傭兵団
人それぞれの価値観が見えるお話しなのかな?
「傭兵団と言っても常に常駐とかそういう訳では無いし中央へ出向け等の物では無い、なので余り深くは考えなくてよい」
「そうなんですか?てっきり最前線で敵を殲滅しろと言われるのかと思いました」
「そうも思ったが兄上の時のような二の舞は踏みたくない、ミリャナの父親の事は聞いているだろう?……そうだ。傭兵団の話の前に……」
そう言うとヴァイドはおもむろに立ち上がり、元気に頭を下げた。
「其方のお陰でミリャナの笑顔が戻った。兄の代わりに礼を言う……そして俺からも礼を言いたい。……ありがとう」
それにつられてメルディも一緒に礼をする。
「いやいや、そんな!俺もミリャには助けて貰いましたし、お互い様です!此方こそありがとう御座います!」
両者でお礼を言い合いお辞儀をする。
「まったく、おかしな奴だ。これからもミリャとポタンを護ってやってくれ」
「勿論です!命に代えてでもミリャとポタンは護りぬきます!」
「あのぉ、お兄様……私の事は御護り頂け無いのでしょうか?」
メルディが上目使いでお願いしてくる。
異世界に来て身長が元気よりも低いという希有で自分を兄と称してくれる可愛い妹を護らない訳がない。
「勿論、護ってあげるさ!困ったらいつでもおいで!」
「あ、有り難う御座います!お兄様!」
「フフフ……どういたしまして~」
元気が嬉しそうにしているメルディに満足して、デレデレウフフしているとポタンがボソッと呟いた。
「ママに言いつけてやる……」
「ぽ、ポタン!ち、違うよ?ほら、メルディはミリャの妹的な存在でもあるんだから、ポタンのお姉ちゃんでもあるんだ。だからパパが護るのは当たり前じゃないか?決してやましい気持ちがあるとかでは無くてですね!……ね!メルディお姉ちゃん?」
「わ、わたくしが……お、お姉ちゃん!?」
「……お姉ちゃん?」
ポタンが少し興奮したメルディを見つめる。
「ぽ、ポタン様が宜しければですが、お、お姉ちゃんと呼んで頂ければ嬉しいですわ」
「本当ですか?では、早速……。よろしくね。お姉ちゃん」
ポタンがニコリとメルディへ微笑みかけるとフラフラッとポタンへメルディが近づき抱きしめた。
「あぁ、どうしましょう!はしたないとは思います。思いますがお許し下さい!無理!もう無理なのです!」
反応がミリャナにそっくりだと元気は思った。何かが色々と噴出しているのだろう。
「ポタン、私のことはお爺様と呼ぶと良いぞ」
「はい、お爺様!これからよろしくお願いします」
「うむ!」
満足そうにヴァイドは頷く。
「俺は何とお呼びすれば?」
「ふむ、そうだな……叔父上とでも呼んでおけ、ヴェルニカのことは、そうだな叔母上でいいか?そんな歳でもないが会ったときに話し合うが良かろう……まぁ、ミリャナを嫁にやるかは別問題だがな」
「い、いや、あの、そういうことはまだ考えてませんので……」
「なぬ?考えておらぬのか?ミリャナでは不満か?」
「い、いえ、そういう事じゃ無いです。ミリャは美人で優しくて、全然不満なんかありませんよ」
「ふむ、ならばミリャナに認められるように励むが良い」
「はい!叔父上!頑張ります!」
元気に叔父さんと叔母さんと妹が出来た。
「ミリャナにとって其方がどれ程の者かは知らんが、ミリャナの事だ。其方が死んでしまったら、ミャドの涙程の涙は流すだろう。私はミリャナにあの時のような思いはして欲しくないと考えている」
ミャドとは雀みたいな小さな鳥だ。
親父ギャグを入れてくる辺り、本来はユニークな人なんだろうか?と元気は思う。
「ミャドの涙程でも涙を流してくれるのなら舐めちゃいたい位嬉しいですけど……じゃあ傭兵団ってのは何をすれば良いのですか?」
「其方頭は大丈夫か?涙を舐めたいとは変態ではないか?」
元ちゃんジョークは通じなかった様だ。
ポタンとメルディが少し引いているのが見えるが気づかないふりをしておく。
「い、いや冗談です続きをどうぞ……」
「ふむ、それなら良いが。普段からそういう事を要求をしているならここへの居候の件から考え直そうと思ったぞ」
「ハハハハハハ……」
危ない。口は災いの元とは良く言ったものだ。余計な事は言わないでおこうと元気は思った。
「そこでだ、この町で傭兵団を作り。町に有事があった際には町を護って貰いたいのだ」
「有事ですか?」
「防衛の前線が突破されれば、自然と領地内は魔族の手に落ちるであろう?その時にミリャナだけとは言わずに町も一緒に護って欲しいのだ。兄上が居た頃は心配なかったが今、魔族に突破されたらどうなるか解らん」
「お父さんは、凄い人だったんですね」
「ミリャナの父であってお前の父ではないが、兄上は凄い人だった。私の目標であり英雄で尊敬できる最高の兄だった。兄が死んだと聞いたときは私も死のうかと思った程だ」
