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活動開始

お風呂キャンセル界隈の人ならば、部屋の中がどう言う匂いか解るかも?w



 元気が出した医療関係の本を受け取ると、ポタンはちょっと読んでくると言って、本の読みやすい日の当たる教会の方へと足早に向かった。


 それを見送るとアリスが恐る恐る元気へと話し掛けた。


 「あ、あの貴方は?……それに一体何処から?」


 「あ、俺はポタンのパパの元気と申します。未来のミリャナの旦那さんになるつもりの者です!」


 「げ、元ちゃんそこまでは言わなくて良いの!もう!」


 「そ、そっか、ヘヘヘ。ってか……うわぁ、綺麗な金髪金眼だね……めちゃくちゃ可愛い……。これでドラキュラだったら最高だ……」


 元気が現れると緊張感が消える。


 それは何処までも顕在の様で、ミリャナは満更でも無い様子で照れ、アリスは可愛いと言われて頰を赤くして照れてしまっている。


 「元ちゃん。ドラキュラってなぁに?」


 「ドラキュラってのは、吸血鬼の別名で、人の血を吸ってパワーアップしたり、仲間や手下を増やしたりする種族の事だよ。不老不死で美人さんが多いんだ」


 「ふ~ん……。美人さんが多いのね?」


 「あ、いや。多いけど人を食べちゃう怪物だから、大丈夫だよ?」


 「何が?」


 「え?何が?って……。大きなオッパイを見たりとか、エッチな足を眺めたりとか……しないよ?」


 「……鼻の下。少し伸びてるわよ?」


 「え!?そんな、まさか!?」


 勝手に墓穴を掘ってドンドンと転がって行く元気。急いで鼻の下を隠すが、時既に遅し。ミリャナのシラケた眼差しが彼に突き刺さる。


 しかし、金髪金眼の吸血鬼はボンキュッボンの超絶美女でかなりエロい。これは異世界の常識なので、元気の鼻の下が伸びるのも致し方ないのだ。


 元気はアリスのお母さんを早く見たいと思う。


 「血を吸う化け物ですか……。では私も化け物なのかも知れません……」


 「え?」


 鼻の下を隠している元気に向かってそう呟くアリス。さっきとは打って変わって少し俯いて浮かない顔だ。


 「実は私……。病気の方の血を吸って、病気や怪我の痛みを和らげる事が出来るのです……。こんなの化け物の力……──」


 「──キタコレ~~!!!」


 「ひえ!?」 「きゃっ!?」


 アリスが喋るのを遮って、両手を天井にかざし歓喜する元気に驚くミリャナとアリス。


 本物のロリ吸血鬼が目の前に現れたのを知って、元気のテンションが一気に上がってしまったのだ。


 読者の皆様はこの喜びに共感出来るだろう。


 何なら彼女が偽物であっても、可愛いロリッ子が知り合いに増えるそれだけでも嬉しいのに、それが本物の吸血鬼だったのだから、元気のテンションが爆発するのも致し方ない事なのだ。


 しかしアリスとミリャナには、元気が奇声発した訳が解らず。引き攣った顔で一歩後退。ハタから見たら、いきなり奇声を発するただの危険人物なので、二人の反応は正しかった。


 「あ、ビックリさせてごめんね……。ちょっと……いや。かなり嬉しくなっちゃって……。そっかそっか~ドラキュラなのか~……。……ちょっと俺の血をチューチューしてみる?」


 「えぇ!?」


 元気の発言に驚くアリス。急いでミリャナの後ろに隠れる。


 おやおや?恥ずかしがり屋さんかな?等と思いながら怯えているアリスに元気が近づこうとした時。元気の脳天に稲妻並の衝撃が走った。


 「げ、元ちゃん何言ってるの!?お馬鹿!」


 「ぎゃあ!ご、ごめんごめん!ウソウソ!ちょっとテンションが上がりすぎた!」


 ミリャナに拳骨されて、正気に戻った元気はアリスに謝る。某吸血鬼と、アララな少年のお話のファンである元気は、金髪金眼吸の血鬼と聞いて、己の欲望が止められなかったのだ。


