あの人
アイリス視点のお話しです。
何故かしら?
旦那様は何故あの人が好きなのかしら?
「もう、元ちゃん!耳は駄目よ!」
「わ、解ってるって!肩を揉むだけだから、揉み揉みするだけだから、ね、お願い!
」
「そう?揉み揉み揉むだけなら良いけど」
「パパ、顔が気持ち悪い」
「ひ、酷い!」
一緒に笑うけれど、ちょっと不快です。
旦那様……私を揉み揉みしていいですよ?
旦那様は大人になったらね、と言いますが、私は、いつ?大人になるのでしょうか?
◆今日は良い天気です。
「どう?ここの生活には、なれたかい?」
「はい!フェルミナ様も、ポタン様も、ミール様も、優しいので嬉しいです」
「そうか、それはよかった」
あの人を褒めると、旦那様が私の頭を撫で撫で撫でてくれます。
とても、気持ちが良いです。
皆、優しいけど、慣れません
馴れ馴れしく馴れれません
だって、あの人がいると私は旦那様のそばにいれないのです。
嫌いでは無いのですよ?
でも私はあの人にはなれません。
◆今日は朝から旦那様はお出かけです。
ミール様お兄ちゃんが少し遊んでくれました。
「アイリスは、どういう遊びが好きなんだ?」
「遊びですか?そうですね~お兄様とはねずみ取りで遊んでました」
「ねずみ取り?何だそれ?」
ねずみ取りは有名な遊びではないのでしょうか?
私はミールお兄ちゃんに遊び方を教えました。
「やりますか?いつも私がネズミだったので、私がネズミしますよ?」
「いや、いい、アイリス、もう大丈夫だからな」
そういうと、ミールお兄ちゃんが泣いてしまいました。
何故、泣いたかわかりませんが、可哀想なので撫で撫でします。
ミールお兄様を撫で撫で撫でながら私はホッとします。
実は、私は、ネズミ取りが嫌いなのです。
控えめに言っても大嫌いなのです。
だって、捕まるとゲェが出るまで、蹴られたり、投げられたりするのです。
お兄様達は、あ、ミールお兄様ではありません、魔族の方です。
お兄様達は、訓練だと楽しそうに笑っていましたが、私は、嫌だなぁと一緒に笑っていました。
泣いてしまうと、熱いお湯に入れられるので、頑張って笑います。
実はとても大嫌いでした。
◆この前、旦那様とネズミ取りしました。
説明すると、怖い顔をしていましたが、旦那様がネズミをしてくれました。
私は鬼です、鬼と鼠の追いかけっこです。
旦那様はワザと私に捕まります。
私は、旦那様を蹴りたくないので、投げようとしました。
ぽいっと投げられればそこまで、痛くないのです。
でも、無理でした。
いくら頑張っても、無理でした。
旦那様は、疲れた私を抱き上げポーンとお空へと投げました。
「ひえぇぇ!」
情け無い声です、恥ずかしいです。
旦那様の前でひえぇぇ!なんて、恥ずかしさで、死にそうです、死にたいです。
ですが、このままでは、地面に落ちてしまいます。
地面に落ちて、地獄に落ちてしまいます。
でも、旦那様に殺されるならいいのです。
そう思っていると、旦那様が抱き留めてくれました。
危機一髪ではありません、なんと、お姫様抱っこです。
安心安全の風魔法のクッション付きです。
嬉しくて旦那様に抱きついちゃいましたが、
怖くてオシッコを少し漏らしてしまった事は内緒です。
パンツは後で自分で洗います。
その後は、旦那様が鬼で私がネズミでした。
捕まる度に、ポーンとされたり、ギュッとされたり、ペロリとされたりしました。
最初は怖かったですが、ポーンとされると周りの景色がよく見えて、風が気持ちいいのです、まるで鳥さんになったようでした。
今度は雲をお土産に取ってこようと思います。
ネズミ取りは、実は、気持ちよくて、嬉しくて、ちょっと恥ずかしい遊びでした。
旦那様とすると、痛くて、怖くて、熱く無いので、またしたいです。
とても、楽しかったですが、もうそろそろあの人が帰って来ます。
嫌いではないですよ?優しいです。
旦那様があの人の話しばかりするので、あの人は私に優しくするので、少し苦手なのです。
私を叩いたり、蹴ったり、お湯につけたりすれば嫌いになれるのにと思うのですが、しないと思います。
◆今日は、朝から大雨です。
今日は、お家で遊びます。
最近は、あの人はお家に時々、朝からいます。
先輩は、お城へ本を読みに行きました。
お兄ちゃんは、この人の代わりに孤児院でお仕事です。
旦那様は、新しい町の様子を見に行きました。
大雨で洪水が起きないか確認するそうです。
「パパ、私の設計にミスがあるとでもいうの?」
先輩が旦那様をギロリと睨みます。
「い、いや、ちょっと、確認するだけだよ、ポタンの事は世界の何よりも、スーパーコンピューターよりも間違いないと思ってるさ!」
先輩は少し嬉しそうですが、不機嫌な態度を崩しません、スーパーコンピューターとは何でしょうね?
