元凶
動物と会話できてるって思ってる人居るよね~。
メイン通りに降り立つと、ゴブリンの様な姿をしたモンスター達が町民達に襲いかかっていた。
既に数人、町民が道端に倒れ伏している。
「くそ……何て事を……」
「……待ってパパ!様子がおかしいわ!」
「待ってって、あの人ももうやられそうだぞ!?」
目の前でゴブリンと対峙する男は、既に疲れ果てていて今にも倒れそうだ。
「良いから……待って」
「で、でも……」
男を助けようと飛び出そうとする元気を引き留めるポタン。
彼女が元気を引き留めるのには意味がある。それは解っているが元気は気が気では無い。
「……成る程ね……」
「なる程って……え?」
ポタンがポツリと呟いた次の瞬間──『うぐぐぐぐ……ぐおあぁああああぁぁ!!!』──今にもやられてしまいそうだった男が、突如としてゴブリンらしきモンスターへと姿を変えてしまった。
「え、えぇ!?何で!?どう言う事!?」
「……これも墓場に死体が無い理由の1つでしょうね……」
「……どゆこと?」
目の前で起こっている謎の現象に、元々から少ない元気の言葉数が更に無くなる。
「パパ。あれ元に戻せる?」
「いや……。元の人が解んないから無理かな。それに今戻したとしても意識がモンスターのままじゃ……」
「確かに……姿形を戻しても、意識が戻らなければ意味が無いわね。……元々の原因が解れば可能?」
「原因が解れば可能かな?大本を修復すればいいと思うから……。何とか出来そうなのかポタン?」
「……時間があれば……多分……。いや、無理っぽいわ……。最悪……」
「うわ!?死体が起き上がった!!!」
倒れていた人達が起き上がり、どんどんとモンスターへ変身していく、そして今度はそのモンスター達が町のあちこちへと走りだした。
「あ!待て!?」
「追っても一緒よ。結局は生きてる人もモンスター化するんだから……」
「だけど……」
「気持は解るけど……。今はどうしようも無い……」
「でも!」
「じゃあ、パパがモンスター化した人達を一人一人殺して回る?……借りに動きを止めたとしても、解決方法を見つけない限り結局は死んじゃうのよ?」
「それはそうだけど……」
「……病気の本質はこれだったのかもね……。人をモンスターに変える細菌兵器……」
ポタンがそこまで発言をすると、何処からともなく、甲高い女の声が響いてきた。
『ア~ラ、アラアラ。賢いお子ちゃまじゃない。見ただけで気づくなんて素晴らしいわ~』
「うおぉ!!!だ、誰だ!?」
「ひえっ!?パパ!驚きすぎだってば!パパがビックリすると私もビックリしちゃうんだから!」
「ご、ごめん……」
『フフフッ。面白い子供達ね……。見た感じ、その町の人間では無いようだけど貴方達、私の実験場で一体何をしているのかしら?』
「実験場?……実験場って何だよ!」
『実験場は実験場よ?それにしても、思ったよりも全滅するのに時間が掛かったみたいね。貴方達が何かしたのかしら?』
「全滅!?何を言ってるんだよお前!!!やって良いことと悪いことがあるぞ!」
「ちょっとパパ黙ってて!」
「で、でも……」
まだ何か言いたげな元気を余所に、ポタンが喋り出す。
「アナタは誰?目的は何なの……ですか?」
『目的は貴女が予想した通りの事であっているわ、戦争に使用する細菌兵器の実験よ。そして私の名前はファウスト。厄災の神・ファウストよ。よろしくね賢いお嬢ちゃん』
声の主が神であることは予想出来ていたポタンだったが、自分達が侵入南の大陸に侵入している事があちら側にバレる事は予想外だった。
「こちらこそ……。あの、神・ファウスト。治療方法を教えて戴けたりはしませんか?」
『治療法?無理ね。私にも解らないもの……。私は厄災を振りまく事しか出来ないのよね。ウフフ。ごめんなさいね』
ごめんなさいね。と言いながらも、何処からともなく聞こえて来る声はとても楽しそうだ。
「何だと!?じゃあ、モンスターになってしまった人達はどうするんだよ!?」
『どうもしないわよ。殺し合いをさせて、一番強い固体を兵隊にするってだけ』
「殺し合いをさせるだと!ぐぬぬ!ちょっとお前!出て来い!ぶっ飛ばしてやる!」
