スローライフ
元気が異世界に来て、初のスローライフです
元気がミリャナの家に住み始めてから1週間が過ぎた。
ミリャナの家は森に面した、木造の庭付き一軒家だ。町からは離れているが、そのおかげで、朝は空気が美味しく静かだった。
「よし!真っ白!いいぞ!日に日に上達してる!」
ミリャナのカボチャパンツをパーンと広げると、元気はくんくんして匂いを確かめる。家の前の広場での洗濯物干し。朝の日課だ。
「う~ん。もうちょっとかな?」
今度はスーンっと、おおきく息を吸い込む。
「なんか、良い匂いがする気がするけど……。香りが薄くてわかんないや……洗剤が欲しいな……」
一応、洗濯石鹸的な物はあるが、効果が薄くて汚れが中々落ちない。なので、すぐに衣類がダメになってしまう。そしてこの世界には、三角パンツがまだ無いようでミリャナのパンツは、全部ダボッとしたドロワーズパンツだ。
その内、元気プロデュースでおしゃれパンツを制作して売り出そうと考えているが、今のところ予定は未定である。
そんなこんなで、洗濯が終わると今度は家の裏にある森へ行き水汲みだ。
森の泉までは、地ならしされていて道が出来ているが、生い茂った木々の影響で道中は薄暗い。しかし木々の間から差し込む日差しが、幻想的で涼しい空間を作っていて怖くは無い。元気はそんな森の中を歩きながら、夜ご飯用のキノコや野草を採取しながら進んで行く。
「お、今日はこれにしよう。白キノコとグルグル草……あっちのウンコ草は千切っとかないとな……すぐ増えるし……臭いし」
木に巻きついた、ハートの形の葉っぱを沢山つけたウンコ草のつたを、足でわっさわっさ千切って行く元気。この草を手で触ると、ちょっとやそっとじゃ臭いが取れない。臭いの感じは、草臭くてウンコ臭い草だ。
白キノコはほんのり塩味。グルグル草はタケノコの様な味と食感だ。
ミリャナと出会う前のサバイバル生活で、食べられる草やキノコを判別出来る様になっていた元気は、夕食に色と味を加えるのが、最近の趣味になっていた。
バッグに野草を詰めながら森の中を進み、泉に到着すると、家から持ってきた木のバケツで水汲みを開始だ。
泉の水はとても透き通っていて、沈んだ木々達が泉の底で揺らめいている。初めて訪れた時に、魚は居ないかな?と探して見たが、残念ながら住んでいる様子は無かった。
水汲みを終えると一度家に戻る。そしてそれを二往復から三往復する。片道約十五分程の道のりだ。
街には井戸があるらしいが、町はずれのミリャナの家には井戸が無く、台所の瓶の中に水を溜めておかないと、身体を拭いたり料理が出来なくなってしまう。勿論飲み水もこれなので、正に命の水なのだ。
「……ミリャは今まで、仕事をしながらこれを一人でやってたんだもんなぁ……大変だったろうな……。あ!おやつトカゲ!発見!」
元気はサバイバル以来。トカゲを焼いておやつとして食べるが、ミリャナに出したらマジ泣きされた。
なので家では食べない様にしている。今回はついでに、ニワトリにソックリな鳥も捕まえてから家へと戻る。トカゲはダメだったが、鶏肉はミリャナに喜んでもらえたからだ。
鳥の捌き方は、いつの日か動画で見たものを覚えていた物で、首を切って血を抜いて、羽をムシって内臓を取る。勿論。最初は怖かったが、今は慣れたものである。正直言えば、今もあまり得意では無いのだが、ミリャナの笑顔のためならばなんのそのだ。
日課の水汲みと鳥の解体が終わると、次は昼寝の時間。
「今日は……。どれにしようかな?これかな?うん。このワンピースがいいな」
お昼寝の時はミリャナの洋服に包まれて寝るのが、最近のルーティン。しかし、タンスの中に色違いのワンピースしか無いのが、元気は気になった。
「ミリャナさんは、お洒落に興味がないのかな?あんなに美人で可愛いのに……。その内。俺がいっぱい、色んな服を買ってあげたいなぁ……。フフフ……」
こんな感じで、ミリャナの事を思いながらの昼寝。元気の至福の時間だ。
しかし、良く眠れ過ぎてしまうのが難点だった。
「げ、元ちゃん……。何してるの……?」
帰宅したミリャナが、自分の洋服に包まって寝ている元気の姿に驚く。
「あ、お帰りミリャナさん……。もう、こんな時間か……寝過ごしちゃった」
「それ……。私の服……」
「あぁ、これ……。なんかさ、家にひとりでいると、さみしいからさ……。ミリャナさんを思いながら寝ようと思って……」
ミリャナが、元気の発言に困惑してしまう。が……。
「私を?ん~。……さみしいなら……仕方ないわね……。でも、恥ずかしいから、綺麗なお洋服だけにしてね?」
「うん!わかった!」
元気も元気だが、ミリャナもミリャナだった。
「はい、お待たせ!ご飯出来たよ~」
「ありがとう元ちゃん。じゃあ……」
「「いただきます」」
食事は美味しいとは言えないが、二人で食べる食事は楽しかった。
「あの……。ミリャナさん……聞きたいことがあって。その、言いたくなかったら良いんだけど……」
