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王国記念祭~開始~

町の様子と開始までの流れ

 難民の受け入れも終わり。ひと月程で難民達の生活も安定。新たな町の名前は、楽園『ユートピア』に決まった。


 町に住む人々が次々に楽園と口にしたからだ。町のルールも厳守している。


 ユートピア、アルカンハイトの両施設には、それぞれのスキルを生かした人材を置き、居なくなった貴族の穴埋めを行い、国内の運営はスムーズになった。


 そして、1番の変化はユートピアで作る塩や、砂糖、塩コショウなどの調味料が出回り初めた事による、食の改善に進化だ。


 アルカンハイトには料理人という料理人はいなかったが、調味料を得る事で才能を開花させる者達が大勢いた。


「パパ、ホットケーキのレシピを売ろう!」


 ポタンの提案で、ホットケーキのレシピを売ると驚くほどレシピは売れた。


 そこから色々な物に派生し、フルーツを混ぜた物や、焼き方を変えたクッキー見たいなお菓子などがドンドン生まれて行った。


 ジャムやジュース等を作り始めた工房もあり、現在も食品関係の商売が大盛り上がりだ。


 ホットケーキのレシピの値段は、大銀貨1枚だった。情報が流れない様に、『情報を流したら天罰が下る』との文言と、アルカンハイトの紋章印入りにした。


 大銀貨1枚約10万だったが、噂が噂を呼び。

 累計500枚以上売れた。


「そ、そうだわ!あ、新しいパンツを買いましょう!でも、元ちゃんがくれたのが、いっぱいあるわね!ど、どうしたらいいのかしら?」


「ハハハ……。慌てすぎだよミリャナ」


「フフフ……。ママの好きに使えばいいよ」


「そ、そう言われても……。私は……。今のままで幸せだから……。あのね……。元ちゃん達が良かったらなんだけど……」


「いいよ!な?ポタン」


「もちろんよパパ。ママ遠慮しないで」


「もう……。私がお城欲しいって言ったらどうするの?」


「え?もちろん建てるけど?な?ポタン?」


「もちろんよ。欲しいの?ならネズミーランドの大きいヤツにしようよ。パパ」


「お!いいな!ポタン!せっかくだし!町ごと作るか!ゴーストタウンとか!不思議の国みたいなのも良いなぁ!」


「あ!動くお城とかどう?天空を飛ぶヤツとか?ロボットに掃除とか、させれば良いし」


「うわ!ポタン天才!じゃ、ちょっと作ってーー」


「ーーまって!嘘よ!嘘!いらないわ!お城なんて!この家でいいの!」


「え~この家も積んで行けば良いじゃん」


「森ごと持って行く?」


「もう!絶対に変な事しないでよ?」


「ハハハッ冗談だよ。それで、何に使いたいの?」


「孤児院にお風呂をね。作ってあげたいの……。みんな。冷季になると凍えながら体を拭かないといけないから……」


「冷季かぁ。今更だけど、この世界って日付ってあるの?ポタン?」


「1つの季節ごとに180日だよ。季節の巡りを1年と考えると1年が約540日」


「へぇ~日本と比べると、かなり違うな」


「時空軸自体が違うのよ多分。先祖がエルフだから、人間自体も長命だし」


「何か難しいな……」


「ママは19歳だけど、日本の年齢に置き換えると30付近。でも先祖がエルフだから、成長スピードが遅いのよ」


「へぇ~そうなんだな~」


「はぁ……考えるの辞めるなら、最初から聞かないでよ……」


「ごめん……。でも、何となくは解った!ありがとうポタン!」


「いいわよ。じゃ。ママ!お風呂でいいのね?」


「うん!でも……。本当にいいの?」


「いいに決まってるじゃん!よし!ミリャナの為に、孤児院にお風呂を作ろ~!」


「お~!」


「フフフ……。元ちゃん。ポタン。ありがとう」


 こうして、ミリャナのお願いを有無も無く快諾した二人は、建設ギルドのインディゴに頼み、孤児院にお風呂の設置を依頼した。


「おう!孤児院の聖女さんと、お二方の頼みなら速攻で作ってやらぁ!」


 インディゴの方も快く快諾。その後。すぐに孤児院に大浴場が出来上がったのだった。


