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ミリャナのお誕生日会

巨人はエルフ達が作ったロボットです。

 元が良いミリャナだ。化粧とお洒落を少しするだけでも、そこらの貴族令嬢に引けを取らない華やかさがある。近くの兵士もその美しさに目が離せない。そんなミリャナは老紳士にエスコートされながらゆっくりとテーブルに着席した。


「ありがとう御座います。メルヒオーネさん」


「いえいえ、お嬢様」


 ミリャナがニコリとして、お礼をいうと。老紳士もニコリと微笑み。お辞儀をして去って行った。


 豪華な装飾がされた部屋にある。細長いテーブルの上に豪華な料理が次々と並んでいく。


「ミリャナ、誕生日おめでとう!今日は遠慮無く食事を楽しんで行ってくれ!」


「ミリャナ。お話しが出来るのを、楽しみにしていましたよフフフ」


「お姉さま、御機嫌よう」


「本日はお招き。ありがとう御座います」


 ニコリとするミリャナを見てヴァイドは、違和感を感じる。そして思う……。あの赤子は……何だ?と。


 ヴェルニカも、違いに気づいた様子で二人で顔を見合わせる。そしてその違和感以上の物に目が行く。当たり前だが三人はポタンの存在を知らない。


「あ、あの何か?」


「い、いや、何でも無い!」


「ミ、ミリャナはまた美しくなりましたね、髪もツヤツヤで……何だか良い香りが致しますわ」


 ヴェルニカがそういうとメルディも同意する。

「えぇ、お姉様……どういったお手入れをなされてるのですか?聞いてもよろしいかしら?」


「え、えっとですね……」


 ミリャナの反応が、例年と違うことにヴァイドが戸惑っていると、ヴェルニカとメルディの合いの手が入った。だが、今度はミリャナが困っている。


「これ、お前達。ミリャナが困っているでは無いか、質問は食事の後にしなさい」


「あら、そうでしたわね。御免なさいね。ミリャナ」


「御免なさい、お姉様」


「あ、いえ。お気になさらないで下さい」


 ミリャナがホッとしている。その様子にヴァイドは驚いていた。


 去年までのミリャナは、一緒に食事をしていても無表情。まるで人形の様だったのだ。


 しかし、今年は表情豊かで……何故か子供を抱いている。一年で何があった?ヴァイドの頭の中には?しか浮かばない。ヴァイドが放心していると、ヴェルニカにテーブルの下で足を蹴られ我に返った。


