アイリスになった日
アイリスはかわいい系の黒髪ロリっこですw
先輩が言っていました。
「ママを傷つける奴はパパでも殺す」
先輩はママが好きなんだなぁと、フフフッと思って、微笑ましく思っていたのですが、羨ましく思ったのですが。
どうやら先輩はエルフらしいので、出来るかも知れませんね、もうフフフッと笑えません。
笑えませんよ、私が殺されるかもしれないんですから。
終わっちゃいます。
もう、終わっちゃったのかもしれません、いえ、これはもう、終わっちゃいましたね!
お母様はどう思うかな?なんて考えてもわかりません。
だって、生まれてこの方、会ったのは5、6回です。
一度お父様に聞いたら、エルフの時間の流れは我々とは違うからと言っていました。
だから、直ぐに来ると言って帰るのに、半年後にやって来たり、昨日のことの様に半年前の話しをするのかと子供ながらに納得した物でした。
納得するしかありません、だってあのお母様ですから。
こちらに来てからは、嬉しい事に寝る時毎日会えますから、いいのです。
でも、それも終わりました。
相談しようにも、先輩よりも先にお母様を探せる気がしませんし……。
お母様はフェルミナ様に殺されかけたと笑っていたから、相談したところで、殺されるのが、私とお母様になるだけです。
ミノスやお父様がいたら連れて逃げてくれるかもしれませんがいません。
どれ位、走ったでしょうか?
必死に逃げて来たのでここが何処かわかりません。
何度かこけたので、顔も手も足もドロドロでボロボロです。
旦那様に貰ったお洋服もドロドロでボロボロです。
目の下には海が見えるので、行き止まりです。
轟々と揺れる波と轟々と降る雨が、崖っぷちの私を崖っぷちへ連れて来たようです。
先輩に殺されるのは怖いので、海に飛び込んで死のうと思いましたが、どちらも怖いです。
謝ったら許して貰えるかもとも思いましたが、お母様を刺したフェルミナさんがいるので無理でしょう。
母様よりも旦那様と仲良しなのです。
2度3度殺されるかもしれません。
痛いのは嫌です。
さっき、ウサギのお姉さんも笑っていたので、天国は良いところかも知れませんね。
もしかしたら、ウサギのお姉さんは私を助けに来てくれたのかもしれませんね、優しかったですし。
手を取っておけば、一緒に逝けたのかもしれません、勿体ない事をしました。
ともあれ、一歩を踏み出さなければ、終わりません。明日が来てしまい、殺されてしまいます。
「アイリス!」
驚きました。驚いて振り返りました。
ドロドロのボロボロで、頭から血を流してる人が立っていたのです。
何でいるのかな?と思っていると、ぐるん!と視界に黒々とした空が映りました。
「アイリス!?」
悲鳴の様な声が聞こえます。
どうやら私は目の下にあった海へ、これから落ちていくようです。
まったく、おっちょこちょいさんですね。
まぁ、怖かったので助かりました。
えぇ、助かりました。殺されずに死ねるのですから、有り難いことです。
旦那様に会えなくなるのは寂しいですが、天国でお父様やお姉さんにその分、遊んで貰う事にしましょう。
そう思っていたのですが、崖の上に引きずり上げられました。
脇腹に岩が擦れて痛かったです。
私がポカンとしていると、ほっぺたに衝撃が走りました。パァンと走りました。
「貴方は、何をやってるの!!!」
凄く怒られました。
目の前のフェルミナ様のお友達が、こんなに怒っているのを初めて見ました。
「あなたが嫌い!大嫌い!旦那様にいつもヘラヘラして!死んじゃえ!」
とりあえず、謝ろうかな?と思ったのですが、私は何を言っているのでしょうね?
