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パン屋を救おう~お祭り~

みんな、今日も自由ですw

 問題。


 日本の夏祭りで楽しみなのは、金魚すくい、綿菓子、少女のうなじ観察ですが。

 夏祭りの1番の目玉イベントは何でしょうか?


 ヒント・ここでデートなんて言う輩は。答えと一緒に、夜空で盛大に爆ぜて貰いたいものである。


 正解は、『花火』


 浴衣や法被をエルフ達が着ている事に。

 もっと重きを向けるべきだった。と元気は後悔した。


 この爆発音は、お祭り開始の合図花火だった。


 広場の上空で爆発音が響く中。元気は子供達に駆け寄ると、子供達は初めて見る魔法と爆発に喜んでいた。


 満足そうに頷くフェルミナに、一応爆発の理由を聞く事にする。


「フェルミナ?何やってんの?」


「ん?見てわかるだろう?祭りと言えば、花火じゃないか!しかし、綺麗に見えんのだ何故かわかるか?」


「何故って火花は光なんだから、太陽の光と相殺されて見えにくくなるんじゃないか?」


「どういう事だ?元気やってみてくれ」


「馬鹿!やめろって言いに来たんだよ俺は!」


「えぇ!?神様これやめちゃうの?」


 楽しそうに見ていた子供達がシュンとしてしまう。


「ちょっと元気!子供達が可哀想じゃない!泣いたらどうするのよ!ドタマかち割るわよ!」


 決めゼリフも決まったマーリュクが、錫杖を振り上げて子供達を守る様に元気に威嚇して来た。


 マーリュクは何を見たのか、赤い金魚柄の白い浴衣を着ている。

 背中にはふりふりの大きなリボンがリボンがついていて可愛い。髪型もポニーテールにしている。


「爆発がでかすぎるんだよ!町中でやる大きさじゃ無い!どうせやるならこれくらいにしろ」


 そういうと元気は色をつけた魔力の玉を打ち上げパンと破裂させる。

 パーティー用のクラッカーをイメージしたので、破裂すると色んな色が空に弾ける。


「わぁ!綺麗!神様凄い!」


「ふーん、やれば出来るじゃない」


「さすが元気だな!他の皆にも伝えるぞ!」


 元気は皆に褒められ、満更でも無い気分になってしまう。そして止めるという当初の目的を忘れた。


 その後、フェルミナの念話が終わると、町のあちこちで、パンパンパパン。と色とりどりの魔力弾が上がり弾け始める。

 それにつられて何事か?と大勢の人が噴水広場へ集まり始めた。


 ミリャナ達も小さな花火を見て、楽しそうにしている。最初は「元ちゃんがまた何か始めたのね!」とぷりぷりしていたが、今は「綺麗ね~凄いわ」と喜んでいた。


 元気とパン屋の前にいるミリャナの距離は200㍍程離れている。


 がしかし、それ位の距離であればミリャナの声を元気は雑音の中でも拾える。


 ミリャナが夜にトイレで秘密裏に。……プッ。と可愛らしいオナラをしているのも、知っている。ミリャナの気遣いが生み出すプッ。というメロディーを聞きながら、紅茶を嗜む。それが最近の元気のルーティンだ。


 元気が妄想から、戻って来ると。噴水を囲む様に大勢の人が集まっていた。


「全然足りぬのでは無いのか?」


「そうだな。集客効果は絶大だ。取り敢えず。今ある分全部を試食に回そう!」


「ちょっとアンタ、それで利益が取れるわけ?」


「大丈夫だマーリュク、次の分を全部売れば、明日の借金の分は何とかなる」


「ふーん、そうなの」


「これからが本番だ!頼んだぞマーリュク!」


「ふん、仕方ないから任されてあげるわ!感謝しなさいよね!で、私は何をすればいいの?」


「それはな……」


 そういうと元気は、バーニャのパン屋の前に大きな舞台をドーンと出す。

 すると。町の人達の注目がいきなり出て来た舞台に一斉に集まる。

 

