探索
サンドワームはハムみたいで美味しいらしいよ(*^_^*)
研究所に向かうことになった一行は、探索のついでにポタンカーで大陸を見て回る事にした。
本日は雲一つ無い晴天である。
「わぁ!?ポタン!砂の海があるわ!」
「ウフフ。ママ、あれは砂漠って言うのよ……。ほら、あの大きいミミズみたいのがサンドワーム!」
「ほえ~大きいわね~……食べたら美味しいのかしら?」
「……多分、美味しくないから食べないでいいよ」
運転をしながら、助手席のミリャナに向かって真面目にお願いするポタン。賛同者がいれば本当に取ってきて食べそうで怖い。
ミリャナから見たら物珍しい生物でも、ポタンから見たらただの気持ち悪い巨大ミミズ、それを食べるなんてもってのほかだ。
「はわわ……町の外がこんなになってるなんて!周りに何も無いですよ!まさか、世界は滅んでしまったのでしょうか!?」
後部座席では、アリスが鼻息を荒くしながらはしゃぎ、そんな子供っぽい姿を見せるアリスを見てミリャナは満足そうにしている。
そして、そんなミリャナを見てポタンも満足そうだ。
現在、女子三人しかいない車内は、とても平和で和気あいあいとしていた。
しかし、そんな幸せ空間に響く声が一つ。
「世界は滅んじゃいないさ!世界はもっともっと広いんだから!」
「え~!!まだまだ広いんですか!?スゴイ!」
「えっへん!」
車の上から聞こえてくる、自分が褒められた訳でも無いのになぜか得意気な声に、ポタンが少しイラッとする。それはもちろん、元気の声だ。
アリスの隣に元気を座らせるのは危険だと判断したポタンが、車の上に元気専用の座椅子を取り付け屋根の上に追いやったのだ。
『やれやれ、家族に女子が多いと…………………………。男は辛いよ……フフフッ』
溜めるに溜めて、そんな事を言いながら、嬉しそうに屋根の上の座椅子に着席する元気を見て、コイツ何処かに飛ばしてやろうかな。と思うポタンだったが、研究所で何があるか解らないので辞めておいた。
どんなに馬鹿でムカついたとしても、これから先、元気の力は絶対的に必要なのだ。
「にしてもこの砂漠、広大過ぎるわね……。大陸の半分を占めてるんじゃないの?」
進めど進めど、四方八方が砂の海、建物一つ無い砂漠が延々と広がっている。砂の水平線の向こうにうっすらと青い海が見えるので、本当に大陸の半分が砂漠の様だ。
「砂がキラキラしていて綺麗ですね~」
アリスが目を輝かせながら、ミリャナに話しかけると、代わりにポタンからの返答があった。
「そうね、とても綺麗ね……。そうだわアリス、降ろしてあげようか?」
「え!?良いんですか!?」
「良いわよ。そのまま置いて行くけど……」
「えぇ!?」
「嘘よ……フフフ……」
ポタンの応えに、萎縮してしまうアリス。ポタンにとって、ミリャナに近づく物は全部敵だ。
「もう、ポタン。元ちゃんとへんな事をする時みたいに悪い顔になってるわよ……。アリスに意地悪しないの!」
「はぁ~い」
ミリャナに言われて仕方なく返事はしたが、上下関係は大事なので、刷り込みをやめるつもりは無い。
ミリャナに無条件で甘えられるのはポタンだけなのだと、しっかりアリスに教えなければならないのだ。
その後も、ちょこちょこっとした応酬を繰り広げながら、砂漠を進んでいると、ミリャナが窓の外を指差し声を上げた。
「あ!見て、街があるわ!でも、半分砂に埋まってる……」
「……ちょっと様子を見てみましょう」
砂漠の中に突如姿を現した町。
そこへと立ち寄る事にした元気達は、町の中で一番高い時計塔の天辺へと着地した。
町の広さは広大で、町の中央にはオアシスがある。砂に埋まってはいるものの建物も綺麗な常態で、まるで人だけが急に居なくなってしまったかの様だ。
「なるほどね……。この町も……」
「あれは、何と言うモンスターなのでしょうか?」
時計塔から町を見下ろし、顔をしかめるポタン。その後ろでアリスが興味深そうに町中を徘徊するモンスターを見つめている。そのモンスターとは、ファウストのふりまいたウイルスによってモンスター化した人間だ。
「あれはゴブリンだよ……何処にでも住み着くんだ……」
「へぇ~そうなんですね!初めて見ました!」
無邪気なアリスとは打って変わって、無表情な三人。モンスターに変えられた人間が、未だに殺し合いをしながら町を徘徊しているとは彼女に聞かせられなかった。
その後、オアシスのある町を出て、数ヵ所の町を見掛けたが、どれもこれも同じ状態だった。
「何でこんな事に……」
「戦争の為って言ってた……」
「争いの為に……国の人達を……。戦争に勝って国が残っても、暮らす人々が居なきゃ意味が無いじゃない……」
「そうね……私もそう思う……」
ゴーストタウンになった町を見ながら、悲しそうに呟くミリャナ。それにポタンが相づちを打つ。
「ミリャナ……それでも男には譲れないたたかいが──」
無駄に絡んで来ようとする元気を取り敢えず宇宙まで飛ばすと、ポタン達は捜索を続ける。