『お前が明日死ぬなら明日俺も死のう』等と元気も言って見たかった。


 「フフフッ。元ちゃんさんって面白い方なのですね」


 「え?そう?そうかなぁ?えへへ」


 俺の気持ち悪い発言に、笑顔で答え、ましてや褒めてアリスはとても良い子だ。


 元気の中でのアリスの評価が確定した。


 こんなに可愛くて良い子が困っているのは、とても悪い事である。そう思考が固まってしまえば、後は行動するのみだった。


 「おっし!始めようか!ミリャナ!」


 「うん!って返事はしたけど私は何をすれば良いかしら?」


 「う~ん。そうだなぁ。まずお風呂を準備するから、俺が治療した人を誘導してくれる?」


 「解ったわ!」


 「お風呂を準備する?誘導?」


 元気のやる事に慣れているミリャナはこれから何が起きるかを把握出来たが、初見のアリスは戸惑っている。二人はその様子に優しく微笑むと何も言わずに準備を始めた。


 魔法でやる事。元気のする事は、説明するよりもやって見せた方が早いのだ。


 「あの辺りで良いかな……」


 元気が目をつけたのは部屋の端っこの空いている空間。そこに檜風呂を設置した。


 その反対方向にはトイレを設置。御飯の準備はその後だ。


 「アリスちゃん。お手伝いをお願いして良い?」


 「は、はい……」


 「じゃあ、症状が軽い人から連れて来てね」


 「はい!」


 アリスに向かってニコリと微笑むとお風呂に向かって歩き出すミリャナ。その姿を少し目でおった後、驚くのは後にしようと、アリスも動き出した。


 元気はミリャナとアリスが地下室の人々に入浴の介助や説明をしている間に、症状が酷い人の治療をする。


 「肺が変になって息が出来ないって言ってたな……。取り敢えず胸辺りにヒールして……」


 呼吸をするのが困難そうな人達の胸に向かって、まずは呼吸を楽にしようと、ヒールをかけた。


 すると、苦しんでいた人達の呼吸がみるみる内に落ち着き、顔色が戻って行く。


 「き、奇跡だ……」「あぁ……。神様……」「ありがとうございます……。ありがとうございます……」


 呼吸が楽になり、喋れる様になった人々が涙を流しながら、元気にお礼を言うが、元気はそれが歯痒い様子だ。


 「あ、いえいえ~」「お構いなく~」「この後お風呂と御飯ですので~」「良かったですね~」等とよそよそしい感じで去って行くのを繰り返す。


 「げ、元ちゃんさんって……何と言うか……。面白い人ですね……。もっと傲慢的になっても良いと思うのですけれど……」


 「フフフッあの人はいつもああなの。本当に面白いわよね」


 底辺抵当で病人の治療をして回る元気を見て微笑み合う二人。しかしそんな平和な時間は長くは続かなかった。


 状態異常をドンドンと回復していく元気のスピードが早すぎ、お風呂へ向かって、回復した人々の列が出来はじめた。


 「げ、元ちゃん治療スピード早すぎよ!お、お話しをしながらでもいいから、ちょっとスピードを……」


 「あ、ごめん!……お、お話し……。……こ、こんにちは~……。お加減はいかがですか~?」


 汗だくで入浴対応に追われるミリャナに言われて、目の前のおじさんに話し掛けてみる元気。


 「あ、え……。だ、大丈夫です……」


 大丈夫と答えてくれたが、呼吸が荒くとてもお加減は良くない。


 「そ、そうですか~……。きょ、今日も良い天気ですね~」


 「そ、そうなんですね……」


 「そうなんです……。へへへ……」


 今度は外に出られない人間に天気の話をする。


 その後、愛想笑いに逃げ会話はすぐに終了した。


 元気の饒舌はお子様と優しいお姉さん限定だった。


 元気はそうこうしながら、1時間程度の時間を掛けて、地下室内にいた病人。約50人の治療を終えた。


 そして、治療をして周りながら大きな違和感に気付いた。


 地下室内部には、女性や子供の姿が見えないのだ。


 いくら死人が出ているとは言っても、女子供の生存者がまったく居ないと言うのはおかしな話だ。


 「ねぇ?女の人や子供が居ない気がするんだけど……。別の場所に避難してるの?」


 元気は汗だくになって、お風呂の案内をしているアリスに尋ねて見る。するとアリスの動きがピタッと止まり俯いてしまった。


 「……ガスが巻かれる前に、中央の人間達にみんな攫われてしまいました……」


 「マジか……。アリスは大丈夫だったんだ?」


 「ここにいる皆さんが、私を隠して下さいました……」


 そう言ってポロポロと涙を流し始めるアリス。早速彼女の地雷を踏み抜き元気があたふたし始める。


 「あ、あれよ!元ちゃん!大丈夫よね?」


 「え!?あ!うん大丈夫!大丈夫!大丈夫だから泣かないで!俺達が攫われた人を助け出すから!」


 「そ、そうね!こう見えて元ちゃんってば強いんだから!」


 「そうそう!俺って意外と強いんだ!ミリャナの方が力は強いけどね!」


 「よ、余計な事は言わなくて良いの!」


 「ご、ごめん!お、俺御飯の用意してくるから!……あ、これ食べて休憩しててね!」


 涙を流すアリスの手の平にクッキーを持たせた元気は、食事の準備を始める為に入り口の方へと駆けていった。


 「まったくもう。子供にクッキーをあげれば何でも解決すると思っているんだから……。ごめんねアリスちゃ……──」


 「──へ?……あ、すいません……美味しそうだったのでつい……」


 元気に貰ったクッキーを食べて涙が引っ込んでいるアリス。甘くて美味しいクッキーが気に入った様子で、口元がほころんでいる。ミリャナに声を掛けられ、少し恥ずかしそうにしているが幸せそうだ。


