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ゴブリン?

ポタンもお化けが苦手ですw

 

 ミリャナにお風呂当番を奪われた元気は、ポタンと合流するべく教会の建っている丘をトボトボと下る。


 彼の心うちとは裏腹に、辺りには心地の良い風が駆け回り、お日様の優しい香りが漂っていた。


 そんな丘を下りながら、辺りの景色を眺める元気。


 円形に家が建ち並ぶハーベルクの町を森が取り囲み、切り立った山脈が更にそれを覆う。そしてその山脈のふもとには立派な赤レンガのお城があり、禍禍しい存在感を放っていた。


 「あれが領主城かな……。晴れてるのに何であそこだけ黒い雲が漂ってるんだろ?まるで悪魔城だ……絶対に近寄りたくない……。お化け出そう……」


 モンスターや怪物は良いが、お化けや目に見えない何かが嫌いな元気は、お城を見て身震いしてしまう。


 「あれがアリスのお家か……。どんなに不気味でもアリスのお家だ。お化けが出たからってバコーンってしたら可哀想だ……うん……可哀想だ……。俺は絶対に近付かない様にしとこ……。別に怖い訳じゃ無いけど……近づかないようにしとこ……」


 誰も見ていないのに見栄を張り終えた元気は、再度辺りを見渡した。


 「町までの道が渓谷の一本道。ハーベルクはまるで自然の要塞だな。……戦争とかでは敵の侵入を防げて良さそうだけど……こんな所で病気が蔓延したら逃げ場が……」


 そこまで考えて元気は口をつぐんだ。


 そう言う地形だからこそ、実験が行われたのだと、流石の元気でも考察する事が出来たからだ。


 「……おっし!考察は終わりだ!愛しのポタンを探さなきゃ!」


 そう気持ちを切り換え、元気は町へと再度歩き出す、そしてそのまま暫く歩くとハーベルクの町の入り口の門についた。


 門を抜けた先は大きなメイン通り。その大通りのずっと先にはもうひとつの門が小さく見える。その先には、先程見た領主城があった。


 町の中はメイン通りを軸に、レンガ造りの家や木造の住宅が規律正しく並んでいる。


 「通りのバザーに物が置きっぱなしだ……いったい、どれだけの人が病気で死んだんだろ……」


 以前は人で賑わっていたであろう大通りを歩きながら元気が独り言ちる。その目先には痩せこけた馬車馬達が、鎖に繋がれたままあちらこちらで横たわっていた。


 「うわぁ……。体が腐って溶けて骨が見えてんじゃん……それに……凄い臭い……」


 町中に漂う動物の腐敗臭。


 どれ程の生き物が死んでいれば町中の臭いがこうなるのか、元気には想像もつかない。


 そして、それを想像すればするほどにドンドンと不安になる。


 「も、もしかしたら何か大変な事になるかもだから、1回帰って準備を整え直そうかな……。で、でも怖くなって帰って来ちゃったとか言ったら情け無いよなぁ……。怒られそうだなぁ……どうしよう……。う~ん……」


