表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/236

新たな出会い

硬貨と魔力の基礎のお話し。


 異世界は本日も晴天なり。小鳥達も楽しそうに屋根の上でチュンチュンと歌っている。後で取って食べよう。と元気が思っていると、仕事の支度を終えたミリャナが家から出て来た。


 今日は薄い緑のワンピースだ。ミリャナは保護色が好きらしい。と元気はミリャナを毎日観察していて最近気付いた。


「ミリャ!今日もお仕事頑張ってね!」


「うん!ありがとう元ちゃん!行って来ます!」


 元気は、心の中でミリャナに行ってらっしゃいの投げキッスをしながら見送る。気分は新婚さんである。そんな元気はTシャツに短パンにサンダルという、シンプルなスタイルだ。


 異世界のサンダルは、木製の板に革止めが着いた昔の便所サンダル見たいな物で、激しく動くと直ぐに足の甲の革がむけてしまう。なのでいつか改良したいと元気は思っている。そしてこの世界の基本的な靴は木の靴なので、ミリャナはいつも木の靴を履いている。布の靴や革の靴は高価な物らしく手が出ないのだそうだ。


 前の冒険で皮の靴を買った時は、小銀貨八枚(8万円)程だった覚えがある。勿論。無職の元気には到底手が出せる額ではない。なので現在、ミリャナの足に優しい靴を何かで作れないものかと思案中だ。


 可愛いミリャナのおみ足が、木の靴のせいでカッチカチになるのは、到底許せる事ではないのである。そんな事を考えながら、今日も元気の一日がスタートする。ミリャナのお見送りが無事終了すると洗濯開始だ。


 ミリャナのドロワーズを丁寧に手洗いすると、絞って傷つける訳にもいかないので、水がはけるまで、両手で広げながら庭を駆け回る元気。これがいい運動になる。喉が渇いたら、濡れているミリャナのパンツで水分補給をすれば良いので、効率も良い。それが終わったら次は部屋の掃除だ。


 本来ならばこの後、自分の部屋を軽く掃除をして、今日は水汲みの予定だったのだが、ベッドの下の埃を箒で掃き出している時に、床の一部が外れる事に元気は気付いた。


 掃除を一時的に中断して、床板を外して中を覗いてみると、そこには一冊の本が隠されていた。


 「本は、高価な物のハズだけど……。何でこんな所に本が?確か……金貨1枚から3枚するってミリャが言ってたよな?」

 

 硬貨を、日本円に換算するとこうだ。


 小銅貨1枚百円。 大銅貨1枚千円。

 小銀貨1枚一万円。 大銀貨1枚十万円。

 小金貨1枚百万円。 大金貨1枚一千万円。


 硬貨10枚毎に、価値が繰り上がって行く。


「ミリャの物じゃ……無いよな?弟さんの物かな?それか死んだ両親の?ミリャに聞いて、知らなかったら売ろう!……そして、ミリャに新しいパンツを買おう!」


 孤児院の仕事のお給金は、ひと月で大銀貨(十万円)1枚にも満たない。ミリャナはいつも色違いのワンピースを着回しているし、下着も開いた穴を繕った使い回しの物が多い。家族の誰かの物かもしれないが、ミリャナの為なら怒らないだろうと元気は思う。それに死人に口無しだ。ミリャナを一人残して戦争に行った人間に拒否権など与える気は毛頭無い。


 家に一人残ったミリャナは、日々節約をしながら侘しい生活を送っている。それが不幸か?と問われれば、そうでもないのかもしれないが、たまには家計の事などは考えずに、うんとお洒落をして、贅沢をして欲しいと元気は思う。ミリャナはまだ十七、八歳の女の子なのだ。食材等は森で取れば良いし。食費をせめて自分の為に使って貰いたいと元気は思うのだ。


 発見した本を売る事はほぼ決定したが、元気は、中身が気になる。

 

「……売る前に少し読んでみよっかな……」


 独り言を言いながらベッドに腰掛けると元気は、学校の教科書程の大きさの本のページをめくる。するとそれは、魔法の事が書かれた本だった。


「うわ。異世界特典って便利だな内容が解る……。ふむふむ、なるほど……。魔力は心臓に核が存在する。意識を集中する事で、魔力を感じてあやつる事が出来る様になるか……。……どゆこと?」