「あそこでパンの宣伝を、子供達としてくれ、バラバラに離れてたら子供達が危ないし、一カ所に集めよう」


「演劇でもするつもり?私知らないわよそんなの?」


「あらすじは大体出来てるから、説明するよ」


「せ、説明と言ったって、無理よ、無理無理!ぜーったい、無理!」


「マーリュクの演技力と、可愛さと、可憐さと、度胸があれば大丈夫だ!な!……それとも、出来ないのか~?」


「はぁ!?馬鹿言わないで!可愛いく可憐で美しい、演技力の塊のこの私が演劇程度出来ないわけないでしょ!ドタマかち割るわよ!」


 元気は、美しいとまでは言っていない。と思ったが、ツッコむと長くなりそうだ。と思い。そのまま丸め込む。


「だろ?だから頼むよ」


「いいわ、仕方ないから私の実力見せてあげるわ!で、どうするのよ?」


 ちょろいのは助かるが、少し面倒くさいと元気は思った。


 エルフや子供達を舞台前に集めると。それにつられて、町の人も舞台前に集まる。


「何が始まるんだ?」 「貴族様の遊びかしら?」 「中央で昔こういうのみたぞ?演劇だったか?」 「演劇?」 「パンはもう無いのか?」 「バーニャの店に売ってるのかしら?」


 総勢1000人程だろうか?広場が色々な会話でザワつく。急いでマーリュクに劇の説明をして舞台に上がらせる。内容はマッチ売りの少女ならぬ、パン売りの少女、ナレーションは元気が担当だ。


「ふ~ん、貧乏な子供を使って、お涙と、お金を頂戴。って話しなわけね、アンタ、ゴミみたいな思考してるわね……。だけど面白そうね。行って来るわ」


 童話をそんな風に捕らえて欲しくは無かったが、面白そうだ。とは思ってくれた様なので、ヨシ。としておく事にした。


 集まった人達1000人に対して。200個300個のパンじゃ足りない。

 なので、パン作りをバーニャ指導でエルフや子供達にも手伝わせ、劇の間に作らせる事にした。


 現在。バーニャの店は、パン屋さんでは無く。パン工場だ。


 エルフの出した魔法釜で、パンが見る見る内に焼けて行く。そしてそれを子供達が、袋に詰めていく……初めての体験に、みんな笑顔で楽しそうに作業している。


 そして、マーリュクが舞台に上がると、ザワついていた町の人達が、一斉にシンと静まり返った。


 元気は、様子がおかしい事に気づく。だが、手遅れだった。


 元気には、マーリュクが普通に見えるので忘れていたが。


 神になると人間には姿が見えなくなる。


 元気は異世界特典で状態異常にはならないので、姿はそのまま消えなかっただけ。その事をすっかり。忘れていた。


 この日……。人々が注目する舞台の上に。


癒やしの女神。マーリュクが神々しく権現したのだった……。


 マーリュクは、衣装に安っぽい赤いワンピースとエプロン。手にはパンを入れたかご。を持っている。……だが……全身に淡い光を纏い。背中には白い翼がはえていた。


 マーリュクは少し緊張している様子で、それが観客の町民には、怒っている様に見えていたのかもしれない。


 元気は焦ったが、こうなっては仕方ない。と、魔力マイクを使ってナレーションを始める。

 すると、舞台のスピーカーから元気の声が周囲に響き渡る。


「とてもとても、寒い日の晩に。1人の女の子がパンを売っていました」


 元気のナレーションに合わせ、マーリュクが演技を始める。


「パンを……パンを買っていただけませんか?家ではお母さんが、病気で寝ているのです。……どうかどうか。パンを買ってくれませんか?」


 マーリュクがパンを売る仕草をすると、舞台の背景が、レンガ造りの家並みに代わり、何処からともなく雪が降って来た。

 

 マーリュクが演技に入り込んだ様だ。


 マーリュクの魔力イメージが、舞台を一気に、パン売りの少女の世界に染め上げた。


「おぉ……!」っと一瞬。観客から声が上がったがまた静かになった。


 大丈夫そうだな。と思い。元気は客の様子を見ながらナレーションを再開する。


「女の子が夜遅くまでパンを売るのは、父親がお酒ばかり飲んで働かないからでした……」


「そんなの!酷いではないか!マーリュク!そんな奴の為に働くなど、私が許さんぞ!」


「そ、そうだ、そうだ!そんなロクデナシ死んでしまえ!」 「女の子が可哀想よ!」 「おじちゃんの所においでー!」……等々と。


 フェルミナの言葉を皮切りに、観客席からヤジが飛び始める。フェルミも客も、既に物語に入り込んでいる。


「そこのエルフ。次喋ったら、ご退場願います。そして天罰を下します。お静かに」


「う、うむ、すまぬ。つい……我慢するから……続けてくれ」


 フェルミナは警備の仕事を忘れて、客達の一番前に陣取っている。フェルミナを指さして元気が注意するとフェルミが黙り。それにつられて他の客も静かになった。


 それを見て、マーリュクが演技を再開する。


「あぁ、お腹が空いたわ。でも、このパンを食べたらお母さんのお薬が買えない。」


 そこでマーリュクが白い溜息をつくと、観客の中からすすり泣く声が聞こえる。

 フェルミナも何か言いたそうに、前のめりになって拳を握りしめている。

 

