト等を上手く使った物もある。
3番目はフリードリンクのサービスだ。常に列が出来ていて、兵士達が必死に準備したり列の整理をしている。祭りの警備は特別手当が出る様で、単身者、彼女無しの兵士達が頑張っている。
マーリュクの『エンジェルヴォイス』の効果は継続中の様で、大したイザコザも起こる事無く祭りは進んだ。
「ちょっとお姉さん、良い物あるでやんすあが?見て行かないでゲスか?」
「良い物?」
賑わう噴水広場近くの路地裏で、帽子をかぶりサングラスを掛けた。怪しい男の子が、女性に声を掛ける。ほんのり酔っ払った女性を狙っている様だ。
「うん。これなんだけどもね、最近流行のパンツ。これ、履き心地が最高なんでやんすよ」
「そうなの?見た事無いわね?」
「そりゃそうさ、神様が考えた物だからね!孤児院のシスター達は、皆履いてる。大人気の商品さ。試しに履いてみるでゲスかい?」
男の子が、女性にパンツを渡す。
「え?いいの?あら。さわり心地は良いわね」
サングラス少年にパンツを渡された女性は、さわり心地を少し確認した後。ワンピースの下に履いていたカボチャパンツを脱ぎ、それをサングラス少年に渡す。
生暖かくて、ほかほかだ。
パンツを履き替える際に見える。チラリズムにサングラス少年は、ゴクリと息を呑む。そして、女性は履き心地を確認する。
「あら、凄く履きやすいし、履き心地もいいわ。1つ貰おうかしら?」
女性は凄く気に入った様だ。
「へい、毎度!じゃ、小銅貨3枚でやんす。あ、そのパンツは脱いでってね。ちゃんと新しいのを渡すでゲス」
「あら、そう?このままでもいいけど?」
「そうは、いかんでゲス。それはお試し品で少し質が悪い!だから。美人なお姉さんには、ちゃんとした新しい物を持って帰って欲しいでやんす!」
パンツ商人は、お客様ファーストの、意識高い系男子だった。
「あら、美人だなんて嬉しい事を言ってくれるわね。じゃ、ちょっと待ってね」
パンツが太股を這いながら産み落とされ。それを見てサングラス少年は再度、息を呑む。
「はい。じゃ、これ代金ね」
「毎度!ありがとうございやす!」
サングラス少年は、渡された銅貨3枚とほかほかパンツを拳にしっかりにぎりこんだ。
そして、紙袋に新品のパンツを入れて渡す。そして現在履いてない。女性の後ろお尻姿を見ながらクンクンすると、うっすら香るそれを、ポッケにしまった。
「おい。そこの少年。こんな所で商売しているが、許可証は持っているのか?」
兵士Aが現れた。
「許可証?」
元気は許可証を持っていない。
「無いのか?なら、ちょっとこっちへ……。あ!こら!」
元気は、荷物をまとめ。逃げ出した。
風を切る様な早さで走った為。パンツを数枚落としたが、身バレするよりか良いか。と思い諦めた。
「危ない危ない……」
そう言ってサングラス少年が、サングラスを取る。すると、なんと、サングラス少年の正体は!まさかの元気だったのだった!
「やっぱり。ミリャナのパンツが1番いいや……。これからどうするかな~」
ミリャナ達は、アイリスや孤児院の皆と、バーニャの店のパンを売っている。ミールはアルトとデートだ。メルディも最近出来たお友達と遊んでいる。ミノスやグレイは仕事中だ。ヴァイド、ポタンも勿論集計等の仕事である。
「結局。家の外では、ボッチなんだよな。俺……」
遠目でミリャナを眺めていると、ミリャナが元気に気付いて、嬉しそうに手を振る。それだけで、何だか幸せな気持ちに元気はなる。
「やぁ。こんばんは!あれは、彼女さん?」
ミリャナを眺めていると、パン祭りの時にあった。アルビノっぽい少年が話しかけて来た。
「ち、違うけど……。そうなればいいなぁって人。君はクッキーの時の子だね。あの後、パンは買えたかい?」
「ははっ覚えててくれたんだね。嬉しいよ。僕、お金無いからさ。買えないんだ」
もう結構な時分だが、少年は一人だった。
周りの子供達は、両親や友人と一緒だ。何かあったのかな?と思ったが、焦っている様子も無い。そう考えた所で、自分も一人である事に気付き、詮索しない事にした。
「まったく、おねだり上手だな君は……えっと~」
「あぁ、僕はスラトだよ」
「そうか、スラト、俺は元気だよろしくな」
「うん!よろしく元気!」
元気とスラトは握手をした。
「よし!スラトここで少し待ってな」
そういうと元気は、ミリャナ達の所でバーニャ特製ジャムパンを、パンツを売ったお金で買い。持っていた果汁ジュースと一緒に、スラトに渡した。