『え?嫌よ。ぶっ飛ばされるのに出て行く訳ないでしょ』
「じゃあ、居場所を教えろ!俺が今から行くから!」
『フフフッ。私の居場所は中央研究所よ。……本当は兵士の回収をしたかったんだけど、面倒そうだから辞めておくわね』
「おい!やめとくって、どうするんだよこの状況!?」
『さぁ?貴方達の好きな様にして良いわよ。私は厄災を振りまくだけ……。対処するのは私の領分ではないの』
「身勝手すぎだろ!」
『身勝手?当たり前じゃ無い。だって私。神だもの』
「パパ。神様相手にそれ以上言っても無駄よ。それよりも……。ファウスト様!この現象はウイルスによるものなのですか?それとも貴方の能力によるものなのですか?」
『私の能力はパンデミック。細菌を造り出し、無条件で感染させる物よ。だから……ウイルスってやつあ無いかしら?』
「ウイルスですか……。それはどうやって造ったのでしょうか?」
『どうやってって、想像してだけど?あ、……そろそろペットに餌をあげる時間だから、おいとまするわね。ウフフ。貴方達が中央研究所に来るのを楽しみにしているわ!』
「最後に1つだけ!こんな事をした目的は何ですか!」
『え?目的?まぁ、頼まれたってのもあるけど、基本暇つぶしよね。長い間生きていると暇で暇で堪らないのよ……。それじゃあね~……』
「あ、まてこら!中央研究所って何処だよ!?おい!」
空に向かって拳を突き上げ、ファウストに怒鳴る元気だったが、返事は無かった。
「……もう通信が切れてるわ」
「くそ!暇つぶしって何だよ……。中央研究所って何処だよ……」
ファウストとの会話が終わり、静かになった町中に佇む元気とポタン。町中の抗争は会話している間に終わったようだ。
「……やけに静かになったな……」
「うん」
「みんな死んだのかな?」
「多分……。もうこの町は……駄目でしょうね……」
「……ポタン、ちょっと俺。中央研究所に行ってアイツぶっ飛ばして来るわ……」
「はぁ、独りで行っても意味ないでしょ。パパ独りで対処出来るの?他に何人も神さまがいるかも知れないのに……。それに、頭を使った戦いになったらどうするの?魔力だけじゃ勝てないわよ?それに場所知らないんでしょ?」
「そ、それは……」
熱く振り上げた拳が、ポタンの冷静な意見によってどんどん下がっていく。
「取り敢えず。ママの元に戻りましょう。ママと相談して……。ここであったことをアリスに教えてあげなきゃ……」
「うん。そうだね……」
元気が教会へと向かおうと、後ろを振り向くと、通りの向こう側にモンスターの姿が映った。
「……最後の生き残りの人かな……」
「多分……」
モンスターの姿を見て、元気達は身構えはしたが、とても倒す気持が湧き上がらない。
それに、向こうもこちらをジッと見ているだけで、襲って来る気は無い様子だ。
「きっと、治療法を見つけるから!だから……だから……」
「……」
モンスター化した町民に向かって、手を振りながら言葉を詰まらせる元気。何を言って良いのかが解らない。
ポタンはそれを見ながら、解決策を見つけるのはパパじゃ無理でしょ。と思う。思うが口には出さなかった。
モンスター相手に言葉など通じないが、伝わると信じている元気のこういう無邪気な所が、ポタンは嫌いでは無い。
そんな元気の言葉を聞いたモンスターは、『ギィ!』と小さく呻くと、二人に近寄って来ること無く、何処かへと走り去って行った。
「……返事してくれた?伝わったのかな?」
「たまたまでしょ」
「何だよポタン。夢が無いなぁ……。どんな生き物同士でも心は通じるんだぞ?」
「ハイハイ……。早くママの所に行こうパパ」
「おう!」
元気は元気に返事をすると、ポタンを抱えたまま教会までの丘を登った。
教会へと続く丘には、吹き荒ぶ冷たい風の音が響き、誰も居なくなってしまった町が泣いている様だ。と元気は感じるのだった。
さて、町の人達を苦しめた元凶と居場所は解りましたが、そこに素直に向かってよいものか……。家族会議ですw
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




