異能力
ちょっと情報が多いかな。へぇ~って感じで流し読みして下さいw
吸血鬼の寿命は、800年~1000年と言われ、エルフの次に長寿と言われています。
しかし、その長寿を保つ為には人の血液、詳細には血液に混じった人の作り出す純粋な魔力が必要なのです。
魔力に干渉し易い私達吸血鬼は、吸血する事によって力の増加等の恩恵を受ける事が出来ると、本に書いてありました。
それにはもちろん、自己治癒能力の向上も含まれており、それが吸血鬼の長生きの秘訣なのですが、病気で蝕まれてしまうと、血液の供給と自己治癒のバランスが狂ってしまい、死に至ってしまいます。
私の家族もそうして亡くなりました。
あ、先程も言ったとおり、一族の方々とはそれ程関わりが無かったので、悲しくはありません。
なので、そんなお顔はなさらないで下さい。
…………あの人達には……天罰が下ったのです……そして私にも……。
フフフ。そのお話は良いとして、今度は私の能力についてお話し致しますね。
私の吸血能力は、吸血によって相手の身体の状態異常を回復させる……。いえ、状態異常を代わりに請け負う物でした。
私は自己治癒能力に特化している固体の様でして、血液を飲むとどんな傷でも一瞬にして治るのです。
そして、私が相手の傷を請け負ってしまうのは、一族へ掛けられた神々からの呪いでした。
吸血鬼は元々、この大陸の支配者であったらしいのですが、この大陸の人々から縦横無尽に搾取……。吸血を続けた結果。人工の減少が深刻になり。それをうれいた神々の介入によって、吸血鬼の時代は終りを迎えました。
その時の神々の介入。それがこの呪いです。
血を飲み過ぎると、人間は死んでしまいます。そうすると、その人間と一緒に吸血した者も死んでしまいます。
生きるも死ぬも一蓮托生。
この呪いのせいで吸血鬼の一族は人間との共存を強いられたのでした。
私にはその呪いが色濃く表れた様で、パワーアップよりも、身代わりと自己治癒の方に魔力が持って行かれてしまい、無能力に見えていたのです。
アンと一緒に本を読みながら色々と実験や勉強を毎日しました。
そして、一ヶ月が経った頃。
私達は、お父様お母様に私の力を証明する事にしたのです。
私の力を証明する為に協力して戴く人間には、アンの弟を選びました。
アンの弟が産まれながらに足が悪いとの事だったので、それを両親の前で治癒してみせる事にしたのです。
……実は、アンは私だけの為では無くて、弟の怪我を治すために一生懸命だったのだなと、そう思って少し寂しい思いがしましたが、アンと一緒に過ごした日々は幸せだったので、アンの家族の為にも、私の家族の為にも頑張ろうと思いました。
「ふむ……。まぁ、使えそうだな……大義であった……」
「はい!お父様!」
証明の日。アンの弟への治癒は大成功でした。
お父様お母様の前で、アンの弟の曲がった足を私は見事治して見せたのです。
そしてこの日初めて、お父様に褒めて戴きました。
涙が出るほどに嬉しかったです。
「アン!ありがとう!」
「アリス様ありがとう御座います!」
私達は部屋に戻った後、涙ながらに抱き合ってお互いにお礼を言い合いました。
嬉しくて、幸せな涙もこの時が初めてでした。
この日は、とても幸せな気持ちで眠った様な気がします……。
……気がすると言ったのは、次の日からの事をあまり覚えていないからです。
両親に能力を見せた次の日から、私は地下室へと移動させられ……それからアンと会えなくなりました。
アンに会いたい……。アンはどうしているだろう?弟と幸せに暮らしているだろうか?お給金は足りてるかな?アンと……お話ししたいなぁ……。
毎日、次々にやって来る知らない人の血液を吸いながら、私はそう願いました。
でも、その願いが叶う事はありませんでした。
薄暗い地下室での暮らしがどれ位続いたでしょうか、お城の兵士達の噂話が聞こえて来ました。
それは、一族の皆が病気によって苦しんでいると言う物でした。
まずは母上、続いて父上……そしてお爺様にお婆様と次々に病床に伏せられ……そして、とうとう直接私にお知らせが来ました。
