厄災
ぬるっと新章突入しま~す。
ナツを無事保護し魔国ダンジョンへと歩みを進める元気達。そんな元気達と別行動を取り、南の大陸へ渡ったミリャナとポタンポタンペア。彼女たちはそこでとある問題に直面していた。
「もう、3つ目の町だと言うのに……人が全然居ないわ……」
「建物も手入れされて無くて廃墟化してる……もう随分前から誰も住んでない見たい……」
元気からの念話でナツの保護を聞いたポタンは、観光がてらに、純潔と言われる人間の暮らしを見学するつもりで南の大陸の南にある港町に潜入した。
するとそこは活気で賑わうはずの港町にも係らず、全く人の姿が無かった。
領地の間で争いが起きたのかと、街の中を一通り見回ってみたが、争いのあった形跡は全く無く破棄された町だと言う事が解った。
こんなに大きくて立派な町なのに理由も無く放棄するなんて、何か可怪しい。ポタンはそう思ったが、ここは未知の異大陸。何が起きてもおかしくは無い。自分が知り得ない事が起きたのだ。とこの時はそう考える事にした。
しかし、そんな状況が2つ3つ続けば話は別だ。
「この大陸に人は居ないのかしら……」
「そんなハズは……」
無い。近い将来南の大陸は中央に戦争を仕掛け攻めて来るのだ。そしてそのせいで世界が滅ぶのだ。
不可解だ……。不可解だが面白い。ポタンはそう思ってしまう。しかし、今回は調査でも趣味でも何でも無くナツの捜索。そして何よりもミリャナが側にいる。
未知の場所に未知の状況。何が起こるか解らない。そんな中危険な状況下の中にミリャナを置いて置く事が、ポタンの今一番の懸念点だ。
「ママ……一旦戻って状況を整理……──」
「──あ!誰かいたわ!アナタちょっと待って!」
「マ、ママ!?ちょっと待っ……あ、足早すぎ!」
ここはまず、ミリャナの身の安全が優先だとポタンが判断した瞬間だった。
何者かを見つけてビュン!と目にも留まらぬ速さで駆け出したミリャナ。そんなミリャナを急いで追いかけるポタンだったが、あまりものミリャナの足の速さに追いかけるのを断念。瞬間移動で合流をした。
「怖がらないで大丈夫よ?お姉さん達は怖い人じゃ無いからね?」
町の墓地の一角にて、ミリャナに追い詰められガタガタと怯える少女。どれ程追いかけられたのか、咳き込む程に息を切らしている。それとは打って変わって涼しげな表情のミリャナ。
咳き込む程に全力で逃げても、平然と息も切らさず追ってくる大人に対して、少女が恐怖を覚えるのは当然だろう。今にも泣き出しそうだ。
「マ、ママ。いきなり全力で追いかけられたら誰でも怖いわよ……まずはお話しなきゃ……」
「そ、そうね!ご、ごめんなさいね……。元ちゃんがいつも全力で逃げるから、ついいつものクセで全力で追いかけちゃった……。本当にごめんなさい……」
ポタンに注意され落ち込むミリャナの姿を見て、少し安心した様子を見せる少女だが、警戒自体は解いて居ない様子で目つきが鋭いままだ。
年頃は9つ程で、金色の長い髪に金眼。濃いピンクのドレスを身に纏い赤い靴を履いている。長いまつ毛に目鼻立ちがしっかりしているまんま美少女。
しかし、髪はボサボサで、服はボロボロ。本来はお人形さんの様に可愛いであろう顔も乾いた泥やら何やらで汚らしかった。
「ほ、ほら〜。クッキーお食べ〜……怖くないよ〜」
「マ、ママ……」
少女に怖がられている事に気付いたミリャナが元気の真似をして、クッキーで少女の機嫌を取ろうとする。それを冷ややかな目で見てしまうポタン。ミリャナが元気の真似をするのが気に入らない。
しかし。流石は幼女、童女、少女マスター元気が使う手法。効果はバツグンの様で少女の金色の瞳がキラリと輝いた。
「そ、それ毒が入ってるんでしょ!」
「え!?ど、毒なんて入って無いわよ?ほら……。ね?う〜ん。美味しい!」
「あぁ……」
ミリャナが少女に差し出したクッキーを毒見として食べて見せる。するとそれを見た少女がわかりやすく落ち込んでしまった。
「あ!だ、大丈夫よ!ま、まだあるから!落ち込まないで!ほ、ほら!ね!」
ミリャナが再度、手のひらに出したクッキーを見せると目を見開いて驚く少女。ミリャナのおっとりした空気感に呑まれ忘れていたが、ここは南の大陸。魔法の無い国。その事を思い出すポタン。
「ママ……。ここではあんまり魔法を使わない方が……」