自然災害は馬鹿に出来ないだろ?そういうと旦那様は、町に行ったのでした。
そして、私とこの人は、二人で家にいるのですが、どうしましょう、話すことがありません。
「アイリスは、ここの生活にはなれたかな?」
「はい、皆、優しいので、楽しいです」
「そう、よかった」
旦那様と同じ事を言います。
何故、でしょう?心がモヤッとします。
そうだ!と言ってこの人は、私に耳掻きを始めました。
あまり、近くにいたくないのですが、旦那様が、嬉しそうに、気持ちよさそうに、幸せそうにしていたので、気になってはいたのですが、それを見るのは嫌でした。
想像、以上に気持いかったのですから、仕方ないですねと思いました。
耳の奥をコリコリされると、ゾクゾクっとして足がポーンと伸びるのです。
癖になりそうでしたが、ずっと、旦那様の話しをするので、気持ちよさ半減です。
自慢でしょうか?
こんな事があったのよ?あんな事があったのよ?面白かったのよ?おかしいでしょう?
そう言いながら、旦那様と同じように、幸せそうに笑うのですから、堪りません。
旦那様がこの人の話しをする時の様に、幸せそうに笑うのですよ?堪りませんよ。
堪りませんし堪っていきますよ。
「もう、大丈夫だからね」
耳掻きが終わった時に、そう言われギュッとされました。
旦那様がいつもしてくれるようにギュッとされたのです。
何が?大丈夫なの?と思いましたが、私は、我慢しました。
パァーンと何かが、弾けてしまいそうでしたが、我慢しました、何かはわかりませんが、我慢したのです。
我慢したと、思いました。
思いたかっただけかもしれません。
「何が!大丈夫なの!大丈夫なんかじゃ無いじゃない!」
私は、そう叫んで、旦那様の好きな人をばーん!と跳ね飛ばしていました。
自慢では無いのですが、小さいわりには力がまぁまぁ強いのです、えっへん!です。
お兄様達との訓練のお陰です、ですが、こんな所で役に立つとは、役に立たない訓練でした。
「きゃ!」
そう声を上げると、先輩のママはドタン!と尻もちを付いて、テーブルにガタンと頭をぶつけました。
頭から、つつ~っと血が流れて綺麗な顔を流れながら、地面へぽたりと落ちていきます。
「ごめんね、ビックリさせちゃったね、大丈夫、大丈夫だから、ごめん」
そう言いながら、お兄ちゃんのお姉ちゃんは、ニコリとします。
私の心臓がだっくだっくと鳴っています。
耳の奥もずっくずっく鳴っています。
息がうまく出来無くて、体からいっぱい変な汗が出て来ます、暑いからではありませんよ?
今日は雨ですし、クーラー?も効いていて気持ちいい位です。
体がぶるぶる、ガタガタと震えて、恐怖でオシッコが漏れてしまいそうです。
何はともあれ、私は、とんでもない事をやっちゃったのでした。
びっくりして、開いた口が閉まりません。
実際に口も体も頭も動きませんし、働きませでした。
血を流して痛そうにしている人が、私に手を伸ばして来ました。
ウサギのお姉さんに見えました。
目がありません、耳がありません、でも嬉しそうに笑っていました。
ちゃんと私は我慢していたのですが、オシッコが出てしまいました、お漏らしです。
メルディ様に話したら笑われるかもしれません。
手に捕まれそうになった時です。
避けることが出来ました、間一髪です!
動ける様になった私は、玄関のドアから外に弾ける様にバーンと飛び出しました。
嘘です。
私はまだ飛べないので、外へと駆け出しました。
アイリスが家を飛び出しましたねw
こういうお話しや、描写はライトユーザーには面白く無いかも知れませんねw
だがしかし!もう少しだけ、お付き合い戴きたい!
ブクマ、評価、喜んでお願いします。




