難民受け入れ~完了~
受け入れのお話
グレイが引き連れる難民の行進は問題無く進んだが、トンネルに入ってからが大変だった。
トンネル内で家の番号札を確認し、農家の経験がある獣人は町の外の農地へ、経験が無い人間は町まで行って、町の家へと入居だ。
これを5000人分する。時間が掛かる。
急遽、仮設トイレや、食事の準備に元気達は追われる事になった。
「元気様!仮設トイレの設置終わりました!」
「お!イケメン!ありがとう!他に思いあたる事は……この日差しだな」
トンネル外の難民達を直射日光が襲っている。このままでは、熱中症になりかねない。
「帽子でも配りましょうか?」
「うーん、いいや、こうする」
元気は雲をイメージすると大きな雲を太陽の下に浮かばせる。
「おぉ、流石、元気様!やる事が大胆ですね!」
「帽子5000人分出す方が手間だろ」
「ハハハ、そうですね!では私達は水分を配ってまいります!」
「あぁ!頼んだ!俺は夕食の準備しとくから」
「了解です!」
素早く行動するイケメン達に元気は感心する。エルフ達は予想以上に働いてくれた。
しかしトンネルに着いてから約3時間。
列が進む気配が無い。下手したら2~3日掛かるかも知れない。と元気は思う。
パンとハムと牛乳と毛布などを大量に魔力で出し、夜に備える。そして出した分をエルフ達が配り始める。エルフ達の機動力でも配り終わるのに2時間掛かった。
「元気、ちょっと良いか?」
トンネル内で、兵士の指示出しをしていたグレイが話しかけて来た。
「どうしたの、おっさん?」
「もうすぐ、日が暮れるが……このまま、夜間もずっと続けるのか?」
「あぁ、そうか。何処かでいったん閉めないと……キツいか」
「そうだな。夜通しやろうにも難民達が疲弊し過ぎている。この猛暑のせいだろうな……。夜間倒れられては、どうしようも無いぞ?」
「大丈夫だ。元気にグレイ。夜通し続けてくれ。その事は船の中で話してある」
「だがミノスよ。難民達がキツいんでは無いか?」
「逃げながら暮らしておった者達だ。夜間行動など馴れておるし、時間が掛かれば掛かるほど奴等も心苦しいだろう」
ミノスが難民達を見やる。
「なるほどな。こちら側が気を遣う事ばかり考えていたが、確かに助けて貰う側も気を遣うな」
「夜間の警備は、エルフ達と元気と我が行えば良かろう。なぁ、元気よ?」
ミノスがニッと元気に向かって笑う。
「あぁ、勿論だよ!任せて!」
元気が胸をドンっと叩く。
「そうか……じゃぁトンネルの札係の兵士を昼夜体勢に変えて。受け入れは日中夜間、問わずに行う事にしよう」
そう言うとグレイはトンネルに戻って行った。
「ありがとうな……ミノス……。おっさんにもお礼しなきゃな」
「うむ。グレイは気の良いヤツだ。是非そうしてやってくれ。そう言えば、酒が好きみたいだったぞ?」
「酒?そうなの?」
「あぁ、グレイとフェルミナ殿と一緒にいる時に、御馳走になった」
「ふ~ん、それって魔王城に行った日?」
「うむ、そうだな」
「ふ~ん」
そう言えばフェルミナからは魔王城に行った事と、難民が来る事以外は聞いていなかった気がする。
「もしかしてだけど、魔王城に行こうって言いだしたのはフェルミナ?」
「あ、いや。違うぞ元気!我が話したのだ。奥方がまだ監禁されているから、私は一人でも行く。と。そしたら一緒に来てくれると言ってくれてな。その日の内にだな……すまぬ」
「その事はもういいよ。でも、フェルミナの口車に乗ると、こういう事になるから気をつけてな。今回は人助けだったから、良かったけどさ」
「うむ、肝に銘しておこう……」
それから難民の受け入れは、3日徹夜で行われ。大きな問題は起こらず作業はスムーズに進んだ。難民の殆どが戦闘を嫌う非戦闘民族だったのが大きかった様だ。移住の次の日には、農場に移った人達は働き始め。先に町に入居した人達がボランティアで手伝いに来てくれたりもした。
