孤独な蠱毒
蠱毒(毒虫の詰まった箱の中で、最後まで生き残る様な一番強い毒虫を選別する方法。または生き残った毒虫)詳しくはググるとよきw
元気とポタンが教会に戻ると、お風呂タイムは残念ながら終わってしまった様で、教会の椅子にミリャナがポツンと座っていた。
「ただいまミリャナ。あれ?アリスは?」
「おかえり元ちゃん、それにポタンも」
「ただいまママ!……むむぅ……それは一体……。どゆこと……」
ポタンがミリャナの膝の上に向かって指を差すと、そこにはアリスがいた。
アリスはミリャナに膝枕をして貰っていて、気持ち良さそうに眠っている。
「うわぁ~。眠った顔も可愛いなぁ~。ホッペをツンツンしても良いかなぁ~?」
「起こしちゃ駄目よ元ちゃん!この娘……町の人達の為に一睡もしないでずっと看病してたんだから……半年間も……」
「は、半年間も!?」
「だから、少し眠らせてあげて」
ミリャナの気遣いにコクコクと頷く元気。しかし、ポタンはミリャナに膝枕をされているアリスに不満そうだ。
だが、彼女が目を覚ませば、寝ずに看病していた町の人達が居なくなった事を伝えなければならない。
なので、少しでも話を聞く為の精神的な体力が回復するのならばと、今回は大目に見る事にした。
「……はぁ。ママ……次は私にしてね……膝枕……」
「ウフフ。ありがとうねポタン。……それで……。町の様子はどうだったの?何か解った?」
「あ……。うん。色々と解ったよ……」
町の現状を元気が話し出し、ポタンが情報を補足する。こうして町で起きた事の詳しい内容をミリャナへと伝えた。
「……そうなの……。町の人達が……。この子あんなに頑張ってたのに……」
アリスの事を思ってミリャナが頰を優しく撫でる。
「……それでさミリャナ、俺、中央研究所って所に行こうと思うんだけどさ……。どうしようか?」
「え?どうしようかって……。中央研究所に行くんでしょ?」
「え?うん。そうなんだけど……。ミリャナはどうしたい?」
「え?私?……そうねぇ……」
隠し事をした事でケンカしたばかりなので、ミリャナには何でも話そうと思った元気だったが、いざ話そうと思うと上手に出来ない。
「はぁ……。ママにそんな事を聞いたって仕方ないでしょ?行かない訳が無いんだから、ね。ママ」
「ウフフ。そうね、このまま終わりじゃアリスが可哀想過ぎるわ……それに、人を実験の為にモンスターに変える何て許せないもの……」
「じゃ、じゃあ三人で、悪い奴を懲らしめに──」
「──待って下さい!私も行きます!一緒に連れて行って下さい!」
「ア、アリス!起きてたの?」
「途中から……」
ミリャナの膝の上で頭だけを動かし、自分の意思を伝えるアリス。声に力はあるが、膝枕は辞める気はないようだ。
「連れていってって言われても、アリスを連れて行くには危険な場所なんだよ……」
「危険なのは解っています!……解っていますけど……」
解っていると言いながら、言葉を詰まらすアリス。追撃の言葉が出て来ない。
「……解ってるならここでお留守番を……」
「お留守番って……。もう留守を守る意味が無いじゃ無いですか……」
「それは……」
アリスの言う通り、誰も居なくなった町を守る意味はもう無い。
アリスにはもう、家族おろか、知り合ったばかりの知り合いさえも居ないのだ。
そんな彼女を、ゴーストタウンになったこの町に独りで残して行くと言う事が、元気とミリャナにはとても残酷な事に思えた。
しかし、そんな空気を感じ取ったポタンが口を開く。
「誰も居ないけど、危険じゃあ無いでしょ?戦えない貴方は足手まといなの……。それに、いつまで膝枕してるの?喋る元気があるなら起きなさい!ママの膝は私のものなんだからね!」
何も言えなくなった大人達の代わりにビシッと現実を突きつけるポタン。ミリャナに膝枕をしてもらいながら甘えるアリスに対して、ポタンだけは厳しめの対応だ。
「た、戦う事は出来ませんが、病気の治療は出来ます!」
「治療って……あれは遅延であって……」
そこまで言ってポタンは口を止める。モンスターに変化するのを、引き伸ばしたところで、なんの解決にもならない。
本音ではそう思うが、彼女が何ヶ月も独りで治療にあたっていた結果は、無駄な努力だった。等とは流石に伝える事が出来なかった。
ポタンの口が止まると、四人の間に重い沈黙が流れる。
こんな時は、空気を読まない元気が一番にお馬鹿な発言を始めるのだが、今回は違った。
「そうだわ!前に私がダンジョンに行った時みたいに、アリスに装備品を作ってあげるのはどうかしら?」
「なるほど、装備品で身を固めとけば少しは安全だね!」
アリスを独りぼっちで置いて行くという選択肢が、ミリャナと元気の中から無くなった様で、どうすればアリスを安全に連れて行けるだろうかと盛り上がり始め、それをアリスが目を輝かせながら見つめる。
「パパ、ママ!彼女を連れて行く気なの?」
