集落を作ろう
建設開始です!
ヴァイドとの話し合いも終わり。ポタンと話しあった結果。避難民の集落を作るのは遊び場であった、裏の森向こうの平原に決まった。
平原の先は断崖でその先は海である。
平原自体が山に囲まれているので、未開発地域、誰が暮らしても困らないのだ。
その誰も行けないのが、問題だったのだが
「は?そんなの、トンネルでも掘ればいいじゃない?」
と、ポタンの天才的な閃きによってあっさりと解決したのであった。
そして集落の建設には、町の建設ギルド総出で対応してくれる事になった。
現在ミノス達は、5000人の難民を引き連れて、大航海中との事で、今のところ追っ手が来る心配も無いと、同行したエルフからの念話で報告を受けたポタンが教えてくれた。
難民の方は、栄養などが足りていない以外は問題無いとの事で、皆が受け入れを感謝しているらしい。
次は、資材等の問題が上がったが、ユグドリアスからの提案で、元々エルフ達の住んでいた森の木を使えばよかろう。と、此方もあっさり解決した。
エルフの森の木々達には、少量の魔力がこもっており。潮風や湿気に強いとの事で、海が近い集落建設には、うってつけの素材であった。
伐採をエルフが行い、運搬は元気が転送魔法で送る。最初はいきなり現れる資材に驚いていた建設ギルドの人間達も、現在は慣れエルフと協力して作業を進めている。
魔力で家を出して、ハイどうぞ。と解決するのは簡単だが、町の人間と、エルフそして難民、それぞれの交流も踏まえての判断だとポタンが元気に説明した。
「ポタンは凄い!天才過ぎるだろ!」
特に何も考えていなさそうに元気がポタンを褒める。ポタンは内心でイラっとしながらも、トンネル掘り、木材の転送、家の家事や御飯の準備を、文句の一つも言わずに行う元気に、感心していた。
しかしポタンは口に出しては言わない、元気がすぐに、調子に乗るからである。
ポタンが家に来て暫くたった頃、元気に本を貰った時に嬉しくなり……
「パパいつもありがとう、大好き!」
と言ってしまったのが間違いだった。
それから、一週間程、ポタンは元気に寝るまで付き纏われたのだ。
本を何ページかめくると「面白い?どうパパの出した本、面白い?」や「お茶のむ?クッキー食べる?」など、あの手この手で、褒めてクレクレおじになってしまったのである。
最初は我慢していたが、元気の顔を見ると溜息が出るようになってしまったポタンは、ミリャナに頼んで説教してもらったのだ。
今回は、大勢の人が関わる事業なので、暴走は困るとポタンとヴァイドは考え、褒めるのはミリャナの仕事と、勝手にミリャナに投げた。
ミリャナ以上に元気扱いがうまいものは居ないというのが、ポタンとヴァイドの共通認識である。
トンネルの開通は急務だったので、元気が魔力を使って初日に終わらせた。
元気は広さと高さに、高速道路のトンネルをイメージし、中には魔力ライトが点々と設置してある。
崩壊しないように、魔力で強化コーティング済みだ。
集落建設には、建設ギルドから約300、騎士、兵士約200、元奴隷の約200人、エルフ40人
商人ギルドや、食品ギルド、冒険者ギルド等から約300と、千人を越える人達で昼夜問わず行われていた。
ポタンが三交代制度を取り入れ、8時間勤務でシフトを組んだので、健康的で建設的に、かつ効率的に作業が進んで行った。
「元気よ、これはもう、集落じゃ無く一つの町だぞ?」
「ですね……予想、以上ですね」
「お!旦那達、来てたんですかい?どうです?すげぇでしょう?」
そう言ってヴァイドと元気に話しかけて来る男は、インディゴ、町の設計士だ。
「いやぁ、エルフの兄ちゃん、ねぇちゃんは、言ったら直ぐ魔法で地盤を作ってくれるし、獣人の奴等は、ビシッ!と働くし、飯は美味えし、面白ぇのなんのって!」
「うむ、しかし、やり過ぎでは無いのかこれは?」
作業3日にしてある程度、形ができ始めている。
アルカンハイトの町は商業がメインで作られている町なのだが、新たな集落は居住メインだ。
集落は崖から少し離れた場所を起点に、
円形状に展開されている。
中央に大きな水場があり中央から噴水の様に水が噴き出している。
「アレは何故、アレだけの水が吹き出ているのだ?」
「アレですかい?アレはお嬢に噴水が欲しいと相談したら、鉄の管を使って海から海水を引き上げる物を作ってくれたんですよ」
「お嬢とは?」
「ポタンのお嬢さんですよ、旦那!おりゃあんなに、賢い子供は見たことないぜ?ありゃ、きっと神の子ですぜ!」