 何とも言えない不安に駆られ、道の真ん中で右往左往していると、腐敗臭の中に微かに懐かしい匂いを嗅ぎ分けた。


 「あれ?うわぁ!良かった!ポタンの臭いがする!!!うわ~い!」


 半べそになっていた元気は、不安な気持ちを掻き消す様に、両手を上げ喜ぶ、そしてポタン臭のする方に、冷静を装いながら小走りで向かった。


 薄暗く狭い路地のあちらこちらには、様々な動物の死体が転がり虫がたかっている。


 「ほとんど原型が無いけど、何かこの町の動物ってサイズがデカく無いか?……ひぃ~!気持ち悪い……早くポタンの所へ行って癒やされなきゃ!」


 泣きそうな気持ちを奮い立たせながら進む元気が、やっとの思いでポタンを見つけたのは、ミリャナ達とアリスが初めて出会ったハーベルクの町の墓場だった。


 彼女は誰かのお墓の前で何かを考えている。


 「いたいたいた!お~いポタ~ン!」


 「……チッ」


 大きな声を出し両手を振りながら、満面の笑みで近づいて来る元気を見て、ポタンは顔をしかめる。思考を停止させる天災が現れたのだから仕方ない反応だ。


 「ちょっと~、何で舌打ちして顔をそんなにしかめるんだよ~。ひっどいなぁ~もぉ~」


 ホッペをツンツンしながら、ニッコニコで文句を垂れる元気にポタンは更にイラッとしてしまう。


 「くねくねしながら喋らないで……。そしてホッペをツンツンしないで、その指ねじ切るわよ……」


 「ご、ごめんて……。ポタンを見つけられたのがついつい嬉しくてさ!ここに来るまで動物の死体ばっかで怖かったんだ」


 「あぁ、あのドロドロした大きい奴ね……」


 「うん。見ても何の動物だかわかんないし……パパ怖かったよ~」


 元気はポタンに抱き付こうとしたが、ヒラリとかわされた。


 「もう、いい歳した大人が何を言ってるのよ……まったく……。まぁいいわ。何で私の居場所がわかったの?」


 「こっちからポタンの匂いがしたから来てみたんだ!」


 「は?……私の匂い?……確かに昨日はお風呂に入らなかったけど……」


 自分はそんなに臭うのか?と服の中をクンクンするポタン。だが特段変な匂いはしない。


 「あはは、大丈夫だよポタン!ポタンの匂いは良い匂いだから!あはは」


 「そ、そう……」


 笑いながら自分は良い匂いだと言われても、ポタンはあまり嬉しくない。しかし元気に関しては考えるだけ無駄な事が多いので、自分の匂いについての追求は諦めて流す事にした。


 「ところでポタン、お墓の前で何を悩んでたんだ?」


 「ちょっと不可解な事があって……」


 「不可解な事?」


 「死体の数が圧倒的に足りないのよね……。1000人近く住む町で生存者が5、60人だったでしょう?」


 「攫われたって言ってたし、連れて行かれたんじゃ無いの?」


 「900人近い人が全員?実験結果を知る為だけに?流石にコスパ悪すぎじゃ無い?」


 「ま、まぁ……。結果を知るだけなら数十人いれば十分なのか……」


 「……実験施設から逃げ出して来た姉弟愛の事覚えてる?強制的にキメラ化させられてた子達……」


 「勿論!忘れるわけ無いよ……そうか……人体実験の検体として……」


 「えぇ。大規模な実験の為に連れて行かれたのかも……」


 「でもさ、町の人が葬送したって事は無いの?」


 「その線は薄いわね……。町のあちこちを見たけど、人の死体が見当たらなかった……。この墓地のお墓の下にも死体が無いわ」


 「まさかポタン……掘って見たの?」


 「はぁ?ワザワザそんな事しなくても、薄く魔力が残ってるからわかるわよ。勝手に墓荒らしにしないでよね!」


 「ご、ごめん、死んでも魔力が残るなんて知らなくてさ」


 「残った魔力が固まって死体が魔石になるんだから、残ってるのは当たり前じゃ無い……。こっちの人達は魔力が少ないから何百年掛かるかわかんないけどね」


 「何百年もかぁ……」


 「……アリスに聞きたいことが出来たわ!教会に戻りましょう!時間が無いかも知れないわ……」


 「あ、うん」


 墓地の出口へと向かって歩くポタンの後ろについて行く元気。そんな彼が、やっぱりポタンがいると心強いなぁと考えている時だった。


『うぎゃぁあああああぁぁぁ!!!』『うわぁあああぁぁあああぁぁ!!!』『ば、ばけも……ぐぐぁあああぁぁぁ!!!』


 突如として静だった墓場内に悲鳴が轟いた。


 「ぎゃぁぁああぁぁぁ!?」


 「ひぃぃ!!な、何!?ちょっとパパ!驚きすぎよ!」


 飛上がるほどに驚く元気。そしてそれに驚くポタン。


 「い、いやぁ……ビックリした~。ごめんごめん」


 「本当に勘弁してよ……。にしても一体何事かしら……町の方が騒がしいわ……」


 「と、取り敢えず行ってみようポタン!!」


 「ひゃっ!?」


 元気はポタンをしっかりと抱き上げると町へと駆け出した。


『た、助けてくれ~!!!』『ば、化け物だ~』『うぎゃぁあああああぁぁぁ!!!』


 「な、何が起こっているんだ!?町のあちこちで悲鳴があがってるぞ!」


 「パパ!離して!空から見た方が早いわ!」


 「ハッ!?そうだな!流石ポタン!天才だ!行くぞ、しっかりと捕まって!」


 「いや、離してくれりぇぇええぇぇぇええぇぇ……!!!」


 ギュン!とポタンを抱えたまま町の上空へと飛び上がる元気。現在ポタンは心の安定剤なので絶対に離す気はない。


 「アハハ!ポタンが叫ぶ何て珍しいな~」


 「……はぁ、はぁ、はぁ……。抱っこされたまま、マッハで百メートル近く飛び上がられるこっちの身になってくれる?物理的干渉は苦手なの!」


 「そっかそっか~。アハハッ!」


 コイツは何がそんなに嬉しいのか!と、満面の笑みで町へと向かう元気にポタンがイラッとしていると、元気の声が辺りに響いた。


 「も、モンスターだ!」


 「町中に何で!?……あれはゴブリン?でも何か大きさも容姿も違うわね……。新種かしら……」


 「考えるのは後だ!取り敢えず助けなきゃ!!!」


 「うん!」


 数十匹の謎ゴブリン達と交戦中の町民達。そんな彼等を助ける為に元気とポタンは急いでメイン通りへと降り立った。



はてさて、メインの問題を起こしてはみたもののこれからどうなる事やらw

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