 お風呂場のお湯や水の循環はポタン式の物を使った。海までの距離は結構あったがミリャナのお願いなので、そこは元気が頑張った。

 インディゴが張り切り過ぎて、大貴族の城にある様な豪華な浴場になってしまったが、子供達やシスターは大喜びだったので良しとする事にした。


 浴場の壁には、水瓶を持った巨大なミリャナの像があり、水瓶から浴槽にお湯が流れている。


「あれは?水の女神様かしら?」


 完成を見に行った時に、そんな事を真面目に言うミリャナに、シスターと元気達は笑ってしまった。


 ミリャナは鏡を見る習慣が無いので、自分である事に気付かなかったのだ。

 後日、ヘレンに聞いたわ!と元気はミリャナに凄く怒られた。


 そして、暫くしてからパン祭りで配った紙袋が問題になった。世界的に紙は貴重品である。それをお菓子の袋にしていたのが、商業ギルドのじじい事ハブリムの目に止まったのだ。


 町中でハブリムによる袋の制作者捜しが行われ元気に懸賞金までかかった。だが、ポタンとヴァイドが『あれは神の造りし物だ、これ以上肩入れすると天罰が下る』とハブリムに言った事で騒動は収まった。


 マーリュクの顕現に全てをなすりつけた作戦だったが、本人は知らないので今も内緒である。


 休校中だった学校も再開を始めた。


 難民の中には教師や学者等も多く、人材には困らなかった。


 そして通う子供は、貴族の子供達限定では無く、町の子供達も参加可能にする事にした。

 アルカンハイトの人々は、そこまで学問に興味が無い為。昼間食事を提供する事で参加者を募った。


 作戦は成功。タダでご飯を食べさせてくれて、子供の面倒を見てくれるなら良いじゃない!と働くお母さん方から。子供の入学希望が殺到した。


「ちょっと、汗臭い子もいるのですけれど、お友達がいっぱい増えましたのよ!」


 と、これにはメルディと城の執事達が大喜びだった。最近メルディは馬車に乗って孤児院に頻繁に通っていた。なので護衛のメルヒオーネも城におらず。執事の指揮を執る人が居なかったのだ。


 食事の方は、パンと牛乳とハム等の加工品でユートピアから、町に出荷する物の一部を土地代や家賃として、融通して貰う形になっている。他の人々の家賃もそれぞれの収入にあった形式にしており。老人や怪我人などは、町の掃除や子供の送り迎え等をする事で、収入源を作り。生活を賄える様にした。


 元気達が懸念していた、価値観の相違や偏見の目等も少なかった。


 驚かれる事に関しては、獣人側が我慢してくれている。今は馴染んでしまい、町の人が驚く事も無くなった。


 その理由は一概に獣人のスキルの高さだ。人間はバランス良く出来るタイプが多いが、建設、商売、学問、料理とそれぞれに獣人は特化している。なので、獣人はそれぞれの職場で即戦力になった。


 そして人間の様にサボらずに真面目に働く獣人達は、瞬く間に人気者になったのだった。


 現在、アルカンハイトとユートピアは順調そのもので、活気に満ちあふれている。最近は他国からの商人が商品を買って行く事が多くなり。ポタンの提案で輸出に税金を課した。


 町で砂糖は1袋大銅貨1枚だが、国外に出す時は税金として小銀貨1枚を取る。他の物も値段の10倍税金を取る事にしている。

 この世界でも異常な金額だ。


「税金高過ぎない?」


「良い物は高くても買うし、他国からお金を取らないと国として貧乏になるでしょ?売れたらまた買いに来るし、売れなくても私達は困らない、経済はこの国だけで回る様にしてるもの」


「へ~そうなのか~……」


 ポタンにそういわれ何となく、理解した気がする元気だった。


 経済面は順調だが、いざこざや事件も増えた。だが、孤児院で起きる様な事件では無く、酔っ払い同士の喧嘩や人種間による喧嘩だ。殺傷沙汰は稀である。

 それでも兵士達は事件の対応に追われる日々が続いている。


 騎士団には魔力持ちの魔族達が入隊し、兵士には狼族や猫族や熊族等が入隊した。グレイやミノス達が訓練している。衛生兵には、獣人女性達が入隊し鳥族による空中支援等も取り入れられ始めている。


