目覚め~アリス~
今回はアリスのお話~
アンは13~4の女の子です。
アリスは4~5才です。
『お前はこの領地では役に立ちそうに無いな……』
これは私が5歳になる頃に、父が私に言った言葉です。
その言葉はまったくのその通りの言葉でした。
私。アリス・ロンゾは、このロンゾ地方を収める領主一族の娘です。
いえ……。
でした……ですね。
領主一族はこの細菌実験に巻き込まれて、この前死んでしまいました。
我々の一族は生命力は高いのですが、病気では普通に死んでしまいます。
あれも実験の一環だったのでしょう。
税金の代わりに戴いていた血液に、ウイルスが混ざっていた様で……皆、病気にやられて死んでしまいました。
あ、そんなお顔をしないで下さい!
母も父も、お婆様もお爺様も殆ど会った事がありません。
なので、それ程悲しくもありません……顔もお姿もあまり覚えていませんから……。
家族が死んだのに悲しくないなんて酷い話だと思いますが、それが本音なのです……。
んぎゅ!?……あ、ありがとう御座います……。
戴いているお食事があまりにも美味しくて、ついつい口元がおろそかに……えぇ!?
あ、あの……わ、私のお口についた物を何故お食べに?
だ、大丈夫?……そう……なのですか?
……あ!そうですね。そんな事よりもお話しをしなければいけませんね……。
では……続きをお話します。
……私達吸血鬼の一族は、血を飲んで不思議な力を使います。
その力でモンスターを倒したり。領地を耕したりと、圧倒的な力を領民の為に使う事で、これまで共存関係を築いて来ました。
しかし、私にはその力がありませんでした。
血を飲んでも私は不思議な力が使えなかったのです。
父が言った様に、領民の為に働けない私は本当に役立たずでした。
そして、その事が解ってからは、政略結婚の為に生きる。というのが私の日常になりました。
あ、いえいえ。牢屋に閉じ込められたとか、虐待を受けたとかではありませんよ?
お部屋も広くて、優秀なメイドもつけて貰えて、苦労も無く生活出来ていました。
自由。と言う物は無かったですが不自由は感じていませんでした。
でも、力が無い。それだけの理由で、両親や一族の方々に興味を持って戴けない事に関しては、とても悲しかったです。
しかし、お部屋から出れない日々が続く中で、メイドのアンはずっとそばに居てくれました。
え?どんなメイドさんか?ですか?……そうですね。姉が居たらこんな感じなのだろうなぁ……なんて、ふと考えてしまうような優しい人でした。
はえ!?お、オッパイの大きさですか!?
えっと……。ひえっ!?だ、大丈夫ですか!?頭の天辺から血が噴き出していますよ!!?
本当に大丈夫……。あ、そうなのですか?
ううむ……定期的に頭が悪くなっちゃう病気をお持ちだなんて……神様って大変なのですね……。
で、では気を取り直して……。
アンは今日あった事や、明日ある事などを逐一報告してくれたり。お部屋のお掃除をしてくれたり。お話し相手をしてくれたり。食事を運んでくれたりしました。
でも、彼女が私の傍に置かれた理由は全くの別物なのだと、後に彼女から知らされました。
私達一族は、定期的に他の方々の血液を貰わないと生きて行けません。……彼女は私の食料として傍に置かれて居たのです。
ある日にアンが、最初は私と一緒に居ることがとても恐ろしかった。と言いました。
私は彼女の事を姉の様に慕っていたので、それを聞いたときはとてもショックでした。
でも、いつ血を吸われて殺されるか解らないのですから、当然と言えば当然ですよね……。
だから私は彼女を安心安全させる為に言いました。
「……血液ってドロッとして美味しくありませんし……。好んで吸いたいと思う物ではないですから大丈夫ですよ。それに人に迷惑を掛けてまで生き延びたいとも思っていません……。もちろんアンの命を奪おうなど、これっぽっちも考えた事はありません」
「そうですか……。本当にアリス様は……吸血鬼らしくありませんね……。貴女様が領主であれば……」
「あは……。私なんて何の役にも立ちませんよ……」
「アリス様。私の血をお飲み下さい……。貴方に死なれてしまっては私が困ります……。お給金が無くなってしまっては生活出来ませんので……」
「でも……」
「血を全部飲まなければ、人は死ぬことは無い。と本に書いてありました。私が死なないのならば良いでしょう?……味の方は我慢して下さい……」
「……」
「貴女様はどう思われているか解りませんが、今現在私は、アリス様の事を大切に思っております……。私の血を吸わないことで、今にも死んでしまいそうなほどに痩せ細っている貴方様のお姿を見ていると、私はとても胸が痛みます……」
「アン……」
どうせこのまま独りであるのならば、いっそ死んでしまおうと思っていた矢先の事でした。
アンからの突然の告白は、それを感じ取った彼女からの優しさだったのです。
まだ、私の心配をしてくれる人がいるのだという事がとても嬉しかった……。
なのであの日、初めてアンの血を飲みました。
もう少し生きてみようと思いました。
この日以来、アンの血液を飲む度に、私の萎んだ身体はどんどんと回復していきました。
そして、今まで以上に彼女との距離が縮まった気がしました。
そんな日々が続いたある日の事です。
「あの……。アリス様……私……貴女様に血を吸われ始めてから──」
「──た、体調が悪いのですか!?そ、それではすぐに辞めなければ!!!」
「いえ……逆です。体調が凄く良いんです……。それも異常な程に……」
「え?良いのですか?それなら……良かったのかしら?う、嘘じゃ無いのよね?」
私のせいでアンが苦しむ事は絶対に嫌だったので私は凄く焦りました。
「フフフ……。嘘ではありませんよ……。それに……お腹にあった古傷や、顔に出来ていた古傷も消えているのです……」
「古傷が?……それはとても良かったです」
アンが苦しんでいないのであれば、良かったと私はホッと一息つきました。
しかし、アンはまだ興奮冷めやらぬ様子でした。
「これは私の憶測ですが……アリス様のお力は、人の傷を癒せる物なのでは無いのでしょうか?」
「癒やしの力……ですか?」
「はい!そうです!最近私の体調が良い事と言い、ずっと消えなかった古傷が治った事と言い、アリス様に血を吸われたあの日からの事です!」
「そ、そうですか……」
「もう!呆けている場合ではありませんよアリス様!この力が認められればお部屋から出られるんですからね!」
「お、お部屋から!?」
「えぇ!きっと領主夫妻様達にもお会いになれます!それどころか、領主一族として堂々と過ごす事がお出来になるでしょう!」
「お父様とお母様に……。本当に……大丈夫でしょうか?」
「図書室の本で、吸血鬼の事を色々と調べて見ましょう!何か解るかも知れません!私がお手伝い致しますので!」
ドン!と大きな胸を叩くアンの姿を見て、私はとても嬉しくなりました。
父母に会える……。その事ももちろん嬉しかったのですが、一番はアンが私の事をこんなにも思っていてくれた事が、とてもとても嬉しく思えました。
「……アンの言う通りにしてみる。アンと一緒なら……何でも上手く行きそうな気がするわ!」
本当に……アンと一緒なら、何でも出来そうな気がしたのです。
こうして、この日から私達二人の吸血鬼研究が始まったのでした。
次回は、この世界の吸血鬼についてです。
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