ヘラヘラしてるのはこの人じゃ、ありません、旦那様です。
「他には?他には!?言いなさい!!!」
彼女は私に馬乗りになって、凄く興奮している様なので、ちょっと落ち着いて話をしましょう。と、そう言おうと思って口を開いたのですが……。
「何が大丈夫なのよ!貴方がいると私の居場所が無いじゃない!全然、大丈夫じゃない!私には旦那様しかいないの!」
何故か、そう言って今度は私が馬乗りになっていました。
しかも、ぐーぱん付きです。彼女から鼻血が出ています。
いやはや、力持ちというのも、良いことばかりではありませんね。
さて、どうしましょう?終わりだと思っていたのですが、終わりの先があったようです。
「貴方がいると、誰も私を見ないの!誰も彼もアレもソレも奴もアイツも全部全部皆!私は、お化けじゃない!花瓶でもない!人形でもない!!!いらない子じゃなぁい!」
あやや。やめなくてはいけないのに止まりません。
何度も殴っているのに、旦那様の好きな人は一度も瞬きせずにこっちを見ています。
怖いです。
この人は、甘やかされているだけでは、無いのでしょう。旦那様が好きになるのもわかる気がします。
気が付くのが遅すぎました。
「それで、他に言いたいことは?」
「ほ、ほか?」
まだ聞きだそうとする彼女に驚きました。
そして、ポカンとしてしまいました。
「それじゃ、ごめんね、先に謝っておくわね」
いえいえ、謝る方は私の方ですので、お気遣い無くと思っていると、私の体が宙に浮きました。
見かけによらず、彼女も力持ちの様です。でも、ありすぎではありませんか?
ノーモーションからのぐーぱんで体が浮くってびっくりです。
「げぇ」
潰れた蛙の様な声が出て、地面にひっくり返ってしまいました。蛙だけに……なんちゃって。
横腹が痛くて動けません。
のそりと起きあがった彼女がこっちにやって来ます。
恐怖です。
「アイリス?あなた、死にたいのよね?手伝ってあげるわ」
そういうと彼女は私の足を掴んで引きずります。
直ぐに答えはわかりました!
終わりの先から、崖っぷちに戻ってきたのです。
終わりに戻って来たようです。
頭の下では轟々と岩肌に波がザバンとぶつかってます。
足の先では、黒々とした空から轟々と雨が降ってます。
そして、私の目を見る彼女の目は恐ろしいほどに怒っています。
怖いです。
さっきしたのに、また漏れてきちゃいました。
「いい、アイリス?」
彼女の声が私にハッキリ聞こえます。
周りが轟々と五月蠅い中でも静かに彼女の声だけが聞こえるのです。
不思議です。目が離せません。
「皆、貴方に気を使っているの、それに甘えすぎよ」
甘えですか、これは、痛いところを突かれましたね。旦那様の甘やかしは心地いいです。
皆、優しくてニコニコしているので、毎日平和ですし、何も変わらないの、そう、何も変わらないの……。
何も変わらないの!
「お化けでも、花瓶でも、人形でも無いのなら、その、わざとらしい作り笑いを今すぐ、辞めなさい!!!」
どうやら、バレてた様です。
どうしましょう、言い返す言葉がありません。
ニコニコしていれば、皆、甘やかしてくれるのですから、辞められませんよね。
どうしましょう。やっぱり、この人は嫌いだな、駄目なんです。
笑って無いと、幸せがこないんです。
そうでしょう?
お父様?
「ああああああああぁぁぁあぁああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「まったく、手間かけ過ぎよあなた」
自分でも驚くほどに、泣いてしまいました。
「これからは、貴方の面倒は私が見るわ、ミルオレさんともそんなに交流出来て無いみたいだし」
ミリャナ様は、そういって私を抱きしめてくれたのですが、旦那様の方が良いのですがと思います。
まぁ、言えませんけどね。
「アイリス、何か言うことは無いのかしら?」
「あぁぁぁぁっぁああぁぁぁぁぁん!!!」
「アイリス!!!」
お、怒らないでください、怒っているミリャナ様は本当に怖いのです。
びっくりし過ぎて、泣き止んでしまいました。
「ひっひっひ、ごめんなひっひさいひっひひっ……」
「ぷっ!アイリスあなた酷いわよ?」
「えへへひっひひっひへひひっく」
つられて笑ってしまうから辞めて欲しいです。酷いのはわかっていますとも、本当に、酷い……酷くて、笑えません
「さ、帰るわよ皆、あなたのこと探してるんだからね!」
「ひっ!」
そうでした、そうでした、私、先輩に殺されるんでした。
死のうとして、誰かに見つけて貰って、可哀想な子なのを利用して、皆の優しさを利用して、優しくて可愛い、可哀想な子として許して貰う算段なんでした。
崖から、足を踏み外した時は焦りましたよ。びっくりでした!
ミリャナ様、様々です。
ありがと~!
皆さん、騙されましたか?
騙された方が居たのならば、してやったりです!
はてさて、帰りたくありませんが、そうもまいりません、まいりました。
「フフフッ、いい顔ね、ちゃんと反省しなさい、大丈夫よ。私も一緒に謝ってあげるから」
この人は本当にお人好しなんでしょうね、魔国で一番最初に死んじゃうタイプです
ミリャナ様が謝ったら、私の立つ瀬がないじゃないですか、崖に立っているので本当に立つ瀬は無いんですが
ここはもう、開き直るしかありませんね。怒られましょう!
心いくまで、お説教を堪能しましょう。
「あなた、ミールみたいにならないでね?
ミールと全く同じ事してるんだから……。賢いのは良いけど、ずる賢いのは駄目よ?」
家に帰る道すがらミリャナ様がお兄ちゃんの話しをします。
どうやら、先駆者がいたようです。
お馬鹿に見えたのですが、あの屋根裏小僧のお兄ちゃんは中々賢いようですね。
全く、かないませんね。この人には、私の願いも叶わないでしょう。
でも、信じる事にしましょう。
この人の大丈夫は、大丈夫だと……
先輩に殺されなかったらですけれどね!
アイリスはそう思いながら、ミリャナに手を引かれ、家へと帰宅する。
家では、元気とポタンが待っており、急いで元気がヒールをかけてくれた。
実の話、スマホで緊急連絡を受けた元気が、空から先にアイリスを見つけていたのだが、見つけたらミリャナに連絡するようにと、元気は言われていたのだ。
そして、今に至る。
崖で落ちそうになった時は、心臓が止まりそうになっぞ。と言われたアイリスは元気に謝る。
「あの、先輩、すいませんでした」
「二人に感謝しなさい、今度は、私が行くからね」
「もうしません」
次は無いとアイリスはポタンに釘を刺された。
「お?不良娘のお帰りか?」
「痛い!ちょっと何するんですか!?」
屋根裏から降りてきたミールが、バチンと強めにアイリスの頭を叩く。
すると痛そうにアイリスが頭を抑えながらミールに文句を言う。
「馬鹿、バレバレなんだよ、お前、何度俺が姉さんに探して貰う為に同じ事したことか……」
そう言いながらミールが笑う
「それよりアイリス。怒った姉さんめっちゃめちゃ、怖かったろ?いつも優しい姉さんが激怒するんだぜ?癖になるんだよなぁ~」
「あぁ、わかる。それわかるぞミール。耳を舐めた時そうだった。激怒されてゾゾゾってした」
「お前のソレは、何か違う」
「もぉ、あなたたち、私を何だと思ってるの?アイリス、お風呂入りましょ。ポタンもね、もう!びちょびちょよ」
そういって、ミリャナはアイリスの手を引いてお風呂場へと向かっていった。
やっと終わったw
いやぁ、こんな感じじゃ無かったハズなのにでした!
アイリスが本当の家族に近づいて良かったですw
魔国に帰す案もあったんですが、消えちゃいました。
次回は、、、、、、まだ決めていません!
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