 「い、良いのよ。ゆっくりと食べてね」


 そういうと、体調が戻った男達に入浴の誘導を任せ、ミリャナは元気の後を追った。


 「アリスちゃん泣き止んだわ」


 「そ、そっか……良かった」


 「……ごめんね元ちゃん……。勝手に何とかするとか言っちゃって……」


 「え?謝らなくて良いよ~。こんな状況、普通に放っては置けないでしょ?」


 「うん」


 元気の笑顔に笑顔を返すミリャナ。微笑み合う事によって不思議と何でも出来そうな気がしてくる。


 「取り敢えず。今日はいつもの様にパンとミルクとハムを出すから、動けない人には配って、動ける人には取りに来て貰おうかな?」


 「解ったわ!そう伝えて来るわね!」


 跳ねるように、入浴場で働く男達に食事の事を伝えに行くミリャナ。


 元気は素直に行動する彼女の後ろ姿を見て、ただただ愛おしさを噛みしめる。


 そんな元気が、プルンプルン揺れるミリャナの元気なお尻を眺めながらニヤニヤしていると、背後から聞き慣れた冷ややかな声がした。


 「パパ……顔が気持ち悪いんだけど?」


 「おわ!ポタンいつの間に!……本は読み終わったの?」


 「うん。大体はね。同じウィルスかどうかは解んないけど、類似する症例から宛をつけて治療を……って、パパ……みんな治したの?」


 「あ、うん……。あ!でもウィルスは残ってるかも?」


 「何処に?」


 「えっと……。どっかに……」


 困った様にへへへと笑う元気に対して溜息が出そうなポタン。


 「……大陸に病気が無い理由が今解ったわ……」


 「さ、流石ポタンだね!」


 「……褒められても嬉しくないわよ……。根本からウィルスを消したら対処のしようが無いじゃ無い……。これじゃ薬の造りようが無いわ」


 「あ……。そっか……」


 「まぁ。いいわ……ちょっと私は外を回ってサンプルが無いかを探してくるわ……」


 「え!でも一人じゃ……」


 「対処は何とか出来そうだから。一人でいいわ。それともこっちも邪魔する気?」


 そう言うと、ミリャナを見つめるポタン。それだけでポタンが何を言いたいのか、元気は理解した。


 「あ、じゃあ!ミリャナと一緒に……」


 「はぁ?何言ってるのよ?万が一ママに病気が感染したらどうするのよ?本当にお馬鹿じゃ無いの?」


 「そ、そうだね……。んじゃ俺が……と言っても食事の準備があるか……」


 困った様にションボリする元気を見て、ポタンは溜息が出てしまう。あまりにも過保護過ぎると感じてしまうのだ。


 「……半分実験も兼ねて行くから一人でいいわ。町からも出ないし……。もし危なくなたらすぐ念話するから……──」


 「──すぐ行くよ!念話があったらすぐに飛んで行く!」


 「う、うん。よろしくねパパ……」


 「おう!任せろ!」


 本当に手が掛かる……。ポタンはそう思いながら、元気を安心させると町へと調査へ向かった。


 元気はそれを見送ると、早速行動を開始した。