ミリャナの家系はブラコンなのだろうか?ヴァイドもミールも兄弟愛が強すぎる。子供の前で死んじゃおうと思った話し等しないで欲しい物だ。と元気思う。
チラッとメルディを見るとポタンと仲良く遊んでいる。メルディが学校で出た算数の宿題をポタンに教えて貰っている様だ。
指を使って一生懸命に足し算をしている。そんなメルディを見て元気は安心した。
「ミリャナを護るついでで良い。町も一緒に護って貰えたら助かるのだが、駄目だろうか?其方なら余裕であろう?」
「余裕かどうかは解りませんが、そういう事であれば、引き受けても良いですよ」
「ならば、屋根の修理代は契約の前金として請求しないことにしよう。それに森の先で夜な夜な光の柱が上がると城門の警備をしている兵士から報告があっているが、傭兵団の訓練だと兵士にも説明しておいてやる……どうせ其方らの仕業であろう?」
娯楽や電灯が無いこの世界の住人は殆ど夜は寝ている。なので元気は安心していたのだが、夜勤の兵士には見られていた様だった。
「えっと、ありがとうございます」
元気がヴァイドにお礼を言ったその時だった。
ドン!っと壁に何かが当たる音と衝撃が部屋中に響き、そして玄関のドアがバーン!と開いた。
「やぁ、元気!おやつを貰いに来たぞ!森の改造とリフの練習で魔力を使ってしまってな!腹が減ったのだ!ミールなど動けなくなってぷるぷるしている!面白いぞ!」
元気よくフェルミナが入ってきた。
服装がポップな物に替わっていてリフボードを抱えている。楽しそうなので見に行きたいが、フェルミナは本当に間が悪いと思う。
「フェルミナ、客人だから少し外で待ってなさい」
「なに?それはすまないな!それでは私は外でユグドリアスと話しをしているので終わったらお菓子を持ってきてくれ!」
フェルミナは日々幼児化しているのでは無いかと思う。初めて会った時の威厳はもう全く無い。
「わかったよ、また後でね」
「おう!では頼んだぞ!」
そういうとフェルミナは元気よく外へ出て行った。
メルディは最初驚いていたが、元気とポタンとを交互に見ると何かを納得したようで計算に戻った。
「い、今のがさっき言っていたエルフか?」
「そうです、俺に神の力をなすりつけた張本人です。フェルミナ達のせいで翼が生えたり。体が光ったり大変でした」
「そ、そうか、苦労したのだな。しかし驚いた……。ハイエルフなど一生に一度目にするかしないかの種族だぞ?しかもエルフのフェルミナとは400年前に領地を黒竜から救ってくれた英雄だった気がしたのだが?」
伝説?と思う元気。そう言えばドラゴンのタマゴを食べた時期を聞いていない。話がだいぶ曲解されている様に感じる。がしかし、口は災いの元。余計な事は言わない。
「……いやぁ……別人だ思いますよ?ここに来てから毎日遊んで食って寝るだけ。容姿だけが取り柄の無職ですので」
「其方の物言いは凄いな……」
「毎日の様にあんな感じで来られたら、そうもなりますよ」
元気は色々と思い出して溜息をつく……。
森の皆の食事を改善したい。と言いだしたフェルミナが、森の皆に料理を振る舞った事があった。
その結果。森のエルフが全滅しそうになってしまった。
パンチの効いた味にしたくてと、隠し味にバジリスクの毒を入れたのだ。
そのせいで元気は一日中エルフの治療に当たった。
他には、ユグドリアスと空を飛ぶ!と言ってユグドリアスを引っこ抜き殺しかけたり。森の地下にフェルミナ主導で基地を作ろうとして森を陥没させたりした。
それもらも全部、元気が対応して元に戻した。
それ以来イケメンにフェルミナには何もさせるな。何かする時は、報告、連絡、相談。報連相をしっかりするようにと言ってある。
ヴァイドにその事を話して聞かせる。
「其方達は人の領地でやりたい放題だな」
「いや、フェルミナがやってるんですよ?なんなら連れて行きます?」
「いや、遠慮しておこう我々には荷が重すぎる」
「俺にも重いですよ」
「フッ、そうか。取り敢えずの話しは終わりだ。後日、ミリャナ達と城へ来い。その時迄に防壁修復等の段取りを終えておく」
ヴァイドは元気にそう告げると、メルディを連れて帰り支度をする。
家の前に馬車を停めていた様で、執事らしき人が二人を見送った際。丁寧にお辞儀をしてくれた。
二人にはヴェルニカへお土産で紅茶のティーパックとクッキーを渡して見送る。
「必ずまた来ます!」
と言ってメルディが最後まで手を振っていた。
「客人は帰った様だな?おやつは何だ?」
「お前はまったく、クッキーでいいか?」
「ケーキがいいな」
「贅沢な……」
「禁止にしたのはお前じゃないか、自分で作れないのだから仕方ないだろ?」
変な物を作ってまた騒ぎを起こされたらたまらない。元気は家に戻り。ケーキを出してタッパーに多めに詰める。