「良いのかい?」
「あぁ、お一人様同士。お近づきの印さ」
「ありがとう。元気は優しいね」
「そう?ありがとう」
「遠慮無くいただきます!」
そういうとスラトはパンを美味しそうに頬張る。
「美味しいか?」
「うん!元気は食べないの?ほら少しお食べよ」
「そ、そうかい?じゃ遠慮無く」
スラトからあーんをされて、元気はパンを少しかじる。
「……スラトって……。男の娘……男だよね?」
「うん、そうだけど?女の子の方が良かった?」
「いや、この前男の子のふりをした女の子がいてさ……」
「へぇ、元気の周りには面白い人が多いんだね」
「そうだな、大変だけど。面白いよ」
「そっか、良かった!じゃ、僕はそろそろ行くよ!今度。僕とも遊んでね!」
「おう!もちろんだ!またな!あ、そうだ、ほらこれ!」
元気は帰るスラトに、あの時の同様にクッキーを渡す。
「わぁ!ありがとう!嬉しいよ!またね元気!」
スラトが、クッキーを大事そうに抱える。
「あぁ!気をつけて帰れよ!」
駆けて行くスラトの背中を見送ると。ミリャナの方を見る。店は一段落ついた様で、孤児達をエルフ達が送って行く様だ。
「元ちゃん、さっきの子は?」
「お疲れ様ミリャナ。あの子はもう、帰ったよ。フフッ。お土産にクッキーあげたら喜んでたよ」
「フフフ……そう、良かったね」
「うん、良かった」
ミリャナが元気の隣りに立ち。二人で賑わう町を眺める。二人共に無言だが気にならない。元気はミリャナが傍にいるだけで、落ち着いた気持ちになった。
「ねぇ、元ちゃん凄いわ。皆楽しそう」
「叔父上も、ポタンも他の皆も頑張ってたし成功して良かったよ」
「なに。他人事の様にいってるの?この前も言ったけど……。全部、元ちゃんのお陰じゃない」
「……俺の?」
「そうよ?孤児達が幸せになったのも、奴隷や難民が幸せになったのも、ここで今皆が幸せそうなのも。全部、元ちゃんがいたからよ?」
「そんな事。無いよだってーー」
「ーーあるわよ……。あるわ。あるの!いい?あるんだからね!今、私達が幸せなのも元ちゃんがいるからなんだからね!」
ミリャナが少し怒っている。
「わ、わかったよ。ミリャどうしたの?何か今日は変だよ?」
元気には訳が解らない。
「変?変なのは元ちゃんでしょ!!!」
ミリャナが怒鳴た。その声に周りの人が一斉に振り向いた。
それに気付いて、顔が真っ赤になるミリャナを抱き上げ、元気はその場から飛んで避難する。そして、中央広場を離れると教会の屋根の上に着地して二人で座った。
「ミリャごめんね、何か怒らせちゃったみたい」
「私の方こそ……。いいえ!違うわ!怒ってるの。そう、私怒ってるのよ!」
「何を、そんなに怒ってるのさ?」
「パンを貰いに来た時。お一人様仲間が出来たんだ。って言ったじゃない!私もいるのに!」
元気にしたら軽いジョークのつもりが、ミリャナには許せなかったのだった。
「いや、ごめん。あれは軽い冗談のつもりだったんだ……」
「それだけじゃ無いわ!何か最近ずっと悩んでるし、話してくれないし、今日もずっと一人でいるし、ポケットからパンツ出てるし!」
「いや。最近悩んでたのは、あれだよ。訓練どうしようかな~。とか。お勉強しなきゃな~。とかだよ。そんなに深い事は考えてないよ?」
元気はそう言いながら、はみ出ていたパンツをそっとしまう……。
「じゃぁ。あの時、何で泣いたの?」
「あの時って……ミリャが……。ハハハ……ひょっとこ踊りした時?……あいて」
ミリャナに強めに叩かれた。心地の良い痛みだった。
「あの時は……。その……思ってたよ。考えてた。俺。役立たずだな~。ってさ。でもね。ミリャナが迎えに来てくれたろ?それで、これでいいや。って思えたんだよ」
「これで、いい?何でよ!元ちゃんは、役立たず何かじゃ無いわ!」
「ありがとう。まぁ聞いてよ……ミリャ」
「…………うん」
「……あの時。思ったんだよね。ミリャと一緒に、ポタンやアイリスのいる。あの家に帰る。俺の幸せは、これだな~。って、外では、役立たずでも……。ミリャが迎えに来てくれたらそれでいいやって」
「……。何よそれ。そんな言い方……ズルいわ……何も言えなくなるじゃない……」
ミリャナがうつむいてしまった。
「フフフ……。そしたら追い打ちで、ミリャがプレゼントくれたからさ。嬉しいやら。情け無いやらで涙が止まんなかったんだ……」