「このままでは、領主一族が居なくなってしまいます!姫様!どうにかなりませんでしょうか?」
そう言ってやって来たのは、父の付き人のおじさんでした。
顔は知っていますが、名前は知りません。普段の意地悪そうな顔がその時ばかりは、不安な様子でした。
「どうにかと言われましても……」
「姫様には、病気を肩代わり出来る力がおありになるのでしょう?普段からお世話になっている領主一族の為に、どうか協力をするべきだと思われます」
「…………そう、ですね……」
領主一族の為に力を……。付き人の男は私にそう言いました。
……なので私は言われるがままそう致しました……。
吸血鬼相手に吸血を行う事がどう言う事かを知っていながら、私は家族の血を飲みました。
こうして現在、吸血鬼の一族は私だけになったのでした……──
──……あらかた話し終わったアリスは、大きく溜息をついた。
話したことで何だか色々と吹っ切れた様子だ。
「んで、吸血鬼が吸血鬼の血を飲むとどうなるの?」
「え!……えっと──」
あえて、どうなるかをあやふやに話したアリスだったのだが、元気はそんな事には気づかない。
「──消滅しちゃいます……。私は自分の手で両親を……」
「へぇ~。そうなんだ。それってさ恩恵とかあるの?」
「え?恩恵……ですか?」
人を殺した事を告白したのに、それには何か恩恵があるのかと問われて、アリスはポカンとしてしまう。
「いや、同族の血を飲むとパワーアップするとか……。急成長が始まってエロく……あいた!!!」
「もう!元ちゃんったら、何でいつもそうなの!?両親を手に掛けた後にそんな事を考えられるワケが無いでしょ!!!アリスちゃんの気持ちを考えなさい!!!」
「ご、ごめん!それはそうだね!本当にごめんね!!!ついつい興味が暴走しちゃった」
目の前でミリャナから説教をされている元気を見て、アリスは不思議な気分になる。彼女はてっきり二人に軽蔑され、自分には天罰が下ると思っていたのだ。
人殺しは重罪だ。
これは何処の世界でも変わらない罪、なのに何故……?アリスの頭の中ではその事だけが駆け巡った。
「あの!!!……私は怪物で人殺しなんですよ!……なのに、そんなのを目の前にしてなんで普通にしていられるのですか!?」
元気の用意した、子供用の可愛いテーブルをバン!っと叩き勢いよく立ち上がるアリス。
その様子にミリャナ達のケンカが止まった。
「う~ん。でも、アリスちゃんが血を吸わなくても、結局は町の人達同様に病気で死んじゃってたんでしょ?……考え方によっては苦しまずに楽にしてあげたって事じゃないの?……安楽死が良いか悪いかは、俺には解んないけどさ……」
「楽に……ですか……。でも私は……死ぬことを知ってて一族の血を……」
「それは悪い事ね!って私達がアリスちゃんを怒ってあげるのは簡単だけど、結局はアリスちゃんが自分で折り合いをつけるしか無いのよね……」
「私が自分で……ですか……」
断罪されると思っていたアリスは元気達の反応に、再度拍子抜けしてしまう。
「……まぁ、あれだよ。そう言う事はゆくゆく考えて行けば良いとしてさ、アリスちゃんのお風呂がまだだよね?新しいお洋服も準備しなきゃだし!」
重くなった空気を変えようとアリスに笑いかけ、おもむろに洋服を脱ぎ出す元気。その様子にアリスが驚き、ミリャナが深い溜息を吐いた。
「……何で元ちゃんが上半身裸になっているの?」
「え?……一緒にお風呂に入ろうかと思って……」
「わ、私と一緒に!?」
当たり前かの様に一緒に入ろうとする元気の様子を見て、さっきまでの暗い表情が何処かへと消えたアリス。今は顔が真っ赤だ。
「……私はアリスちゃんよりも、元ちゃんの頭の中が心配よ……」
「じょ、冗談だよ……。うん。冗談……。場の空気を変えようと思って……」
ミリャナの冷たい視線が突き刺さった元気は、取り敢えず二人に向かってへへへと笑って見せた。
大人の男はスマートにカッコ良くと、大人の余裕を見せたつもり元気だったが、その実はとてもアリスとお風呂でキャッキャウフフしたい。
