明けない夜明け
ツバサ目線ラスト。
牢屋に連れて来られた子の名前はノラ。見た目は幼いが十二歳の栗色の髪の少女。中央国の孤児院で育った孤児だ。
栄養が足りていないと、発育が悪いってのは聞いた事があったけど、そんな人間を目にしたのは初めてだった。
そんなノラは、良く喋る子で良く笑った。
「おじさん鎖で壁に繋がれてるから、自分で出来ないでしょ?お尻拭いてあげるから後ろ向いて!」
「い、いや。良いって……。足元の掃除だけで十分だ……」
「駄目だよ!お尻をちゃんと拭かないと痒くなるし痛くなるんだよ!」
「……それはそうだけど……。それを知ってるって事はノラも経験済みか?」
「げ……バレた……。えへへ……実は冬になると、水で洗うのがちょっと嫌で……。キレが良い時にたまにね……。へへへ」
「汚いな……」
「うるさい!ほら!後ろ向いて!」
いやぁ……人からお尻を拭かれるのってさ……最初は恥ずかしかったんだけど、慣れたらそうでも無かったって言うか……何か良かった。
純粋で献身的な妹萌えとか、メイド萌え~ってこういうのか?とか感じちゃったりしてさ~。
おい!待て!……違う違う!そんなゴキブリを見るような目で俺を見るな!
これは幼女姿の女の子にお尻拭かれて、嬉し恥ずかしハッピー!って話なじゃ無いんだ!
これからが重要!なんとだな!……その拭いたウンコが彼女の手に付着したんだ……。
いや!だから!続きを聞けって!二人して立ち上がるんじゃ無い!……俺のウンコがついた所の傷が治ったんだよ!拷問で受けたノラの傷が!俺の排泄物にも癒やしの効果があったんだ!
……ノラも今のお前達の様に、えぇ!?って顔してたよ……。まったく……俺はロリコン紳士ではあっても、変態じゃあ無いんだから勘違いしないでくれよな……。
……んで、それは異世界能力の影響かもって話したら、俺が異世界人なら、膨大な魔力があるかもってノラが言ってさ、魔法と魔力の話を教えてくれた。
それから数日間、俺は魔法の練習をした。
そして、俺は魔法が使える様になると、次はノラと一緒に牢屋脱出計画を立て始めた。
「ここから出たらお前はどうするんだ?」
「私は……」
「……一緒に来るか?……魔法があればお前くらいなら余裕で面倒見てやれそうだし……」
「え!?……でも私は何にも出来ないし……」
「出来る事あるじゃん、お尻拭き。人にお尻拭いて貰うのって何か悪く無い気分だぞ?ノラのも拭いてやろうか?」
「じ、自分でするわ!変態!」
「ハハハ、そうか?……まぁ、お尻はその内として……来るか来ないかは決めておいてくれな……」
「……うん。わかった……考えとく……」
考えとくと言ったが、隠し事の苦手なノラが嬉しそうにしている様子から、一緒に来るだろう事は明らかだった。
この何気ない会話が、誰かと一緒に未来の話しをするのが、今まで孤独だった俺には酷く楽しかった。
いやぁ……しかし。ノラのモジモジする様子がまた萌えると言うか何と言うか……。
俺の容姿を見ても気持ち悪がる事も無く……お尻についたウンコまで……。これはもう。ノラは俺が一生を掛けてでも幸せにしなきゃいかんな!と俺は思ったね!