「……じゃ。その時に言ってよ。心配するじゃないの……。話しをしてても、上の空の時も多かったし……。どっか行っちゃいそうで……。私。怖かったんだからね……」
「ハハッ……。何処にも行かないよ。俺だって、男の子だからさ~。こういう事言うの恥ずかしいんだ……。何処にも行かない……」
「じゃ、最近。一人でいるのは?」
「ん?俺にはミリャがいるし、まぁいいかって」
「なによ……それ……」
「う~ん、遊ぶのも楽しいけど、将来の事とか考えてると、もう少し大人にならなきゃな~とか思ってさ……。後は、何があっても。ちゃんと守りたいし、強くもなんなきゃな~って……」
「……将来の事?」
うつむいていたミリャナが、元気の方を見る。
「うん。ミリャと結婚したら、お金とかもいるし、子供も出来たりしたらもっといるだろ?俺は両親がいないし、どうしたら良いんだろう。って思って……。ちゃんと出来るかな?とか、色々と考えちゃって……。上の空だったのは、そのせいだったんだ」
「け、結婚……」
「うん。だから。ミリャが心配する様な、卑屈な考えは、もうしてない…………よ……」
シンとした空気に気が緩んだ元気は、口が滑った事に気がつく……。しかし、もう。気持ちは決まっているのだ。そう思い元気は腹を据える。
「もうね。誤魔化すのをやめるよ」
ミリャナが顔を赤くしながらも、真剣に元気の話しを聞く。
「俺は……ミリャナが好きだ。愛してる。ミリャナ以外は何もいらない。大人になるのが……いつかは解んないけどさ。ミリャナと結婚して幸せに二人で一生。ずっと一緒にいたいと思ってる」
ミリャナがそれを聞いて、膝を抱えてうずくまる。耳まで真っ赤で、カプリとしちゃいたいと元気は思う。
「私。お馬鹿みたいじゃない。一人で不安になって。心配して。次々に女の子ばっかり連れて来るし。皆、美人だし。今日もポッケにパンツ入れてるし……」
「ぱ、パンツは暇つぶしと言うか、何というか……ごめん。でもミノスとかもね連れて来てるし他には、ユグドリアスとか?」
元気の周りには人間の気配が無かった。
「まぁ、俺が悩んでる時はミリャナの事を考えてるのがほとんどだから。心配しなくて大丈夫だよ!」
「……ほんと?……私を……おいて行かない?」
膝を抱えたまま。チラリとミリャナが元気を見る。
ミリャナの甘える様な視線が、あまりにも鬼がかった可愛さで、元気は我慢出来ずミリャナを抱きしめてしまった。
「ミリャナがいるだけで俺は幸せ!」
「きゃっ……。わ、私も……。幸せよ」
元気がぎゅーっとするとミリャナもぎゅーっとしてくれる。元気は身体中に幸せを感じる。
そして、ゆっくりと二人は見つめ合う……。
「ミリャナ……」……「元ちゃん……」
ミリャナのうるんだ瞳に元気は吸い込まれそうになる。二人の唇と唇が引き合う様に徐々に接近する……。そして……。
ドーン!!!タイミング良く。祭り終了の花火が上がり。二人は我にかえった。
「お、お祭り!終わったみたいだね!」
「そ、そうね!終わったみたいね!」
二人は恥ずかしさの限界を迎えた。そして少し離れる。
ミリャナは仕事ばかりで、元気は友達無しで孤独に過ごして来た。その結果。二人の恋愛偏差値は、小学生だった。
失ったチャンスを取り戻す手段を、二人共に知らない……。しかし、元気は頑張る。
こんな正直になれるタイミングは、家では中々来ないのが解っているからだ。
「その……。考えといてよ。将来の事。俺、本気だからさ」
頑張ったが、恥ずかしさでうつむく元気……。
「将来の事?」
打ち上がる花火が二人を照らす。
「ほら、さっき言ったじゃん」
「……花火の音で……聞こえなかったかもな~……」
「えぇ……だって花火は……」
……花火が……悪戯っ子の様に、はにかむミリャナを七色に輝き照らす。嬉しそうに。楽しそうに。幸せそうに。悪戯を仕掛けるミリャナの挑戦を……元気は受ける事にした。
「結婚しよう。ミリャナ……愛してる」
元気が真顔でそういうと、ミリャナの顔がボッと真っ赤になる。勝ったな!と元気が確信した時ーー『ちゅっ』ーーと元気の唇にミリャナの唇が重なった。
「……信じて待ってるから……」
そういって。赤らむミリャナに……結局。元気は完全敗北したのだった。
関係がドンドン進んで行ってるじゃぁないか!!!
悪くはない、悪くは無いが!!!
はい、と言うことで、王国記念祭はこんな感じでしたw
次回から冷季に入りま~すw
ブクマ、評価、コメント等よろしくお願いします。