なので元気は、願いを込めた瞳でアリスを見つめてみる。元気の願いが冗談になるかならないかは、アリス次第なのだ。
願いの籠もった元気の視線に気付いたアリスは、少し戸惑いながらも嬉しそうに答える。
「えっと……あの……。私は一緒でも──」
「──駄目です!アリスちゃんとは私が一緒に入ります!」
親に甘えた記憶が殆ど無いアリスには、元気の甘やかしは劇薬だと感じたミリャナが、即座にアリスの返答に割って入った。
「えぇ!?」
すでにパンツ1枚になって、ウキウキ気分でいる元気が、ミリャナの言葉に驚き驚愕した。
「えぇ!?って何でそんなに驚くのよ!?」
「だって、アリスちゃんは良いよって……言おうとしてたじゃん」
「言おうとしてたけど、アリスちゃんみたいな子には元ちゃんの甘やかしは危険なのよ……」
「危険?危険って何がさ?」
「……元ちゃんの甘やかしでアイリス見たいに、アリスちゃんがワガママになったら困るわ」
「そ、それは……」
悪い子では無いが、超絶ワガママで天真爛漫に成長を果たしたアイリスの事を出されて、元気は口篭もってしまう。アイリスは最近、悲しい過去さえも利用して、色々と賢く立ち回っているからだ。
「この前なんて、元ちゃんの真似をしてパンツを売ってお小遣いを稼ごうとしてたんだからね!」
「え!?パンツを売っただって!?アイリスは一体何を考えているんだよ!?大切なパンツを売る位なら先に俺に言えば良いのに、そうすればいくらでもお小遣いを──」
「──そう言う問題じゃありません!成人前の女の子がする事じゃ……いえ、普通の女の子がする事じゃ無いでしょ!元ちゃんはあの子を甘やかし過ぎなのよ!」
「そ、そんな事言ったって仕方ないじゃ無いか!アイリスはアイリスで今まで大変だったんだから!ちょっと位──」
「──ちょっとって……。お小遣いに銀貨を渡すのはちょっとじゃ無いわよ!」
「な、何だよ!俺が全部悪い見たいに言って!ミリャナだって!ミリャナだって……」
「私だって……何よ?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ……」
ミリャナに反撃したいが、何も思い付かない元気は悔しさで顔が赤くなっていく。お母さんに怒られる子供の様だ。
「あ、あの!……わ、私。魔女様とお風呂に入ります!……男の人とお風呂に入るのは大人になってからとアンに聞きましたので……。神様とは大人になってから入ります!」
ケンカになりそうな元気とミリャナをアリスが止めに入った。
「お、大人になってから!?」
「もう!元ちゃん!真に受けないの!」
「わ、わかってるよ!」
「……鼻の下伸びてるわよ……」
ミリャナにジト目で見られ、サッと鼻の下を隠す元気。可愛いアリスが大人になり、お風呂に誘ってくる姿を想像したのがバレバレだ。
「はぁ……。まぁ良いわ。元ちゃんはポタンと合流してこれからどうするか決めてて、私は今からアリスちゃんをお風呂に入れて綺麗にするから……」
「…………………………………………わかった」
「沈黙が長すぎよ……。まったく」
「替えの洋服……ここに置いとくね……」
「ありがとう」
「あ、これ……ボディーソープとシャンプーとコンディショナー……」
「ありがとう」
「そ、そうだドライヤーも……」
「……ありがとう」
「後は……。あ、お風呂ぬるくないかな~……」
「調節は私がするから、大丈夫よ?」
「あ……。はい……。じゃ、じゃあ俺は行くね……」
「うん。行ってらっしゃい」
「……………………い、行って来ます…………………………………………」
「……そんな甘えた目でジッと見ても駄目よ。早く行ってらっしゃい」
「……はい」
俺も一緒にだとか、俺が代わりにだとか、色々と言いたい事を渋々必死に呑み込んだ元気は、後ろ髪を引っこぬかれる思いで教会地下を後にした。
吸血鬼として異質な能力を持つアリス。さてどうお話を作って行こうかなw
アンには生きていて欲しいけどな~……。
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