「魔族って言っても……。やっぱり。いい人はいるんだよなぁ……」
「フフフ……。みんな笑顔ね……元ちゃんのおかげよ」
「ハハハ……。違うよ……。俺は……。何もしてないよ。さて!ミリャナの顔も見られたし!頑張ろ!毎日。ありがとうね!ミリャナ!」
「……うん。頑張ってね!」
夕方には、ミリャナが毎日顔を出してくれたので、元気は安心して警備や食事の支援準備が出来た。
獣人達は、役所や学校。ギルド等で、ある程度採用が決まっている。ヴァイドは連日、采配に追われたが、結果。人材も確保出来て万々歳だった。しかし代償は魔王軍の進行。喜んでばかりもいられなかった。
「元気よ、魔族と魔力で戦うのは良いが、魔力封じなどをして来る悪魔もいるからな。鍛錬は行っておけ。気も紛れるだろう」
「魔族対策かぁ。確かにしないとなぁ……。ありがとう!ミノス!何か考えてみるよ」
「うむ……。それと……。その。なんだ。元気は良くやっている。だから、無理はするなよ……」
「……うん。ありがとうな。ミノス……おし!元気出た!あと少しだ!頑張るぞ~!」
そして、受け入れ4日目の夕方。みんなの協力によって。約5000人の難民受け入れが完了した。
仕事終わりに、グレイに小金貨を1枚渡した。ミリャナに出して見せて怒られたヤツだったが。参加した兵士と騎士へのボーナス。良い事に使えば良いだろう。と元気は思った。
グレイには別に。ブランデーやウイスキーを20本ほど渡しておいた。元奴隷の兵士育成等を丸投げしている。日頃のお礼だ。
「また、なにかあったら呼べ!」
「ご用の時はなんなりと!」
そう言って。グレイも兵士達も騎士達も嬉しそうに帰って行った。
「あの元気様、こんな事になるなど思ってもおりませんでした。すいませんでした」
「もういいよ。イケメン達も頑張ったんだし、次から気をつけてね」
「はい!」
エルフ達も元気に森へと帰って行った。
4日ずっと働いていたのに、元気過ぎるだろう。と思いながら、エルフ達の後ろ姿を元気は見送る。ミノスは先に奥さんの居る牧場へ帰って行った。
「さて、帰るか……」
元気が皆を見送り、トンネルから出る。すると出口に人影があった。
「終わったのね。お疲れ様。早くお家に帰ろ?」
「……うん」
「大変だった?」
「うん」
「そっか、頑張ったね」
「うん……」
それ以上は何も言わないミリャナと、元気は手を繋いで、ゆっくりと家族の待つ家路につく。
「そうだ、これ」
「何?ハンカチ?」
「うん、作ったの」
「手作り!凄いよ、貰って良いの?」
「うん、誕生日プレゼント。元ちゃんがいない間暇だったから、作ったの……下手っぴだけど、ごめんね」
「もう、ミリャナ、ズルいって……。こんな、ごめんとか……もぉ~、嬉しいよぉ~」
「げ、元ちゃん!?」
元気はこの4日間で、自分がどれ程子供で、人を頼って……。迷惑をかけていたのか……。と思い知っていた。
そして、感謝した。だが、出来る事は……魔力で何かする事と、頑張る事しか出来なかった。
ミリャナの気持ちが嬉しくて、不甲斐無い自分が悔しくて元気は涙が止まらなかった。
そして元気は泣きながら。もっともっと頑張ろう。と思ったのだった。
「げ、元ちゃん!ほ、ほら~!ほいほいほ~い!ひょっとこ踊りよ~。ほら~」
「ぶは!あはははははははははは!そ、それ……。ミリャナ……。へ、下手っぴすぎだって……ぶはっ……」
「へ、下手って!も、もう!しらない!」
「ご、ごめんって、ミリャ~。待って~」
頑張る前に、ミリャナの機嫌を治さなくては!そう思う元気なのだった。
受け入れ終了です。
謝る場面が増えていたのはそう言う事だった見たいですw
違和感のまま書いていて気付きましたw
次回からお祭りを考えないとですw
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