「ぽ、ポタンも来ているのか?」
「いえ、エルフのイケメンに言えばお嬢に、伝えてくれるんだ。念話ってやつか?便利だよな!あれで、イケメンが作り方を聞いて、俺らとエルフ達が作るんだ!」
「なるほどな……。それで、ポタンが作ったのだ、只の噴水ではないのであろう?」
「あぁ!すげぇんだ!海水を地下で蒸発させて、水と……塩?って奴に分けて、水はこの町で使って、塩はこの町の特産品にして、その内、売り出すって言うんだ!また、この塩ってのが美味えのなんのって!嫌いだった野菜のスープが好きになっちゃったぜ!」
「その施設は、出来たのか?」
「エルフ達10人程で、作ってたな、出て来た時は死にそうな顔してたぞ?ありゃ、相当無理したんだろうな?まぁ、そのお陰で、中央噴水から、町全体の運河へ真水が回ってるんだ」
第三区画の門から町に入り。中央に向かい、第三区画、第二区画、第一区画となる。
入り口の門がある、第三区画は居住区で、町を覆う様にぐるりと、二階建ての家々が並び石畳が等間隔に敷いてある。
運河の前には落下防止柵が設置してあり、柵前には等間隔で、大きな木が植えてある。それが風景に色を添えている。
「なる程、根っこから抜いた木が欲しいって言ってたのはこれの為だったのか」
「そうなんですよ、超人様!お嬢が言ったとおりしたら、殺風景な景色がこんなに洒落ちゃってよ!お嬢に惚れちまいそうですぜ!」
「おっさんに娘はやらないからな?」
「だっははははは!超人様は冗談も面白ぇなぁ!」
第三区画をぐるりと見て回ると、橋を渡って、第二区画へ行く
第二区画は、教会や学校公園等の施設半分
、もう半分は家族世帯の居住だ。
こちらは、第三区画よりも家族で住める、一軒家タイプが多く見られ、ここにも運河の前に、柵と木々が並んでいる。
「こちらはですね、家族4人から住める区画ですぜ、この道沿いに行けば学校や教会や、自警団の駐屯所が建設予定の場所へ着きます!」
「あ、聖人様!王様!お疲れ様です!」
教会や学校エリアに行くと、獣人達が兵士や騎士と一緒に建設の手伝いをしていた。
「聖人様のお陰で、離ればなれの家族と会えるかも知れません!ありがとう御座います!」
「聖人様!毎日、怯える事無く眠れています!ありがとう御座います!」
「俺は、毎日、楽しい!ありがとうございます!」
獣人達が次々に元気にお礼を言い出し、ちょっとしたパニックになる!
「ごらぁ!てめぇらぁ!超人様は遊びに来てるんじゃねぇんだぁ!お前らも、仕事しろぉ!礼をしてぇんなら、良い仕事をして恩を返しやがれぇ!」
「へい!親方!」
獣人達は一斉にインディゴへ返事をすると、元気に兵士の敬礼をして仕事に戻った。
「ほう、インディゴ其方の統率は凄いな」
「がははははは!いつもは言うこと聞かねぇんですが、今日は超人様と王様がいるからでさぁ!」
「インディゴよ、謙遜するでないぞ!お前獣人達に慕われておるではないか!」
いきなり、何処かから偉そうにフェルミナが現れた。
何を見て参考にしたのか、頭には捻りハチマキ、服は白シャツに腹巻き、ズボンにはニッカポッカ、足には鳶足袋を履いている。
手にはツルハシを持っているが、建築現場では使わないだろう。と元気は思った。
「お!フェルミナの姉御、ご苦労さんです!男に慕われても嬉しくないでさぁ!がははははは!」
「それもそうか、わははははは!」
フォローをして、直ぐに投げ捨てるという、何の意味も無い事をしながら豪快に笑うフェルミナに、お前は一体誰なんだよ!とツッコミを入れようとしたが、長くなりそうなので辞めておくことにした。
「フェルミナ、あんまり迷惑掛けるなよ」
「あぁ!元気!大丈夫だ!私は人気者だからな!」
「姉御~、すいませ~ん、釘取って下さ~い」
「まってろ!今行くぞ!ではな!元気!完成を楽しみにまってろ!」
そういうとフェルミナは釘を取りに行き、建物の二階まで飄々と木組みを伝って、釘を持っていった。
「姉御は凄いですぜ、何処にでも、何でも持ってきてくれるんですよ。運び屋のフェルミナつって人気者なんでさぁ!」
「これからも、是非。仲良くしてやって下さい」
「こちらこそですぜ!」
インディゴへフェルミナの当面の面倒を投げると、元気達は中央の第一区画へと向かう事にした。
本当は、普通の集落でしたが、結構大きな町になっちゃった。w
次回は第一区画と町のサイクルと役割等です。
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