「そ、それじゃ、食べようか」


 正気に戻ったところで、ヴァイドが皆に声を掛け、スープをスプーンですくった時。ミリャナが両手を合わせ、ある言葉を口にした。


「いただきます」


「いただきます?何だそれは?」


「あ、すいませんついクセで……私たちの為に食事を作ってくれた人や、犠牲になってくれた生き物に感謝をして、いただきます。という挨拶らしいです」


「ほう、殊勝な心がけだな。生き物や人々に感謝か……うむ、私もやらなければいけないな、いただきます!」


「フフフ、そうね。今日を生きていける事に感謝しなければね。いただきます」


「……いただきます」


 そういうと三人は、ミリャナのマネをして、食事を始める。そしてミリャナがポタンにスープを飲ませ始めた。


「美味しいでちゅか~ポタン?フフフ……偉いわね~……」


 普通なら微笑ましい光景なのだが、ミリャナは未婚。しかも子供は二、三歳。……不可解が過ぎる。一体一年で何が起きたのだ!とヴァイドの見過ごしの限界が来た。


「ミリャナ……聞いて良いのか、悪いのか解らぬが……まぁ、結局。聞くしか無いので聞くんだが……その子供は誰だ?」


「あ!御紹介が遅くなりました。ポタンです」


 ミリャナがニコリとヴァイドにポタンを見せる様にすると「あい!」とポタンも挨拶する。それにヴァイドもニコリと返すが、挨拶する赤子に少し笑顔が引きつる。


「……ほう、ポタン……と言うのか……あ、挨拶も出来て偉いな……名前も可愛くて良いな……それで?」


「それで?」


 ミリャナがコテリと首を傾げる。


「う、産んだのか?」


「えぇ!?」っと驚くミリャナ。それを見てヴァイドにヴェルニカが激怒する。


「あ、貴方!お馬鹿じゃありませんか!?デリカシーがなさ過ぎです!」


「す、すまぬ、しかしどうしたのだ?去年はいなかっただろう?孤児院の孤児とは違うようだが?」


「えっと、何処から話せば良いのか難しいのですが、今、居候が家に居ましてその子が連れてきたのです」


「あぁ、その事も後で聞こうと思っていたのだ、十歳くらいの少年であろう?ではその少年の代わりに面倒を見ているのか?」


「代わりというか、取っちゃった。と言いますか、私から離れなくなっちゃいまして……ね、ポタンちゃん」


「あ~う」っとポタンが返事をする。


「あの、お姉様後で良いので……その……近くで見ても良いでしょうか?」

 メルディが興味津々だ。


「えぇ、メルディ様ポタンもお姉ちゃんが出来た。と喜ぶかも知れません」


「わ、私がお姉様!?」

 お姉様と言う言葉がメルディの琴線に触れたようだ。


「わ、わたくしも良いかしら?」

ヴェルニカも頰が少し上気している。


「えぇ、奥様も是非お願いします」

 

「まったくお前達は、話しが進まぬ……」


 ヴァイドがそう口にした時だった。


「敵襲!敵襲!」

 城の中に緊張した声が響き渡り、兵士がドアを開けて入ってくる。


「何事だ!?」


「発光する何かが凄い早さで此方に向かっています!領主様!早く非難を!!!」


「何かとは何だ!?魔族か!?何故このような時に!?」


「お、お母様!」


「だ、大丈夫ですメルディ……ミリャナも此方へ!」


 ミリャナが、メルディとヴェルニカに近寄った瞬間。城門の方からけたたましい爆音と衝撃が走った。


「きゃぁぁぁぁ!!!」


 メルディが驚いてミリャナにしがみつく。

「大丈夫よ!メルディ、大丈夫だからしっかりね!」とメルディをミリャナが抱き締め励ます。


「城門の防衛魔術が破られた様だ安全な所に非難を!」

 

 ヴァイドがそう叫んだ時だった。


 ズオン!っと一瞬にして屋根が吹き飛び夜空が現れ、満月を背にした人型発光体が六つの翼を広げ静かに佇んでいた。


「……あ、あれは、神か……?一体なぜここに?」


 吹き飛んだ屋根もそうだが、いきなり現れた発光体に唖然とするヴァイド。


「元……ちゃん?」


 見覚えのあるシルエットにミリャナが反応する。


「元ちゃん?なんだ、元ちゃんって!?」


 ヴァイドがミリャナに問い詰め、肩を掴んだ瞬間。突風がヴァイドを吹き飛ばした。


 一瞬で部屋の隅まで吹き飛ぶヴァイド。


「ぐあっ!……な、何故だ……我々が何をした……!?」


 ミリャナの誕生会を行っただけである。理解不能なのも致し方ない。


「ミリャナを攫ったのはお前かぁー!?」


 ヴァイドをエロ親爺だと勘違いしたままの元気が吠える。


「ミリャナを攫っただと……?……一体何の事だ!?何故神がミリャナの名前を!?」


「げ、元ちゃん!違うのよ!今日は私のお誕生日なの!」

 

「え?ミリャナのお誕生日?」


「……うん」


「えっと……おめでとう……ミリャ」


「ありがとう……」


 ニコリとミリャナがお礼を言うが、元気はそれを見てヤバいと思う。ミリャナ観察を怠らない元気には、ミリャナが怒っていると解る。


「あ、あの……。その方達は……?」


 仁王立ちだった元気は、どんどんと猫背になり、手を合わせモミモミしだす。


「ヴァイド叔父様にヴェルニカ叔母様に従姉妹のメルディよ……」


 紹介された三人は、ニコリとしているミリャナとは違い、未だ唖然としている。


「あ、こんばんわ……」


 とてもとてもヤバいと感じ始める元気だったが、時既に遅し……屋根を吹き飛ばし。ミリャナの叔父を吹き飛ばし。お誕生会をぶち壊した後だ。


「お、お前は一体……何者だ……」


「ひ、秘密です……。あ、あの……すいませんでした。何か勘違いで……あ!怪我しちゃってますね。ちょっと治療するので動かないで下さいね。本当にすませんです。へへへ」


 こそ泥の様な喋り方をする元気が、コソコソっとヴァイドに近寄り傷を癒やす。敵意が無い事を理解したヴァイドが元気に話しかける。

 

「……お前はここに何をしに……」


 ヴァイドがそこまで口にした時だった。


 ドシン。ドシン。ドシン。ドシン。っと地響きが響いてきた。


「こ、今度はなんだ!お前の仕業か!?」


「ち、違います!」


 元気がそう叫んだ瞬間。巨人が吹き飛んだ屋根から顔を出した。


「あぁ~……」


「ひぃ……」

 