 そして、明日から冷季に入る。季節の節目である。炎季180日目の今日。


「アルカンハイト、ユートピアの諸君!我、ヴァイド・アルカンハイトは今日、この時よりアルカンハイト王国の誕生を正式に宣言する!」


「おおおおぉぉぉぉぉおぉおぉぉ!!!」


「難民代表!ミノス!前へ!」


 ミノスが壇上に上がる。バーニャの店の前の舞台を再利用だ。


「人間の諸君!其方らの手厚い歓迎に我々は感謝している!これからも良き隣人として、アルカンハイト王国の発展を共に支えて行こうと我々一同は思っている!これからも支え合い、助け合い、そして共に生きて行く事を許して欲しい!良いだろうか?」


「おおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」


「広く寛大な其方達の心意気に感謝する!!!」


「おおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」


「では、次はエルフ代表からフェルミナ!……おい、フェルミナ殿は何処行った?トイレ?おい、元気!何で先にいかせとか無いのだ、馬鹿者!」


「いや、勝手にお酒を何処かから持って来ちゃって」


「早く、連れて来い!フェルミナ殿が愚図ったから、場を設けたのだぞ!」


「ちょっと叔父上、場を繋いでて下さい!」


 元気がフェルミナを探しに行く。


「皆の者すまない。見苦しい所をお見せした。エルフのフェルミナ殿は知っている者も多いのでは無いか?黒竜を討伐したあのエルフの英雄譚、その人だ」


「ま、まさか!」 「あの英雄の!?」 「僕、知ってる!お父さんが憧れだって言ってた!」 「まさか!本当にいたのか!?」 「お姿を見られるなんて、凄いわ!」 「フェルミナ様~!」