え?未成年との恋愛は犯罪?……おいおい、馬鹿め。ここは異世界だぞ?隣の素っ裸ウンコ娘を見てみろ、それが答えだろ。
隣に幼女とか日本でなら即逮だぞ、触っても逮捕だ。……まぁ、そんな倫理的な事は置いといてだ。
……希望を見つけたその日から、無くしていたハズの闘志がまた燃え上がり始めたんだ。
拷問の合間に脱出の方法や魔法の実験。異世界能力の実験をしたりと、その日からより一層毎日が楽しく感じられた。
そして実験の結果。俺の異世界能力は体液にも回復効果があるらしく、唾液やションベンに汗全部で傷が治った。
俺は両手を壁で拘束されてたから、自由に動けるノラが全ての被験体だったんだが、流石にノラの恥部にションベンを……。ゴホン……この話はやめておこう……お子ちゃまにはまだ早い。……え?ションベンかけるなんて臭そう?ハハハ!そうだな、ナツの言う通り、部屋の中は超臭かったけど、ノラが呼び出される回数と怪我が減ったから逆に良かったんだ。
日に日にノラの笑顔も増えてさ……。どうやらお貴族様は汚い物は好まないらしい……。
……んで、魔法ではパンを出したり。脱出の為の武具を出したり消したりも出来る様になると、今度は毎日、外に出たら何をしようか?二人で何処に行こうか?海、山、川何処で暮らそう?美味しい物をいっぱい食べて、楽しく暮らそう。色んな事をノラと話した。
楽しそうに色々と話すノラを見ていると、拷問の痛みも忘れられた。
そしてそんな日々が一ヶ月経った頃。とうとう脱出作戦決行の日はやって来た。
作戦はこうだ。
俺が拷問部屋に連れて行かれる時に、兵士が手枷を外したら、魔法でズドン!そのままノラを抱えて牢屋を脱出というシンプルなものだった。
ピストルや盾の準備も考えてた。
しかし、その日は俺より先にノラが拷問の部屋に連れて行かれた。
出した物を消す。これは出来たんだが、元々存在する物を消す事が、何故か魔法では出来なかったから、鎖に繋がれたままの俺にはどうしようも無くてさ、こちらに向かって意味ありげに頷くノラの事を見送る事しか出来なかった。
きっと、帰って来たら作戦を結構しよう!とかそんな感じの事を言おうとしたんだと思う。力強く、希望で満ちてとてもキラキラした目をしていたよ。
普段だったら拷問の待ち時間なんて憂鬱な時間でしか無いんだけど、ノラの目力に充てられてか、その日は早く俺の番よ来い!と願い、ノラの帰りを待った。
それから三十分ほどで、兵士達の足音が聞こえ、ノラが部屋に戻って来たんだが……帰って来たのは、千切れたノラの頭だけだった。
……それから目の前が赤く染まって、発狂した事は覚えているんだが、それ以降の記憶は無い……。
……んで現在に至る。意識の覚醒は、嫁がゴブリンに両手をもがれて、犯されそうになっているのを見て、急に戻った感じかな?
……記憶喪失のショック療法的な感じだったんだろうな、過去のショックな光景で記憶が蘇る的な?
最初は自分の姿がどうなってるか解んなくて戸惑ったけど、身体が大きいのは解ったからさ、その後はゴブリン達を叩き潰して、出血多量で死にそうだった嫁を、体液たっぷりの口に含んだワケさ、回復したら外に出そうと思って……。
そしたら、どんどん自分から喉の奥に進んで行ってさ、最終的には自分でウンコまみれになって、身体の外に出て行ったんだ。
流石にすっぽんぽんの女児をそのままにしておくワケにもいかないだろ?だから追い掛けてたんだけど、逃げる様が必死すぎて……面白くなってさ、ついつい萌え萌えキュン!とか食べるぞ~とか言ってみたりして……。ってか男がこれ言うと、何処の世界でもキモいんだなハハハハハ!
「ハハハじゃねぇ!助けるなら助けるって先に言え!私怖かったんだからな!」
「アハハすまんすまん!怪我が治ったんだし許してケロ?」
「ケロ?……まぁ、いいか……治ったし」
「流石俺の嫁だ!懐が大きいねぇ!よ!日本一!」
「えぇ~やめろよ~日本一とか~へへへ~」
大きなカエル姿で豪快に笑うツバサに、簡単に言いくるめられて、とても嬉しそうなナツ。元気は情報が多すぎてついて行けない状態だ。
「……まぁ、あれだ嫁が無事ならそれで良い……。これで心おきなくノラを殺した貴族を国ごとぶっ潰しに行ける……」
「え?殺すって……ツバサさん……監禁されてた場所って解るの?」
「あぁ。中央国の地下だ。ノラが教えてくれたからな……」
「中央の地下……。あの……復讐に燃えてる所、申し訳無いんだけどさ……その貴族……もういないかも……。それにその当時の王様とかも……」
「え?……お前何か知ってるのか?」
「えっと……まぁ……」
元気は中央国で代替わりがあった事。中央国地下でポタンが見て来た拷問施設の事、その施設は既に使われなくなっている事等を、端的にツバサに話して聞かせた。
「……そうなのか……。今はああ言う事が無くなって平和なのか……」
「うん……」
「そっか……平和か……。だったら何でもっと早くに!!!……ってな事を言っても……仕方ないよな……。ないよなぁ……ぐふぅ……ノラァ……」
復讐の相手を知らぬ間に失っていたツバサは、初めて自分と一緒に未来を語ってくれた友人の名を呼びながら、天を仰ぎ大粒の涙を流し始めた。
そして、大切な人を失い、悲しみに暮れる彼に何と声を掛けて良いか解らない元気とナツは、そんな彼の姿を静に見守る事しか出来なかった。
魔物化する原動力は、魔が刺す事。それは怒り悲しみ憎しみ色々とあるのかも知れません。
次回は、フォームチェンジ的なお話し。
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




