出会い
ドロワーズ。膝丈までの半ズボン形のパンツ。
おじさん達の裏切りにより、瀕死状態で見知らぬ森の中へと転移した元気は、薄れ行く意識の中で死を覚悟した。
しかし召喚者である元気は、お腹に穴が開く程の怪我をしても、死ぬ事は無かった。
「……俺……助かったんだ……」
目が覚めた元気は、戦いで穴が開いた腹部をさすってみる。すると、えぐれていたお腹の傷が塞がっていた。
「異世界召喚の力って、傷にも効くのか……よかった。ってか……ここ、どこだろ?」
木製の薄暗い小部屋。閉まったカーテンからは日の光が零れ、タンスの上には一輪の黄色い花が飾ってあった。
「はぁ……。まだ少し頭がクラクラする……もう少し眠ろ……」
元気が再度目を閉じた時だった。
コツコツコツ……っと何者かが元気の寝ている部屋に近づいてくる足音がした。逃げ出そうか、と元気は思ったが、とりあえず寝たふりをして様子を伺う事にした。
助けてくれたのだから、お礼を言わなきゃと思ったのだ。
部屋のドアが開き、ベッドの横で何者かが立ち止まる。元気の脳裏に裏切りおじさん達の顔がよぎった。
不安と緊張で心臓が破裂しそうな元気。逃げ出しておけば良かった。元気がそう思った時だった。
ふわりとした心地良い感触が元気のおでこを襲った。
「……あら、もう熱が下がってるわね。よかった」
優しい声のする方を、薄目で確認してみると、ふくよかなおっぱい……を強調する。薄手の黄色いワンピースを着た、クリーム色の長い髪の美少女が、元気の顔をぞき込んでいた。
その光景に安心する元気。すると安心し過ぎたのかキュルル~ン。っとお腹が鳴り。みるみる内に元気の顔が赤面していく。
「フフ……。お腹すいたのね?……ご飯の用意をしとくから、気が向いたら起きてきなさいね」
「……はい」
目を閉じたまま答える元気。恥ずかしさで目が開けられない。
「フフフ……よろしい!」
彼女はそう言って、元気の頭をポンポンと優しくたたくと部屋を出ていった。
美少女の足音が遠のくと、元気は起き上がりベッドから出る。そしてある事に気がついた。
「服が着せ替えてある……」
青い半袖のシャツに、緑の膝丈半ズボン。そして……。勿論パンツまでも履き替えさせてあった。
「やば……。これ……絶対見られたよな……クソ恥ずかしい……。でも、お礼はちゃんと言わなきゃな……。それに……恥ずかしいけど……何か……何かアレだな……へへへ」
元気は恥ずかしさで逃げたかったが、彼女にならいいや!と開き直り。わくわくしながら美少女の所へと向かった。
寝室を出ると正面が物置で、右手に短い廊下を進むと直ぐにリビングだった。
「おはようございます」
「おはよう!今食事を用意してるからそこのテーブルに座って待っててね」
「あ、はい……」
彼女はリビング奥の台所に立ち、ちょっとだけ振りむき挨拶を返してくれた。
元気は長いテーブル椅子に座り、部屋を見渡す。木造の建物で古い感じはするが、掃除は行き届いていて綺麗だった。
「傷の様子はどう?」
部屋を見渡していると、料理を作りながら彼女が話しかけてきた。
「はい!お陰様で治りました!」
元気は声が少しうわずってしまう。
「あなた、三日も眠ってたのよ?もう起きないんじゃないかと思って、とっても心配したんだから」
「そんなに眠っていたんですね……あの、助けていただいて、ありがとうございました」
「いいえ~、どういたしまして、元気になって良かったわ!フフフ……」
それ以降、何を話して良いのか解らずに元気は黙ってしまった。
「私はミリャナ、君のお名前は?」
「あ、俺、元気と言います。」
「そう、良い名前ね、これからよろしくね」
「此方こそ、よろしくお願いします」
受け答えが定例分だった。
ミリャナのリードがなければ会話もできない自分にヘコむ元気。ため息をついてしまいそうな気分で彼女の後ろ姿を元気は眺めた。
出るところは出ていて、しまっているところはしまっている。ふわりと突き出たお尻部分にパンツのラインが見えないのは、気のせいだろう。と元気がミリャナを眺めていると。ミリャナがテーブルにパンとスープを並べてくれた。
「では、すいません。いただきます」
「何それ?」
「えっと食べ物になってくれた物と、作ってくれた人への感謝の気持ちを込めた挨拶で、俺の出身地での風習かな?」
「へぇ~、良い風習ね。よし!私もマネしよう。では、いただきます」