 英雄を見れるという興奮で、フェルミナコールが始まってしまった。

 黒竜を連れて逃げて来ただけのエルフだという事は、町民は知らない。


「うむ、元気の言っていた事が解るな。エルフは取り扱い注意だと」


「フフフ、元気はいつも嘆いておるぞ?あやつは一見馬鹿そうだが、大した男なのだ。まったく面白い男だ」


「面白いのは間違い無いが、巻き込まれる側としては笑ってばかりもいられんのだ」


 ミノスが楽しそうに笑うのを見てヴァイドが溜息をつく。


 しかし、場を繋ごうとしただけでこの騒ぎだ。ヴァイドはどうしたものか。と考える。


「静まりなさい!愚民共!」


 ヴァイドが悩んでいると、会場に女の子の声が響いた。そしてその声に噴水広場が静まり返ると、壇上に天から一筋の光が差した。


「な、何だこれは!?」


 ヴァイドが驚きながら光の柱を見上げる。


「ちょっと、おじさん!そこ邪魔じゃない!光から出なさいよ!気が利かないわね!」


「お、おじさん!?す、すまぬ!!」


 ヴァイドが急いで飛び退く。


「ありがと!元気が怒るだろうけど、フェルミナの為よ!私が何とかしてあげる!」


 そう言うとマーリュクが舞台上に顕現する。


「ま、ままままま、マーリュク様~!!!」

「唾飛ばすなって豚!」「マーリュク様よ!」「演劇最高でした~!」「なんと、美しい!」


 今度はマーリュクコールだ。


「で、おじさん、私は何をすればいいのかしら?」


「え?何をと言うのは?」


 ヴァイドは、目の前で神が降臨し事に驚き過ぎて、思考が止まっている。


「神、マーリュクよ。お姿を拝見出来て光栄に御座います」


 ミノスも驚いていたが素早く、かしずいた。それを見てヴァイドも傅く。


「そんな挨拶は良いから、何するのよ?早くしなさいよ!」


 マーリュクがダンダン。っと右足で舞台を踏む。


「い、いや、そんな事を言われましても」


「はぁ?役に立たないわね!」


「も、申し訳ありません」


 ヴァイドがマーリュクの対応に困っていると、元気がやって来る。


「マーリュク!何やってるんだよお前は!?」


「何って、フェルミナの為に場を繋いであげようってんじゃない!フェルミナはまだなの?」


「あの馬鹿、結構飲んだらしくて、もう少しかかりそうだ!」


 エルフは飲まなければ、排泄しないのだが、フェルミナは、しこたま飲んでいた。


「フェルミナを馬鹿にするなんて、良い度胸ね!天罰下すわよ!」


 マーリュクが元気をビシッ!と指さす。


「お前、そういう神じゃ無いだろ!」


「ふん!まぁ良いわ。で、私はどうすればいいの?」


「本当に、お前。フェルミナみたいな事するなよな、どうするんだよこのコール、そのまま姿を消したら、皆ガッカリするぞ?」


「はぁ!?そんなの駄目よ!何とかしなさいよ!」


「何とかつったって、あ!マーリュク歌って歌えるか?」


「歌?賛美歌なら何個か歌えるわよ?」


「じゃ、歌ってくれ!」


「いやよ、恥ずかしいじゃない!」


 じゃあ、何でそこに立ってるんだよ!と元気はマーリュクにつっこみかけたが、我慢する。


「いやぁ、マーリュクって可愛い見た目同様に可愛い声してるだろ?そんなマーリュクの歌声を聞いたらもう、皆、感動して泣いちゃうな~って思うんだよ?まぁでも、恥ずかしくて出来ないなら仕方がーー」


「ーーふん!馬鹿じゃない?誰が出来ない何って言ったのよ!私の可愛くて美しいくて可憐な歌を披露すればいいのね!任せなさい!」


「うん、ありがと。マーリュク」


 くい気味に応えるマーリュクに対し。美しいとも、可憐な。とも言ってない。と元気は思ったが成功だ。


「静かにしなさい!特別に私が歌ってあげる。感謝しなさい!」


 マーリュクが喋り出すとコールが止み、町民が歌を聞く態勢に入る。そしてマーリュクが何かの賛美歌を歌い始めた。


 元気は、恐ろしい程に綺麗な。マーリュクの歌声に聞き入ってしまう。歌を聞いたヴァイドとミノスも涙を流す。そして、元気はなるほどなと思った。


 マーリュクは癒やしの女神だ……歌声でフェルミナに対する怒りが和らいで行く。


 癒やしの歌『エンジェル・ヴォイス』どんな戦場であっても戦意を喪失させ、悲しみ怒り、憎しみを拭い去る。それは、人間の思いや。感情を一切考慮されていない。神の力そのものだった。


 歌声を聞き続ける事で、喜び以外の感情全てを持って行かれるのだ。


 マーリュクが歌い終わると、噴水広場が静まり返る。


「ちょっと!?元気!これでいいの?静かよ?もっかい歌う?もっと、盛り上げる?なんか、恥ずかしいわよ!何で?」


 シーン。とした会場に焦るマーリュクは、自分の能力を把握していなかった。


「いや!ダメダメ!マインド系は危ない!」


「じゃぁ、どうするのよ!?」


「待たせたな!てやんでい!」


 てやんでい。を登場のセリフと勘違いしている法被姿のフェルミナが、壇上に何処かからタイミング良く飛んで来た。


「フフフ、マーリュク素晴らしい歌だったぞ!」


「え?そう?えへへへ」


 マーリュクがフェルミナに褒められてデレる。


「やろうどもぉ!宴じゃぁぁぁぁぁ!!!」


 フェルミナが。何処かから持って来た酒瓶んを持ち上げて叫ぶ。


「う……?う、うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 最初は戸惑った町民達だったが、一気にテンションを上げる。それに合わせて町の上空でドーン!ドドーン!っと花火が打ち上がった。


「子供には果汁、大人には酒を準備した!今日は大いに楽しんでくれ!!!」


 花火の爆音で我に返ったヴァイドが両手をばっと広げると、広場のあちこちに兵士達が大きな酒樽を運んで来る。飲み物の完全無料サービス。大盤振る舞いだ。


 こうして、アルカンハイトの国としての船出、王国記念祭が始まったのだった。

王国記念祭開始です。

ミノスが元気の良き理解者なんだよなぁw

良いポジにつけそうですw



次回は元気がパンツ屋さんをする以外決まってませんw


ブクマ、評価、コメントよろしくお願いします。

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