初めて訪れる島なので、内心ウキウキしていた一同だったが、今はどんよりした気分だった。
砂漠の上空を暫く進んでいると、いつの間に戻ったのか、車の上のから声がした。
「ねぇ、アリス。アリスの血を俺にくれないかな?」
「えぇ!?私の血ですか!?」
「はぁ……パパ。もっかい宇宙に飛ばしていい?マジで気持ち悪い……」
「や、やめろよ!?あれ、急に息が出来なくなってビックリするんだから!ほら……あれだよ!アリスの血液から特効薬が作れないかなって思って……」
「特効薬ですか……?」
アリスはポカンとしているが、ポタンはピンと来た様子だ。
どうやら、元気はアリスの血液から血清を作るつもりらしい。
「病気に感染した人の血からウイルスを採取して、それを殺す薬を作るんだ。アリスは町の人の看病で、病気の人の血を吸っていただろ?」
「でも私は……病気になってませんよ?」
「確かに……」
ウイルスに感染していなければ、アリスの血液を貰っても意味が無い。いや、意味はあるが、今回は意味が無い。
なので、アリスの血液は今度ペロペロする事にしようっと元気が諦め掛けた時だった。
「砂漠の町のどれかから採取して来れば良いじゃん。パパが」
ポタンがとても現実的で、夢の無い発言をしてきた。
「えぇ~……。流石の俺でも、何処の誰だか解んない人の血をペロペロするのは嫌だって~」
「はぁ?ペロペロ?パパ……あなた──」
「──あ!?あそこの町とかどうだろうか!?ちょっと俺が先にババッと行って血を取ってくるよ!」
低くなったポタンの声にビビった元気が、ビュンと町に向かって飛んでいった。
「あ、あの……ペロペロって何ですか?」
そ~っと手を上げながらポタンに質問するアリス。
「……アリスは知らなくて良いことよ……。アリスは絶対にパパと二人になっちゃ駄目だからね!」
「は、はい!」
「もう、ポタンそんなに睨んだらアリスが怖いじゃない……。でもポタンの言う事も一理あるから、気を付けてね」
「は、はい気を付けます……」
神さまって優しそうなのに、本当は危険な人なのだろうか?とアリスの中でどんどん元気の印象が悪くなっていく中。元気がモンスターになった人間から血液を採取して来た。
「どうだった?」
「え?大丈夫だったよ!無事取れた!心配してくれてありがとう!」
「いや、パパの心配じゃ無くて、町の様子はどうだったの?」
「あぁ、そっちね……。何か違った」
「何が?」
「う~ん……。あの人達、殺し合いをしてなくてさ……。モンスターになってもちゃんと共存してると言うか……町の人達で仲間意識を持ってると言うか……」
「もしかして、彼らの意識があったの?」
「いや、意識は無かったよ。それに敵意も無かった……」
「そう……」
「血を取るときも大人しかったよ……。治る物なら治してあげたいよなぁ……」
「そうね……」
元気の発言に同意しながらも、心の中では溜息をつくポタン。彼が何かを始めると、殆どがポタンの主導ととなり、しなくても良い苦労が降りかかるのだ。
「じゃ、ポタン、はい、これ」
試験管に入った血液を、窓の外から渡されるポタン。
「はい、これって……。何?」
「え?何って血液だよ?」
「これをどうしろと?」
「どうしろって、薬を作ってほしいんだけど……」
「はぁ……。作れって軽く言うけど、簡単に作れると思っているの?」
「え?ポタンなら出来るだろ?」
「チッ……」
「へへへ~」
ポタンに舌打ちされて嬉しそうな元気から血液を受け取るとポタンは、オーバーオールのお腹ポケットへとしまった。
「はぁ……実験をする場所が必要ね……」
「そうだな~……。ある程度清潔で落ち着いてキャンプ出来るところを捜さなきゃ……」
見渡す限り砂漠で、町の中にはモンスターがいっぱいだ。
落ち着いて研究となると、旅をしながらだと難しいものがある。いったん、地下研究施設があるお家に帰ろうかな~などとポタンが考えていると、アリスが控えめに手を上げた。
「あ、あの……私の住んでいた場所はどうでしょう?多分とても静かで、お部屋もいっぱいあります!」
「アリスの住んでいた所……。そうね……。悪くないかも……」
アリスの住んでいた場所。それは領主城だ。
三人は彼女が領主城を自分のお家と言わなかった事が気にかかったが、何も言う事は無くアリスの立案に賛成する事にした。
「でも、あそこお化けが出そうなんだよなぁ~……」
「なら、パパは帰って良いわよ。サヨナラ」
「またまた~。そんな意地悪言うなって~へへへ~」
いちいち絡もうとしてくる元気に、コイツ本当に帰れば良いのにと思いながら、ポタンは車をUターンさせ、一行は領主城へ戻ることにしたのだった。
探索は一旦中止にして、血清を作るために領主城へと戻る元気達。はたして血清は無事製作出来るのだろうか?
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