「だって……。ここにひとりぼっちで置いて行くのは可哀想じゃない……」
「それはそうだけど……」
「まぁ、いざとなったら俺かポタンが瞬間移動でアリスを連れて飛べばいいさ!」
その一手間が無駄な時間じゃない。とポタンは思ったが、ニッコニコでポタンに提案をし始めた二人の中では、アリスを連れて行く事は決定した様子だ。
「……はぁ。何があっても私は知らないからね!……貴女もいい加減膝枕を辞めなさいよね!」
「は、はい!」
ポタンにビシッと指を指されて、バッと起き上がるアリス。それを見てポタンはすかさずミリャナの膝の上へ飛び乗った。
膝の上からミリャナを見上げてニッコリとするポタン。それに対してミリャナは優しく抱き締めて応えた。
普段は大人顔負けのポタンが見せる子供っぽさが、ミリャナはとても愛しく、そして大切にしたいと思う。
賢いからと言っても、ポタンはまだ子供。子供には子供らしくしていて欲しいとミリャナは思うのだ。
「ありがとうね。ポタン」
「……うん」
ミリャナに抱き締められポタンの機嫌が治った所で、今度は元気がアリスを抱っこしようと動きはじめた。
暇そうにしている幼女~童女~少女は、暇な大人が優しく抱っこしてあげなければならいのである。であるが、その行為はポタンとミリャナに阻止される結果となった。
「何ではなの下が伸びてるのよ元ちゃん……。サイテ~」
「子供相手に……。気持悪……」
「えぇ~?あれれ~……」
そっと鼻の下を隠す元気。アリスのコスプレ姿をイメージしすぎて気持が高ぶり過ぎた様だと、ご褒美である二人の罵声を浴びて少しだけ反省した。
「さ、さて!一緒に行くとなれば早速アリスの装備品を作らなきゃな!」
「……え?あ!ありがとうございます!」
アリスは元気の鼻の下が伸びるのが気になる様子だ。
「いえいえ、こちらこそ!うわぁ……どうしようかな~……美ロリッ子の衣裳……。教会だし修道服か?いや、吸血鬼だし……やっぱりちょっとエロイのとか……いやそれじゃアイリスと被っちゃうな……」
元気は独りで妄想にふけりだし、ブツブツ言いながらアリスの衣裳を考え出す。
「あ、あの……。スク水とかブルマ?とか聞き慣れない言葉が聞こえて来るのですが……。一体どういうお洋服なのでしょうか……?」
「あ、アリスは見た事が無いんだっけ?ほらこういうのだよ?」
「へ?……こ、これを履くのですか?……こ、これの上にスカートとか何かあるのですよね?」
「え?無いよ?あ!安心して、ちゃんとパンツもあるから!」
元気はニッコニコでアリスに向かってブルマと白いパンツを渡した。
ブルマと白いパンツをキョトンとしながら握る美少女。これはとても良い光景だと元気は思う。
女児にブルマとパンツを渡す元気は、ハタから見なくても、ただの変態だったが、とても誇らしい気分だ。
しかし、元気の奇行を見ていたミリャナとポタンは眉間に皺を寄せた。
「元ちゃん!ちゃんとしたお洋服を考えてあげて!アイリスみたいに、おへそや足やお尻を出して喜ぶ変な子になったらどうするの?」
「変な子って、それはアイリスが可哀想じゃないか、アイリスは自分の可愛さを最大限に利用したファッションをだね……。あ、いえ……善処します……」
元気はロリ紳士をターゲットに、日々進化を続けるアイリスの素敵なファッションを褒めようとしたのだが、ミリャナやポタンには理解出来ない様で、ギロリと睨まれてしまった。
それを見てホッとするアリス。
そんなアリスに、その内絶対……と心の中で静かに決心する元気だった。
その後、元気にブルマを返却しようとするアリスから、あの手この手でブルマを受け取らない様にしながら、話を続けた結果。
きちんとアリスの装備品を制作する。危険になったらすぐさま瞬間移動で飛ぶ。元気はアリスにセクハラをしない。という事で、アリスの同行が許可された。
「あ、ありがとうございます!私、セクハラ?というのが何かわかりませんが、一生懸命に頑張りますので!よろしくお願いします!」
「アリスはセクハラなんて言葉は覚えなくて良いんだよ?俺がちゃんと悪い奴から守ってあげるから!」
「パパが傍にいるのが一番に悪いわよ。ね、ママ」
「そうね。アリスは出来るだけ元ちゃんに近付かない様にね」
「は、はい!頑張ります!」
「おいおい。まったくもう!これじゃまるで俺が悪い奴みたいじゃ無いか~。アハハハハ……」
静かな教会に元気だけの笑い声が響き、ミリャナとポタンに元気が睨まれながら話し合いは終了。
こうして元気達は、災厄の神『ファウスト』と会うため、4人で研究所に向かう事となったのだった。
アリスの同行が決まり、衣裳をどうしようかと浮き足立つ元気。当の目的であったナツの身柄の確保は、すでに終わっている事を伝える事もせず、彼はそのまま研究所に向かう様ですw
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