「そうね~。そのさんづけをやめたら、何でも教えてあげるわ」
「え、でも……」
「家族からはミリャって言われてたから、ミリャでいいわよ。フフフ……」
「じゃあ。ミリャ……。その家族の事なんだけど……」
「やっぱり気になっちゃうわよね……。約束だし、教えちゃおう!フフフ……。まぁ……別に秘密でも、なんでもないんだけどね……」
「ありがとう……」
「えっとね。私の家族は魔力持ちだったの。だから、中央国へと徴兵されて……。両親は死んじゃった……。ついていった弟もずっと音信不通なの……。だから、元ちゃんが来てくれて嬉しいわ!……本当に嬉しい」
暗い空気にならない様に、元気を気遣いニコリとするミリャナ。
「そっか……役に立ててるなら良かった……」
ミリャナの気遣いに、心が痛む元気。
「でもね!弟は生きているわ……。通知が来てないもの……。だから、弟がいつ帰って来ても良いように、この家を守っているの……私は、魔力が少ないから……おいてかれちゃったんだ……あ、ご、ごめんね……。勝手に涙が……」
笑顔のまま涙を拭うミリャナに元気は、いても立ってもいられなくなる。
「ご、ごめん!ミリャ……俺が聞いたから……そ、そうだ!これ見て!ほら!」
元気はひょっとこ踊りを踊った。
一人で寂しい時に良く踊っていたので、手の角度。腰の動き。足さばきと完成度はプロレベルだ。
「ぷっ……。何それ?アハハハ……。おかしい動きしないで……フフフ……フフ……。あ~、面白かった!……ありがとう……元ちゃん」
「でも、ミリャって涙もろ過ぎない?」
「うん……。今までひとりだったから、なんか、泣いちゃうの……。ダメだってわかってるんだけど……」
「そうなのか……。フフフ……今度泣いたらもっと面白い事するからね」
「なにそれ?フフフ……お腹が痛くて死んじゃうかも」
「それは、困るな……ハハハッ」
ミリャナと毎日話をして、おやすみと言い合って寝る。そして朝はおはようと同じ時間に起きる。そんな何でもない毎日……。それが元気は楽しかった。そして、何にでも笑い。喜んでくれるミリャナに元気はどんどん惹かれて行った。
今日は昨日捕まえた鳥の血抜きが終わったので、塩味のするキノコで味付けした。鶏肉入りのスープだ。
元気は竈でスープを温めながらミリャナの帰りをまだかまだかと待つ。
「ただいま~」
「お帰りミリャナ~。今、ご飯並べるから待っててね!」
「うん、ありがとう!」
ミリャナが台所横の桶の水で手を洗い。テーブル椅子に座る。「これ持って行っとくね」とパンをミリャナが持って行ってくれる。元気が木製のお皿にスープを注ぎ持って行けば夕食の準備完了だ。
「お待たせ~」
「……なんか、良い匂いがするわね……」
「今日はさ、昨日森で鳥を捕まえたからさ!鶏肉のスープなんだ!」
「え!元ちゃん凄いわ!」
「エヘヘ~、もっと褒めて~」
「フフフ……。嬉しくて私、泣いちゃう。え~ん……嬉しいよう~」
「まったく……泣き虫だなミリャは……えい」
「ひえっ!?」
運んで行った料理にミリャナが喜ぶのが嬉し可愛いすぎて、元気はミリャナの耳をペロリとした。
「うわ。ミリャ。しょっぱくて美味しい!」
「げ、元ちゃん!何て事するの!汚いでしょ!お馬鹿!」
耳をペロリとされたミリャナが、耳まで真っ赤にして怒ってしまった。
「ご、ごめん……。その、泣き真似するミリャが可愛すぎて……つい……」
「もう!水浴びもしてないのに!私の耳なんてなめて、元ちゃんが病気になったりしたら、どうするの!そ、それに何か、ゾワゾワっとして……。そ、その……。恥ずかしいから、ダメ……」
怒るところソコなんだと元気は思う。がツッコまない。
「う、うん。もう……………しない」
顔を赤らめてもじもじするミリャナ。それを見て、どうしよう……可愛いな……チャンスがあればもっかいしたい。と元気は思ったが勿論これも言わない。
「元ちゃん。間が長いわよ……まったくもう」
「ご、ごめんよミリャ」
「まったく……。もういいわ……。ご飯食べましょう……。もう怒って無いから」
「うん。ごめんね。ほら!今日はね、森の食べられるキノコもあるんだ!塩味で美味しいんだから」
「塩味?が、何かわからないけど、たのしみ!それじゃ……」
「「いただきます!」」
塩味ってミリャナのお耳の味だよ!と元気は言おうと思ったが、怒られそうなので辞めておく。この日から少しずつ、ミリャナの涙を流す回数が減り。お耳ガードをミリャナが覚えてしまった。
そして、美味しそうに食事をするミリャナを見ながら、何故ミリャはこんなにも人を許すのだろう?と。ますますミリャナの事が、気になる元気だった。
元気は変態ではありません!
思春期で洗剤の匂いが好きな男の子です!……良い匂いでしょ?洗剤……。
そう言う事です!w
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