 ヴェルニカがそれを見て意識を失い。メルディはぷるぷる震えている。そして騒ぎを聞きつけ集まった兵士や騎士達が騒ぎ出した。


「な、何だあれは!」「国が終わるのか?」

「世界の終焉が始まった」「こ、殺される!」

「天罰だ!」「お母ちゃ~ん!」


「……ひ、人型決戦兵器が何故ここに!?」


 元気も騎士達と一緒に驚く。そして一瞬の出来事だった。


 ピョンと何者かが巨人から飛び降りて、走り去ったのが見えた。


「アイツ……マジで……」


 全力疾走で逃走する姿がバッチリ窓から見える。それは、森には入らず何故か平原を疾走しているお馬鹿なフェルミナだった。


 そして、フェルミナが居るのならば、巨人の中に居るのは一人しかいない。元気がそう確信した時だった。


 巨人の首の後ろから、筒型のカプセルがプシュー!っと出てきた。


 その音にヴァイドやその他の兵士や騎士警戒する。そして筒型のカプセルの扉が開くと、プラグスーツ姿のミールが巨人の肩に降り立った。


「姉さん!ただいま!迎えに来たよ!家に帰ろう!!!」


 バッと手を広げるミールに合わせて、巨人がミリャナに手を伸ばす。


「ミール……え?ミールなの……?」


 ミールの出現にポカンとするヴァイドとミリャナ。


「ほら。ポタンおいで~……ミリャナ……行きなよ……フフフ」


 素直に元気に抱かれたポタンが「たう!」っとミリャナに向かって言うと、それが合図になりミリャナが弾ける様に走りだした。


 そして、巨人の腕の上を一気に駆け抜けたミリャナが、ミールに勢いのまま抱きついた。


「ミール!!!」


「姉さん!!!」


「お帰り!ミール!ずっと待ってたわ……」


ミールを抱き締めながら涙を流すミリャナは、五年ぶりにミールをギュッとしたのだった。


「な、何だこれは?……何故ミールが?」


 ヴァイドの頭はパンク寸前だ。巨人に乗って死人が現れたのである。混乱するのは当然だ。


 それを見て元気が撤退のチャンスだ!とニヤリとする。そして飛び上がった。

 

「ミール撤収だ!」


「おう!兄弟!!!」


「二人ともちょっと待って!」


 急いで逃げようとする二人を止めて、ミリャナがヴァイドに向き直る。


「あ、あの!ヴァイドおじ様!今日は、ありがとう御座いました!!!メルディ様、ビックリさせて御免なさいね!!!ヴェルニカ様にも、後日謝罪に参ります。とお伝えください!!!」


 そして謝罪と言う言葉に二人がピクリと反応した。


「おい、お前が行けよ」


 と元気。


「はぁ?屋根壊したのお前だろ?」


 とミール。怒られるのが解っているので、二度と領主城へは来たくない二人。


「こら!二人とも、人の家を壊したんだからちゃんと謝りなさい!」


「「ご、御免なさい!」」


 ミリャナに怒られ二人が頭を下げる。


「……ってか俺は姉さんを迎えに来ただけじゃないか!」


「はぁ?元はと言えば、お前が勘違いしたからだろ!姉貴の誕生日くらい覚えとけよな!」


「お前だって、姉さんが好きなら誕生日くらい覚えとけよ!」


「ば!ばっか!お前!好きとか、そんなんじゃ……無い事も無いけど、今言う事じゃあ無いだろ!そう言うの……」


 そんな言い合いをしながら、三人は巨人と一緒に去って行いった。

 

「メルディ!大丈夫か!?怪我はないか?」


「お父様わたくし夢でも見ているのでしょうか?」


 メルディはポカンとしている、怪我はないようだ。

 ヴェルニカも気を失っているだけで怪我はない様子だ。

 傍使(そばつか)いにヴェルニカを寝室に運ぶように指示し、メルディにも部屋に戻る様に伝えるヴァイド。


「メルディじゃないが、夢を見ているのか私は?しかし、ミリャナのあんな嬉しそうな顔は初めて見たな」


 シン……。となった部屋で、夜空を見上げながらヴァイドは、ダルドリーに話しかける。


「ミリャナは今。楽しそうにしているよ兄さん……」


 ヴァイドは落ちたグラスにワインを注ぎ、天に掲げた後、ミリャナの幸せを兄と一緒に喜び、ワインを一気に飲み干したのだった。


ミリャナとミールの再会。良いお誕生プレゼントになったかな?w



少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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