心のままに
えっと。色々と脳内モザイクをお願い致しますw
露死南無天を目の前に、元気は彼が人間に戻った時の姿を思い出しイメージする。
「んじゃ行くよ!」
「うむ!」
露死南無天の相づちと共に元気が両手を突き出すと、そこからまばゆい虹色の魔力の光が露死南無天を包んだ。
「な、なんだこれ!?ま、眩しい!」
「め、目が!?光るなら先に言えって!?馬鹿たれ!」
自衛隊が使う閃光弾程の光がナツとツバサを襲い、二人が湯船の中へと顔を隠す。
「ご、ごめん!こんなに光るとは思わなくて!ぐあ!?目の奥が痛い!」
目の前で閃光が直撃した元気は、地面へと伏せてしまった。
「い、一体何が起こっているので御座るか!?」
「だ、大丈夫!露死南無天が異常に光ってるだけだから!」
「異常に光ってる!?ほ、本当に大丈夫で御座るよな!?」
光っている本人には無害の様で、地面に伏せる元気や、湯船に潜ったままの二人の様子に、失敗では無いかと焦る露死南無天。
「本当に大丈夫だから!身体どんな様子?」
「か、身体で御座るか……。お、おぉぉおぉぉぉおおおぉぉお!?人で御座るぞ!拙者の身体が人型になっているで御座る!」
「よ、良かった……」
変化が成功した様子に元気はホット一息。自分の目にヒールをかけると、光が止んだのを確認して露死南無天を見上げた。
「はぁ~。やっぱり人型は良いで御座るな!動きから何から段違いで御座るよ!元気!感謝するで御座る!」
「あ……うん……」
人の身体に戻ったのが余程嬉しいのか、そこら中を笑顔でぴょんぴょん跳ね回る露死南無天。衣裳は前に見た黒い忍び服で、顔は塩顔のおじさんから、そこはかとなくイケオジ風の顔になっている。
しかし馬の時のイメージが強すぎたのか、耳と尻尾がそのままで、嬉しそうに飛び回る露死南無天の姿は、誰得。馬親父状態だった。
「うおぉ!馬人間だ!かっけー!」
「せ、成功なのか……それは……?」
湯船から顔を上げた二人が露死南無天を見て、それぞれの反応を見せる。
ナツは馬親父姿の露死南無天を気に入った様子だが、ツバサの方は少し顔が引き攣っていて、次は自分の番なので少し不安そうだ。
「馬人間で御座るか?身体は人型に戻っておるようじゃが……」
「……ご、ごめん露死南無天……。馬の時のイメージが強すぎて……耳と尻尾が……馬のままって感じになっちゃって……」
「耳と尻尾で御座るか?……フハハハ!そんなの構わんで御座る!その様子。これ以上は変化出来ないので御座ろう?」
「う、うん……。イメージがそれで定着しちゃってて……」
「二足歩行になり。顔も……あぁ。懐かしい……何年ぶりか……自分の顔を眺めるなど……どれ程待ち望んだ事か……グフゥ……。良い……これで大丈夫で御座る……」
湯船に映る自分の顔を見て、嬉しさのあまり泣き始めた露死南無天。物分かりが良くて助かるが、ちょっとイケメンになっているのには気付いていない様子だ。
「よ、喜んで貰えて良かったよ……」
取り敢えずは納得して貰えた事にホットする元気。男泣きする露死南無天の傍では、ナツが上から目線で露死南無天を励ます。
「まぁ、泣くなって馬親父!耳と尻尾!愛嬌があって良いぞ!」
「フハハハ……そうで御座るか!愛嬌があるで御座るか!それは結構!フハハハ!」
「結構結構!フハハハ!」
ナツと謎のやり取りを行いながら、自分の顔に戻って喜ぶ露死南無天を見て、ツバサが複雑な表情を見せる。
「……自分の顔に戻るのが……そんなに嬉しいもんかね……」
「それはそうで御座ろう……苦楽を共にし、それを刻んだツラ構えを、どうして嫌いになれようか……」
「苦楽を共に刻んだ……か……」
露死南無天の言葉を聞き、過去の苦楽がツバサの脳内に走馬燈の様に流れ出した。
アンタは可愛くなるわよ。と母や祖父祖母に言われていた幼少期。
誰からもそう言われなくなり。気持ち悪いと言われ始めた少年期。
女の人の後ろを歩くだけで、痴漢に間違われる事36回、コンビニに行くだけで職質される事、185回。バイト先でのスマイルのクレーム28回。好きな女の子にばい菌扱いされた回数5回。
良かった事と言えば、祖母の家に一日中居ても何も言われなかった事くらいだろう。
そんな苦楽を思い出すだけで、ツバサの瞳に涙が溢れて来る。苦楽を共にした自分の顔には、思い出がいっぱい詰まっているのだ。
そう思い。涙をグッと拭ったツバサは元気に向かってハッキリと言った。
「ファイファンのセフィロトで頼むわ!」
「……了解」
蛙の顔で、とても良い笑顔を見せられた元気は、理由などを特に追求する事無くツバサの要求に応える事にした。
露死南無天もああは言ったが、ツバサの生い立ちを聞いていたので、それ以上は口を出す事は無かった。
「ウゲ~!何だよツバサ、男女になったのか~?カエルの方が面白かったのに!」
その後、ツバサを変化させるとナツだけガッカリした様子を見せたが。