 便利な異世界特典に感動した元気だったが、異世界の文字が読めても書かれている事の意味が解らない。しかし、魔力操作のイメージは引きこもっている間に散々と訓練した元気。意味も無く何だか出来そうな気がする。


「フフフ……。俺の妄想能力を舐めるなよ異世界。……とりあえずやってみよ……」


 誰も舐めていないが、勝手に異世界をライバル視しだした元気は、とりあえず目を閉じて心臓の辺りに意識を集中してみた。


 すると、心臓の辺りにかすかな熱と違和感を感じる事が出来た。


「お!これか……。これをあやつる……っと……。お、何かもぞっと身体の中で動いた!?これが魔力かな?おぉ……。何か体がぽかぽかしてきた……これで良いのかな?次……」


 異世界に来て初めて自分の魔力に触れた元気は、ワクワクが止まらない。やはり異世界と言えば魔法なのだ。


 魔法の力を使って何か事業を行い。お金をたらふく稼げば、その内ミリャナと結婚出来るかもしれない!と、魔法の事を何も知らない内から、妄想を膨らませる元気。事業が出来るほど自分が賢くない事を彼はすっかりと忘れている。そんな元気は、明るい未来を妄想しながらニヤニヤと次のページをめくろうとして、ある事に気づいてピタリと動きを止めた。


 現在元気はベッドに一人で腰掛けているのだが、魔力操作を行い始めて暫く経過した頃から、隣に人の気配がする様になったのだ。


 この家に住んでいるのはミリャナと元気だけなので、他に人が居るはずが無いのだが、確かに何かいる。それも自分のすぐ隣にだ。


 息使いさえ聞こえてくる程の距離から、何者かがジッと元気をガン見してくる。その感覚に、ズズズっと冷や汗が吹き出してくる元気。先ほどまでの幸せな妄想は何処かに消え去り。現在はこの部屋からの脱出に神経を尖らせている。そして、何かあったら孤児院においでとミリャナに言われていた事を思い出した元気は、孤児院に向かいミリャナに泣きつこうと決心した。


 しかし……。


「ねぇ?もしかして見えてる?」


 元気が行動を起こす前に、隣に座る何者かに話しかけられてしまった。


「ひっ!?…………さ、ささ、さ、さぁて!ま、薪割り!薪割りぃ!」


 いきなり話しかけられ混乱した元気は、そう言って勢いよく立ち上がり、急いで部屋を出ようとしたのだが、ドアの前に先回りした何者かに行く手を阻まれた。


 これはもう、窓をぶち破って逃げるしかない!窓は無くても命とミリャナがあれば良い!元気がそう思い、窓に駆け出そうとした時だった。


「初めまして。僕はミール!ミリャナ姉さんの弟で、この部屋の主だよ」


「え?ミリャの……弟さん?」


 ミールの挨拶によって、窓への突進を踏みとどまった元気は、ニコリとほほ笑むミールへと向き直った。


 元気が向き直ったその先には、少し垂れた目元に、後ろで結んだ長い髪。髪の色はミリャナと同じクリーム色の利発そうな少年の姿がある。背丈は元気と同じ位で。元気と同じ様なシャツと短パン姿だ。


 パッと見。普通の少年なのだが、身体が半透明なのである。


「いやぁ。君が魔力を操れるようになるのを、ずっと待ってたんだよ。良かった~。これからよろしくね!」


 ニコニコしながら、透けた手を差し出してくるミール。


「よろしく?何を?」


「そりゃ、勿論。一緒に姉さんを幸せにするんだよ!」


 元気は差し出された手を、見えない振りしていたのだが、ミールが差し出した手で元気の手を強制的に握ってニコッと笑った。


 半透明ではあるが、触れた手の感触は人間の物で、何故か安心する元気。


「それには賛成だけどさ……。君、死んでるの?それとも……。何かの呪いとか?」

 

「呪いじゃ無いよ。僕さ普通に死んじゃったんだ。だから君に頼るしかなくてさ!あ、この事は姉さんには内緒な!頼むぜ!兄弟!」


「きょ、兄弟……!?」


 そう言いながら、笑顔で肩組みしてくるミール。こうして、魔力操作を覚えるのと同時に霊体が見える様になった元気は、幽霊の兄弟が出来た。


ミリャナの弟ミール登場!


気に入った! もっと読みたい! と思われた方は、ブクマ:評価:レヴュー等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