「でも、どうせカチカチだから。食べられないわ……」


「そこのお嬢さん、悲しい顔をしてどうしましたか?」

 マーリュクがセリフに合わせ悲しい表情を浮かべると、子供達が天使の衣装を着て登場した。


 獣子達が小さな羽根をつけてちょこちょこ歩く姿が可愛い。観客席からも「まぁ!」や「可愛いわ」と黄色い声が上がる。


「声をかけて来たのは、天国から神様のお使いに来ていた天使でした」


「まぁ!天使様!神様は本当にいたのですね!実は……お腹が空いるのですが、パンがカチカチで食べられないのです」


「それはお困りでしょう!では僕たちの魔法で柔らかくしてあげます。そ~れ~」


 子供達がそういうと。マーリュクの周りをとことこと。しばらく回り。……舞台袖に帰って行った。まるで幼稚園のお遊戯会だ。


「天使達は神様にこう言われていました。心のやましい人間だったら、天国に連れて来なさい。心の綺麗な人間だったら……。助けてあげなさいと」


「わぁ!パンがふわふわだわぁ!」


 そういうとマーリュクは、パンを観客に見える様にふにふにさせた。そして、パクッと口に入れ演技を続ける。


「まぁ!柔らかくて美味しい!でも。何故、天使様はパンを柔らかくしてくれたのかしら?」


 マーリュクが、それらしく悩むポーズをするのを見てみて、すかさずナレーションを入れる。


「実は天使達は、お母さんの為に頑張っている女の子をお空から見ていて、助けてくれたのでした。 その後。ふわふわパンは飛ぶ様に売れ。 お母さんのお薬を買ってから、女の子はお家に帰りました。 家に帰ると、お酒ばかり飲む働かないお父さんは、天使に天国へと連れて行かれてしまって。 もういませんでした。 それから女の子は、お母さんと2人で。 幸せに暮らしましたとさ……めでたし。めでたし」


 マザーを見ると、途中まで泣きながら見ていたが、今は少し不満そうだ。


 お酒の飲み過ぎはダメなのである。


 マーリュクが、スカートを掴み。一礼をして、壇上から姿を消すと。


「うわぁぁぁあぁああああああぁ!!!」っと。歓声が上がる。


 フェルミナも涙を流しながら、一緒になって叫んでいる。今後。エルフに何か頼む事があっても、フェルミナは数に入れない事にしようと元気は決めた。


「天使のふわふわパン!どうぞ~!」


 熱気が少し収まると、今度は、子供達が一斉に声を上げる。


「買うわ!」「欲しいわ!」「俺が先だ!」 

「マーリュクちゃんは何処ぶひか!?」

「退け豚殺すぞ!」「本当にふわふわだ!」


 子供たちの前が、予想以上にパニックになってしまった事に焦り。元気が急いで花火を打ち上げる。どかーん!という爆発音と共に色とりどりの火花が散り。辺りが静まり返る。


「慌てないで下さい!パンはいっぱいあるので、ちゃんと並んで!買って行って下さい!天使達が見ていますよ~」


 元気がそういうと、町民達はゴクリ……。と息を呑み、整列を始めた……。

 神が顕現したのだ。悪者を連れて行く、天使もいるかもしれない……。そう町民が思った結果だった。


 その後。元気の指示を受けたエルフ達の先導で、パンの列と販売は順調に進んで行った。


「パパ、これは何事?」


「これもそうだが、さっきの爆発音と、この舞台は何だ?」


 元気が振り向くと、ポタンを抱っこしたヴァイドが立っていた。明らかに怒っている2人の様子に、元気は焦り。急いで説明を始める。


「あ、あの、パン屋を手伝うつもりが試食会になって、祭りになって、お祭りが、劇になって……あの、取り敢えず。ごめんなさい」


 成り行きも、説明も酷かった。


 話しながら。完全にやってしまった。と思う。元気なのだった。


フェルミナは、元神様。元気は現在。一応、神様なので。マーリュクが見えあるのです。

次回は祭りの後ですw


ブクマ、評価、コメントよろしくお願いします。

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