「そ、そうだったわね……ごめんなさい……」
「ま、魔法!?あなた達魔法使いなの!?」
魔法と言う言葉を聞いた少女が、身を乗り出し目の色を変えてミリャナに詰め寄る。ポタンがその様子に警戒をするが、ミリャナが目でそれを制止する。敵意のある感じでは無いからだ。
「こ、この事は内緒の話にしててね……?」
ミリャナのお願いにコクコクと首をふり必死に頷く少女。そしてミリャナの差し出したクッキーを受け取った。
「その……。お菓子を食べてからで良いから、貴方のお話を聞かせてくれないかしら?」
「……うん」
ミリャナとポタンが見守る中で、墓石にもたれ掛かった少女は、黙々とクッキーを食べ始めた。
余程お腹が空いていたのだろう。食べるスピードが早い。少女がクッキーをあっという間に平らげるのを見送ると、次はパンと牛乳を出してあげるミリャナ。
少女は驚きながらその光景を二度見すると、そっとパンをミリャナから受け取り食べ始めた。
暫くすると食べるスピードも穏やかになり。お腹も膨れた様子で大きく息を吐く少女。
「あ、あの……ありがとうございました……魔女様……」
「ま、魔女様?私はミリャナ……。こっちがポタンよ。貴方のお名前は?」
「アリス……」
「アリスちゃんね……よろしくね!」
「……はい」
ミリャナとポタンに対しての警戒心を解いた少女アリス。彼女が発した魔女。と言う言葉を魔法のある国で育ったミリャナは初めて聞いた。
「あの……。早速でごめんね……魔女って言うのは何かしら?」
「災厄から私達を護ってくれていた不思議な力を持っていた人です……でも……もう……」
「そう……なの」
アリスが俯いた事によって、魔女がどうなったのかを悟ったミリャナは、優しく彼女の頭を撫でた。
それを見ていたポタンが少し不満気にアリスに問いかける。
「災厄ってのは何?」
「厄災は厄災……」
「それじゃ解んない!」
「ひゃ……」
ミリャナに撫で撫でされたままのアリスに腹が立ち、語気が強くなってしまうポタン。折角の2人の時間にまた邪魔者が現れたのだ。ポタンは心穏やかでは居られない。
「ちょっとポタン。聞き方が乱暴よ!」
「あ……ごめんなさい……」
こんな子供相手に嫉妬するなんて……。そう思うポタンだが、ミリャナと会えなかった数カ月間は本当に寂しい物だったのだ。
だからと言って、折角の情報源相手に感情を剥き出しにしてしまっては駄目だろうと、自分の失態を恥じる。
「あ、あの……アリスちゃん……。厄災について、もうちょっと詳しく解る言い方無いかな?」
「……………………ついて来てください……案内します……」
「案内って……何処に?」
「厄災のある場所です……」
「マ、ママ!」
アリスに手を引かれ、言われるがまま一緒に歩き出そうとするミリャナ。危険だから一旦ちゃんと考えてから!そうポタンが言おうとした時だった。
「ポタンさん!私達には今すぐにでも助けが必要なんです!……ごめんなさい……」
「あ……」
そう言ったアリスの尖った背中に、自分が何を言おうとしているかを悟られている事を悟るポタン。
「他にも困っている人がいるのね?」
「……はい」
「そう……。ねぇ。ポタン……駄目かしら?ちょっとだけだから……」
そんな困った様に見つめられても困る。これはちょっとだけですむ案件では無い。そんなのは解り切っている。しかし……。
「…………ここで行かなきゃ……私。悪者じゃない……」
「悪者だなんて……。ポタンちゃんは私の自慢の娘よ!」
そうだけど、そう言う意味じゃ無い……。ポタンはそう思いながらミリャナの手を引いて歩き出すアリスの後ろを、スゴスゴと付いて行く。
放棄された町々に、元々は貴族らしき謎の浮浪児。そして厄災から民を守る為に殺された魔女に未だ身近に残る厄災……。
どうした物か……。と考えるが、さっきの今だ、答えが出るはずも無い。
ポタンはトボトボと歩きながら、寂れた建物の間に見える青い空を見上げ。こんな時にパパの様な天晴れ脳天気な脳みそが欲しいなぁ……。そうすればもっとママに甘えられるのになぁ。と能天気にそう思うのだった。
南の大陸調査で早速新たな問題が発生。厄災とは何か?
中央ダンジョンや研究施設との関わりは?
……どうしよw
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