「うむ……。何とも男前な……その着物も長刀も何故か男心をそそる物があるで御座るな!格好いいで御座る!」
「うわ~!これ、すげ~!刀重~!こんなんどうやって抜くんだよ!アハハハ!超イケメンじゃんか!ぐわっ!息子がアルテマなんだが!!!」
「おぉ……。自分でやっといて何か感動……。あのセフィロトが動いてる……」
「フフフ……。約束の地へ……。なんつって~!」
「うお~!格好いい!」
「うむ!様になっているで御座るな!よ!色男!」
コスプレ気分ではしゃぐツバサに、それを見て喜ぶ元気と露死南無天。更にそれを不機嫌そうに眺めるナツ。一通りの物事に決着がつくと、元気達は湯船の中に戻り、本来の目的について話し始めた。
「とんだ道草を食ってしもうたが、どうするで御座るかな……ナツをこのままダンジョンヘと連れて行くのはちと危ないのでは御座らんか?」
「そうだな……一旦、冬美さんの所に──」
「──か、帰らんぞ!私はダンジョンに行くんだ!」
「お、おいナツ……。俺の後ろに隠れても……」
「な、何だよ!お前私の旦那だろ!だったら味方しろよ!」
ツバサの後ろに隠れるナツ。からかった手前、何とかしてあげたいのは山々、ロリ嫁から旦那認定されたのだから、守ってあげたい気持ちも山々なのだが、ツバサはある事に気付いていた。
「ロリコン紳士である俺は、いつ何時でもロリッ娘の味方何だが……。刀を持って自覚したんだけど、回復能力と魔力以外普通の人ぽいんだよね。刀超重かったし……。なので、俺の後ろに隠れてもどうにもならんと思うよ?」
「役立たず!」
「すみません……」
セフィロトの姿でロリッ娘に情け無く謝らないで欲しいと思う元気だったが、今はそんな事よりも気になる事があった。
「ってかナツは、どんな能力を持ってて何でダンジョンに行きたいんだよ?」
「……言ったら連れて行くか?」
「能力次第……ってか、ダンジョンに行くって息巻いてて、道中ゴブリンに殺されかけてたってどう言う事だよ……」
「仕方ないだろ……。アイツらの心は読めないんだから……」
「心を読む?」
「あぁ!私は人の心が読めるんだ!だから、誰の攻撃も当たらない!」
「何と……能力は読心術で御座るか……」
「うん。それでダンジョンに行って、猛者を倒して、フェルミナの本当の弟子になるんだ!」
「理由の全部がお馬鹿すぎる……駄目だ駄目だ。フェルミナが増殖するとか厄介過ぎ──」
ナツの能力は『読心術』相手の心が見える。
「──連れて行かなければ……。ミリャナって人に言うぞ!枕の下にお毛毛を御守りとして隠してる事!」
「ゲ!?お、お前!何でそれを知ってるんだ!ど、読心術か!?」
「露死南無天も言うぞ!うちの母さんとああ言う事やこう言う事やあんな事やこんな事したいって思ってるの言うぞ!……まぐわ──」
「──うおっほほん!!!コレコレナツよ!無闇に人の心を読むのは感心せんで御座るぞ!」
「へへへ……。露死南無天やっぱりか~……ちゃんとあっちの方大きくしてあるから……」
「か、からかうでないわ元気……しかしまぁ、ありがとうで御座る……」
「ツバサは……。チッ!お前!私を嫁とか言ってさっきの話に出て来た女の子の事ばっかり考えてるじゃあ無いか!浮気者!変態!」
「いた!痛いって!肩甲骨をグーで叩くなって!」
「……おい!つんつるてんのオッパイ!ペロペロしちゃうぞ~って何だ!変態め!」
「ば、馬鹿!お、俺はそんな事……」
「……ネタかと思ってたのに……ツバサさん、本物かよ……」
「……うぅむ。幼女趣味はちぃと戴けないで御座るな……」
「お、お前ら!自分の事は棚に上げやがって!」
湯船からザブンと立ち上がったツバサの、股間の少し後ろから、ナツが必死に吠える。
「どうするんだ!私を連れて行かなければ全部皆にバラすぞ!」
「ぐぬぬぬ……」
男の心の内に秘めた秘密。それは墓場まで持っていきたい物ばかりだ。
ナツを連れて行かなければ、ミリャナのオシッコを舐めたことがある事さえもミリャナにバレてしまう。
「……うわ……お前……オシッコ──」
「──うるせぇ!行こう!一緒にダンジョンに行こう!」
うかつな元気の発した苦肉の決断を聞いて、勝利を確信しツバサの玉袋の後ろでほくそ笑むナツ。
調子に乗った時のフェルミナの様に、何処かに飛ばしてしまおうかと思うほどナツに腹が立ったが、彼女を飛ばした所で結果は同じ。その内バレてしまう。結局は心を読まれたが最後だった。
こうして本来、ナツを保護しすぐに帰宅する予定だったのだが、人に言えない秘密の多い男達は、致し方なくナツをダンジョンヘと連れて行くしか無くなったのだった。
さてさて、同行者が増えた元気達はダンジョンヘと向かいます。向かった先で待ち構える者とは……。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