二人でいただきますを終えると、食事が始まる。ラストでは調味料という物が流通していないようで、スープは野菜の煮汁、パンはカチカチ。なのでスープに浸して食べる。
王国の王宮料理も、見た目は豪華だったが肉は肉の味、魚は魚の味だった。
「ねぇ?元気君はこれからどうするの?」
「あ、呼び捨てで良いです……」
「そう?じゃあ~、元気だから、元ちゃん!って呼ぶわね。それで先のことは決まっているのかな?」
「いえ、特には……決まって無いです」
世界を救うなどと言う事はもう考えていない。これから先の衣食住問題。そう言われて見れば凄く重要な事だった。
「それじゃあしばらく、ここにいても良いわよ」
「え!?」
驚く元気にミリャナがニコリと微笑む。向日葵の様な笑顔に吸い込まれそうになり。元気は目が離せない。ミリャナは元気の好きなタイプにドストライクなのだ。
「今、仕事しながらこの家に一人で住んでるんだけど、水汲みや薪割り、掃除をしてくれるお手伝いさんを探していたのよ。私一人じゃ手が回らなくて……フフフ……家事苦手なの私」
「そう……なんですね……」
嘘だ。と言う事は一目で解る。掃除は行き届いているし。洗濯物も窓の外に見える。白いドロワーズが気持ち良さそうに揺れているのだ。
「行くところが決まるまでで良いから、お手伝いをお願い出来ないかな?……その……あまりお金は無いけど、ご飯と寝るところは準備するわよ?」
「あ、ありがとうございます。助かります。恩返しを出来るなら、全然手伝いもするし、護衛もします。だけど……女の人の家に男が寝泊まりするのは、あんまり良くないんじゃないですか?」
「フフフ……子供が出入りしていたところで、なんの心配もいらないわよ。それに護衛って……フフッ。お姉さんこう見えて力持ちなのよ?」
ぷにっと力こぶを作るミリャナ。普段だったら子供扱いにイラッとして、怒る元気だが、今はあのぷにぷにをお饅頭にして食べたいなと思う。
「ハハハ!ぷにぷにしてて、とても強そう」
「もう!信じてないわね!……フフフ。……それで私の提案なんだけど、どうかしら?お互い助かると思うんだけど?」
「も、勿論。お世話になります!……末永くよろしくお願いします!」
数分間の会話だけでもこんなに楽しいのだ。元気の答えなど決まっている。永住したって良いレベルだ。
「そう、良かったわ!こちらこそよろしくね!」
「うしゃっす!」
天使の様に微笑むミリャナを見て、ここは天国なのでは無いだろうか?と元気は思う。こんな美少女と一緒に暮らせるなんて、ご褒美以外のおっぱいでもなんでもない。チンコも見られているし、もう結婚するしか無いかも知れない。
「さてと、それじゃ私は仕事に行って来るわね。町の教会の孤児院にいるから、何かあったら遠慮無く来てね!」
「はい!」
「本当は看病してあげたいけど、小さな町の教会だからシスター不足で、中々休めないの。それじゃ、家のこと。よろしくお願いします!」
困った様に微笑むミリャナもまた、可愛いな~。と自然に元気の頰も緩んで行く。
「わかりました、行ってらっしゃい!」
「フフフ、行ってきます!」
元気が玄関先まで見送ると、ミリャナは嬉しそうに手を振り仕事に向かった。
見送りが終わると、元気は早速食後の皿洗いを始めた。
「孤児院か、つくづく縁があるんだなぁ」
ミリャナは元気を見て孤児達と同じ物を感じ、面倒を見てくれる事にしてくれたのかも知れない。と思った。
「可哀想な子か……」
そう口にして元気は後悔する。ネガティブに捉えてしまっては駄目だ。理由はどうあれ、明日の心配はしなくて良くなったのだ。
「彼女の優しさに、可愛さに感謝しなければいけない!……ミリャナさん早く帰って来ないかなぁ?もっと、お話がしたいな……何も無いけど……会いに行こうかなぁ?……ふわふわしてそうだったなぁ……。あ!パンツが飛んでいかない様に監視しなきゃ!」
思春期真っ只中の少しお馬鹿で素直な少年元気。
そんな元気のわくてかなスローライフが、こうして幕を開けたのだが……。『異世界』のスローライフ。それは実はとても難しい事だと言う事実に、元気が気付くのはもう少し後になってからの事だった。
元気は思春期真っ只中の男の子なのです!
助平ではありません!……あしからず……多分w
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