 食事も大事だが、長い間入浴していなかった人々の衣服類はかなり臭い。さっさと、男だらけの狭い室内から避難……もとい。彼等を解放したい。


 「食事と一緒に、衣類を配りますので~。受け取った方は一旦帰宅してくださ~い。中央?に攫われた人達は救出に行きますので、ご心配なく~」


 そう元気が言うと、一瞬室内がザワついた。


 治癒をして貰った上に、救出までしてもらえるのか?と言う半信半疑な思いと、本当に救出が出来るのか?……魔女様の一味なら……もしかしたら出来るのかも……。と言う煮え切らない希望が、人々の中で交錯しているのだ。


 しかし、そんな空気は一瞬にして霧散しまった。


 「皆さん!神様と魔女様の言う事を信じましょう!衣食に病気の治療……そして、住民の救出まで……。本当にありがとうございます!」


 ザワつく室内にアリスの声が響き、元気の前までやって来るとザッと跪いたのだ。


 それにつられて、他の住人達も元気とミリャナに向かって跪く。


 「神様!魔女様!どうか我々の家族をお救い下さい!」「お願い致します!」「助けて貰えるのならば、我々の命でさえも差し出します!」


 アリスの背後に跪きながら口々に懇願する男達。元気はその熱に一歩引いてしまう。


 「……いや命って……。おじさんの命とかいらな……いて!?」


 「元ちゃん!」


 ミリャナから横腹に軽く肘打ちをくらい、テンパりが少し薄れる元気。


 「ご、ごめん……。おじさん達の熱気が凄すぎて……。あの~。命とかいらないんで……、飯と衣類を持って一旦解散しませんか?……めっちゃめちゃクセェっす……」


 「も、もう!元ちゃんったら!」


 ミリャナは元気の失礼な発言に怒ったが、顔を見合わす男達は元気の発言に苦笑する。


 自分達で自分達の体臭の凄さに気付いてはいた様子だった。


 その後、男達は食料と衣類を受け取ると、元気とミリャナ。アリスへ頭を下げ。自宅へと戻って行った。


 「にしても、何かみんなアリスに対してよそよそしかったな」


 「最近やっと、信用して貰えた見たいで……」


 「最近やっと?」


 「はい……。その……私達一族はその……変わった能力のせいで嫌われていまして……」


 アリスは住人が去った地下室内で、元気の用意した子供用テーブルに座り。元気の顔の旗がついた特製お子様ランチをお口いっぱいに含みながら。ツブツブとこの領地の事について語り始めた。


 元気はそれを聞きながら、アリスのちっちゃくて可愛いお口につっいたケチャップを拭くため。


 彼女のちょっと舌足らずな語り口に、耳と目を真剣に傾けたのだった。


仕事休憩中にちょこちょこ書いてたら長くなっちゃいましたw


次回はアリスのお話しにしようと思います(*^_^*)


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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