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細菌

原因が不明だと、ただの風邪でも大病。

 アリスに連れられてミリャナ達が訪れたのは、町中の教会の地下。


 「こ、これは……」


 「酷い匂い……。一体ここで何が起こったの……」


 そこにあったのは蝋燭の灯りでかろうじて足元が見える、ジメっとした薄暗い、学校の教室程の広さの空間だった。


 そこには、所狭しと人々が横たわり、力無く呻く姿が無数にある。


 「皆、自分で動く事がないので、身を清める事も出来なくて……。不快な思いをさせてすみません……」


 教会地下内部に漂う排泄物や、すえた体の匂に顔をしかめるポタンに対して、申し訳無さそうに謝るアリス。ポタンは顔に出した事を不覚に思いながらも、あまりもの匂いに愛想笑う事しか出来なかった。


 「あ、いえ……こちらこそ……すみません……」


 「一体これは、何があったの?皆苦しそうにしてる……。いえ……話は後ね。まずは治療を……。元ちゃん……あ。……」


 ミリャナは元気の名前を口にして、今回は元気が居ない事に気が付いた。


 元気と行動を共有していると感覚が麻痺してしまうが、魔力を使った治療行為は、魔力を膨大に消費するため、普通は出来ないのだ。


 ましてや、どうして苦しんでいるのか原因不明の状態では、更なる魔力の消費が見込まれる。


 「ママ。パパ程じゃあ無いけど、私が少しは治療出来るわ……。……でもどうして苦しんでいるのかを知らないと……」


 苦しむ人々を眺めながら、顎に手を添えて呟くポタン。するとその姿を見てアリスが大きな声を上げた。


 「わ、私が説明致します!ど、どうか我が領地の人々をお救い下さい!魔女様!」


 アリスの声が地下室内に響き渡る。すると横たわっていた人々が一斉にポタンを見た。


 ポタンはその光景に少し後ずさってしまう。


 「ま、魔女様だって……」「あ、新しい魔女様が現れたのか!?」「わ、私達……助かるの?」


 アリスの魔女様発言によって、浮き足立つ室内。室内から一気に絶望の色が払拭される。


 しかし、あまりに期待されても困ると言う物。全員救えるか解らない上に原因も解らないのだ。


 「と、取り敢えず。こうなっている原因を教えて貰って良いかしら?」


 「も、勿論です!小さな魔女様!……この人達は、中央研究所が振り撒いた細菌によって、呼吸器官をやられてしまった者達なのです!」


 「さ、細菌?」


 ポタンは小さな魔女様と言われた事に引っ掛かったが、それよりも細菌と言う言葉に興味を惹かれた。


 なので呼び方の方には突っ込まずに、そのまま話の続きを聞く事にした。


 「はい!……中央の人間達にとって地方の人間達は細菌兵器の実験体なのです……」


 「実験体……。中央?……一体何のために?」


 「近々、北の大陸との戦争すると言うことで、ここ数年、細菌実験が酷いのです……。そのせいで、領地の殆どの人が亡くなってしまって……。前にいた魔女様も……肺を患ってしまい……」


 「そ、そう……。それは残念だったわね……」


 アリスの話に冷静に応えてみたポタンだったが、細菌。それはこの世界には本来存在しないもの。それをこの世界の存在が造り上げた事に驚きを隠せない。


 そして、それを戦争に使おうとしている事にもだ。


 この実験は細菌の爆発力や殺傷力を調べる為のものだろう。いくらポタン達の住む大陸には魔法があると言っても、戦争前にこんなものを大陸中にばら撒かれてしまってはたまった物では無い。病気を知らない軍隊や人々に、あっという間に病気が伝染してしまう。


 病気になってからじゃ遅い。と良く耳にするが、まったくのその通りで、これを放置してしまえば対処をする暇も無く戦闘不能になり、戦う事さえ困難になる。


 この大陸の人間には魔力が無い。なので、魔力で対処すれば何とかなるだろうと、ポタンは南の大陸の人間を少しなめていた。


 しかし、今は現状を把握したポタンの危機管理センサーが反応している。それもとっても赤信号だ。


 「はぁ……。こちら側の対処もしっかりしないと……パパの死は防げないと言う事ね……」


 ポタンはそう独り言ちた後に深い溜息をつく。


 やっとミリャナと二人きりの時間が出来たと言うのに、病気の知識を手に入れる為には、元気に異世界の本を出して貰うしかない。それがとても嫌なのだ。


 今度、失敗したら身体が捻じ切れる。時空転移魔法の実験に付き合って貰おう……。うんそうしよう。


 ポタンは、ミリャナとの時間を割く事に納得出来る理由を無理矢理考え。仕方なく元気へと念話をおくる事にした……次の瞬間だった。


 「な、何かあったのか!ポタン!?」


 「え!?げ、元ちゃん!?」


 地下室に急に現れた元気に驚くミリャナと地下室の人々。


 「あれ?二人とも無事……?くんくん……うわ。汗臭!?」


 「げ、元ちゃん!失礼でしょ!み、皆さんすいません……」


 「……あ、ご病気の方がいらっしゃるんですね……何かすいません……ヘヘヘ……」


 やって来てすぐにミリャナに叱られ、ペコペコと人々に謝る元気。


 その姿を見て、再度深い溜息をついてしまうポタンだ。


 「パパ……。私まだ念話してないんだけど……。なんで何かあったって解ったの?」


 「え?いや、ポタンから念話が来る気配がしてさ……。それにポタンから俺に念話をしてくる何て事殆ど無いじゃん?これは問題発生かな?と思って……心配になって来ちゃった……えへっ」


 「そう……」


 念話の来る気配を感じるってどう言う事?……ポタンはそう元気に聞きたかったが、何か感じたから?等と言う感覚的な答しか返って来ないのが解りきっている。


 なので、元気は謎の存在。考えるだけ無駄。お馬鹿。そう思う事にして話を聞く事をしなかった。


 「んで、この状況は?一体何があったの……皆病気みたいだけど……」


 「そうなの……。だからパパに異世界の医療関係の本を出して欲しいなって思って……」


 「勿論良いけど……。まぁ、ポタンなら大丈夫か!」


 「何が?」


 「病気と言っても色んな種類があるんだ。だけど、ポタンなら理解できるでしょ?」


 「見てみないと解んないけど……」


 「ハハハ!ポタンなら大丈夫さ!ポタンが本を読んでいる間は、俺が対処しとくからさ!」


 そう言って、ポタンの為に医学書を出し始める元気。


 私なら大丈夫って何よ?私の事を無条件で信用し過ぎ……。解決出来なかったらどうするのよ……。本当にお馬鹿なんだから。


 元気に対して心の中でそう悪態をついたものの、無条件で信用してくれる元気の素直な気持ちに、実はそれほど悪い気はしていないポタンなのだった。



重い病気が良いか、悪い病気が良いか迷いまして、軽い病気にする事にしましたw


次回から対処を始めます!


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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