「あ、森の泉でタッパーを洗うなよ!この前お前が油がついたタッパーを泉で洗って、取り除くの大変だったんだからな!」
「わ、わかっている」
「それじゃ、これ森の皆の分と、ミールの分も、どうせお前規準で遊んで皆ぐったりしてるんだろ?」
「おぉ、流石だな元気!良く解っているではないか!ミールほどでは無いが、皆疲れているのだ」
ケーキを受け取り森へ帰っていくフェルミナへ、ヴァイドの話しを思い出して声をかける。
「フェルミナ!お前ドラゴンのタマゴを食べたのはいつだ?」
「ん?四百年程前だな……。ハハハ!そう言えば、一度ここに逃げ込んで迷惑をかけたな!みんな協力してくれていい人達だったぞ!」
「……この前の黒竜の話し、エルフ達意外には絶対するなよ!」
「?……何だかわからんがわかった!今更みんなに怒られるのも嫌だしな!それじゃ、行ってくる!」
そう言って元気に家の裏にかけていくフェルミナ。
すいません。フェルミナは英雄じゃなくて、黒竜を連れて来た元凶です。とヴァイドに心の中であやまっておいた。
お風呂掃除を始めよう。元気がそう思い、ポタンをベビーカーに座らせようとする。
するとぎゅっと抱きついて来てポタンが離れない。
「おや?ポタン、今日は甘えん坊な気分かな?」
「はぁ、パパはお馬鹿ですね。町を護る仕事を大金貨一枚で引き受けるだなんて、今まで出した本を売れば、それ位のお金どうにかなったでしょ?」
「あ!そう言われればそうだね。ポタンは賢いなぁ」
ベビーカーに座らせるのは諦め、ポタンを抱っこ紐で縛って、一緒に風呂掃除を始める。
「ああいう偉い人と話すときは、もっと緊張感をもってくれないと。見てて心配だよ」
「そっかそっか、でもポタンが見ててくれるなら心配ないな~」
「パパは全くしょうが無い人ね」
「そうだね、でもミリャナとポタンを護るついでに借金が減るんだから、良いじゃないか」
「前提がおかしいよ。パパ」
「そう?この世界にミリャナとポタン意外に優先する物はないよ?」
「まったく、パパは」
「今度は気をつけるよ。もしかして怒ってる?」
「怒ってない!まったく!パパは手が掛かるんだから」
「怒ってるじゃん。そうだね~、ポタンがいないとパパは駄目だね。だから大きくなったらパパと結婚すると良いかもね!」
「パパ、気持ち悪い。ママに言いつけるよ?」
「ごめん、ごめん」
そういうとポタンは元気の胸に顔を埋める。暮らし始めてまだ日は浅いが、ポタンは元気の宝物になっていた。
ポタンにとっても元気とミリャナは大切な存在になっていた。
ポタンには生まれた時からの記憶がある。エルフの仲間達と暮らしていた記憶だ。
だが愛を感じた事は無かった。
森での生活は意思疎通の念話を一日数回聞くだけ。後は、揺れる木々を見たり、風の音を聞いたり、飛ぶ鳥を眺めたり、鳥や動物の会話を聞くだけだった。
魔力生命体は食事を必要としないので、排泄もしない。他のエルフ達とのコミュニケーションは一日に一度、森の果物を持ってきてもらい。魔力補充の為に果物を食べさせて貰うときだけだった。
外界から隔離され全てを短縮化した結果。
死ぬことの無いエルフ達は、生きる事を効率化し過ぎた種族になってしまい。愛を排除してしまったのである。
フェルミナの様な例外もいるが稀であり。
そういう個体は森を出る。そして帰って来る者は殆どいなかった。
森が襲撃された時、ポタンはドライアドにミリャナの家の裏の森へ転送された。
そして元気と出会いガラッと生活が変わったのだ。
抱きしめられた時にポタンは、初めてじんわりじんじんしたものを感じた。
抱かれながら、果物以外を口にしたときキラキラしたのを感じた。
抱かれていた手から離された時には、ひんやりしたのを感じた。
抱きしめてくれた人がいなくなった時には、ひんやりじんじんを感じ、再会出来た時にはまたじんわりじんじんを感じた。
ポタンにはふわふわやじんわり、ひんやりの正体がわからなかった。
しかし、話しかれられ言葉を理解し本を読んだりしている内に、それが喜怒哀楽であったことを知った。
そして今は、ポタンを命に変えても守る。と元気が言ってくれたことにポタンはふんわりじんじんしている。
「パパ?いなくなっちゃやだよ?」
「本当にどうしたんだよ?ポタン?何か欲しいものでもあるのか?」
「何でもない。パパのお馬鹿」
「えぇ~、また怒られるのかよ?今日のポタンは厳しいな~」
そんなことを言いながらも嬉しそうにお風呂掃除をする元気。
それを見て少しイラッとしながらもポタンはふんわりじんじんを堪能するために、元気の胸に顔を埋めるのであった。
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